Webマーケティングに関わっている方は、LTV(Life Time Value :ライフタイムバリュー )を耳にしたことがあるかもしれません。
サブスクリプションモデルが普及した近年において顧客生涯価値を高める必要性が増しています。
LTVを知っておくことで、1人の顧客獲得にかけられる費用を算出することが出来るため、マーケティング担当者には不可欠な知識といえるでしょう。
今回はLTVの定義・計算方法からLTVを向上させる営業戦略の事例についてご紹介いたします。
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LTV(ライフタイムバリュー)とは?
LTVとは、Lifetime Value(ライフタイムバリュー)の略であり、経営学用語、マーケティング用語の一つです。
Wikipediaによると「企業にとってある一人の顧客が生涯にわたって企業にもたらした価値の合計」と定義されています。直訳のまま、「顧客生涯価値」を意味します。
昨今、日本ではサブスクリプションモデルと言われる月額課金のサービスが増える中、新規顧客の開拓だけでなく、既存顧客へのサポートを充実させ、解約率を下げる施策が一般的になっています。
解約率を下げ、アップセル・クロスセルを促す戦略が重要視され始めているのです。
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ここで重要になってくるのがLTV(Lifetime Value)という考え方です。
例えば、身近な例として毎日使っている日用品や化粧品などを考えると理解しやすいのではないでしょうか。
毎日歯磨きをしていますが歯磨き粉が無くなりそうになったらドラックストアに買いに行くかもしれません。
この「歯磨き粉を買う」という購買行動が生涯に渡って企業にどう影響を与えるかということを考えます。
歯磨き粉を買う際には多くの場合「いつもの商品」を求めると思います。しかし、テレビCMで好きなタレントが出ていると、つい「いつもと違う歯磨き粉」を手にしてしまうかもしれません。
この購買行動を企業側の視点で考えると、新しい顧客を獲得するにはテレビCMを流したり、雑誌でアピールしたり、店内にPOPで目立たせたりしなくてはいけません。
つまり「いつもの商品」を買ってもらうより多額の費用がかかっています。
企業にとっては新規顧客を開拓するよりも、既存顧客を維持させる方がより多くの利益をもたらします。
特に今後人口が減少し続ける日本のような成熟市場では、この「既存顧客をどう維持するか」ということを良く考える必要があります。
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法人営業でLTVが重要視される背景
従来、企業は売上を上げるためにシェアを獲得することに注力してきました。
特定の領域で他社と競争し、より多く商品を売るため、莫大な広告費を出し、母数の獲得を目指していたわけです。
しかし、現代は市場が成熟している上に、類似商品が海外で安価で生産できるようになったり、サービスの入れ替スピードが早いため、以前より新規獲得にコストがかけられなくなってきました。
また、新規顧客獲得にかかるコストは既存顧客を維持するコストの数倍かかると言われています。
新規顧客を獲得して市場のシェアを拡大させるという考え方から、既存顧客のロイヤリティを高め、離反を防止するという流れに変わってきています。
LTV(顧客生涯価値)算出に必要な3つの計算方法
LTVの計算はいくつか代表的な式があります。自社の特徴にあった式を参考にしてください。
- LTV=年間売上金額×収益率×顧客の継続年数
- LTV=顧客の平均購入単価×平均購入回数
- LTV=(売上高-売上原価)÷購入者数
この計算式からLTVを高めるための施策が考えられます。
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例えば①の計算式から、
顧客のサービス契約の継続年数を高める。
②の計算式から、
平均購入回数、つまり購入頻度を高める。また、平均購入単価を高めるという考えも成り立ちます。
③の計算式は購入者数が分母にあるので、購入者数を減らせばLTVが増えるという事では無く、売上高(利益)を高めつつ購入者数を維持するという考え方をします。
例えば、購入頻度を高めるためには適切なアフターフォローが重要です。商品を提供したら後は知らないということではなく、「その後の使用はいかがですか?」というメルマガやDMを送ったり、追加購入を促す施策が考えられます。
このように自社に合ったLTVの計算式を分解し、どのような施策をすればLTVが高まるのかを考えていきます。
関連記事:ROIとは?|混同しがちな4つの指標との違いを解説
LTV向上のために有効なマーケティング戦略とは?
それぞれ自社に合ったLTV向上の施策を検討する必要があり、全顧客に対して同じ施策をするのは得策ではありません。
自社に利益をもたらしてくれている顧客を把握するために、顧客別ABC分析(顧客別の売上高をグラフ化し、ABCに分類評価する)を行い、影響の大きい顧客と影響の小さい顧客で施策内容を変えてアプローチします。
例えば、顧客別のABC分析をした結果顧客Aの影響力が一番大きく、顧客Cはその3分の1ほどでした。
- 「顧客Aは利益額が十分出ているから引き続き重点的にアプローチをしてみよう」
- 「顧客Cは利益額が低いのでこちらからのアプローチの優先度を下げよう」
といった施策内容を検討していきます。
関連記事:ABC分析とは?|在庫管理を行いやすく仕事を効率化する方法
LTVを最大化するための施策とは?
LTVの最大化には、顧客ロイヤルティが大きく影響します。顧客ロイヤルティを高めLTVを最大化するには、以下の5つの施策が有効です。
- ブランド価値を広める
- 顧客満足度の向上
- 優れたUX(ユーザーエクスペリエンス)の提供
- 顧客とブランドの結びつきを創る
- パーソナライズしたサービス提供を行う
この5つの施策を行う際には、以下のポイントを意識しましょう。
- 長期的に考えて取り組みを継続する
- 継続的に顧客との接点を作る
- データやCRM/MAツールを活用する
LTV最大化についてより詳しく解説している記事はこちらをご覧ください。
関連記事:LTVを最大化させるには?定義や計算方法、最大化方法を詳しく解説
MA(マーケティングオートメーション)を正しく活用する
MAを正しく活用することで顧客のロイヤルティを高め、LTV向上に繋げることができます。
MAの主な機能は以下の4つに大別できます。
- 顧客情報管理機能
- スコアリング機能
- メールマーケティング機能
- キャンペーン機能
これら4つの機能を使うことで顧客別に適したマーケティングや営業活動をしていくことができます。
MA(マーケティングオートメーション)における各機能については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:MA(マーケティングオートメーション)とは?意味や導入メリット・おすすめのツールを紹介
カスタマーサクセスの導入
LTVを向上させるにはカスタマーサクセス の概念も重要です。
買い切り商品ばかりだった頃はあまり注目されていなかった概念ですが、サブスクリプション型の商品やサービスが増えてきている今、注目されている概念です。
カスタマーサクセスとは、既に商品を購入している顧客に対し能動的に関わり「顧客のサクセス(成功体験)の実現」を支援することです。能動的に顧客の成功体験を作ることで、顧客の商品への満足度が高まり、は高まり、LTVも向上します。
カスタマーサクセス は、ツールを使って可視化することも可能です。
関連記事:カスタマーサクセスとは?具体的な業務から2つの意識すべきことまで
LTV(ライフタイムバリュー)戦略の事例
OAとIT機器を販売しているA社におけるLTVの具体的事例を見ていきましょう。
A社ではこれまで複合機、ネットワーク機器、TV会議システム等OAやIT機器の販売を幅広く手掛けており、それぞれのハードウェアによって専門の営業担当者を配置して窓口としていました。
同社内部で顧客サービスを見直すにあたり、これまでのハードウェア単位という縦串の体制から、顧客ごとへ営業窓口が一本化する横串の体制へと移行しました。
これまでの縦串組織ではわからなかった顧客からのニーズが浮き彫りになってきました。
例えば、社内でエンジニアのリソースが足りない場合、ハードウェアとアウトソーシングの組み合わせが必要であったり、機器だけでなくアプリケーションを刷新したい場合、ハードウェアとソフトウェアをセットで提案する必要があります。
上記のように以前は、「顧客が欲しいハードウェアを売れば良い」という意識だったものが、「顧客の課題を解決するには何を提案すれば良いか」という課題解決型の営業に変わります。
新規顧客にとってはハードとソフト、アウトソーシングまでの総合的な提案はスイッチングコスト(他のメーカーに変更する費用)が高く、新しい会社のサービスに変更しようとは思わないでしょう。
しかし、既に自社サービスを導入している既存顧客に対しては、別サービスを提案し、クロスセルもしやすくなるのではないでしょうか。
先述したように新規顧客を獲得するコストよりも既存顧客へのアップセル・クロスセルの方がコストはかかりません。
短期的な売上という視点ではなく、顧客の課題を解決し、「LTVを向上させる」という意識が重要になります。
また、顧客獲得にかけるコスト(CAC)との比率も考慮する必要があります。CACについては以下の記事をご参考ください。
関連記事:CAC(顧客獲得コスト)とは?CPAとの違いや計算方法・削減方法を解説
終わりに
現代のような成熟した日本の市場において、従来のように「足で稼ぐ」新規営業のスタイルには限界があります。
今回紹介したように重点顧客を見極め、会社として戦略的に営業活動をしなくてはなりません。
新規サービスがリリースされてたら購入していただく、という関係から、長期的に顧客を付き合っていくLTV(顧客生涯価値)を紹介しました。
法人営業の方もこの考え方を理解し、自社にあった営業施策を考えてみてはいかがでしょうか。
また、LTVの向上は結果的に顧客満足度の向上にもつながります。顧客満足度を上げるための方法はこちらの記事でも解説していますので、合わせてご覧ください。
関連記事:顧客満足度とは?顧客満足度向上のための4つのポイントとツール7選
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