いわゆる「内勤営業」とも言われるインサイドセールスは、今や企業の営業活動に欠かせない役割となってきました。

電話やメールなどを使った非対面の営業活動やアポイントの獲得のみならず、現在ではオンライン商談ツールなどを活用して実際に顧客へ提案して受注を取るフェーズまでインサイドセールスが受け持っているケースもあります。

少ないリソースで受注に至ることができたり、消費者の購買行動に合わせてスピーディーに対応できたりするインサイドセールスを、社内で立ち上げたいと検討している企業も多いのではないでしょうか。

今回は、インサイドセールス立ち上げの失敗例を参考に、成功させるためのポイントを解説します!

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インサイドセールス立ち上げの有用性

まず、インサイドセールスを立ち上げることの有用性を理解することから始めましょう。

実際にインサイドセールスを営業活動に導入した企業は、どのような効果を実感しているのでしょうか。

MAツールの販売やマーケティングコンサルティングを行っているMtame株式会社が2019年に実施した調査によると、インサイドセールス導入企業のうち、「商談の回数がとても増えた」と回答したのは43.6%でした。

これは、従来はフィールドセールス担当者が商談・訪問の合間にリードへ連絡してアポイントを獲得していましたが、インサイドセールスを導入することでリードへのアプローチ件数を格段に増やすことができるからでしょう。

また、リードの流れがマーケティング部門→インサイドセールス→フィールドセールスというシステマチックな管理体制になることで、次の部門へ引き継ぐ際のリードの質が担保され、確度の高いリードとの商談が可能になります。

つまり、インサイドセールスの導入により、受注率の向上も期待できるのです。

更に、業務を分担することで、インサイドセールスはインサイドセールスの仕事に専念でき、フィールドセールスはフィールドセールスの仕事に専念できるため、今までは70%のリソースしかかけられなかった業務にも100%のリソースをかけられるというメリットもあります。

関連記事:インサイドセールスとは?定義から組織化・有効なツールまで完全網羅

インサイドセールス立ち上げ・構築の問題点

インサイドセールス立ち上げの問題点

 

Mtame株式会社による調査では、インサイドセールス導入企業が感じた立ち上げの際の課題の上位は下記のようになりました。

  • 1位:インサイドセールス人材の確保、教育
  • 同率2位:インサイドセールス経験者がいない
  • 同率2位:どのように始めたらいいかわからない

上位3つのうち、2つが「人材」に関わる課題だったのです。

実際に非対面型であるインサイドセールスはフィールドセールスとは違うスキルやナレッジが必要となるため、適切に教育をしていかなければいけません。
ツールを活用する場合は、ITリテラシーの有無や分析が得意/不得意かも加味して人材を配置する必要もあります。

また、ほとんどの日本企業では「インサイドセールスが商談を獲得して、フィールドセールスが実際に商談をして受注を取る」という営業プロセスを構築するため、インサイドセールス担当者が「売上に直結しない仕事をしている」と思ってモチベーションが下がってしまうことも。

このように、人材の適切なトレーニングとコーチングは、インサイドセールス立ち上げにあたって大きな課題になっています。

また、そもそも最初の段階で自社について詳しく分析してからでなければ、インサイドセールスを導入しても効果を感じられません。

自社の商材の特徴や現在の営業プロセスをきちんと分析し、どの業務をインサイドセールスが担当するのか、そしてどのように部署間を連携させるのかという全体像を構築しましょう。

これに伴い「インサイドセールスのKPIをどのように設定するか」ということも問題となります。

KPIを「商談の獲得数」に設定してしまうと商談の質が悪くなってしまい、フィールドセールスが訪問しても無駄足に終わってしまうことにもなりかねません。
そのため、獲得数だけでなく、クロージング率や受注金額などにもKPIを設定することで、インサイドセールスが責任を持って確度の高いリードを獲得するようになります。

インサイドセールスのKPI設定については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:インサイドセールス(SDR)のKPI|目標設定と管理のポイントとは?

インサイドセールスのタイプとそれぞれの失敗事例

インサイドセールスは大きく分類して3つのタイプに分けることができます。

  1. アポイント獲得型:リードを創出・育成して初回アポイントにつなげる
  2. クロージング型:フィールドセールスとは分離し、インサイドセールスがクロージングまで行う
  3. 既存アップセル型:既存顧客への受注後のフォローアップやヒアリングを実行し、アップセル・クロスセルにつなげたり契約解除を防いだりする

これらのタイプ別の失敗例を確認してみましょう。

【アポイント獲得型の失敗例①】

今まで営業担当者がリード創出からクロージングまで行っていたが、負荷が大きいためリード創出とアポイント獲得を担当するためにインサイドセールスを導入。
ところが、引き継ぐ際の情報共有の方法を構築しないまま見切り発車してしまったことで、現場が混乱してしまった。

【アポイント獲得型の失敗例②】

インサイドセールスからの事前情報では確度はまずまずとのことで、フィールドセールスが初回商談に訪問。

しかし、リードの関心が低いような気がして詳しい話を聞いてみると、インサイドセールスから「まずはお話だけでも聞いてください」と強引にアポイントを入れられたとのこと。

インサイドセールスのKPIが「アポイント獲得数」のために起こった失敗であった。

【アポイント獲得型の失敗例③】

インサイドセールスは主に電話でリードへアプローチする営業戦略だったが、なかなか商談数が増えなかった。

電話の内容を分析してみると、セールストークばかりのトークスクリプトだったため、リードは不信感を招いてしまいアポイントに結び付いていなかった。

【クロージング型の失敗例】

大企業などの大型の契約はフィールドセールスが商談から成約までを担当し、単価が低い案件はインサイドセールスがオンライン商談などを活用して成約までを担当するという分業体制にしていた。

インサイドセールス担当者一人ひとりにも数値目標を課したために、インサイドセールスとフィールドセールスの間で対抗心が生まれてしまい、フィールドセールスに引き継ぐべき案件もインサイドセールスで処理してしまうようになった。

【顧客アップセル型の失敗例】

新商品の発売に合わせて既存顧客全員へ電話でアプローチしていたが、なかなか購入に結び付かなかった。

購入履歴を分析してみると、高価格帯の商品を購入していた顧客と低価格帯の商品を購入していた顧客に分けることができたが、それぞれのセグメントに合わせた商品提案をできていなかったために受注されなかったとわかった。

関連記事:アップセルとは?クロスセルとの違い・具体事例を解説

インサイドセールス立ち上げの6ステップ

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ここでは、具体的なインサイドセールス立ち上げの方法について順を追って解説します。

1.目的設定

インサイドセールス立ち上げにあたって、最初に自社の営業組織における課題を理解しましょう。

進捗が滞っている箇所や改善が必要な項目を整理することで、インサイドセールスを導入する目的が明確になります。

目的が明確になったら、次に進む前に、取り組む商材も決定しておく必要があります。

商材によっては、インサイドセールスの組み込み方やアプローチ方法が異なるため、事前に検討しておくことが大切です。

2.シナリオ設定

目的が決まったら、次はシナリオ設定を行いましょう。

具体的には、リードの育成計画を立て、手元のリードに対してどのような情報提供を行うかを決定します。

インサイドセールスの基本的な目的は、リードに対して、自社の商材に興味を持ってもらうことにあります。

特に、アプローチ対象は慎重に行う必要があります。例えば、展示会やセミナー後の「イベント参加者」や、Webサイトで資料をダウンロードした「見込み顧客」が考えられます。

また、そもそもの集客が不足している場合、見込み顧客を囲いこむためのコンテンツ作成を優先的に考えることが有効となります。

3.運用ルールの策定

シナリオ設定が済んだら、インサイドセールスの運用ルールを決めましょう。

具体的には、「インサイドセールスがどの営業プロセスを担当するか」「具体的にどのような業務を担当するか」といったルールを明確にします。

目的によって、インサイドセールスが担当する営業フローは異なります。基本的には、マーケティング部門からリードを引き継ぎ、温度感を高めてからフィールドセールスに渡すことが役割になりますが、場合によってはインサイドセールスがクロージングまで担当することも考えられます。

また、全てのリードに対してインサイドセールスが営業をかけていては、リソースが足りなくなります。そこで、リードの時点で受注確度で順位付けを行い、インサイドセールスが対応すべきリードの基準を定めておくことも大切になります。

関連記事:リード獲得とは?7つの効果的な見込み客獲得方法を解説!

4.KPIを決定する

インサイドセールスが担当する役割、運用ルールが決まったら、KPIを設定しましょう。

目標達成のために、インサイドセールスが担当すべきと考えられるKPIは、以下のようなものが挙げられます。

・架電数・架電率

・商談化数・商談化率

・受注数・受注率

目的に対して最適化したKPI設定を行いましょう。新規開拓を目的としている場合、アポイント数を追うことも大切ですが、KPIがアポイント数だけになると、質の低いアポイントを量産し、目的を達成することが難しくなります。

加えて、運用開始後にKPIを再度見直すことも重要です。

運用開始後にわかることも多くあり、インサイドセールス部隊自体の熟練度も上がります。そのため、定期的にKPI自体の効果を検証する必要があります。

関連記事:KPIとは?営業のKPI設定方法とKGIとの違いを簡単に解説

5.担当者の確保と配置

前章で解説した通り、担当者の確保はインサイドセールス立ち上げにおいて非常に重要な課題となります。

インサイドセールスは通常の営業よりも多くのリードに接触しますが、基本的にはクロージングは行いません。

そのため、仕事の飲み込みが早く、様々な部門での業務経験を持ち、臨機応変に対応できる人材を採用or社内から選任しましょう。

6.適したツールの選定

インサイドセールスを運用する場合、マーケティングやフィールドセールスとの部門間連携は欠かせません。

つまり、部門間でのスムーズな情報共有の基盤ができていなければいけないのです。

そのため、顧客情報やアプローチ履歴などを一元管理できるSFA、CRM、MAツールなど、運用に適したシステムを導入しなければ失敗してしまうでしょう。

他にも、通話内容の録音や架電業務の効率化ができるクラウド型電話システム、ビデオ通話や画面での資料共有ができるオンライン商談ツール(WEB会議システム)など、インサイドセールスと親和性の高いいろいろなツールを検討してみましょう。

インサイドセールスを機能させるツールについては、こちらの記事内で詳しく解説しています。
関連記事:インサイドセールス徹底解説|定義~組織化・有効なツールまで完全網羅

【参考】SFA(営業支援システム)選定のポイントと活用例

営業組織にインサイドセールスとフィールドセールスを配置する場合、営業部署全体で共通のツールを活用したほうがスムーズです。 そこでおすすめなのが、営業支援システム=SFA。

関連記事:SFAとは?CRM・MAとの違いは?意味・役割・主な機能を徹底解説

リードの基本情報や、どのチャネルから流入してきたのか、インサイドセールスがどのような営業活動をしたのか、そしてどのような反応だったのかという情報を蓄積しておくことができるため、フィールドセールスは商談時に必要な情報を充分に得ることができます。

また、フィールドセールスが商談から受注までの行動履歴も蓄積しておけるため、インサイドセールスは自身が創出した商談の動きを追いかけることができ、フィールドセールスが逐一フィードバックする手間や時間を省くことも可能です。

これらの情報を蓄積しておくことで「インサイドセールスがどのようなアプローチ方法をしたら最終的な受注に結び付くのか」「インサイドセールス担当者によって成果に差はないのか」などの分析にも役立てることができ、数値で成果を把握したりPDCAを回したりすることもできるようになります。

SFA導入をお考えの方は、こちらもご覧ください。 BtoB向けおすすめ営業支援ツール(SFA)10選!企業タイプ別の活用事例

インサイドセールスの立ち上げで失敗しないためのポイント

最後に、インサイドセールスの立ち上げで失敗しないために、意識するべきポイントを解説します。

トークスクリプトやマニュアルを作成する

インサイドセールスを立ち上げる際、実際の会話内容を含めた「トークスクリプト」の策定は必須です。

策定に当たっては、社内の優秀な営業パーソンの会話内容を参考にすることをおすすめします。 しかし、同時にインサイドセールスの本来の目的を見失うことにならないように気をつけましょう。

機械的なアポイント獲得のためにトークスクリプトを利用するのではなく、まずは顧客との信頼関係構築を意識した内容を心がけましょう。

また、顧客からBANT条件をヒアリングすることも重要です。BANT条件とは、Budget(予算)・Authority(決裁権)・Needs(ニーズ)・Timeframe(検討時期)のことで、これらが揃うことで商談が前に進みやすくなります。

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部署間連携を強化する

インサイドセールスは、マーケティングから実際の商談に至るまで、幅広い領域にまたがる業務を担うため、関連部署との緊密な連携が必要不可欠です。

関係者全員で目指す目標や具体的施策の内容について、十分な意識の共有がなされていなければ、思わぬ齟齬が生じかねません。

そうした事態を未然に防ぐためにも、周辺部署との間で事前に綿密な調整を重ねることが肝心です。

スモールスタートを意識する

担当者を増やすかどうかは、インサイドセールスが成果を出し始めた時点で検討すべきでしょう。

実績が伴わない状態で人手を増やせば、後々の軌道修正が困難になり、失敗のリスクが高まります。 インサイドセールスは少人数体制のほうが、PDCAサイクルを回しやすく、効率的な運営が可能です。

インサイドセールスが順調に機能するようになるまでは、小規模な体制から着実に進めていくことで、成功に繋がります。

終わりに|インサイドセールス立ち上げを成功させよう

インサイドセールス立ち上げの際には、今回ご紹介した失敗事例や成功のポイントを参考に、事前に準備をしてから立ち上げましょう。

大前提としてインサイドセールスは他の部署との情報共有や連携が欠かせないため、ツールの導入などの情報共有基盤の整備を検討し、スムーズな運用につなげてくださいね。

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