マーケティングにはさまざまな種類がありますが、中でも「マスマーケティング」という言葉はよく知られています。
マスマーケティングとは、特定のターゲットを絞らず、大多数の消費者に向けて同じ商品・サービスやメッセージを一斉に発信するマーケティング手法です。
近年は顧客一人ひとりのニーズに合わせて施策を設計するセグメントマーケティングやOne to Oneマーケティングが主流になりつつありますが、すべての企業にとってマスマーケティングが時代遅れというわけではなく、市場規模が大きく、購買層が幅広い飲料・日用品などでは今なお有効です。
マスマーケティングで成果を上げるには、商品特性や市場規模、競合とのポジションを丁寧に分析したうえで、最適なメディア選定と一貫したメッセージ設計を行うことが欠かせません。
本記事では、マスマーケティングの概要からメリット、事例やその他手法との違いについて解説します。
この記事の内容
マスマーケティングとは
マスマーケティングとは、属性や趣味嗜好で区分することなく「大衆全体」を対象に行うプロモーション活動です。
日本では高度経済成長期に大量生産・大量消費が進んだことを背景に普及し、テレビをはじめとするマスメディアを通じて商品やブランドを一斉に告知する手法として定着しました。
マスマーケティングの手法と狙い
ますマーケティングの特徴は、不特定多数の人へ一気に情報を届けて短期間で認知を拡大する点にあります。
地域や年代を選ばずアピールできる日用品や食品、生活家電のような「万人向け商材」の販売促進に特に有効で、テレビ CM やラジオ CM、新聞や雑誌の広告、さらには駅構内や繁華街に掲出するポスター類まで、生活導線上のあらゆる接点を活用して購買意欲を喚起します。
マスマーケティングの主な広告媒体
大衆に広く届く広告媒体としては、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌のいわゆる「四大メディア」が代表的です。
テレビは映像と音声を同時に届けられるためブランドイメージを短時間で浸透させやすく、ラジオはながら聴取が一般的なリスナーの耳に繰り返し訴求できる点が強みです。
新聞は長らく高い宅配率を誇り、幅広い世代に情報を届けてきましたが、近年は読者層の高齢化が進んでいます。雑誌はファッション誌やビジネス誌などテーマが明確な分、同じマス広告でも媒体を選べば比較的ターゲットを絞った露出が可能です。
このようにマスマーケティングは、メディアの特性を組み合わせながら「とにかく多くの人の目と耳に触れさせる」ことで認知拡大と売上向上を目指すアプローチと言えます。
マスマーケティングのメリット
マスマーケティングのメリットは、大量生産・販売によるコストダウンなど規模の経済によるスケールメリットです。
リーチできる層が多い
テレビや新聞、屋外広告など複数のマスメディアへ一斉に露出させれば、大量生産・大量販売によるコストダウンが見込めるうえ、同じメッセージを繰り返し届けることで認知を一気に拡大できます。
マスマーケティングではターゲット層を細かく限定せず、できるだけ多くの生活者の目や耳に触れることを重視します。
たとえば自宅で流れるテレビCMで新商品を知り、翌朝の新聞で同じブランドの広告に目を留め、通勤電車の車内や駅前の大型看板でも再びその商品を目にする、こうした複数の接点を設けることで、接触回数を高め、広範囲にリーチできるのが特徴です。
潜在顧客にリーチできる
さらにマスメディアでの大量露出は、当初関心の薄い層に対してもじわじわ効果を及ぼします。
AIDMAの法則で示されるように、人はまず広告に「気づき」(Attention)、次第に「興味」を抱き(Interest)、やがて「欲しい」と感じ(Desire)、その印象を「記憶」に留め(Memory)、最終的に「購買行動」(Action)へ移るという心理プロセスをたどります。
一度の接触では動かなかった潜在顧客も、繰り返し情報に触れるうちに購買意欲が芽生えやすくなるため、市場全体を底上げするアプローチとして有効です。
マスマーケティングのデメリット
マスマーケティングにはデメリットもあります。最大の難点は、商品やサービスが幅広い層に受け入れられる前提でなければ費用対効果が著しく低下する点です。
ターゲットが限定的な商品、あるいは嗜好が細分化された市場ではスケールメリットを発揮できず、投下したコストに対して十分なリターンが得られません。また、新聞やテレビといった従来型メディアから距離を置く若年層にはリーチしづらく、接点自体が限られてしまいます。
多額のコストがかかる
コスト面の負担も無視できません。全国ネットのテレビ CM や一面広告といった大規模枠を確保するには莫大な広告費がかかり、タレント起用や映像制作などクリエイティブ面にも多額の制作費が発生します。
しかも効果を浸透させるには単発では不十分で、複数媒体をまたいで繰り返し出稿しなければならず、投資額はさらに膨らみます。それだけ資金を投じても、必ず成果が出るわけではないというリスクも常につきまといます。
拡散性が低い
さらに、SNS 時代における「消費者が自ら情報を拡散する」という流れを取り込みにくい点もデメリットです。
マスマーケティングは個々の関心やライフスタイルに寄り添ったメッセージではなく、画一的な訴求を広範囲に届ける手法です。そのため「自分ごと化」しにくく、共感を得てシェアされるという拡散効果は期待しづらいのが実情です。
マスマーケティングの事例
マスマーケティングの成功例としては、世界最大のファストフードチェーンであるマクドナルドの戦略が挙げられます。
1955 年にレイ・クロックがフランチャイズ展開を本格化させて以降、同社は「Speedee Service System(早く・安く・同じ味)」という一貫したコンセプトのもと、全世界の外食市場に同じ品質のハンバーガーを大量供給するモデルを築きました。
この戦略の中心には、誰でも気軽に楽しめるベーシックな商品、例えばハンバーガー、フライドポテト、シェイクなどの標準メニューがあります。
商品の浸透を後押ししたのは、テレビ CM・ラジオスポット・新聞広告・屋外看板を一体で運用する大規模なメディアミックスです。
特に 1970 年代の「You Deserve a Break Today」、2003 年から続く「I’m Lovin’ It」などのキャンペーンは、ジングルとキャッチコピーを繰り返し流すことで視聴者の記憶に刷り込み、ブランドと日常生活を結び付ける効果を生み出しました。
広告に加えて、黄色い「ゴールデンアーチ」とドライブスルー併設の路面店舗を主要幹線道路・ショッピングモール・空港など交通量の多い場所に集中出店した点も見逃せません。
看板を見かけた瞬間に「どこにいても同じ味がすぐ手に入る」という安心感が喚起され、テレビやラジオで抱いたイメージが実体験へと自然に転換されました。
こうしてマクドナルドは、短時間で満足できる食事を求める大衆のニーズを一手に引き受け、ファストフード市場で圧倒的トップシェアを確立しています。
その他マーケティング手法
万人を相手に一斉訴求するマスマーケティングに対し、顧客層を絞って成果を高める手法も存在します。
代表的なのが「ダイレクトマーケティング」と「ターゲットマーケティング」です。
ダイレクトマーケティング
ダイレクトマーケティングでは、企業が保有する顧客データや外部リストを活用し、選別した一人ひとりへ直接アプローチします。
DM・Eメール・電話などで直接コミュニケーションを取ることで、購買履歴や属性に合わせた個別提案が可能になり、応答率や成約率の向上が期待できます。
マスマーケティングが大勢へ同じメッセージを放つのに対し、こちらは顧客と一対一の関係を築きながら販促を行う点が大きな違いです。
ターゲットマーケティング
ターゲットマーケティングは、市場を年齢・性別・趣味・ライフスタイルなどで細分化し、自社と親和性の高い層だけを狙って訴求する方法です。
消費者の嗜好が多様化した現在、万人受けを狙うよりも、ニーズが明確なセグメントに的を絞ったほうが費用対効果を高められます。SNS広告のように属性や興味関心を細かく設定して配信できる媒体は、
こうした絞り込み戦略と相性が抜群で、大企業はもちろん限られた予算の中小企業にも有効です。
このように、マスマーケティングが「広く浅く」なのに対し、ダイレクトマーケティングとターゲットマーケティングは「狭く深く」顧客と向き合うアプローチと言えます。
終わりに
大量生産・大量消費が主流だった高度成長期に広まったマスマーケティングは、現在でも幅広い層に支持される商品やサービスでは依然として力を発揮します。
ただし、価値観が細分化した現代では、万人向けの訴求だけでは取りこぼしが生じがちです。
マス広告で大きな認知を確保したうえで、年齢・地域・業種などの属性に応じたセグメント型施策やパーソナライズ施策を組み合わせることで、より高い成果を狙えます。

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