PDCAサイクルは、単に「計画と実行を繰り返す」だけではなく、継続的に業務を改善し続ける仕組みです。
しかし、実際に実践してみると「PDCAを効率的に回す方法がわからない」「計画を実行したままで振り返りまでできていない」といった声を聞くことも多くあります。
本記事では、まずPDCAサイクルの基本的な流れを押さえ、次にPDCAサイクルを効率的に回すための具体的なポイントを追って解説します。
また、近年注目されているOODAループとの違いにも触れ、状況に応じてどちらのフレームワークを活用したほうがよいかを見極めるヒントをお伝えします。
この記事の内容
PDCAサイクルとは?
PDCAサイクルは、業務やプロジェクトを効率的に改善し続けるためのフレームワークです。
その名称は以下の4つのプロセスの頭文字を取っています
- P:Plan(計画)
目標を明確にし、それを達成するための具体的な計画を立てる - D:Do(実行)
計画に基づいて行動する - C: Check(評価)
実行した結果を評価し、目標との差異や問題点を洗い出す - A:Act(改善)
評価結果をもとに、次の計画に修正を加え、改善につなげる
このプロセスを繰り返すことで、業務の質を段階的に高めることができます。
各プロセスはそれぞれ以下のような役割を持っています。
Plan(計画)
Plan(計画)の段階では、目標を明確に設定し、その達成に必要な行動を仮説として立てます。
計画作成のポイントは以下の2点です
- 5W1Hの明確化
誰が、何を、なぜ、どれほど、いつまでに、どのように行うかを具体化する - 現実的な目標設定
過去のデータや将来予測を基に、実現可能な計画を策定する
例:販売目標を達成するために、週ごとに何件の顧客訪問が必要かを具体的に設定する
Do(実行)
Do(実行)の段階では、立てた計画をもとに実行に移します。
ここで重要なのは、「実行結果を記録する」ことです。成功だけでなく、課題や予想外の出来事も正確に記録しましょう。
さらに、以下のことを意識すると効果的です。
- 結果を数値化
選んだ指標に基づき、客観的なデータを収集する - 計画との差異を把握
計画通りに進んでいるかを確認できる記録を残す
例:訪問件数や商談の成約率を記録し、計画とのズレを把握する
Check(評価)
Check(評価)の段階では、実行した結果を計画と比較し、目標達成度や課題を評価します。
以下の2つの視点で評価を行います
- 計画より良い結果の場合:成功要因は何か?
- 計画より悪い結果の場合:何が原因でうまくいかなかったのか?
数値を活用して評価することで、主観を排除し、客観的な判断を下せます。一見、数値化が難しい項目も、アンケート結果や行動記録などを工夫して活用できます。
例:成約率が計画より高かった場合、新しい営業手法が成功した可能性を評価する
Act(改善)
Act(改善)の段階では、評価結果を基に、改善策を実施します。
改善では以下のことを意識することをおすすめします。
- 成功事例を次の計画に活用
何がうまくいったのかを次の計画に反映する - 改善案の優先順位付け
限られたリソースを最大限活用できるよう、重要度の高い改善案を優先する - 次のPDCAサイクルを見据える
Actは次のPlanへの橋渡しであり、改善内容を繰り返し適用することで、プロセス全体を進化させる
例:新たな営業手法が有効であれば、それを標準化し、次回の計画に取り入れる
ポイントは、「単にPDCAを回す」のではなく、「チェックと改善を通じて次のステップをより強化する」ことです。
例えば、日報や振り返りを取り入れることで、このサイクルを日々の業務に自然に組み込むことが可能です。
また、PDCAサイクルは1周したら完了ではありません。Act(改善)は2周目のPlan(計画)のことも考えて改善策を導きます。
そして、2周3周と継続し、ブラッシュアップさせていきます。このように継続的に改善を繰り返す事で成長を続けることができます。
関連記事:業務改善とは?改善の進め方と具体例やおすすめツール11選
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PDCAサイクルの4ステップ(Plan・Do・Check・Act)
PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つのプロセスから成り立ちます。
ここでは、それぞれのプロセスで何を行うべきかを具体的に見ていきましょう。
Plan(計画)
Plan(計画)の段階では、目標を明確に設定し、その達成に必要な行動を仮説として立てます。
計画作成のポイントは以下の2点です
- 5W1Hの明確化
誰が、何を、なぜ、どれほど、いつまでに、どのように行うかを具体化する - 現実的な目標設定
過去のデータや将来予測を基に、実現可能な計画を策定する
例:販売目標を達成するために、週ごとに何件の顧客訪問が必要かを具体的に設定する
Do(実行)
Do(実行)の段階では、立てた計画をもとに実行に移します。
ここで重要なのは、「実行結果を記録する」ことです。成功だけでなく、課題や予想外の出来事も正確に記録しましょう。
さらに、以下のことを意識すると効果的です。
- 結果を数値化
選んだ指標に基づき、客観的なデータを収集する - 計画との差異を把握
計画通りに進んでいるかを確認できる記録を残す
例:訪問件数や商談の成約率を記録し、計画とのズレを把握する
Check(評価)
Check(評価)の段階では、実行した結果を計画と比較し、目標達成度や課題を評価します。
以下の2つの視点で評価を行います
- 計画より良い結果の場合:成功要因は何か?
- 計画より悪い結果の場合:何が原因でうまくいかなかったのか?
数値を活用して評価することで、主観を排除し、客観的な判断を下せます。一見、数値化が難しい項目も、アンケート結果や行動記録などを工夫して活用できます。
例:成約率が計画より高かった場合、新しい営業手法が成功した可能性を評価する
Act(改善)
Act(改善)の段階では、評価結果を基に、改善策を実施します。
改善では以下のことを意識することをおすすめします。
- 成功事例を次の計画に活用
何がうまくいったのかを次の計画に反映する - 改善案の優先順位付け
限られたリソースを最大限活用できるよう、重要度の高い改善案を優先する - 次のPDCAサイクルを見据える
Actは次のPlanへの橋渡しであり、改善内容を繰り返し適用することで、プロセス全体を進化させる
例:新たな営業手法が有効であれば、それを標準化し、次回の計画に取り入れる
PDCAサイクルは1周したら完了ではありません。Act(改善)は2周目のPlan(計画)のことも考えて改善策を導きます。
そして、2周3周と継続し、ブラッシュアップさせていきます。このように継続的に改善を繰り返す事で成長を続けることができます。
PDCAサイクルのメリット
PDCAサイクルを活用する代表的なメリットは以下の3つがあります。
- 目標が明確になる
- 業務効率が向上
- 継続的な改善
それぞれについて詳しく解説します。
目標が明確になる
Plan段階で「具体的な数値目標(KPI)」を設定することで、チーム全員が「何を・どれだけ達成すればよいのか」を共有できます。
たとえば営業なら「月間新規商談20件」という目標を立て、週次で「何件アポを取るか」を決めて進捗を数値化します。
Do→Checkを繰り返すうちに「目標達成に必要なアプローチ方法」も見えてくるため、日々の業務をただの作業としてではなく、「目標に直結するタスク」へと切り替えて取り組むことができるようになります。
業務効率が向上
Checkフェーズで「どの工程に時間がかかっているか」や「無駄な手順は何か」を数値やデータで把握し、Actフェーズで不要な作業を削減したり手順を簡素化したりすることで、全体の業務フローを効率化できます。
たとえば、定例会議での報告方法を見直して会議時間を短縮したり、手動で行っていた集計作業を自動化ツールに置き換えたりすることで、本来注力すべき業務に使える時間を増やすことが可能です。
こうしたPDCAのサイクルを回すことで、継続的に無駄を削減し、限られたリソースを重要なタスクに集中させることが可能になります。
継続的な改善
PDCAは「一度回して終わり」ではなく、Checkで得た知見を次のPlanに反映し、再びDo→Checkを繰り返すことで、少しずつプロセスや成果を向上させていく仕組みです。
たとえば、最初に実施した施策で見つかった課題をふまえて改善策を立て、次のサイクルでそれを試し、さらに新たな問題点を洗い出すという流れを繰り返すと、徐々に業務のやり方が洗練されていきます。
PDCAを継続することで現場ごとに「どの手順を見直すと効率化できるか」「どのポイントで品質が向上するか」といったノウハウが蓄積され、やがて大きな成果を生む土台が整います。
継続によりノウハウを形成することで、長期的には、全社レベルで無駄が減り、品質や生産性の向上につながることが期待できます。
関連記事:営業活動の中でPDCAサイクルが上手く回らない理由と改善方法
PDCAサイクルが古いと言われる理由
PDCAサイクルは、業務改善の基本フレームワークとして広く知られていますが、近年は古いと言われることもあります。ここでは、PDCAが古いと言われる原因について解説します。
形骸化しやすい
業務にPDCAサイクルを取り入れた結果。PDCAサイクルを回すこと自体が目的になってしまうことがあります。
目的を忘れてしまい、目標を達成することではなく、PDCAサイクルを単なる形式だけで実行してしまう状態です。こうなると目標達成や業務改善には繋がらない可能性があります。
そのため、PDCAサイクルを効果的に活用するためには、常に目標や課題が何か、それらを達成するために何をすべきかを明確にしておくことが重要です。
改善までに時間がかかる
PDCAサイクルの大きなデメリットとして、行動までに時間がかかる点があげられます。計画・評価・改善があり、行動までにステップを踏まなければなりません。
PDCAが開発された1950年代ごろと比べて、現代は市場の変化のスピードが早く、先行きの予測も難しくなっており、それに対応するためのスピード感に欠けるという見方です。
ビジネス環境やトレンドが急速に変化する中では、PDCAサイクルの適用が難しいと見なされています。一方で、PDCAの適用範囲は業界や状況によって異なり、安全管理や品質管理など正確性や安全性が重視される場面では有効な手法として活用されます。
新しいアイデアが生まれにくい
PDCAサイクルは、計画された行動を振り返って、改善策を導き出す手法です。しかし、このプロセスは過去のやり方や成功事例に依存しやすく、新たなアプローチや革新的なアイデアの創出にはあまり適していません。
特に現在は、世界がグローバル化の潮流に乗っており、新たな課題や変化が頻繁に生じている状況下では、従来のやり方が通用しなくなることが多々あります。こうした場面で求められるのは、これまでとは異なる視点やアプローチで問題に取り組むことです。
そのため、組織は、これらの課題に対処するために、PDCAサイクルと異なる手法やフレームワークや戦略を組み合わせる必要があります。
PDCAサイクルを効率的に回す3つのコツ
PDCAサイクルを効率的に回すには、具体的な方法を理解し、実践することが大切です。
ここでは、PDCAサイクルを効率的に回す3つのコツを詳しく解説します。
1.目標を明確に設定する
まず最重要なのは、目標を「いつまでに何をどれだけ」達成するのかが誰の目にも明確であることです。
たとえば「売上を上げたい」だけでは、数字や期限があいまいで、Planが曖昧になりがちです。
以下のポイントを押さえ、目標を明確にする工夫をしましょう。
具体的かつ測定可能な目標を立てる(SMART)
- Specific(具体的):たとえば「6月末までに新規顧客を5件獲得し、既存顧客のリピート率を10%向上させる」といったように、達成すべき内容を明示する。
- Measurable(測定可能):成果を数値で追えるように、「売上金額」「問い合わせ件数」「リピート率」など指標を設定する。
- Achievable(達成可能):過去実績やリソースを踏まえ、「2週間で売上を倍にする」といった非現実的な目標ではなく、3ヶ月で10%増といった現実的な数値を見極める。
- Relevant(関連性):会社や部署の戦略と連動しているかを確認し、「なぜその目標が必要なのか」を明確にする。
- Time-bound(期限付き):必ず「○月末まで」「第2四半期中に」などの期限を設定し、PlanからCheckまでのスケジュールを組み込む。
仮説を立て、検証→改善を繰り返す
目標達成のために「この施策を行えば成果が出るはずだ」という仮説を立て、その検証結果を数値で確認する流れをつくることも大切です。。
たとえば「既存顧客向けに月1回ニュースレターを送ればリピート率が5%上がるはずだ」という仮説を設定し、配信後のリピート率を前月比で比較します。
もし想定どおりの効果が出なければ、件名のABテストやコンテンツ変更など具体的な改善策を講じ、次回のDoにつなげます。
こうした仮説検証を回し続けることで、PDCAのCheck→Actが磨かれ、次のPlanをより精度の高いものにすることができます。
2.目標に対する進捗を定期的に確認する
目標に対する進捗を定期的に確認することは、PDCAを形骸化させず、計画→実行→評価→改善をスムーズに回すための肝となります。
日々の業務に追われてしまうと、進捗確認が後回しになり、問題点に気づくタイミングが遅れてしまいがちです。
その結果、改善までのサイクルに大きな時間ロスが生じ、当初の目標達成が遠のいてしまいます。
そこで、以下のポイントを押さえて「確認の習慣化」と「可視化」を両立させましょう。
進捗確認の“ルール化”で習慣化する
進捗チェックを「やることリストの一つ」ではなく、業務フローの一部として明文化します。
たとえば「毎朝10分で前日の進捗を振り返る」「毎週金曜の午後に30分レビュー会」をあらかじめ社内ルールとして組み込み、スケジュールに組み込むことで、業務に追われても自然と振り返りの場が確保されます。
- 週次レビュー:チーム全員が先週の実績を報告し、未達部分や課題を共有する
- 日次チェック:個人レベルで「今日何をやり、どこまで進んだか」をタスク管理ツールに更新する
こうした短いスパンを意識することで、問題が小さなうちに顕在化し、その場で仮説検証→改善策を打ち出すことができます。
定期的なフィードバック&振り返りの場を設ける
可視化した情報をもとに、定例のフィードバック会議や振り返りを行うことで、個人・チーム単位での課題を早期に共有できます。
以下のような流れのように、時間を設定して振り返りを進めると効果的です。
- 週次ミーティング(30分)
- 各担当が「今週達成できたこと」「達成に至らなかった理由」「来週のプラン」を簡潔に報告する。
- データ(数値実績)を共有し、「どこがボトルネックになっているか」をチームで議論する。
- 各担当が「今週達成できたこと」「達成に至らなかった理由」「来週のプラン」を簡潔に報告する。
- 月次レビュー(1時間)
- 1ヵ月分の進捗と成果を振り返り、大きなトレンドや改善ポイントを整理する。
- 仮説検証の結果を確認し、次月のPlanにフィードバックを行う。
- 1ヵ月分の進捗と成果を振り返り、大きなトレンドや改善ポイントを整理する。
このように短いスパンで「振り返り→改善策の検討」を繰り返すことで、PDCAサイクルは途切れずに動き続け、計画倒れを防ぐことができます。
3.数字として記録に残す
計画を立てて実行したあと、もし狙った成果が得られなかった場合でも、具体的なデータを取っていなければ「どこが悪かったのか」が分からず、次の改善策を立てられません。
多くの失敗は、振り返りに必要なデータが不足していることが原因です。
たとえば、「顧客への提案件数が少なかった」「成約率が想定より低かった」など、何が足りなかったのかを数字として記録しておくことが、PDCAサイクルを回すうえで最も大事です。
定量的な記録を徹底する
まずは、「どの行動が成功し、どの行動が失敗したのか」を数値化して記録しましょう。
たとえば、営業の場合は「アポ取得数」「商談数」「成約数」「商談あたりの平均単価」「提案後のフォロー数」など、具体的な数字であれば日々記録することができます。
また、数値は行動内容とセットで記録すると、どの工程がボトルネックになったのかを明らかにできます。
たとえば「提案資料を作成した日と見積もり提示までの期間」「見積もり提示から受注までにかかった日数」など、記録から逆算して課題を見つけ出すこともできます。
チームでデータを共有し、改善機会を広げる
個人で数字を集めるだけでなく、チーム全体で「どの数字がどう動いたのか」を可視化し、共有する環境を整えましょう。
以下のような方法を用いることで、データ共有が可能になります。
- スプレッドシートやダッシュボードを活用する。
- 「目標値/実績値/差分」を表形式で一覧表示し、進捗状況をチーム全員で随時確認できるようにする。
- 主要KPI(例:月間受注件数、顧客訪問数、成約率など)をグラフ化し、視覚的にどこが落ちているのかを把握する。
- 「目標値/実績値/差分」を表形式で一覧表示し、進捗状況をチーム全員で随時確認できるようにする。
- 定例共有ミーティングを行う。
- 毎週または隔週のレビュー会議で、数字の動きを一人ひとりが報告し合い、成功要因・失敗要因をディスカッションする。
- 評価後の改善案をチームでブレインストーミングし、「次に何をすればよいのか」を全員で共有する。
このような共有システムを作ることで、「現状の課題を個人が抱え込んでしまう」「数字が誰にも見られていない」という状況を避け、チーム全体で課題解決の糸口をつかめるようになります。
関連記事:
PDCAサイクル導入企業の成功事例
PDCAサイクルを活用し実際に業務改善に成功した代表的な企業の事例を紹介します。
事例1:トヨタ自動車 – 製造プロセスの改善
トヨタ自動車は、1950年代から「トヨタ生産方式(TPS)」を採用して製造効率を向上させてきました。
この手法の基盤にあるのがPDCAサイクルです。
Plan(計画)
製造ラインにおける無駄(ムリ・ムダ・ムラ)を削減するため、徹底的にデータを収集し、生産ボトルネックを特定。
特に「5W1H」と「なぜ」を5回繰り返す方法(5 Why分析)を活用して、根本原因を明確にしました。
Do(実行)
計画に基づいて、生産ラインの変更やジャストインタイム制の生産方式を導入。
必要な部品を必要なときに供給する仕組みを整備しました。
Check(評価)
生産効率や不良率を定期的にデータ化して評価。
特定したボトルネックがどれだけ解消されたか、数値で効果を測定。
Act(改善)
改善が十分でない箇所について再度分析を行い、新たなアクションプランを計画。
これを繰り返し行うことで、継続的にプロセスを最適化。
さらに、トヨタではPDCAに加え「+F」(Follow、Feedback)を行っています。
このFでは、PDCAサイクルが独りよがりで向こう見ずなものになってしまわないように、複数人で考え客観的視点を取り入れることを重要視しています。
このようにして、トヨタは独自のPDCAサイクルを効率的に運用し、業務改善を成功させ、現在に至るまで自動車業界のトップを走り続けているのです。
事例2:ユニクロ – 商品展開とマーケティング戦略
ユニクロは、シーズンごとの商品展開や広告戦略においてPDCAサイクルを活用。
特に、新商品投入時の市場調査から販売までのプロセスに組み込んでいます。
Plan(計画)
過去の販売データをもとに、新商品の需要予測とターゲット層を特定。
商品のラインナップや価格設定、広告戦略を立案しました。
Do(実行)
新商品のプロモーションを展開。
広告をSNSやテレビ、店頭で一斉に配信し、顧客の反応を迅速に集めました。
Check(評価)
実際の売上データやオンラインレビュー、店頭での顧客フィードバックを収集。
広告の効果や商品がターゲット層に受け入れられているかを分析。
Act(改善)
評価結果を反映し、商品のデザイン変更や広告文言の修正、在庫管理の見直しを実施。
そして、次のシーズンの商品展開に活用しました。
このようにしてユニクロは、PDCAサイクルを活用してトレンドに迅速に対応し、競合他社との差別化に成功しています。
これにより、季節ごとの売上を安定的に増加させています。
PDCAサイクルの失敗要因
ビジネスや日常の場面で活用されることが多いPDCAサイクルですが、使い方を誤ると適切な効果が出ない場合があります。
ここからは、PDCAサイクルの各プロセスで陥りがちな失敗要因を紹介します。
Plan(計画)の失敗要因
計画段階での失敗要因は、目標設定が不明確または非現実的であることが挙げられます。
目標が曖昧であったり、達成不可能だと、その後の「Do(実行)」「Check(評価)」でも十分に効果を出せません。
また、計画を立てる際に必要な情報収集や分析が不十分な場合も失敗要因になります。誤った仮定や前提に基づいて計画が策定されることになるため、成功可能性が低くなるのです。
Do(実行)の失敗要因
実行段階では、計画通りに行動しないことや、必要なリソースやスキルが不足していることが主な失敗要因です。計画と実行の間にギャップが生じると、期待した成果を得るのは難しいでしょう。
さらに、コミュニケーション不足やチーム内の協力体制が整っていない場合、実行が非効率になります。実行中に発生する問題や障害に迅速に対処するためにも、チーム内での連携を深めることが重要です。
Check(測定・評価)の失敗要因
測定・評価段階での失敗は、適切な評価基準や指標の設定が欠けていることが要因となります。評価基準が明確でないと、成果を正確に把握できず、改善のための具体的な情報を得られません。
また、評価を行うタイミングが遅れると、問題が大きくなってから気づくことになり、修正が難しくなります。さらに、データ収集の精度や信頼性が低い場合も、正確な評価が行えなくなります。
Act(改善)の失敗要因
改善段階では、測定・評価の結果に基づいた適切なアクションが取られないことが失敗の要因です。評価結果を無視したり、再び同じミスを繰り返すような改善策を立てると、PDCAサイクルの効果は発揮されません。
加えて、改善策の実施が遅れたり、対策が不十分である場合、問題の根本的な解決には至りません。関係者の意識改革やスキルアップが欠如していると、同じ失敗を繰り返すリスクが高まってしまいます。
PDCAサイクルに代わるフレームワーク(OODA・CAPD)
PDCAサイクルは多くの企業で活用されていますが、変化の激しい環境では「計画に時間をかけすぎる」「柔軟な対応がしにくい」などの課題が指摘されることもあります。
そこで、近年ではPDCAに代わる、または補完するフレームワークとして、OODAループやCAPDサイクルが注目されています。
ここでは、PDCAの課題を補う2つのフレームワークについて解説します。
OODAループ(ウーダ・ループ)とは
OODA(Observe・Orient・Decide・Act)は、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐が提唱した、素早い意思決定を行うためのフレームワークです。
特に、変化の激しい環境での判断を迅速化するために用いられます。
関連記事:OODA(ウーダ)ループとは?PDCAに代わる意思決定プロセス解説
OODAの4ステップ
- Observe(観察)
現場や市場の変化をリアルタイムで観察する - Orient(状況判断・分析)
過去の経験やデータを基に、観察結果を解釈する - Decide(意思決定)
どのような行動をとるか決定する - Act(実行)
意思決定に基づき、即座に行動する
OODAがPDCAより優れている点
OODAループは、計画(Plan)に時間をかけるのではなく、常に状況を観察し、迅速に判断・行動することを重視するため、変化の激しい環境に適しています。
特に、競争の激しい市場では、長期的な計画を立てるよりも、リアルタイムのデータを活用しながら臨機応変に対応することが求められます。
また、PDCAのように「計画がうまくいかなかった場合に見直す」のではなく、状況に応じて常に判断を更新するアプローチを取るため、柔軟な対応が可能になります。
OODAが向いているケース
- 市場や顧客ニーズが変化しやすい業界(IT・スタートアップ・マーケティングなど)
- 競争が激しく、素早い判断が求められる業界
- リアルタイムなデータ分析や現場対応が重要な業務
CAPDサイクルとは
CAPD(Check・Act・Plan・Do)は、PDCAの順番を変更し、データ分析を重視する改善フレームワークです。
特に、データを活用した業務改善やマーケティング施策で効果を発揮します。
CAPDの4ステップ
- Check(評価・分析)
データを収集し、現状を分析する - Act(改善)
課題や問題点に対して、改善策を検討する - Plan(計画)
具体的な施策を計画する - Do(実行)
計画に基づき、施策を実行する
CAPDがPDCAより優れている点
CAPDは、PDCAとは異なり、まず最初にデータを分析することで、感覚ではなく根拠に基づいた計画や改善が可能になります。
特に、ビジネス環境においては、データドリブンな意思決定が求められる場面が増えており、CAPDはその考え方に適したフレームワークです。
また、計画(Plan)を立てる前に改善(Act)を行うことで、より効果的な施策を導き出しやすくなるため、無駄な試行錯誤を減らせるメリットもあります。
このため、近年のデータドリブン経営やDX(デジタルトランスフォーメーション)との相性が良く、マーケティングや製造業を中心に活用が広がっています。
CAPDが向いているケース
- データ分析を重視する企業(マーケティング・製造業・IT企業など)
- DX推進に取り組んでいる企業
- PDCAの「Plan」で時間がかかりすぎている企業
関連記事:OODA(ウーダ)ループとは?PDCAに代わる意思決定プロセス解説
おわりに
日々の業務に追われると、当初立てた目標をつい忘れてしまい、いつの間にかルーティンワークに振り回されがちです。
しかし、PDCAサイクルを回すことで、まず「目標に対して現在どこまで進んでいるのか」を定期的に確認できます。
次に「何が課題なのか」を洗い出し、さらに「その課題をどう解決するか」を考え続ける習慣が身につきます。
はじめは小さなサイクルから構いません。たとえば、週の初めに目標を再確認し、週末に達成度を振り返る、といった簡単なステップでも十分です。
この記事で紹介した手順を参考に、まずは小さな改善を積み重ねてみてください。

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