「戦略無き戦術に勝利無し」と言われるように、営業戦略・営業戦術を考えることはとても重要です。

しかし、戦略が不十分なまま戦術で何とかしようとしているケースも、実は多いように感じています。戦略を実現するための手段が戦術であるので、戦略について熟考しない=目指す先を見失うことになってしまうでしょう。

そこで今回、営業戦略を立てることがなぜ重要なのか?営業戦略の立て方と営業戦術との違い、具体的な営業戦略のフレームワークや分析手法を中心にご紹介いたします。

特に経営者やマネージャーが必要なことは「戦術」ではなく、まず「戦略」を決めることです。

是非ご一読ください。

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営業戦略とは?

営業戦略とは?

営業戦略とは売上向上や市場のシェアを拡大するなど、利益目標を達成するための戦略(計画)を意味します。

また、競合に対して自社がどのポジションを取りに行くのか?つまり、ポジショニング戦略やブランディング戦略も含まれます。

例えば、H&Mを抜き去り時価総額がアパレル業界世界2位になったユニクロでは、トレンドを追うのではなく、値段に対する製品の質や機能性を追求していくことで売上を伸ばしてきました。

そのため、ユニクロの製品はトレンドに左右されやすい奇抜なデザインのものは少なく、シンプルなデザインのものが多くなっています。

目標を決め、その実現のために何をどのように進めていくのか?を中長期的に考えなければなりません。

また、戦略的に営業するには、本記事でもご紹介する「フレームワーク」を活用するのも1つです。

営業戦略と同義の言葉に「販売戦略」があります。詳細はこちらの記事内で解説していますので、合わせてご覧ください。

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営業戦術とは?

営業戦術とは営業戦略を達成するための手段で、戦略に沿ってどのように、どのようなやり方で進めるのかといった具体的な手法のことです。

どんなに優れた戦略であっても、戦術が乏しければ目的を達成することは難しくなります。

具体的な事例では、低価格戦略に従い「激安」と強調したチラシを地域に配付したり、高価格戦略に従い、富裕層向けの媒体に広告を出したりすることです。

目標とする戦略が決まったら、その実現のために何をどのようにするのかを考えなければなりません。

例えば、その目標を達成するために、低価格戦略をとるのか、富裕層をターゲットとした高価格戦略をとるのかといったことも含まれます。

ユニクロでは「機能性の追求」という目標を達成するために、テーマを持った製品作りを一貫して行いました。

手触りや通気性に特化したエアリズム、軽さと保温性を追求したウルトラライトダウンなどはそのいい例です。

営業戦術は中短期の視点に立って、同じ戦略の下で一つの戦術が思うような結果を出さなかった場合、別の戦術に変更するなど柔軟性も必要となります。

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営業戦略と営業戦術の違い

Wikipediaによると戦略(英:Strategy)とは、『特定の目標を達成するために、長期的視野と複合思考で力や資源を総合的に運用する技術・科学である。』とされています。

つまり、目標を成し遂げるために、もっとも効率の良い方法を考えることが戦略です。

対して戦術(英: Tactics)は、『作戦・戦闘において任務達成のために部隊・物資を効果的に配置・移動して戦闘力を運用する術である。』とされています。

つまり、目標を成し遂げるために戦略(Strategy)に基づいて、現時点で保持しているリソースを最適に割り当てることが戦術です。

戦術は戦略の一部となりますので、戦略なき戦術はありえません。

全体の戦略がしっかり固まっていなければ、どんなに戦術が優れていてもその効果を最大限発揮することは難しくなります。

営業戦略の立て方5つの手順とポイント

営業戦略の立て方5つの手順とポイント

では次に、具体的な「営業戦略の立て方」について紹介していきます。

営業戦略を立てるには、

  1. 目標を設定する
  2. 見込み客を獲得する
  3. 見込み客を育成する
  4. クロージングする
  5. 顧客を維持する

の5つのステップ(手順)を踏まえて考えることが重要です。

それぞれポイントを見ていきましょう。

1. 現状の課題を把握し、目標を設定する

目標とは、自社が中長期にわたって描くビジョンです。

例えば、営業目標は数年後の自社の売上、粗利率、顧客人数など各目標を数字で表します。

目標が無い場合、次の項目以降で説明する内容を実施しても思うような結果が出せなくなるでしょう。

なぜなら、自社のこれから進むべき道がわからなくなるからです。

目標を立てたら、達成度を評価するためにKPI(Key Performance Indicator)という指標がよく利用されています。

具体的には、営業戦略で立てた目標のゴール地点まで現状どれくらい近づいているのか?を知るための指標です。

関連記事:KPIとは?営業のKPI設定方法と実際に使える営業活動の5つのKPI

目標は立てたら立てっぱなしではなく、進捗を評価して把握する。時には軌道修正するといったPDCAサイクルによる評価と改善によって営業戦略の見直しを定期的に実施します。

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営業組織の到達度診断シート

しかし、多くの企業の目標設定には数字的根拠が欠如しているケースも見受けられます。

その原因としては仕事の見える化がなされていないことが考えられるでしょう。

営業マネージャーであれば、最終的な売上はわかるけれど途中経過を可視化できていないために、根拠なき数値目標設定をせざるを得なくなってしまいます。

そのため、SFACRMといった営業プロセスの途中経過を可視化するツールを用いることで、目標達成のボトルネックとなっている部分を特定することが必要となってくるのです。

自社の課題を把握し、適切な戦略の根拠をたてられたならば、あとは戦略に沿った戦術を選び、実行するだけです。

会社の売上向上がうまくいかない理由がヒアリングにあると分かったならば、ロープレ強化や、顧客の想定される悩み事を社内で共有してみたり、ヒアリング項目を統一するなどの戦略を講じることができます。

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2. 見込み客を獲得する

新しい顧客を獲得するには自社商品のことを知ってもらい、興味を引き寄せ、そして名刺交換など、何らかのコミュニケーションを通じて見込み顧客リストを作成しなければなりません。

そのため、見込み客を獲得する方法としては下記2つが考えられます。

  1. 自社から顧客にアプローチしていく(アウトバウンドマーケティング)
  2. 顧客から自社にアプローチしてもらう(インバウンドマーケティング)

①はいわゆるアウトバウンドマーケティングであり、リストを作成して電話をかけたり、飛び込みで営業したりという戦術がこちらに当たります。
①を効率よく進めていくには、

  • 効率の良い訪問ルートを作成する
  • 自社製品の潜在顧客となりそうな企業をリストアップする

などの施策が考えられます。②はインバウンドマーケティングを指します。

リスティング広告を出したり、オウンドメディアに記事を掲載することで顧客情報を得ようとする戦術はこちらに分類されます。

②を進めていく上では、

  • リスティング広告で出しているキーワードリストを再検討してみる
  • メディアに掲載中のコンテンツやebookがページ訪問者にとって有用なものとなっているのか検討し、改善していく

といった対応が大切になってきます。

また、アウトバウンドマーケティングとインバウンドマーケティングでは獲得に向いている見込み顧客の属性が違うことに気を付けましょう。

一般にアウトバウンドマーケティングは、インバウンドでは獲得が困難な未開拓マーケットや大企業へリーチする際のフックとなります。

ここが、アウトバウンドのインバウンドに対する強みであるといえるでしょう。

そのため、今までリーチできていなかったマーケットにリーチしたいときには、アウトバウンドマーケティング強化という戦略を立てるのがよいでしょう。

それに対し、インバウンドマーケティングは自社が対象としているマーケットの顧客を効率よく集めることができます。

これは、顧客自らコンテンツや導入事例を通して自社に興味を抱いてくれるからです。

そのため、自社製品が対象としているマーケットでの販売シェアを上げたいならば、インバウンドマーケティングを強化するという戦略をたてることが有効になってきます。

インバウンドで獲得した見込み顧客を効率よくさばいていくためには、テレアポを専門とし、機動力のあるインサイドセールス部門(内勤部門)を設けるなどの対応も必要となってきます。

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3. 見込み客を育成する

マーケティング施策によって、仮に見込み客になったとしても、すぐに商品購入に至るとは限りません。

特にBtoBビジネスの場合は、成約に至るまでの期間がBtoCビジネスに比べて長くなってしまう傾向にあります。

そのため、見込み客は「育成」する必要が出てくるわけです。

見込み客の育成の段階では、見込み客の悩みや課題、ニーズを探り、まず導入検討をしてもらうことが重要です。

そのための方法としては3つあります。

  1. 自社のことを信頼してもらうこと
  2. お客様の課題とニーズを把握すること
  3. 購入を検討してもらうこと

一方的な情報提供ではなく、信頼関係を作りながら最終的に購入検討まで段階を踏んでもらうことが重要です。

尚、見込み客を育成することはリードナーチャリングとも呼ばれます。

リードナーチャリングの具体的な方法はこちらの記事内で解説していますので、ご覧ください。
関連記事:リードナーチャリングとは?意味や手法・リードジェネレーションとの違いを解説

4. クロージングする

クロージングは実際に売り込みをするフェーズとなりますので、提案型の営業では特に重要です。

そのため、お客様のニーズを把握した上で課題を解決する「ソリューション」型の営業が求められます。

クロージングですべきことは、自社の商品やサービスを実際に売ることです。

関連記事:営業のクロージングとは?クロージング率を高める10の方法

5. 顧客を維持する

商品を買ってもらったら顧客との関係が終わるわけではありません。

「売りっぱなし」にするのではなく、商品を使ってもらってみてどうだったか、課題は解決したのか、改善点はないのかなど、次のアクションに繋がる課題を見つけ出し、提案へと繋げていく必要があります。

  1. 顧客満足を高め自社のファンになってもらうこと
  2. 今の課題を把握して次の提案に繋げ、購入してもらうこと

繰り返しますが、営業戦略は「どうやってやるのか?」ではなく、「何をしなければならないのか?」を常に考えなければなりません。

以上の5つのステップを参考に、何をしなければならないのかを考えて営業戦略を決めていきます。

関連記事:リテンションマーケティングとは?その効果と具体的な施策から学ぼう

営業戦略立案のための5つのフレームワーク

営業戦略を立てるためのフレームワーク

営業戦略を立てるためには、既に確立されているフレームワークを活用するといいでしょう。

ここでは、一般的にも有名なフレームワークを5つ紹介します。今回ご紹介するのは

  • 3C分析
  • 4P分析
  • SWOT分析
  • ランチェスター分析
  • パレートの法則

の5つです。

尚、営業戦略を立てるための分析方法やフレームワークはこちらの記事の中でも詳しく紹介しています。

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①3C分析

3C分析とは、Customer(市場、顧客)、Competitor(競合)、Company(会社)の3つの頭文字をとる形で名付けられた分析手法(戦略設計手法)です。

あらゆる戦略立案のフレームワークの中で、最も有名なのが3C分析と言って良いでしょう。

戦略を立てる際に考えるべき項目を3つに絞れるという意味でも、3C分析は便利な戦略立案手法です。

営業やマーケティング活動では、まずCustomer(顧客)を徹底的に理することが戦略立案の始まりです。

顧客理解なしに、競合とどう差別化するかを考えても、ビジネスが間違った方向に進みかねません。

顧客を理解した上で、Competitor(競合)、Company(自社)の理解を深め、良い戦略を作っていきましょう。

尚、3C分析を始めて行う場合は、便利なテンプレートを活用すると良いでしょう。

②MECE

MECE(ミーシー)とは、Mutually(相互に)Exclusive(重複せず)Collectively(全体的に)Exhaustive(漏れなく)の頭文字をとったものです。ロジカルシンキングの手法の1つとしても有名です。

漏れなく、ダブりのない営業戦略を立てる上で活用できる思考法とも言えるでしょう。

例えば、何らかの営業課題があった時に複雑かつ大きな課題感のまま解決策を模索するのは得策とは言えません。

課題に対する解決策を考える際は、課題が大きく複雑であればある程、課題を小さく因数分解し、よりシンプルな形にまとめることが重要です。

この時に、MECEつまり「漏れなくダブりのない」要素に因数分解し、解決策を考えていくわけです。

具体的なアプローチの方法は「トップダウンアプローチ」と「ボトムダウンアプローチ」と呼ばれる2つのアプローチ方法があります。

基本的にはトップダウンアプローチで因数分解しながら解決策を出していきます。

けれども、新たな領域や未知の領域などに進出する際は、まずボトムアプローチを試し、その後トップダウンアプローチで修正を加えながら進めるのも有効な方法です。

③SWOT分析

SWOT分析はStrength(強み)Weakness(弱み)Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取って名付けられた戦略立案方法です。

ビジネスにおいて戦略を立てるためには、内部環境だけでなく外部環境を含めて正しく把握、分析することが必要になってきます。

自社内の強み、弱みは何か(内部環境要因)?業界のトレンドや競合の動きはどうなのか(外部環境要因)?を把握し、分析することで、自社の戦い方を定めることが目的です。

Opportunity(機会)とStrength(強み)に注力するだけでも、競合との差別化を図った上で、自社の強みを活かした戦略が立てやすくなります。

関連記事:SWOT分析とは?事例や分析手法をわかりやすく解説

④ランチェスター戦略

ランチェスター戦略とは、元々は戦争時の戦略立案の際に使われたものです。今ではビジネスシーンで応用され、ビジネス戦略としても定着しています。

ランチェスター戦略には第一法則、第二法則が存在し、第一法則は、伝統的な一騎打ち・局地戦・接近戦です。戦闘力は「武器効率×兵力数」というシンプルな計算式で成り立ちます。

第二法則は広域戦を想定しています。広域戦の場合、戦闘力は「武器効率×兵力数の二乗」です。

ランチェスター戦略は特に「弱者の戦略」として有名であり、業界の2位以下の企業が上位競合をミートする際に使用される戦略です。

もちろん、業界1位は更なる市場シェアを獲得する際にも使われます。

ランチェスター戦略についてはこちらの記事内で詳しく解説しています。
関連記事:ランチェスター戦略とは?基礎知識と成功事例紹介

⑤パレートの法則

パレートの法則は「80:20の法則」とも言われており、ビジネスシーン以外でも使われているため有名な法則(戦略)です。

例えば、ビジネスシーンでは「全体の売上の80%(8割)は20%(2割)のお客様の売上で構成されている」と言われることがよくあります。

パレートの法則を営業で活用するのであれば、既存顧客の中でも売上貢献している2割に集中して追加提案を行うこともできるでしょう。

いずれにしても、既存顧客全員にアプローチするよりも、パレートの法則に基づいて、リソースを集中投下した方がビジネス上のインパクトは大きくなるのは確かです。

ただし、パレートの法則は経験則から確立された法則です。全体の2割が売上の8割に貢献していたとしても、残り8割をないがしろにして良いわけではありません。

営業戦術の立て方

営業戦略を決めたら次に戦術です。

目標を達成するためにどのような「手段」がよいか選択します。

自分が、あるいは会社ができないことを手段とすることはできません。

今までやってきたことを考え、その中から手段を選択します。

ただし、やったことがない手段であっても、そちらの方が確実で効率が良いということであれば、その手段を選択します。

SFAを用いるなど、適切な戦術を把握する

戦術を決めるときには、「目的」を常に意識することが重要です。

会社の経営規模を拡大するための戦略として、「認知拡大」を掲げたならば広告代理店と話し合ってCMを流したり、マーケティング部門の予算を上げてネット広告を出すというのが正しい戦術でしょう。

「営業力強化」を戦略に掲げたならば、営業の引き抜きや採用の強化など即戦力獲得のための動きや、仕事の生産性向上のためウェブ会議ツールやSFAを導入することが正しい戦術となります。

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PDCAサイクルの回し方

戦略の際にも出てきましたが、戦術に関しても適切なKPIを設定する必要があります。

KPIを設定したら、そこに対する進捗状況を追っていき、ボトルネックになっている部分の改善施策を打っていきましょう。

KPIを用いて営業マネジメントをする場合、データを残して可視化できるツールを用いてマネジメントすることが重要です。

▶︎▶︎SFAとMA連携によるPDCAサイクル高速化の実現〜Mazrica Sales (旧 Senses) × Marketo~

KPIを設定した後のPDCAの回し方については、こちらの記事内でも解説していますので、合わせてご覧ください。
関連記事:効率的にPDCAサイクルを回す3つのコツを紹介

おわりに|適切な営業戦略を立てて売上増加を

企業において目標を達成するためには、営業戦略と営業戦術を適切に立てる必要があります。

この際、ブレのない営業戦略と一貫性を持った営業戦術を立てることが重要になります。

さらに、PDCAサイクルを回して常に「改善」を意識することも必要です。

今回紹介した内容を全て一気にやることは難しいかもしれませんが、やれると思った所から具体的に行動に移してみてください。

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Mazrica Business Lab.はクラウドアプリケーションMazricaの開発・提供を展開する株式会社マツリカが運営するオウンドメディアです。営業・マーケティングに関するノウハウを中心に、ビジネスに関するお役立ち情報を発信しています。
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