経営に関わる方は「経営戦略」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。企業経営の上で重要なものだとは理解していながら、どのように立案するのか、わかっていない方も少なくありません。
本記事では「経営戦略を立てたい」「経営戦略の立て方が分からない」という方に向け、経営戦略策定に役立つフレームワークを紹介します。
経営戦略とは?
経営戦略とは、企業が事業目的を達成するための方針や方策を指します。
経営戦略は具体的な一つひとつの施策ではなく、中長期的に見た全体的な方向性です。経営戦略がなければ、企業は軸がない状態なので、進むべき方向を見誤る恐れもあるでしょう。
そのため、優れた経営戦略が必要となるのです。
経営戦略の目的
企業の経営戦略の目的は、限られた経営リソース(ヒト・モノ・カネ・情報)を最適に活用し、事業を推進することにあります。自社の強みと弱みを把握し、リソースを配分し、優先順位を定めることが重要です。
現代では、多くの企業が同じような目標を持ち、競合が激化しています。豊富な商品やサービスが存在する中で、他社に勝つためには差別化が必要です。
経営戦略は、企業が進むべき方向を定め、他社との差別化を図りながら競争優位性を確立する手段となります。
経営戦略の存在は、企業が目標を達成する方向性を示し、競争環境において優位性を築くための枠組みを提供します。
営業・販売・マーケティングなど、現場の目的に合わせて目標を達成するための戦略を立案することも重要です。以下の記事も併せてご覧ください。
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経営戦略策定にフレームワークの活用が有効な理由
経営戦略を策定するには、内部環境と外部環境を分析するためのフレームワークの活用が有効です。
フレームワークを活用すると、自社の課題や方向性を客観的に検討でき、戦略を論理的に構築できます。企業規模や事業内容に関わらず、3C分析、SWOT分析、ファイブフォース分析、VRIO分析など、目的に応じて適切なフレームワークを選びましょう。
フレームワークを経営戦略策定に活用すると、思考時間が短縮され、考えるべき順序が明確になり、適切なアウトプットが得られます。人によって自社に対する認識は異なりますが、フレームワークを使うと、内部環境を一定の指標で分析でき、統一性のある経営戦略を策定できます。これにより、複数人の意見を調整し、客観的でまとまりのある戦略を作ることが可能になります。
経営戦略の作り方
「経営戦略を見直そう」「経営戦略を立ててみよう」と思っても、どのように進めたら良いかわからない方も少なくありません。そこで、経営戦略を策定する手順を解説します。
経営理念・ビジョンの明確化
まずは、自社の経営理念とビジョンを明確化します。
経営理念とは、企業活動において根本となる考え方や信念のことを指します。そしてビジョンとは、経営理念を基盤として、具体的にどのような企業になりたいのかという未来像のことです。
経営理念とビジョンは、経営戦略を策定するにあたって土台となります。まずはこの2つを明確に打ち出し、自社の土台を作りましょう。
現状分析
次は、自社の現状を分析します。経営理念に従っているか、ビジョンに近づいているかを、客観的に分析しましょう。
分析する際には、自社を取り巻く外部環境分析と、自社内についての内部環境分析を行います。社内外に視野を広げると、今まで見えていなかったことも見えてくるでしょう。
また、フレームワークを活用すると、客観的に現状を分析できます。分析に役立つフレームワークは次章で紹介しているので、ぜひご参考ください。
戦略の策定
自社の現状を踏まえ、目標を達成するためにどのような方向を目指すべきかを定めます。
とは言え、いざ戦略を策定するとなると、数パターンの方向性が見えてくる場合もあります。そのときは、戦略を実行した際に予想される結果を仮説立てたり、自社の経営リソースがどれだけあるか洗い出したりすることで、優先すべき方向性が定まるでしょう。
また、経営戦略が適切に推進されているかどうかを判断するため、測定できる指標も設定することをおすすめします。売上や市場シェアなどの定量的な指標を設定しておくと、どのくらい目標に近づいているか判断できます。
戦略の実行
策定した経営戦略を実行していきます。
先述の通り、戦略を実行するための手段が戦術となるので、経営戦略を基にして経営戦術を策定して実行しましょう。
場合によっては複数の戦術を並行しながら進め、経営戦略を推進します。
戦略の振り返り
経営戦略を立てたからと言って、必ずしもその戦略が自社にとっての正解であるかはわかりません。目標へと進んでいるか定期的に振り返り、自社にとって適している戦略か判断する必要があります。
「経営戦略の策定」の際に設定している定量的な指標を基に、経営戦略が推進できているか、成果を測りましょう。
経営戦略の策定に役立つ9つのフレームワーク
経営戦略の策定をどのように進めたら良いかわからない方は、フレームワークを活用しましょう。型にはめて考えることで、抜け・漏れなく、かつ客観的に分析できます。
現状分析や経営戦略策定などに役立つフレームワークを9種類紹介します。
売上分析に役立つフレームワークについての記事もぜひ併せてご覧ください。
関連記事:売上分析に使える7つの手法・フレームワークと分析ツールを紹介!
SWOT分析
SWOT分析は、自社の外部環境と内部環境を分析する際に活用できるフレームワークです。
SWOTとは、分析する各項目の頭文字から取っています。
- Strength:強み(内部環境)
- Weakness:弱み(内部環境)
- Opportunity:機会(外部環境)
- Threat:脅威(外部環境)
各項目を独立させて分析するだけでなく、「強み×機会」「弱み×機会」「強み×脅威」「弱み×脅威」といった
クロス分析することで、より自社について深く理解できます。
関連記事:SWOT分析とは?事例や分析手法をわかりやすく解説
3C分析
3C分析は、以下3つの要素を分析して、自社の現状を把握するフレームワークです。
- Customer:顧客・市場
- Company:自社
- Competitor:競合
分析対象が3つの要素のみなので手軽に実施できるフレームワークですが、各要素を深掘りして分析することで、客観的に現状を把握できます。
VRIO分析
VRIO分析は、自社の経営資源の観点から分析できるため、経営戦略の立案に役立つフレームワークです。
自社の経営資源を以下の4つの項目に沿って「YES」か「NO」で分析します。
- Value:経済的価値
- Rarity:希少性
- Inimitability:模倣困難性
- Organization:組織
すべての項目において「YES」であれば、その経営資源は自社にとっての強みと言えます。逆に「NO」が多ければ弱みとなりえるため、改善が必要です
4P分析
4P分析は、自社商材の販売戦略を考える際に活用できます。
- Product:製品・サービス
- Price:価格
- Place:販売場所・チャネル
- Promotion:販促活動
どの製品・サービスを、どのくらいの価格で、どのチャネルにて、どのように販売するか考える際に活用するフレームワークで、マーケティングにおいてよく使われています。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは、自社を取り巻く5つのForce=脅威について分析する手法です。
- 競合他社の脅威
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手の交渉力の脅威
- 買い手の交渉力の脅威
上記5つの要因を分析し、自社を取り巻く外的環境を把握して自社の立ち位置を明確にします。
PEST分析
経営戦略を立案する際には、自社の業界や市場だけでなく、さらに広い視野で外部環境を分析しなければなりません。そこで役立つのがPEST分析です。
PEST分析とは、以下の4項目からマクロの外部環境要因を分析するフレームワークです。
- 政治的要因(Politics)
市場競争の基盤である「市場競争の規則」そのものに変化をもたらす。
(例: 法律、政府および関連組織の動向、消費者保護、公正競争など) - 経済的要因(Economy)
収益に直結技術的する「価値連鎖」に影響を及ぼす。
(例:景気、価格変動、貯蓄率、為替、金利など) - 社会的要因(Society)
売上の根幹となる消費者の需要構造に影響を与える。
(例: 宗教、価値観、倫理観・社会規範、世論、教育レベル、習俗習慣、ライフスタイルなど) - 技術的要因(Technology)
市場競争の主要成功要因(KSF)を変容させる。
(例: 技術革新、特許、技術のライフサイクル、生産・商品化技術、代替技術など)
自社ではコントロールできない外部要因を分析することで、将来の予測が立てやすくなるでしょう。
STP分析
STP分析とは、以下の4要素を分析してマーケティングに役立てる手法です。
- Segmentation(セグメンテーション):顧客属性(性別・年齢・職業など)や住んでいるエリア、ライフスタイルなどを基準に市場を細分化する
- Targeting(ターゲティング):細分化したそれぞれの市場を事業性や成長性などからニーズを評価し、自社の商品・サービスを売り込むべきセグメントを絞る
- Positioning(ポジショニング):ターゲットセグメントにとって、競合他社には取って代われない立ち位置を決める
市場や顧客をセグメント(まとまりで区切る)し、自社がターゲットとする層を見極め、市場の中で立ち位置を確立するためのフレームワークです。
PDCAサイクル
PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもので、ビジネスや経営戦略を改善する手法です。
経営戦略のブラッシュアップに役立ちますが、新しいアイディアの創出には向きません。PDCAで効果が出ない場合は、元の戦略の見直しが必要かもしれません。
関連記事:PDCAサイクルとは?PDCAサイクルを効率的に回す3つのコツを紹介
7S
7Sとは、企業の経営資源を「ハード」と「ソフト」の7つの要素で分析し、最適な戦略を導くフレームワークです。マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱し、「7S分析」や「マッキンゼーの7S」とも呼ばれます。
- ハードの要素:戦略(Strategy)、組織構造(Structure)、システム(Systems)
- ソフトの要素:スタッフ(Staff)、スキル(Skills)、スタイル(Style)、共有価値(Shared Values)
社員の教育だけでは組織のパフォーマンスは向上しません。システムや組織構造、戦略が整っていることが必要です。7S分析により、これらの要素を評価し、組織の課題を明確にできます。
終わりに
効果的な経営戦略を立案するには、フレームワークを使って外部・内部環境を客観的に分析することが重要です。主観や経験に頼ると、成功や失敗の要因分析が難しくなってしまいます。
また、経営戦略策定においてフレームワークの活用は重要ですが、すべてを手作業で行うと膨大な時間を消費します。そのため、フレームワークによる分析の効率化につながる、MA・SFA・CRMなどのツールの導入がおすすめです。データが自動で蓄積され、分析が効率化されます。これにより、迅速にPDCAサイクルを回し、戦略の改善がしやすくなります。
ぜひ本記事で紹介したフレームワークを活用し、自社の経営戦略策定にお役立てください。
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