新規顧客の獲得が難しくなっている今、既存顧客との関係を深めて収益を伸ばす「リテンション営業」という言葉を聞く機会も増えてきたのではないでしょうか?

新規開拓に比べて効率的・効果的な手法ではありますが「何から始めればいいのか」「どのように継続的な成果につなげるか」と悩む声もよく聞かれます。

本記事では、リテンション営業の基本的な考え方から具体的な実践方法、成果につなげるためのポイント、活用すべきツールまでを網羅的に解説します。

既存顧客を活かした営業戦略を構築したい方は、ぜひご一読ください。

リテンションとは

リテンション(Retention)とは、直訳すると「維持」や「保持」を意味する言葉で、ビジネスの文脈では「既存顧客との関係を継続し、利用を促進していくこと」を指します。

まずはリテンション営業の基本として具体的にどのような活動を指し、どういった重要性があるのかを解説します。

営業におけるリテンション

営業活動においては一度商品やサービスを購入してくれた顧客に対して、継続的な価値提供を行いながら、再購入や契約の更新、アップセル・クロスセルなどを促す取り組み全般が「リテンション営業」に該当します。

例えばSaaS企業であれば、導入後のオンボーディング支援や定期的な利用状況のフォロー、課題解決提案を行うことがリテンション営業の一例です。すでに接点のある顧客に対して行うため、新規開拓よりも効率的かつ成果につながりやすいのが特徴です。

リテンション営業の重要性

リテンション営業が重要視される理由は、「売上の安定化」と「営業効率の向上」に直結するためです。

顧客獲得や売上の向上には広告費や営業工数など多くのコストがかかるため、効率良く効果的な施策を実施することが必要不可欠です。

リテンション営業は単なる「追加提案」ではなく、企業の持続的成長を支える戦略的な営業活動として注目されています。

リテンション営業の効果・メリット

リテンション営業は単に顧客を維持するだけでなく、売上拡大や営業効率の向上といった多面的なメリットをもたらします。

具体的にどのようなメリットがあるのか主な4つの効果について解説します。

顧客のLTV(ライフタイムバリュー)の最大化

LTVとは「1人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益」を指します。

リテンション営業では既存顧客に継続的な価値を提供し、契約更新や追加購入を促すことで、LTVを着実に引き上げることができます。

例えば、定期的なフォローアップや業務課題に即したアップセル提案を行うことで、顧客の満足度と契約期間の双方を伸ばすことが可能であり、結果として1顧客あたりの売上貢献度を高められます。

関連記事:CRMでLTVを最大化する方法とは?成功事例とおすすめツールを紹介

営業コストの最適化

新規顧客の獲得には、広告やイベント出展・人員の投入など高額なコストが発生します。
一方、既存顧客へのアプローチはすでに関係性が構築されており、提案から契約までのリードタイムも短いため、効率的な営業活動とコストを抑えることができます。

特にリソースに限りがある中小企業にとっては、限られた営業資源で最大の成果を上げる手段として、リテンション営業は非常に有効です。

休眠顧客の掘り起こし

かつて取引があったものの現在は接点が途絶えている「休眠顧客」も、リテンション営業の対象です。

過去の購買履歴やフェーズ情報などを活用して再アプローチを行うことで、新たな商談につなげることができます。

例えば新商品・新機能の案内や業界動向を踏まえた提案など、関心を引くきっかけを設けることで、再度の取引へと結びつけることが可能です。

関連記事:休眠顧客を掘り起こすための3ステップ|成功事例も解説

顧客満足度の向上

定期的なコミュニケーションやサポートを通じて、顧客の課題を早期に把握・解決できるため、自然と満足度が高まります。
顧客満足度の向上は、解約率の低下や紹介・口コミによる新規顧客の獲得にもつながる重要な成果のひとつです。

特にSaaSやBtoBサービスなど長期的な信頼関係が重視される業界においては、顧客満足の積み重ねがビジネスの安定成長に直結します。

リテンション営業の具体的手法

リテンション営業を効果的に進めるためには、「継続的な接点づくり」や「顧客に寄り添った情報提供」が欠かせません。

現場で実践されている代表的な手法を3つ紹介します。

メール配信・ダイレクトメールを活用する

定期的な情報提供は、顧客との関係を維持する上で非常に有効です。メールやダイレクトメールを活用することで、手間をかけずに広範囲の既存顧客へアプローチできます。

パーソナライズされた情報提供・コンテンツ営業

メール配信は可能であれば一斉配信ではなく、顧客の業種・役職・過去の購買履歴などに基づいた「パーソナライズされたコンテンツ」を届けることが重要です。
例えば過去に特定の機能に関心を示した顧客には、その機能の活用事例や関連するサービスの紹介を行うことで、高い反応率が期待できます。

また営業パーソン個人からの1to1テイストなメールや、担当者直筆のメッセージなども有効な手段です。

カスタマーサクセスとの連携強化

顧客の課題解決を支援する「カスタマーサクセス」と営業の連携は、リテンション営業の成果に直結します。
カスタマーサクセスが得た顧客の利用状況や困りごとを営業チームが共有することで、タイムリーかつ的確な提案が可能になります。

例えば活用が進んでいない顧客には活用支援を、一定の成果が出ている顧客にはさらなるアップセル提案を行うなど、フェーズに応じた対応が実現できます。

関連記事:カスタマーサクセスとは?業務内容や成功事例・おすすめツールを紹介

イベントの開催

イベントは顧客との関係性を深めるうえで非常に効果的な接点のひとつです。オンライン・オフラインそれぞれに特徴があり、目的や顧客層に応じて使い分けることが重要です。

オンラインイベントは、参加のハードルが低く、多忙な顧客でも気軽に参加できる点がメリットです。ウェビナー形式での製品アップデート紹介や、業界トレンドに関する講演、成功事例の共有会などが代表的です。

一方でオフラインイベントは、対面でのやり取りによって信頼関係を深めやすく、より密なコミュニケーションが可能です。ユーザー会やラウンドテーブル形式のディスカッション、体験型ワークショップなどが効果的です。

いずれの形式でもイベント後のフォローアップやアンケートの活用により、顧客ニーズを把握し、次の営業アクションにつなげることが大切です。

リテンション営業の成功に必要な4つのポイント

リテンション営業を成果につなげるためには単なる“顧客対応”にとどまらず、戦略的かつ継続的な取り組みが欠かせません。

実際にリテンション営業において重要となる4つのポイントをご紹介します。

顧客の事業・課題・業務プロセスの理解

リテンション営業において「顧客のことをどれだけ深く、そして継続的に理解できているか」が、成果を上げるうえで最も重要なポイントです。

リテンション営業に限らず顧客へ適切な提案を行うには、顧客のビジネスモデルや業務プロセス、直面している課題の把握が欠かせません。
例えば、同じ製品・サービスでも製造業とIT企業では使い方も課題もまったく異なるため、適切な提案は難しくなるでしょう。

加えて、リテンション営業では「顧客の変化」を理解することも重要になります。
リテンション営業は顧客との継続的な関係によって成立しますが、当然顧客の状況も日々変化していきます。
組織体制の変更、重点施策のシフト、新規事業の立ち上げなど顧客の状況に変化が生じた場合、当初の契約時に得た情報が変わらず有効であるとは限りません。

こうした変化を定期的なヒアリングや利用状況のモニタリングを通じて捉えることで「今の課題にフィットした提案」が可能になります。

単なる“維持”にとどまらず、顧客の成長に寄り添う姿勢こそが、リテンション営業で信頼を深める最大のポイントです。

顧客情報の管理

リテンション営業では、顧客との接点履歴や対応内容を一元的に管理することが不可欠です。
営業担当者の経験や記憶に頼った属人的な対応では、継続的かつ的確なアプローチが難しくなります。

顧客情報の管理には、SFAやCRMといったツールの活用が有効です。
「過去の商談内容や対応履歴」「顧客のステータスやフェーズ」といった情報を常に整理・可視化して社内で共有することで、引き継ぎミスの防止やチームでの対応力強化にもつながります。

関連記事:顧客管理とは?基本知識や管理項目・方法を解説

KPIを設定する

リテンション営業を成果につなげるためには、「感覚」に頼らずデータに基づいて行動を管理・評価する仕組みが不可欠です。その中心となるのがKPIの設定です。

KPIを適切に設定することで現状のパフォーマンスを可視化し、営業活動の課題発見や改善サイクルの構築が可能になります。特にリテンション営業では、顧客との関係性は“目に見えづらい”ため、数値指標での管理が有効です。

代表的なKPIとしては以下のようなものがあります。

  • 契約更新率/解約率(チャーンレート)
  • アップセル・クロスセル率
  • リピート購入率
  • アクティブ顧客比率

KPIは組織の営業戦略やプロダクトの特性に応じてカスタマイズすることが重要です。指標を定期的にモニタリングし、数値に基づいた改善策を講じることで、リテンション営業の精度と再現性を高めることができます。

▶︎▶︎実は、正しく実行できている組織が少ないKPIマネジメントとは?
本資料では、KPIマネジメントを実行する上で押さえるべき3ステップを分かりやすく解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。

ヘルススコアによる利用状況のモニタリング

ヘルススコアとは顧客のサービス利用状況や満足度を数値化し、解約のリスクやアップセルの可能性を可視化する指標です。

SaaSやサブスクリプションビジネスにおいては、ヘルススコアの活用がリテンション営業の質を大きく左右します。

例えば、以下のような項目を組み合わせてヘルススコアを算出します。

  • ログイン頻度や利用機能の割合
  • サポートへの問い合わせ件数
  • 契約更新日までの残期間
  • アンケートやNPSの結果

スコアが低下している顧客には早期フォローを、高スコアの顧客にはアップセル提案を行うなど、ヘルススコアの状況に応じた対応がリテンション営業の鍵になります。

リテンション営業に必要不可欠なSFA/CRM

リテンション営業でよくある課題のひとつが、「営業対応が属人的になってしまうこと」です。
特定の担当者が顧客との関係性を築いている場合、異動や退職によって関係が途切れ、継続契約が打ち切られてしまうリスクも少なくありません。

属人化を防ぐには、顧客情報をチームで共有し、組織全体で対応できる仕組みと体制が欠かせません。
この情報管理の基盤として活躍するのがSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)です。

SFA/CRMを活用すれば顧客の現状や対応履歴を時系列で把握でき、また引き継ぎの漏れを防ぐことも可能になります。

「人」ではなく「仕組み」で回せる体制こそが、リテンション営業を安定的に続ける鍵なのです。

▶︎▶︎よく耳にするSFA/CRMとは何なのか?
本資料では様々な統計データを用いながらSFA/CRMの概要や導入プロセスまでを整理し解説します。
併せてこちらもご覧ください。

まとめ

リテンション営業は単なる顧客フォローではなく、継続的な売上を生み出す戦略的な取り組みです。
LTVの最大化・営業コストの最適化・休眠顧客の掘り起こしなど、多くのメリットがある一方で、成果を上げるには「顧客理解」や「仕組みづくり」が欠かせません。

Mazricaが提供する各種ツールは、リテンション営業の計画・実行・改善を一貫して支援します。

  • SFA/CRMツール:活動履歴・商談・契約管理
  • MAツール:ナーチャリング・情報配信の自動化
  • BIツール:解約傾向やアップセル成功パターンの可視化

これらのツールを組み合わせて活用することで、営業活動全体の質を底上げし、リテンション営業の再現性と成果を高めることが可能です。
既存顧客との関係を深め、収益を安定的に伸ばしていくために、Mazricaのプロダクトをぜひご活用ください!

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投稿者プロフィール

山本和希
山本和希

営業代行企業でIS・FS支援事業に携わった後、スタートアップ企業でインサイドセールス・マーケティングチームの立ち上げを経験。リテール系商材からIT・SaaS商材まで、幅広い領域の営業実績を持つ。その経験から、マス向けのマーケティング観点と現場での営業観点を掛け合わせた戦略立案を得意としている。

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