PDCAサイクルという言葉を聞いた事がある人は多いのではないでしょうか。
多くの企業では日々業務の改善活動がされており、その中でPDCAサイクルが当たり前のように使用されています。
「今回はPDCAサイクルとは何か?」を改めて考え、効果的にPDCAサイクルを回す方法を紹介します。
この記事の内容
PDCAサイクルとは?
「PDCAサイクル」は業務改善のフレームワークです。
P:Plan(計画)、D:Do(実行)、C:Check(評価)、A:Action(改善)のそれぞれ頭文字をとったもので、PからD→C→Aの順番で実施し再度Pに戻ります。ポイントはただPDCAを繰り返すのではなく、修正や改善を加えながら次の計画に反映することです。
一言で表現するならば、課題に対して解決策を考えて、改善を継続するサイクルと言えます。
関連記事:業務改善とは?改善の進め方と具体例やおすすめツール11選
PDCAサイクルの成り立ち
日本企業にも深く浸透しているPDCAは、1950年代、品質管理研究の第一人者であったアメリカの統計学者ウィリアム・エドワーズ・デミング博士らによって品質を管理・改善する方法として生み出されました。
特に製造業やサービス業などで幅広く使われていた言葉ですが、現在は業種・職種を問わず、多くの企業で使われています。
次項からは改めてPDCAサイクルに関して考えていきたいと思います。
PDCAサイクルの各プロセスにおける実施内容
PDCAサイクルの各プロセスにおいて、具体的に何が行われるのか一つずつ見ていきます。
Plan(計画)
Plan(計画)の段階では、目標を設定し、目標を達成するためには何をするべきか仮説を立てます。仮説を立てる際には、過去の実績や将来の予測などをもとに計画を作成することになります。
計画のポイントとなるのは、5W1H(誰が・何を・なぜ・どれほど・いつまでに・どのように)の明確化と、現実的な目標設定の2つ。
計画の精度を高めるためには、背景となるデータ収集や仮説の策定なども必要です。
Do(実行)
立てた計画を実行することです。次のCheckでスムーズに振り返るため何となく実行するのではなく、結果が見えるように測定したり、数字を記録したりすることが大切です。
さらに、成功した記録以外にも、計画どおりにいかなかったこと、実行で生じた新たな課題も正確に記録しておきます。計画と現実の差を把握するためのものです。
また、ここでの記録は、いくつかの指標を選んで数値化しておくと評価者の主観が入り込まず、客観的な評価を下せます。
Check(評価)
実行した際に残した数字を元に計画に沿った結果が出ているのか判断をします。
計画より実行した結果が良かった場合、何が良かったのか?
計画より悪い結果となった場合、何が要因で悪かったのか?
具体的根拠を付けて評価・検証を行います。
また、なるべく数値を用いた、具体的な評価を行いましょう。一見、数値化できないような項目でも、アンケートや行動に関して発生する数値を用いれば、間接的な数値化が可能です。
Checkの精度が高いほど、Actionにおける改善効果も期待できます。
Action(改善)
検証で何が良くて何が悪いのかの結果に対して改善をします。改善してこのまま計画を続けるのか、それとも計画を止めるのかの判断もAction(改善)の段階で考えます。
改善案では、評価の段階で行った「なぜうまくいったのか」についての検討内容がヒントになります。うまくいった理由から得られる知見を、改善案の検討に活用しましょう。
複数の改善案が提案された場合は、次のサイクルの「計画」を見据えて、優先順位を付けます。優先度の高い改善案から計画に反映させるとよいでしょう。
PDCAサイクルは1周したら完了ではありません。Action(改善)は2周目のPlan(計画)のことも考えて改善策を導きます。
そして、2周3周と続ける都度ブラッシュアップさせていきます。
このように継続的に改善を繰り返す事で成長を続けることができます。
PDCAサイクルを回すメリット
PDCAサイクルを回すと「目標を軸にして現状どうなのか?」ということを常に考えることになります。
目標に対して今順調に進んでいるのか、何が不足しているのか。そして、改善して目標にどう近づければ良いのか仮説を立てます。
PDCAサイクルを回す事で得られる一番のメリットは、目標が明確になることです。日々のルーチンを何となくDo(実行)だけをしていると、当初の目標を見失い違う方向に進んでしまうことがあります。
また、PDCAサイクルで常にブラッシュアップを継続するため、無駄な作業が削られて作業が効率化していきます。
関連記事:営業活動の中でPDCAサイクルが上手く回らない理由と改善方法
PDCAサイクルを回すデメリット
PDCAサイクルには、いくつかのデメリットもあります。
計画と評価に時間がかかり、柔軟性に欠けるため、変化に対応しにくいことがあります。また、形式的にサイクルを回すだけでは実質的な改善につながらず、短期的な成果が見えにくい点も課題です。
さらに、単純なプロセスのため、複雑な問題には不向きで、繰り返し作業によるモチベーションの低下も懸念されます。
PDCAのデメリットに対処するには、サイクルの迅速な回転、柔軟な対応、実質的な成果の重視、適切なリソース配置、そして他のフレームワークとの併用が効果的です。
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PDCAサイクルの失敗要因
ビジネスや日常の場面で活用されることが多いPDCAサイクルですが、使い方を誤ると適切な効果が出ない場合があります。
ここからは、PDCAサイクルの各プロセスで陥りがちな失敗要因を紹介します。
Plan(計画)の失敗要因
計画段階での失敗要因は、目標設定が不明確または非現実的であることが挙げられます。
目標が曖昧であったり、達成不可能だと、その後の「Do(実行)」「Check(評価)」でも十分に効果を出せません。
また、計画を立てる際に必要な情報収集や分析が不十分な場合も失敗要因になります。
誤った仮定や前提に基づいて計画が策定されることになるため、成功可能性が低くなるのです。
Do(実行)の失敗要因
実行段階では、計画通りに行動しないことや、必要なリソースやスキルが不足していることが主な失敗要因です。
計画と実行の間にギャップが生じると、期待した成果を得るのは難しいでしょう。
さらに、コミュニケーション不足やチーム内の協力体制が整っていない場合、実行が非効率になります。
実行中に発生する問題や障害に迅速に対処するためにも、チーム内での連携を深めることが重要です。
Check(測定・評価)の失敗要因
測定・評価段階での失敗は、適切な評価基準や指標の設定が欠けていることが要因となります。
評価基準が明確でないと、成果を正確に把握できず、改善のための具体的な情報を得られません。
また、評価を行うタイミングが遅れると、問題が大きくなってから気づくことになり、修正が難しくなります。
さらに、データ収集の精度や信頼性が低い場合も、正確な評価が行えなくなります。
Action(改善)の失敗要因
改善段階では、測定・評価の結果に基づいた適切なアクションが取られないことが失敗の要因です。
評価結果を無視したり、再び同じミスを繰り返すような改善策を立てると、PDCAサイクルの効果は発揮されません。
加えて、改善策の実施が遅れたり、対策が不十分である場合、問題の根本的な解決には至りません。
関係者の意識改革やスキルアップが欠如していると、同じ失敗を繰り返すリスクが高まってしまいます。
PDCAサイクルを成功させる3つのコツ
上手くPDCAサイクルを回すコツを3つご紹介します。
1.目標を明確に設定する
PDCAサイクルが回せない一番の原因がPlan(計画)の設定の仕方に問題があるようです。何となく「売上げを上げたい」など目標がぼんやりとしていたり、「2週間で売上げを倍にしたい」といったような明らかに現実と理想のギャップが大きかったりしている場合です。
目標自体がぼんやりしているとDoでどのくらい進捗したのか?が数字として目に見えにくいため、CheckやActionに結び付けにくくなります。
1つ1つゴールが想像できるように明確な目標を設定することで、PDCAサイクルを回しやすくなります。
続いて具体例をご紹介します。
優秀な営業Aさんと比べてBさんはアポイントの獲得率が低いです。AさんはBさんのテレアポを聞いて、Bさんが話していることが断りやすいことに気づきます。Bさんが「〇〇といったニーズはありますか?」を聞くとき、顧客からは「ありません」という答えがほとんどです。
Aさんは「ニーズの話は断りやすいからしない方がアポイントの獲得率が上がる」と仮説を立てます。このように具体的な目標、仮説を立てれば、実行と効果検証、要はPDCAサイクルを回すことが簡単になります。
2.目標に対する進捗を定期的に確認する
日々の作業に追われていると目標に対する進捗がどれくらいなのか、つい後回しになってしまいます。
定期的にPlan(計画)に対する進捗を確認して、次の改善策を出すように意識つけることで日々の作業性も向上します。
まとめて後回しにするとPDCAサイクルの回転が少なくなり、その分改善策が少なくなります。毎日帰社する前に、毎週金曜日に、などある程度ルールを決めて、定期的にPDCAサイクルを回すようにしてみましょう。
3.数字として記録に残す
「今期は売上を30%上げる」という目標を立てた場合、最低でも誰が、いつどの金額を受注したかを記録に残すことをおすすめします。
より効率的にPDCAを回すためには様々なデータを管理することをおすすめします。
営業で管理すべきデータについては以下の記事でご紹介しますので、気になる方はご一読してください。
Plan(計画)に対してDo(実行)が例え悪い結果であったとしても、数字として記録に残すようにします。PDCAサイクルにおいて重要なことは「改善をすること」です。
「売上が上がらないから」などの理由で落ち込んで記録を残さないままだと改善することが不可能になります。
そのため、うまくいかなかった場合でもちゃんと記録を残して、次にどうすれば売上げが上がるかを考えることが重要です。
営業活動のPDCAをチーム全体で見える形で残すために活用すべきツールがSFA(営業支援ツール)です。
SFAツールを活用してPDCAサイクルを効果的に回すには、各プロセスで具体的に次のようなものがあります。
- 計画 (Plan): SFAに蓄積されたデータを分析し、具体的な目標と戦略を設定。
- 実行 (Do): SFAで顧客対応を管理し、フォローアップや契約進行を自動化して効率化。
- 評価 (Check): SFAの分析機能を使って進捗をモニタリングし、目標達成状況を評価。
- 改善 (Act): データを基に戦略やプロセスを改善し、成功したアプローチをチーム全体で共有
このように、SFAを使って営業活動を効果的に管理し、成果を最大化できます。
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PDCAサイクルで業務改善に成功した企業の具体事例
PDCAを使って実際に業務改善に成功している企業の事例を紹介します。
最も良く知られているのがトヨタ自動車の事例でしょう。
トヨタ自動車は、業務改善PDCAの「Plan」(計画)として「トヨタ生産方式」を採用しています
トヨタ生産方式では、5W1Hに沿って改善計画を立案します。
5W1Hは一般的なものとは異なり、「Why:なぜ?」を5回繰り返し、最後に「How:どのように?」を考えます。
5回「何故~なのか」と考えることによって、抽象的だった課題や執るべきと行動が明確になり、「無理・無駄・ムラ」を省いた計画立案が可能になります。
つづいて、「DO」(行動)では、プランに沿った重要度と緊急度のバランスの取れたアクションを行っていきます。
必要なときに必要な量だけ停滞せずに車を生産する「ジャストインタイム制」や、異常発生時に連続して不良品を作ってしまわないように機械を自動的に停止させる「自動化システム」等を採用した例があります。
そして「CHECK」(評価)・「ACTION」(改善)では、問題発生の兆しが見えた時点で業務を部分的に停止し、作業員と管理者で一緒に問題を検証します。
ここでもトヨタ式5W1Hを実施して、良かった点・悪かった点原因の振り返りを行い、最後の「How」では次の最適な「Action」を考える際に役立ちます。
具体的には、
- 故障した際の手厚い修理サービス
- コールセンター中心に24時間365日対応のカスタマーサポート
- 「できることはすぐに取り入れる」企業文化の醸成
といったACTIONを実施しました。
さらに、トヨタではPDCAに加え「+F」(Follow、Feedback)を行っています。このFでは、PDCAサイクルが独りよがりで向こう見ずなものになってしまわないように、複数人で考え客観的視点を取り入れることを重要視しています。
このようにして、トヨタは独自のPDCAサイクルを効率的に運用し、業務改善を成功させ、現在に至るまで自動車業界のトップを走り続けているのです。
PDCAサイクルをうまく回せなければどうしたらいいか?
PDCAサイクルを回す事のメリットも理解していただけたのではないでしょうか。しかし、なかなかサイクルを回せない方が多いです。
PDCAをうまく回せない理由のほとんどはPlan(計画)とDo(実行)はあるものの、Check(評価)とAction(改善)がないことです。上から与えられた計画に対して日々の実行に移す。多くのビジネスパーソンがここで止まってしまっています。
具体例として「2件契約件数が目標に対して少ない」仮説を再度考えてみます。
2件契約件数が少ないというCheck(評価)に対して、「頑張りが足りなかった」や「今回は頑張ったからだ!」などは、Action(改善)ではなく単なる感想です。感想だけではPDCAサイクルを回すことが難しいので具体的な改善案を考える必要があります。
例えば「今月は訪問数が少なかったから契約件数が2件少ない。訪問件数を上げることができたら来月は目標を達成できるはず」のように考えると、どうすれば訪問件数が上がるのか、改善案が考えやすくなります。
慣れるまでは難しいのですがCheck(評価)とAction(改善)が単なる感想になっていないか、次のサイクルのPlan(計画)にレベルアップして繋げられるのかを考えながら、サイクルを回す必要があります。
PDCAサイクルが古いとされる理由
近年「PDCAはもう古い」「時代遅れ」といった声も少なくありません。このようにいわれる原因として以下の3点が挙げられます。
形骸化しやすい
単にPDCAサイクルを回すことに陥ってしまうケースです。目的を忘れてしまい、目標を達成することではなく、PDCAサイクルを単なる形式だけで実行してしまうことです。こうなると目標達成や業務改善には繋がらない可能性があります。
PDCAの本来の意図や目的を理解せずに、単にサイクルを回すことで終わってしまうと、本来の目標や課題を見失う可能性があります。
そのため、PDCAサイクルを効果的に活用するためには、常に目標や課題が何か、それらを達成するために何をすべきかを明確にしておくことが重要です。
PDCAサイクルを実行する際には、常に目標に向かって進捗を確認し、改善を繰り返すことで目標達成に向けて効果的に進めることができます。
したがって、PDCAサイクルは本来の意図や目的を理解し、目標達成に向けて具体的な行動をとることが重要です。
改善までに時間がかかる
PDCAサイクルの大きなデメリットとして、行動までに時間がかかる点があげられます。
計画・評価・改善があり、行動までにステップを踏まなければなりません。PDCAが開発された1950年代ごろと比べて、現代は市場の変化のスピードが早く、先行きの予測も難しくなっており、それに対応するためのスピード感に欠けるという見方です。ビジネス環境やトレンドが急速に変化する中では、PDCAサイクルの適用が難しいと見なされています。
特に次の行動までに状況が一変している場合、意味をなさなくなります。
そのため、スピードが重要な業界ではPDCAが対応できません。
一方で、PDCAの適用範囲は業界や状況によって異なり、安全管理や品質管理など正確性や安全性が重視される場面では有効な手法として活用されます。
新しいアイデアが生まれにくい
PDCAサイクルは、計画された行動を振り返って、改善策を導き出す手法です。
しかし、このプロセスは過去のやり方や成功事例に依存しやすく、新たなアプローチや革新的なアイデアの創出にはあまり適していません。
特に現在は、世界がグローバル化の潮流に乗っており、新たな課題や変化が頻繁に生じている状況下では、従来のやり方が通用しなくなることが多々あります。
こうした場面で求められるのは、これまでとは異なる視点やアプローチで問題に取り組むことです。
その場合、PDCAサイクルのような過去の経験や成功事例を元に改善策を検討する方法では、新たな状況や課題に対応することが難しい場合があります。
そのため、組織は、これらの課題に対処するために、PDCAサイクルと異なる手法や戦略を組み合わせる必要があります。
PDCAサイクルに代わる概念OODAループとは?
変化の激しい市場や顧客ニーズに対応するため、いま注目されているのがOODA(ウーダ)というフレームワークです。
OODA(ウーダ)ループでは、「Observe(観察)」「Orient(仮説構築)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」の4つのプロセスループさせます。
アクションを実行し、業務を改善する点はPDCAと共通しますが、大きな違いもあります。
PDCAとOODAの違い
OODAループとPDCAサイクルの最大の違いは、実行に至るまでのスピードです。
PDCAサイクルでは、計画段階にかなりの時間がかかります。
そのため、PDCAサイクルは工場の生産工程のように予期しない事態が起こりにくい環境での活用に向いていますが、新しいイノベーションを生み出す場面にはあまり適していないと言えるでしょう。
一方、OODAループは現状分析を出発点とし、変化が生じても柔軟に対応できます。
OODAループを高速で繰り返すことで、問題解決能力が向上し、修正を加えながらプロセスを進めるスキルが養われます。
状況に応じたフレキシブルな業務改善ループ、「OODA」ループは以下の記事で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください!
関連記事:OODA(ウーダ)ループとは?PDCAに代わる意思決定プロセス解説
おわりに
日々の業務に追われると当初立てた目標をつい忘れがちになり、オペレーションやルーチン作業ばかりに目が奪われてしまいます。
PDCAサイクルを回す事で当初立てた目標に対して、現在の進捗がどうなのか、何が課題なのか、どのようにして課題を解決するのか、といったことを常に考えるようになります。
初めは小さなサイクル、小さな改善でも構いませんので今回ご紹介した内容を参考にして、まずPDCAサイクルを回してみる事をお勧めします。
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