日頃のマーケティング活動のなかで「顧客のニーズが読めない」「新商品やサービスの反応が予測できない」といった課題を感じているマーケティング担当者の方も多いのではないでしょうか?

市場や顧客を深く理解することは、マーケティング戦略の成否を左右する重要な要素です。そのための有効な手段が、マーケティングリサーチです。

しかし「マーケットリサーチとの違いが曖昧」「どのような手順で進めればいいのか分からない」といった疑問を持つ方も少なくありません。

本記事では、マーケティングリサーチの基本的な概要から、類似概念であるマーケットリサーチ・市場調査との違い、具体的な実施手順、活用できるツールまでをわかりやすく解説します。

大規模企業のマーケティング担当者が、より確度の高い意思決定を行うための実践的なヒントが得られる内容です。

ぜひ参考にしてください!

マーケティングリサーチとは

マーケティングリサーチとは、企業が市場環境や顧客のニーズ、競合の動向などを客観的に把握し、マーケティング戦略の意思決定に役立てるための調査活動を指します。

具体的には、商品やサービスの企画・開発、販売促進、ブランディングなど、マーケティングに関連するあらゆる領域の判断材料を得るために実施されます。

例えば「どのような顧客層にアプローチすべきか」「価格設定は妥当か」「プロモーション施策はどの媒体が効果的か」といった疑問に対し、データや分析結果をもとにした判断が求められる場面は多くあります。

こうした意思決定を感覚ではなく事実ベースで行うために、マーケティングリサーチが活用されます。

関連記事:顧客理解を深める方法とは?重要性や分析手法を解説

マーケットリサーチとの違い

混同されがちですが、マーケティングリサーチとマーケットリサーチは厳密には違う概念です。

マーケットリサーチは「市場そのもの」を対象にした調査で、市場規模や成長性、競合状況、消費者の購買行動など、市場環境の把握に特化しています。

一方、マーケティングリサーチはマーケットリサーチを含む広範な調査であり「市場だけでなく、製品、価格、プロモーション、流通チャネル」など、マーケティングの4P全体に関わる要素を対象とします。

つまり、マーケットリサーチはマーケティングリサーチの一部という位置づけです。

企業の意思決定を支えるためには、マーケットリサーチだけでなく、製品評価や広告効果測定なども含めた包括的なリサーチが必要となります。

市場調査との違い

「市場調査」という言葉もよく使われますが、こちらは主にマーケットリサーチとほぼ同義と考えられます。市場の規模や動向、競合の状況など、特定のターゲット市場に関する情報収集を目的とした調査です。

一方で、マーケティングリサーチは「市場調査」よりも広い概念を指し、たとえば広告施策の効果検証、ブランドイメージの把握、顧客満足度の測定なども含まれます。

関連記事:ChatGPTを活用して市場調査を行う方法|レポートの作成方法も解説

マーケティングリサーチが重要な理由

マーケティングリサーチは単なる情報収集にとどまらず、企業の成長戦略や意思決定の精度を高めるために欠かせないプロセスです。

特に市場の変化が激しい現代においては、顧客ニーズや競合状況の把握を怠ると、機会損失やブランド価値の低下につながる可能性もあります。

ここでは、マーケティングリサーチが重要とされる主な3つの理由をご紹介します。

1. 顧客理解を深め、価値ある商品・サービス開発のため

マーケティングリサーチの第一の目的は、顧客を深く理解することです。

顧客のニーズや課題を明確にすることで、それに合致した商品やサービスを企画・開発できるようになります。

特に注目すべきは、「潜在ニーズ」と「顕在ニーズ」の把握です。

顧客が自覚している顕在ニーズだけでなく、本人も気づいていないが存在する潜在ニーズを明らかにすることで、競合より一歩先の価値提供が可能になります。

例えば、新しい機能を付加したプロダクトや、利便性を高めた新サービスの提供などは、こうした顧客理解に基づく成果といえるでしょう。

関連記事:顧客ニーズとは?潜在・顕在ニーズの違いと把握するための5つの方法を解説

2. 競争優位性を確立するため

自社と競合の違いを明確にし、差別化のポイントを見出すこともマーケティングリサーチの重要な役割です。

市場に類似する製品やサービスが多く存在する中で、顧客が自社を選ぶ理由を築くには、競合の動向や業界トレンド、消費者の評価などを定期的に把握する必要があります。

例えば「競合よりも価格が高いが選ばれているのはなぜか?」「他社にはない強みとは何か?」といった疑問を、リサーチによって明らかにすることが、差別化戦略の精度向上につながります。

3. 事業リスクを軽減し、成功確率を高めるため

新規事業やプロダクトの開発には、常に不確実性が伴います。

リサーチを行わずに施策を実施すると、顧客の反応を読み違え、多大なコストや時間をかけても成果が出ないリスクがあります。

マーケティングリサーチによって事前に仮説を検証し、想定されるリスクや障壁を可視化することで、施策の精度を高め、失敗の可能性を最小限に抑えることができます。

特に大規模企業では、意思決定の影響範囲も大きいため、リサーチによる裏付けのある判断が求められます。

マーケティングリサーチの手法

マーケティングリサーチにはさまざまな手法がありますが、大きく分けて「定量調査」と「定性調査」の2つのアプローチがあります。

それぞれ目的や得られる情報が異なるため、リサーチの目的に応じて適切に使い分けることが重要です。

以下では、それぞれの調査手法と具体的な実施例について詳しくご紹介します。

定量調査

定量調査とは、数値データの収集を目的とした調査手法です。

統計的な分析を行うことで、客観的な傾向や相関関係を明らかにすることができます。

具体的には下記の手法が用いられるケースが多いです。

インターネット調査
オンライン上でアンケートを配布・回収する方法です。

スピーディーかつ低コストで実施できるため、現在最も一般的な定量調査手法とされています。

郵送調査
アンケート用紙を郵送し、回答を返送してもらう方法です。

高齢者層やインターネット利用率の低い層へのアプローチに適しています。

訪問調査
調査員が対象者の自宅やオフィスを訪問し、直接アンケートを実施する方法です。

回答率や精度が高い一方で、コストと工数が大きくなります。

会場調査(CLT:Central Location Test)
指定された会場に対象者を集め、製品の使用感や広告の印象を評価してもらう方法です。

商品テストやパッケージ評価などによく用いられます。

ホームユーステスト(HUT)
製品を実際に家庭で使用してもらい、その後に感想や評価を収集する方法です。

実使用に近い状況でのフィードバックを得ることができます。

定性調査

定性調査とは、数値では表しにくい「意識・感情・動機」などの深層心理を探る調査手法です。

少人数の対象者から詳細な意見やインサイトを得ることが目的で、顧客の本音や行動の背景を深く理解したい場合に適しています。

定性調査では主に、以下の手法が用いられます。

デプスインタビュー(面接法)
1対1で対象者に深くインタビューを行う方法です。

個人の価値観や購買理由など、繊細な情報を引き出すのに適しています。

グループインタビュー(座談会)
複数の対象者を集めて意見交換を行い、商品やサービスに対する印象や共通認識を把握します。

参加者間の相互作用による気づきが得られる点が特徴です。

オンラインインタビュー
Web会議ツールを活用して、インタビューを遠隔で行う方法です。

コストを抑えながら、地理的制約のない柔軟な調査が可能です。

ミステリーショッパー(覆面調査)
調査員が一般の顧客を装い、店舗やサービスを体験することで、接客対応や店舗運営の実態を評価します。

行動観察調査
対象者の行動を観察し、その行動の背景や無意識のパターンを分析します。

たとえば店舗内の移動や購買行動などを可視化することで、UX改善や販促施策に活かすことができます。

マーケティングリサーチの手順

マーケティングリサーチは、やみくもに実施するのではなく、明確な目的に基づいて段階的に進めることが重要です。

ここでは、リサーチを効果的に行うための基本的な5つのステップをご紹介します。

ステップ1:調査目的の明確化と仮説の立案

まず最初に行うべきは「何のために調査を行うのか」という調査目的の明確化です。
目的があいまいなままでは、得られたデータをどのように解釈すべきか判断がつかず、調査の成果を最大化できません。

例えば「新商品のターゲット層を明らかにする」「既存サービスの満足度を測定する」など、目的を具体的に設定しましょう。

また、それに伴い仮説(「○○層にニーズがある」「この要因が不満につながっている」など)を立てておくと、調査設計や分析がよりスムーズになります。

ステップ2:調査計画の策定

次に、どのように調査を進めるかの計画を立てます。

この段階では以下のような項目を整理します。

  • 調査対象(誰に聞くか)
  • 調査手法(定量調査・定性調査の選定)
  • 質問項目の設計
  • サンプル数
  • スケジュールと実施体制

例えばBtoB領域であれば「意思決定者層に対するデプスインタビュー」「既存顧客へのアンケート配布」など、目的に沿った手法の選択が必要です。

ステップ3:調査の実施(データ収集)

調査設計が完了したら、いよいよデータの収集フェーズに入ります。

選定した手法に応じて、アンケートの配信、インタビューの実施、行動観察などを行い、必要な情報を集めていきます。

このフェーズでは、調査対象の協力を得るための適切な案内文やインセンティブ設計、およびトラブル対応の事前準備も重要なポイントです。

ステップ4:データの集計・分析

収集したデータは、目的に沿って正しく集計・分析する必要があります。

定量データであれば、クロス集計や相関分析、ロジスティック回帰などを用いて傾向を把握します。定性データであれば、発言のパターンやキーワードを分類・整理し、インサイトを抽出します。

この段階で重要なのは、「単なる数字の羅列ではなく、意思決定につながる気づきを導き出すこと」です。

関連記事:営業データ分析3つの手法!見るべき項目やSFAを活用した分析手法

ステップ5:報告・提言とアクションプランの策定

最後に、調査結果をレポートとしてまとめ、施策につなげるための具体的な提言やアクションプランを策定します。

経営層や関連部門にとって理解しやすいように、グラフや図表を活用し、結論を端的に伝える構成が効果的です。

また、調査結果を踏まえて「何をすべきか」「どこを改善すべきか」まで示すことで、実際の施策に反映しやすくなります。

マーケティングリサーチに効果的なツール

マーケティングリサーチの成果を最大化するには、適切なツールの活用が不可欠です。

近年は、テクノロジーの進化により、従来では時間やコストがかかっていた調査も、より効率的かつ精度高く実施できるようになっています。

ここでは、目的別に効果的なリサーチツールをご紹介します。

1. 大規模調査を効率的に行う

GMOリサーチ&AI
GMOリサーチが提供する調査プラットフォームで、国内外の豊富なパネル(調査対象者)に対してスピーディに大規模調査を実施できます。

AIによるデータ分析機能も搭載しており、複雑な分析も効率的に行えるのが特徴です。

公式サイト:https://gmo-research.ai/

マクロミル
大手調査会社として広く知られており、国内最大級のモニターパネルを活用したアンケート調査が可能です。

調査設計から実施、分析レポートの作成までワンストップで対応できるため、大企業のマーケティング部門にも多く利用されています。

公式サイト:https://www.macromill.com/service/

2. アンケートを内製化する

Fastask
自社でアンケートを作成し、配信・集計までを一気通貫で行えるセルフ型調査ツールです。

テンプレートや自動集計機能も充実しており、スピーディにデータを取得したい場合に最適です。

公式サイト:https://www.fast-ask.com/index.html

3. 顧客の声を深堀する

見える化エンジン
AIを活用して、顧客の声(VOC:Voice of Customer)をテキストマイニング分析できるツールです。

アンケートの自由回答やSNS上の口コミを分類・可視化することで、顧客インサイトを深く理解できます。

公式サイト:https://www.mieruka-engine.com/

Sprint
オンライン上で簡単に定性調査(インタビュー)を実施できるプラットフォームです。

ターゲットへのリクルーティングから、インタビューの実施、レポート作成までをオンラインで完結でき、従来の対面調査に比べ大幅な効率化が図れます。

公式サイト:https://chat-interview.com/index.html

まとめ

本記事では、マーケティングリサーチの概要から、マーケットリサーチ・市場調査との違い、主な手法、実施のステップ、さらに活用できるツールまでを解説してきました。

マーケティングリサーチは、単なる情報収集ではなく顧客理解を深め、戦略的な意思決定を支えるための「経営資源」です。
特に大企業においては、取り組む施策の影響範囲が大きくなるため、リサーチに基づいた判断がますます求められます。

変化の激しい現代のビジネス環境では、常に市場の声に耳を傾け、最新のトレンドをキャッチアップする姿勢が不可欠です。

マーケティングリサーチをうまく取り入れ、貴社の戦略に活かしていきましょう。

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投稿者プロフィール

山本和希
山本和希

営業代行企業でIS・FS支援事業に携わった後、スタートアップ企業でインサイドセールス・マーケティングチームの立ち上げを経験。リテール系商材からIT・SaaS商材まで、幅広い領域の営業実績を持つ。その経験から、マス向けのマーケティング観点と現場での営業観点を掛け合わせた戦略立案を得意としている。

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