グロスとネットは、ビジネスやマーケティングで頻繁に使われる重要な概念です。
これらを正しく理解することは、企業のコスト管理や戦略的な意思決定に直結します。

この記事では、グロスとネットの違いを解説し、それぞれを理解するメリットと、理解していないことによるリスクや各々の算出方法を具体例を交えて詳しく紹介します。

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グロスとネットの違いとは

グロスとネットの違いまず初めにグロスとネットおよび関連するマージンの違いを簡潔に説明します。

  • グロス(Gross)
    • グロスは「総額」を意味し、税金や手数料などの控除前の全体の金額です。例えば、グロス売上は商品の販売価格全体、グロス給与は控除前の総支給額を指します。
  • ネット(Net)
    • ネットは「純額」を意味し、グロスから税金、手数料、運営費用などのコストを差し引いた残りの金額です。ネットは実際に手に入る利益や手取り額を示します。
  • マージン(Margin)
    • マージンは「利幅」や「利益」を示し、売上(グロス)から原価やネットを差し引いた利益部分です。例えば、商品販売で得られる利益や、取引の中での手数料を含んだ部分を指します。

ここからは「グロス」、「ネット」、「マージン」について、さらに深掘りしていきます。

グロスとは?収益全体を把握する指標・総合的な投資の評価

グロス(Gross)は、広告や製品に関連するすべての費用を含んだ合計金額です。
グロスは、企業が全体の収益やコストを総合的に評価するために使用されます。

広告業界ではグロスは広告の基本料金に加え、手数料やその他の関連費用を含むため、企業が実際に支払うべき総額を正確に示します。

グロスを理解するメリット

グロスの理解は、企業が全体の投資を把握し、予算を効果的に管理するための基盤となります。
たとえば、広告代理店と契約する際にグロスを正確に把握していれば、全体のコストを見越した戦略的な投資判断が可能です。

また、グロスを基にした評価は、サービスのコスト対効果を判断し、ビジネスのパフォーマンスを最大化するための指標となります。下記に、5つのメリットをより詳細に記載します。

5つのメリット

1. 全体の投資を把握できる

グロスは、すべての関連コストを含めた総額を示すため、企業が行う投資の全体像を把握するのに役立ちます。これにより、企業は全体的な支出を一目で確認でき、どこにどれだけのリソースを投入しているかを把握できます。

特に、大規模なプロジェクトや広告キャンペーンなど、複数のコストが絡む場合において、グロスは非常に有効です。

  • 具体例: 広告キャンペーンでの支出を管理する際、グロスを理解することで、広告配信費用だけでなく、制作費、手数料、その他の関連費用も含めた総額を把握でき、正確な予算管理が可能となります。

2. 戦略的に投資を判断できる

グロスを理解することで、企業は単なるコスト削減ではなく、どの部分に投資すべきかを戦略的に判断することができます。

グロスには全ての費用が含まれるため、これを基に各投資の費用対効果を評価し、資金を最適に配分することができます。

  • 具体例: 広告代理店と契約する際にグロスを把握することで、最終的に支払う金額が明確になり、他の広告媒体との比較や、どの媒体が最も効果的であるかの判断材料となります。これにより、最も費用対効果の高い選択肢を選ぶことが可能です。

3. サービスのコスト対効果を評価できる

グロスは、サービスや製品のコスト対効果を評価するための基準としても重要です。
グロスを用いることで、サービス提供に必要な全コストを反映した収益性の評価が行えます。

これにより、どのサービスや製品が収益に貢献しているか、または改善が必要かを具体的に把握できます。

  • 具体例: 製造業では、グロス売上(製品の販売価格全額)から製造原価や流通費用を見た上で、各製品の収益性を比較することができます。この分析により、企業は高収益の商品に注力し、利益の低い商品を改善または縮小する戦略を立てることができます。

4. 透明性の高い予算管理ができる

グロスの理解は、企業の予算編成や管理においても重要な役割を果たします。
全体のコストを把握することで、経費の透明性が高まり、各部門間での予算配分が公平かつ効果的になります。

また、全体のコストを明確にすることで、予算超過のリスクを減らし、計画的な経営が可能になります。

  • 具体例: マーケティング予算を策定する際、グロスを基に全ての関連コストを見積もることで、予算超過を防ぎ、計画通りに費用を管理することができます。また、部門間での予算競争を防ぎ、全社的な戦略に基づいたリソース配分が可能です。

5. ビジネスパフォーマンスを最大化できる

グロスを理解し活用することで、企業の全体的なビジネスパフォーマンスを最大化するための指標として役立ちます。

グロスは企業活動全体の投入コストを正確に反映しているため、売上や利益の向上を目指す際の最適な改善ポイントを見つけやすくなります。

  • 具体例: 多くの企業が年度の終わりに行う財務レビューでは、グロスを用いて部門別のパフォーマンスを比較し、どの部門が最も利益を生み出しているかを評価します。これにより、次年度の予算配分や投資計画に反映させ、より高い収益を目指すことができます。

グロスを理解していないことのリスク

グロスを理解せずにビジネスを進めると、投資の全体像を見誤り、予算管理に失敗するリスクがあります。例えば、広告キャンペーンの予算がグロスを考慮していない場合、後から発生する手数料や追加コストにより、計画した利益が大きく減少することがあります。

このようなリスクは、企業の財務状態を悪化させ、長期的な成長を妨げる可能性があります。

ネットとは?正確なコスト把握のための指標

ネット(Net)は、広告やサービスの純粋な費用を示す用語で、追加の手数料や関連費用を含まない金額です。たとえば、広告費用のネットは広告そのものの費用であり、代理店手数料や制作費は含まれていません。

このため、ネットの理解は企業の費用対効果分析において重要な役割を果たします。

ネットを理解するメリット

ネットを正確に理解することで、企業は実際のコストを詳細に把握し、無駄な支出を削減するための対策を講じることができます。

たとえば、広告のCPA(顧客獲得単価)をネットを基に計算することで、広告パフォーマンスを評価し、改善点を見出すことが可能です。

また、ネットを把握することで、正確な予算管理と効率的な戦略立案が可能になります。

ネットを理解していないことのリスク

ネットを理解していないと、企業は実際の支出を見誤り、予算をオーバーするリスクがあります。

たとえば、ネット価格を基にした予算が現実の支出を反映していない場合、後から追加される手数料やその他の費用により、コストが予想以上に膨らむことがあります。

このようなリスクは、コスト管理の失敗を引き起こし、企業の収益性を損なう可能性があります。

マージンとは?コスト管理と利益確保の鍵

マージンは、ネットとグロスの差額であり、主に代理店の利益や手数料を意味します。

マージンの理解は、コスト交渉やサービスの価値評価において重要なポイントとなり、企業が効率的なコスト管理を実現するために不可欠です。

マージンを理解するメリット

マージンを理解することで、企業はサービス提供者との交渉をより有利に進め、コスト削減のチャンスを見出すことができます。例えば、マージンが大きすぎる場合、代理店と交渉し、コストを抑えることで、より費用対効果の高い取引を実現できます。

また、マージンの適正化は、サービスの質を維持しつつ、企業の利益率を向上させるための戦略的手段となります。

マージンを理解していないことのリスク

マージンを理解していないと、企業は予想外のコストが発生し、利益が圧迫されるリスクがあります。特に、マージンが不明瞭な契約は、後からのコスト見直しが難しく、追加費用が予算を超過する原因となります。

このようなリスクを避けるためには、マージンの透明性を確保し、コスト構造を明確に理解することが重要です。

グロスとネットの具体的な計算例 – 広告CPA計算

広告運用におけるCPA(Cost Per Acquisition、顧客獲得単価)の計算において、グロスとネットには重要な違いがあり、それぞれに注意すべきポイントがあります。

特に広告を扱うマーケティング担当の方は意識する必要があります。

CPA計算方法

  • グロスのCPA計算 
    • 定義: グロスのCPAは、広告の総費用を基に計算され、広告配信費用だけでなく、代理店手数料や制作費用などの関連費用がすべて含まれます。
    • 計算式: CPA(グロス)= 広告費用(グロス) / 獲得件数
    • : 広告の総費用(グロス)が1,000,000円で、獲得件数が50件の場合
      • CPA : 1,000,000円 / 50件 = 20,000円

グロスCPA

  • ネットのCPA計算
    • 定義: ネットのCPAは、純粋な広告配信費用のみを基に計算され、代理店手数料やその他の関連費用は含まれません。
    • 計算式: CPA(ネット)= 広告費用(ネット) / 獲得件数​
    • : 広告配信費用(ネット)が800,000円で、獲得件数が50件の場合
      •  CPA : 800,000円 / 50件 = 16,000円

ネットCPA

注意すべきポイント

注意ポイント

  • 目標CPAの設定時にどちらを基にするか明確にする
    • 広告のパフォーマンス評価をする際、目標CPAを設定することが一般的ですが、その目標がネットベースなのかグロスベースなのかを明確にする必要があります。
    • グロスを目標にしているのにネットでしか見ていない場合、実際の達成状況を正しく評価できません。
  • 自社・代理店運用形態による違いを理解する
    • 自社運用と代理店運用では、費用の構成が異なるため、CPAの評価基準も変わります。
    • 代理店運用では手数料が必然的にかかるため、グロスでの計算が基本ですが、自社運用では人件費や運用コストも考慮する必要があります。単純にネットだけで比較するのは不十分なこともあります。
  • 広告パフォーマンスの評価におけるズレを防止する
    • ネットのCPAは広告配信そのものの効果を評価するのに適していますが、グロスのCPAは、全体の広告活動の費用対効果を評価するために用います。特に経営層に報告する際には、グロスベースでのコスト評価が求められることが多いです。
    • ネットで計算したCPAが低くても、グロスで計算したCPAが高い場合、手数料や制作費が予算を圧迫している可能性があります。

なお、CPAに関連してCAC(顧客獲得コスト) については次の記事で紹介しています。

CAC(顧客獲得コスト)とは?CPAとの違いや計算方法・削減方法を解説

グロスとネットの具体的な計算例 – その他のケース

ここではCPA計算以外のケースで、グロスとネットの具体的な計算例を示します。

例 1: 広告費用の計算

シナリオ: 広告代理店が広告キャンペーンを実施し、広告主に請求する際の費用を考えます。

  • 広告配信コスト: 80万円
  • 代理店手数料: 40万円

グロスの計算

グロスは、すべての費用を含めた合計金額です。広告配信コストと代理店手数料を合算します。

  • グロス = 広告配信コスト+代理店手数料 = 800,000円+400,000円 = 1,200,000円

ネットの計算

ネットは、純粋なコスト(広告配信コスト)を示します。代理店手数料などの追加費用は含まれません。

  • ネット = 広告配信コスト = 800,000円

例 2: 商品販売の計算

シナリオ: ECサイトで商品を販売した際の売上を考えます。

  • 商品販売価格: 1,500円
  • 販売手数料: 200円
  • 商品の仕入れ原価: 1,000円

グロスの計算

グロスは販売価格全体を示します。ここでは販売手数料や仕入れ原価を考慮せず、純粋に顧客から支払われた金額が対象です。

  • グロス = 商品販売価格 = 1,500円

ネットの計算

ネットは、販売手数料を除いた実際の利益額です。

  • ネット = グロス−販売手数料 = 1,500円−200円 = 1,300円

また、仕入れ原価を考慮する場合のネット利益は以下のように計算します。

  • ネット利益 = ネット−仕入れ原価 = 1,300円−1,000円 = 300円

例 3: サービス業における収益計算

シナリオ: 企業がコンサルティングサービスを提供する場合の収益計算を考えます。

  • サービス料金(グロス売上): 3,000,000円
  • コンサルタントの人件費: 1,000,000円
  • その他の関連コスト(交通費、資料費など): 300,000円

グロスの計算

グロス売上は、サービスの提供によって得られる総収入です。

  • グロス売上=3,000,000円

ネットの計算

ネット利益は、グロス売上からサービス提供に必要なコスト(人件費、関連コスト)を差し引いたものです。

  • ネット利益=グロス売上−(人件費+関連コスト)=3,000,000円−(1,000,000円+300,000円)=1,700,000円

グロスとネットが主流となる場面の違い – 業界・用途別

「グロス」と「ネット」のどちらが主流かは、業界や用途によって異なります。
それぞれの主流となるシーンや理由を以下にまとめます。

グロスとネットの主流

グロスが主流の場面

グロスは、取引の全体像やスケールを示し、外部の取引先や市場への影響を評価する際に有効です。

また、グロスでの取引は透明性があり、総額での予算管理がしやすいとされています。

  1. 広告業界: 広告代理店との取引では、グロスベースの取引が主流です。これは、広告費用に代理店の手数料や制作費用を含めた総額で見積もり、請求する形式が多いためです。
  2. 小売業や卸売業: 小売業や卸売業では、商品販売時の総売上(グロス売上)を基に業績を評価することが一般的です。グロスを基準にすることで、全体の売上規模や市場での存在感を把握しやすくなります。
  3. イベントやプロジェクト管理: イベントの予算管理や大規模プロジェクトの収支計算では、全体の資金の動きを把握するためにグロスでの管理が多く使われます。

ネットが主流の場面

ネットは、実際に得られる利益やコストを正確に把握できるため、内部での収益管理や戦略立案に適しています。

企業の経営判断や収益性の評価において、ネットのデータは直接的な判断材料となります。

  1. 企業の収益管理: 企業の内部での収益評価や、投資対効果の分析ではネットが主流です。ネットベースの計算は、実際に手元に残る利益を正確に示し、経営判断に直結するデータとなります。
  2. 給与計算: 従業員の給与に関しては、ネット(手取り)が重視されます。実際に受け取る金額が重要であり、控除後の金額(ネット給与)が主な評価基準となります。
  3. サブスクリプションやサービス業: サブスクリプションビジネスやサービス業では、純粋な収益を把握するためにネットが重視されます。運営コストやサービス提供にかかる経費を差し引いた実際の利益を基に業績を評価します。

グロスとネットの業界別使い方例

最後に、グロスとネットの理解を更に深めるために、業界別の使い方例を紹介します。

広告業界

  • グロス: 広告の配信費用に加えて、代理店の手数料や制作費も含んだ全体の費用
  • ネット: 広告の配信費用のみを指す。代理店手数料や制作費は含まない

小売業界

  • グロス: 商品の販売価格全体。顧客が支払った金額全てで、仕入れ原価やその他の経費が含まれる
  • ネット: 商品の仕入れ原価や直接的なコストのみ。販売後の手数料や配送費用は含まない

金融業界

  • グロス: 総投資利益で、税金や取引手数料などを差し引く前の金額
  • ネット: 手数料や税金を除いた純粋な投資利益。たとえば、株式売買の際の純利益

製造業界

エンターテインメント業界

  • グロス: チケット販売の総収入。すべての経費を差し引く前の全体の売上
  • ネット: チケット販売の純収入。手数料や宣伝費用、会場費などの経費は含まれない

不動産業界

運輸・物流業界

  • グロス: 物流サービス全体の収入。追加の手数料や付帯サービスの費用も含まれた総額
  • ネット: 運送料金の純額。燃料費や労務費、車両の維持費などが含まれるが、マージンやその他の間接費用は含まれない

ITサービス業界

  • グロス: 開発コストに加えて、プロジェクト管理費やマーケティング費用も含まれた全体のサービス費用
  • ネット: ソフトウェア開発の純粋なコスト。開発にかかるエンジニアの費用のみ

ヘルスケア業界

  • グロス: 病院やクリニックの総収入。治療費に加えて、施設維持費や管理費も含まれる
  • ネット: 医療サービスの純粋なコスト。診察や治療にかかる直接費用のみ

エネルギー業界

  • グロス: エネルギー供給の全体的な売上。設備投資費用や販売手数料なども含まれる
  • ネット: 発電やエネルギー供給にかかる直接的な費用。燃料費や運用コストのみ

終わりに

「ネット」「グロス」、そして「マージン」の理解は、企業が正確なコスト管理と戦略的な投資判断を行うために不可欠です。これらの概念を正しく理解し、実務に活かすことで、ビジネスの収益性を高めるとともに、リスクを最小限に抑えることが可能です。

企業の成長と成功を支えるために、これらの費用管理の基本をしっかりと身につけていきましょう。また、費用効率を向上する観点では、営業DXツールの導入によるマーケティング・営業推進全体の高度化も効果的な施策です。以下に関連するオススメ記事をまとめましたので、是非参考にしていただけると幸いです。

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