精度の高い営業戦略は、自社の営業課題を解決し業績向上につながります。しかし「営業戦略をどう策定したら良いのかわからない」という人も多いのではないでしょうか。
そのような人にはフレームワークの活用がおすすめです。
本記事では営業戦略策定に活用できるフレームワークを10選紹介します。フレームワークにより自社や顧客についての理解を深め、営業戦略の精度を高めましょう。
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この記事の内容
フレームワークとは
フレームワーク(framework)とは「枠組み」「構造」などと訳すことができる言葉で、ビジネスにおける課題解決や意思決定などをスムーズにするために用いられる思考・分析のテンプレートです。
ビジネスにおけるフレームワークでは「3C分析」「SWOT分析」などが有名ですが、日常的に使われている「5W1H」の考え方もフレームワークに当てはまります。
フレームワークには多様な種類があり、それぞれ分析内容や方法が異なります。そのため目的に合わせたフレームワークを採用しなければ成果につながりません。
ちなみにIT分野で使われる「フレームワーク」には、別の意味があります。アプリケーションやシステムの開発の際、プログラミングのベースとなるものをフレームワークと呼びます。
フレームワークを土台にすることで、開発の工数を削減して効率的な開発を実現することが可能です。
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営業戦略にフレームワークを使用するメリット
フレームワークはビジネスのさまざまなシーンに活用されます。
営業戦略を立案する際にも、フレームワークの活用は有効です。
それでは、なぜ営業戦略立案にはフレームワークが効果的なのでしょうか。それには主に以下の理由があります。
営業戦略を素早く立てることができる
フレームワークの活用により効率的に営業戦略を立てることができ、戦略実行までの時間を短縮できます。
「営業戦略を立てなさい」と言われても、何をどう考えたら良いのかわからないと、策定までに時間がかかってしまいなかなか実行に移せません。また内容についても、方向性が定まらない漠然とした営業戦略になってしまいます。
一方、フレームワークを活用すれば自社の現状を把握したり課題を洗い出したりする作業が効率化し、自社の進むべき方向性も定まります。営業戦略を策定するための時間も削減され、スピーディに実行に移せるでしょう。
関連記事:営業戦略の立て方とは?5つの分析フレームワーク・戦術との違いを紹介
課題発見が容易になる
営業戦略は自社の課題を改善し、業績を向上させていくためのものです。しかし社内にいると主観的になってしまい、自社の課題についてなかなか見つけられません。
たとえば「新規獲得に苦戦している」という悩みがある場合、理由は「営業人員が不足している」「商材が時代のニーズにマッチしていない」「競合他社に取られている」など、さまざまなものが考えられます。またそれぞれの原因が絡みあっているケースもあるでしょう。
そこでフレームワークを活用して現状を把握し、それぞれの要素を整理でき、スムーズに根本的な課題を発見できます。
売上分析にもフレームワークを用いることで、いち早く課題を発見することができます。
【関連記事】売上分析とは?7つの手法・フレームワークと分析ツールを紹介!
営業戦略と営業戦術の違い
フレームワークは「営業戦略」の策定に有効な手法です。そもそも営業戦略とは、「目標を達成するために中長期的に取り組む基本的な計画」を指します。
そして営業戦略と混同されやすい言葉に「営業戦術」があります。営業戦術とは「営業戦略を実行するための具体的な取り組み方」です。
たとえば「新規開拓数を増やす」という営業戦略があるとすると「テレアポを毎日〇件する」「毎週〇件の新規訪問をする」といった施策が営業戦術となります。
「戦略なくして戦術なし」と言われるように、営業戦略は現場を動かすために重要な役割をもちます。
営業戦略をベースにして営業戦術を実行するという関係性がある以上、営業戦略はフレームワークを使って効率的に策定しなければ、ビジネスのスピード感に乗り遅れてしまう可能性もあるのです。
ビジネスにおける戦略立案については、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:
営業戦略立案に役立つフレームワーク
フレームワークには複数の種類がありますが、営業戦略で活用できるフレームワークを10通り紹介します。
営業で活用できるフレームワークは、こちらの記事内でも詳しく解説しています。
関連記事:営業準備・商談の事前準備で使える4つの営業フレームワークとは?
1.3C分析
3C分析は、以下の3つの要素を分析することで自社の現状やビジネス環境を把握するフレームワークです。
- Company(自社):自社の業績や強み・弱みを把握し、
- Customer(市場/顧客):自社の顧客層を分析し、市場ニーズを把握する
- Competitor(競合):競合他社の商材や業績を分析し、自社が劣っている部分を見つける
3C分析により自社を取り巻く状況を把握し、営業戦略に活かします。
マーケティングでよく使われるフレームワークですが、営業戦略策定時にも活用できる手法なので覚えておきましょう。
マーケティング戦略を策定する際のフレームワークは、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:マーケティング戦略とは?立案の手順とフレームワークを解説
2.SWOT分析
自社の現状把握には、SWOT分析も役立ちます。
SWOT分析とは、以下の4つの要素を分析して自社の課題や立ち位置を把握します。
- Strength:強み
- Weakness:弱み
- Opportunity:機会
- Threat:脅威
それぞれ、内部環境と外部環境、さらにプラス要因とマイナス要因に分けられます。
- Strength:内部環境/プラス要因
- Weakness:内部環境/マイナス要因
- Opportunity:外部環境/プラス要因
- Threat:外部環境/マイナス要因
この4つの要素を軸にして、自社が置かれている状況を内外の視点から分析します。
自社分析では自社の強みや弱みの視点が強くなりやすく、自社ではコントロールが難しい外部環境については後回しになりがちです。
そこでSWOT分析により外部環境を把握しておくことで、思わぬ事態が起きるまえに対策を考えておくことができるのです。
【関連記事】SWOT分析とは?事例や分析手法をわかりやすく解説
3.TOWS分析(クロスSWOT分析)
SWOT分析から派生したTOWS分析は、クロスSWOT分析とも言われるフレームワークです。
内部環境/外部環境とプラス要因/マイナス要因それぞれを、以下のように掛け合わせて分析します。
- S×O(強み×機会):自社の強みを活かした機会創出を考える
- S×T(強み×脅威):自社の強みを活かして脅威への対処方法を考える
- W×O(弱み×機会):自社の弱みを補完して機会損失を防ぐ方法を考える
- W×T(弱み×脅威):自社の弱みを補完して脅威を最小化する方法を考える
一つひとつの要素をクロスさせて分析することで、それぞれのつながりが明確になり成果を最大化する方法が見つかります。
4.4P分析
4P分析は自社商材を軸にして営業戦略を考える手法です。4Pは、それぞれ以下の4つの要素を指します。
- Product(商品・サービス)
- Price(価格)
- Place(流通・チャネル)
- Promotion(プロモーション方法)
たとえば新サービスをリリースした際、そのサービスをどのように広めていくのかという戦略を策定するとき、以下のように4P分析を活用します。
- Product:リリースした新サービス
- Price:リリースから半年間は初期費用を0円にする
- Place:ディスプレイ広告とSNS広告をメインにしたWEB広告
- Promotion:インサイドセールスを配置して、WEB広告経由の問い合わせにスピーディに対応する
上記は一例ですが、このように具体的に施策内容を考えるときにも活用できるフレームワークです。
5.STP分析
STP分析は、以下の3つの要素からターゲットとなる顧客と自社の立ち位置を明確にし、ほかのさまざまな戦略の土台を構築するフレームワークです。
- Segmentation:市場の顧客層を属性やニーズによって細分化する
- Targeting:セグメントした市場のなかから、自社のターゲットとなる層を抽出する
- Positioning:ターゲットとなる市場のなかで、自社の立ち位置を明確にする
ペルソナ設計や立ち位置の明確化により、自社のリソースを注力すべき市場を見つけ出したり競合に打ち勝つための方法を考えたりする際に使われます。
6.PEST分析
自社を取り巻くマクロ環境を分析するにはPEST分析がおすすめです。PEST分析は、以下の4つの要素を分析します。
- Politics:政治
- Economy:経済
- Society:社会
- Technology:技術
新型コロナウイルス流行により、自社ではコントロールが困難な外部環境がいかに経営に影響するかを実感した企業は少なくないはずです。
また世界的に情勢が不安定で、いつ何が起きるかわからない時代になっています。
このようななかで自社を取り巻くマクロ環境についての理解は、リスクヘッジの意味合いでも効果的です。
ただしマクロ環境は変化が激しいため先々の予測は難しいので、こまめに検討する機会を設けることが重要となります。
7.VRIO分析
VRIO分析は経営資源の視点で分析するフレームワークです。
- Value(経済的価値):市場や社会に対してどのような価値を提供しているか
- Rarity(希少性):自社の経営資源にどのくらいの希少性があるのか
- Imitability(模倣可能性):自社の経営資源を他社が模倣できるか
- Organization(組織):自社の経営資源を活かすための組織体制は構築されているか
VRIO分析では、自社の視点で分析をしなければいけません。
特定の経営資源を外注している企業もありますが、外注は失ってしまう可能性があるため外部リソースは削除して考えましょう。
8.ロジックツリー
ロジックツリーとは、課題の原因を追究するための論理的思考法です。
それぞれの要素を分解して紐づけて考えていくことで枝分かれした樹木のようなかたちになるため「思考の木(ロジックツリー)」という名称がつけられています。
たとえば「売上が向上しない」という課題について考える場合、要素として「顧客単価が低い」「新規開拓数が少ない」「継続率が低下している」などが挙げられます。
そしてそれぞれの要素をさらに分解して原因要素を追求していくと、本質的な課題に気づくことができます。
9.バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは「Value=価値」「Chain=連鎖」という意味から、商材の製造から顧客の元に届くまでのプロセスのうち、価値がどのように連鎖していくのかを分析するフレームワークです。
企業活動を「主活動」と「支援活動」に分け、それぞれについて分析します。
各活動のプロセスにおいて、どのフェーズが大きな価値を生み出しているのかを明確にし、自社の課題把握や強みへのリソース集中などにつなげます。
モノの連鎖となる「サプライチェーン」と似ていますが、バリューチェーンは価値に重点をおいた分析である点、企業活動を分ける点が異なります。
10.ファイブフォース分析
ファイブフォース分析(5フォース分析)は、フォースつまり脅威を分析し、自社のリスクとなり得る要素を把握する方法です。
ファイブフォース分析の対象となる5つの脅威とは、以下の要素です。
- 新規参入者の脅威
- 売り手(サプライヤー)の交渉力
- 買い手(顧客)の交渉力
- 既存市場内での競合他社の脅威
- 代替品(異業種の他社製品)の脅威
この5つの要素は、同業界内での競合他社を中心において、4つの要素が中心へと向かい作用している関係性です。
それぞれが相互にどう関わり合うのかを分析し、事前に脅威への対策を取ることができるのです。
営業戦略にフレームワークを使う際の注意点
営業戦略の策定にはフレームワークの活用がおすすめですが、むやみに使っても成果を得られません。以下の注意点を意識して取り組みましょう。
フレームワークを用いた営業の業績改善についての記事もご参考ください。
関連記事:営業の業績改善・業績向上とは?強い営業組織を作るための4つの条件と成功のポイント
複数のフレームワークを組み合わせて使う
フレームワークは一つだけ実行しても、一方向からしか分析ができないと考えましょう。
多面的に分析しなければ、自社の置かれている状況や課題には気づけません。
本質的な部分まで分析するには、複数のフレームワークを組み合わせて分析することで、あらゆる視点から物事を見ることができます。
複数のフレームワークを使うときは、関連性の高いもの同士で組み合わせましょう。
同様の目的のフレームワークであれば、矛盾が生じにくくなります。
戦略作りに時間をかけすぎない
複数のフレームワークを使う際に注意したいのが、戦略策定に時間をかけすぎないことです。
多面的に分析すると自社についてより詳しく把握できますが、情報が多すぎて戦略を考えるのに時間がかかってしまいます。
効率的に戦略策定をするためのものなのに、かえって非効率になりかねません。
分析を戦略に繋げる
よくある失敗例に、フレームワークをしただけで満足してしまう例があります。
フレームワークによる分析のみでは課題を発見できただけにすぎません。
分析結果から導き出した内容を改善するという強い意志をもち、営業戦略に落とし込みましょう。
上手くいかない場合は試行錯誤を続ける
ビジネスでは何事もPDCAサイクルが大切ですが、営業戦略立案の際にも当てはまります。
戦略を策定して実行に移してもうまくいかない場合もあるので、そのときには柔軟に戦略を見直しましょう。
しばしば、自社の目的とは異なるフレームワークを選択してしまっている例も見られます。採用したフレームワーク自体が自社の目的とかけ離れていないか、今一度見直すと良いでしょう。
フレームワークを活用する目的を忘れない
フレームワークを行うことが目的となってしまう例も、時おり見られます。
しかしフレームワークが目的なのではなく、営業戦略策定を目的としてフレームワークを活用します。
目的がブレてしまうと、せっかく精度高く分析できた内容も無駄になりかねません。
目的を忘れずに取り組みましょう。
ビジネスモデルの分析を行いたい場合は、以下の記事のフレームワークを使ってみてください!
【関連記事】ビジネスモデルとは?企業分析・理解で使える4つのフレームワークを解説
その他:営業戦術に活用できるフレームワーク
ここまでフレームワークを活用した営業戦略策定について紹介してきましたが、営業活動の実行(営業戦術)にあたっても活用できるフレームワークがあります。
営業現場で活用できるフレームワークを紹介します。
11.BANT
営業のフレームワークとして有名なのがBANTです。
ヒアリングの際に必ず聞くべき項目としてBANT情報が挙げられます。
- Budget:予算
- Authority:決済権
- Needs:ニーズ・需要
- Time frame:導入時期
予算規模を把握しなければ、見積もりや最適なプラン提案などが難しくなります。
また決裁権をもつ人物や決済プロセスについても理解しておけば、今後どのようにアプローチしていくのか道筋を立てやすくなるでしょう。
ニーズについては、危急に必要なものでなければ後回しにされてしまう可能性があるため、確認しておく必要があります。
今すぐ必要ではないと言われたら、お客さまがまだ気づいていない潜在的な課題を指摘してニーズを掘り起こしたり、時期を改めて再度アプローチをしたりするなどの対策が求められます。
また決断を先延ばしにされないよう、具体的なスケジュールを提示しましょう。お客さまも導入後のイメージが明確になり、購買意欲が高まります。
関連記事:BANT条件とは?法人営業が知っておきたいヒアリング手法
12.MEDDIC
BANTよりも詳しくお客さまについて理解するには、MEDDIC情報をヒアリングしましょう。
それぞれ以下の要素になります。
- Metrics:測定指標
- Economic Buyer:決裁者
- Decision Criteria:意思決定基準
- Decision Process:意思決定プロセス
- Identify Pain:課題
- Champion:擁護者
これらすべての要素をヒアリングにより明らかにすることで、効果的なアプローチ方法を考えられて成果を出しやすくなります。
13.FABE分析
商談での提案の際に役立つのがFABE分析です。
- Feature(特徴):今回の提案の特徴
- Advantage(優位性):他社製品と比較した際の優位性
- Benefit(便益):お客さまが得られるメリット
- Evidence(証拠):提案を裏付けるデータ、実績
これらの要素から提案内容を組み立てると、論理的で筋道立った提案を展開できます。
14.DMUマップ
ヒアリングに活用できるフレームワークにDMUマップもあります。
DMUとは「Decision Making Unit」の略で、意思決定に関わる要素を組み込んだものです。
BtoBビジネスでは、意思決定者が複数おり購買プロセスが複雑になります。
そこで意思決定に関わる人物をリストアップしたうえで、それぞれがどのように関係しあうのかをマップ状に書き出すことで意思決定プロセスが整理されます。
営業戦術においても、複数のフレームワークを組み合わせて使う
営業戦術においても、複数のフレームワークを組み合わせることで顧客理解が深まったり提案内容がブラッシュアップされたりする効果が期待できます。
もちろん、営業戦略で紹介したフレームワークも営業戦術に活用できます。
自社の強みや脅威を理解したうえで提案内容を考えれば、他とは差別化した提案を行えます。
終わりに
フレームワークはさまざまなシーンで活用できますが、営業戦略を策定する際にも自社を取り巻く環境を理解するために有効です。
ぜひ今回紹介したフレームワークを参考に、自社やビジネス環境についての理解を深めて営業戦略に活かしましょう。
ただし営業戦略を策定するだけでなく、実行に移し効果を検証していくことも必要です。SFAを活用して営業活動を分析し、営業戦略の精度を高めていきましょう。

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