高い技術力と品質を誇る製造業であっても、「営業活動に課題を感じている」という声は少なくありません。
製品の強みがうまく伝わらない、リソースが限られて新規開拓が進まない、あるいは社内外の調整に時間を要するなど、営業活動における障壁は多岐にわたります。

こうした課題を乗り越え、確実に成果を上げるためには、製造業ならではの営業構造を踏まえた戦略設計と、実行力を高める仕組みづくりが欠かせません。

本記事では、製造業が直面しやすい営業課題を整理した上で、実践的な営業戦略の立て方や有効な手法を解説します。
また、近年注目されているSFA(営業支援ツール)による営業改革の成功事例もあわせてご紹介します。

営業部門のマネジメントに携わる方にとって、課題解決と成果最大化のヒントとなる内容です。
ぜひご一読ください。

製造業が抱える営業課題とは

製造業の営業は、製品やサービスの質の高さだけで成果が出るわけではありません。
むしろ、他業種にはない構造的な課題に直面しやすく、それが営業活動の障壁となっているケースも多く見受けられます。
ここでは、製造業に特有の代表的な営業課題を4つご紹介します。

製品価値が伝わりづらい

製造業では、高度な技術や専門的な機能を持つ製品を扱うことが多く、顧客にその価値を的確に伝えるのが難しいという課題があります。

特に、顧客側に技術的な理解が不足している場合、価格だけで比較されがちになり、差別化が困難になるリスクもあります。

例えば、ある精密部品メーカーが「自社独自の加工精度」を強みにしていたものの、それが顧客の業務にどのように貢献するのかを説明しきれず、価格面で競合に負けてしまうというケースもあります。
単なるスペック紹介ではなく、「どんな課題をどう解決できるのか」という視点での価値訴求が求められます。

リソース確保が困難

新規開拓や既存顧客へのフォローに十分な時間と人員を割けず、営業活動が属人的になってしまうのも、製造業における大きな課題の一つです。

特に中小規模の企業では、営業部門の人員が限られており、設計・生産部門との兼務になっているケースも少なくありません。

結果として、計画的なアプローチができず、「動けるときに動く」場当たり的な営業になってしまうこともあります。

稟議が多く決済が進まない

製造業では顧客側の意思決定プロセスが複雑になりやすく、提案から受注までに時間がかかる傾向があります。

とくにBtoB取引では、購買担当者、技術部門、経営層など複数の関係者が関わるため、社内稟議が何重にもわたるケースも珍しくありません。

営業担当者は、誰がキーパーソンなのか、どのタイミングでどんな情報が必要とされるのかを見極めた上で、戦略的にコミュニケーションを取る必要があります。

他部署との対立

営業部門と開発・生産部門との間で情報共有や目線のずれが生じることも、製造業ならではの課題です。

例えば、営業が顧客の要望を最優先して受注を進めた結果、開発や生産側で対応が困難になり、社内で摩擦が生まれるといった状況です。
こうした部門間の分断は、顧客満足度の低下やプロジェクト遅延につながる恐れがあります。

円滑な営業活動のためには、他部門との連携を強化し、全社的な視点での営業プロセス構築が求められます。

製造業における営業戦略の立て方

製造業の営業活動では、優れた製品や技術力だけでは成果につながりません。営業の成果を最大化するには、自社の強みや市場環境を的確に捉えた「営業戦略」が不可欠です。

ここでは、製造業に適した営業戦略を立てるための基本ステップをご紹介します。

関連記事:営業戦略の立て方の6ステップとフレームワークを解説!

営業目標を策定する

まず初めに行うべきは、営業活動の方向性を明確にする「目標の設定」です。
単に売上目標を掲げるだけでなく、新規顧客の獲得数や顧客単価の向上など、達成すべき成果を具体的に定めることが重要です。

例えば、「年内に医療機器メーカーへの新規取引を5件獲得する」といった具合に、KPIを定量的に設定することで、チーム全体の営業活動に一貫性が生まれます。

市場環境の理解を深める

製造業においては、業界動向や競合の動き、顧客のニーズなど、市場環境の把握が戦略の精度を左右します。

特に、技術革新のスピードが早い分野や規制が厳しい業界では、タイミングやアプローチ方法が成果に直結することもあります。

外部環境の分析には、以下のようなフレームワークが有効です。

  • PEST分析(政治・経済・社会・技術)
  •  5フォース分析(業界の競争構造)
  • SWOT分析(自社の強み・弱み、機会・脅威)

これらを活用することで、自社にとって最適な市場アプローチを導き出すことができます。

ターゲットを選定する

次に、営業リソースをどこに集中させるべきかを明確にする「ターゲットの選定」が必要です。自社製品との相性が良く、受注確度の高い見込み顧客に対して、重点的にアプローチを行うことがポイントとなります。

例えば、「高精度加工を求める航空宇宙業界の中小メーカー」や、「短納期対応が求められる医療機器業界」など、セグメントごとにターゲット像を明確化することで、営業効率を高めることができます。

顧客理解を深める

ターゲットを選定したら、次は「顧客理解」のフェーズです。
製造業の営業では、顧客の課題や業務プロセスを深く理解し、それに基づいた提案を行うことが重要です。

単なる製品説明にとどまらず、顧客のビジネスモデルや調達フローや過去の取引実績やトラブル事例、技術担当者・決裁者それぞれの関心事といった多角的な情報を収集し、的確なアプローチにつなげることが、受注率の向上に直結します。

営業戦略を立てる上で欠かせない、KPI。
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製造業の営業に最適な営業手法

営業戦略を立てた後は、それを実行に移すための「営業手法」の選定が必要です。
製造業では、業界特性や商材の性質に応じて、適切な営業手法を選ぶことが成果に直結します。

ここでは、製造業において有効とされる6つの代表的な営業手法をご紹介します。

テレアポ営業

テレアポ(電話営業)は、スピーディに見込み顧客へアプローチできる手法です。短期間で多くの企業にコンタクトできるため、新規開拓フェーズで活用されることが多くあります。

ただし、製造業では決裁者にすぐに繋がらないケースも多く、アポ取得にはトークスクリプトの工夫や、顧客の業種・課題に合わせた事前リサーチが不可欠です。
例えば、技術部門や資材調達部門が窓口となる場合には、技術的なニーズに沿った切り口でのアプローチが有効です。

関連記事:テレアポの14のコツ! 成功率を高める流れを具体事例で解説

リファラル営業

リファラル営業とは、既存顧客や取引先から新たな顧客を紹介してもらう営業手法です。信頼関係を基盤としたアプローチのため、初回接点から商談化しやすい傾向があります。

製造業では、同業他社や仕入れ先とのネットワークが豊富な場合も多く、リファラルのポテンシャルが高い分野です。
紹介が自然に生まれる仕組みを整えることが、成果につながります。

関連記事:リファラル営業のメリット・デメリットは?成功のポイントや活用ツールも紹介

展示会営業

展示会は、自社製品の魅力を直接伝えられる場として、製造業と非常に相性の良い営業手法です。
実物の展示やデモンストレーションを通じて、技術力や製品の差別化ポイントを直感的に訴求できます。

また、来場者の多くが関心を持っている層であるため、リード獲得の質・量ともに優れたチャネルです。展示会後のフォロー体制を整えておくことで、商談化率をさらに高めることができます。

飛び込み営業

訪問によって直接担当者と接点を持つ「飛び込み営業」も、地域密着型の製造業では有効な手法です。オンラインでは得られない現場の空気感や、担当者のリアルな声を拾えるメリットがあります。

とはいえ、事前リサーチやアプローチ方法を誤ると、非効率になりやすい手法でもあります。企業の業種や規模、所在地などを絞り込み、戦略的に実施することが成功の鍵となります。

関連記事:飛び込み営業を成功させる16のコツ|実際の流れに沿って解説

DM

紙媒体やメールを通じて製品情報や提案資料を送るDMは、営業のきっかけづくりとして有効です。
特に「まずは製品を知ってもらいたい」「継続的に情報を届けたい」といった段階では、低コストで広範囲にアプローチできます。

最近では、Webサイトとの連携やQRコードによる資料ダウンロードなど、オンラインと組み合わせた活用も進んでいます。

営業代行

人手不足や専門性の不足といったリソース課題を補う手段として注目されているのが、営業代行の活用です。
テレアポやリード獲得など特定の工程だけを任せるケースもあれば、案件化からクロージングまでを一気通貫で支援するパターンもあります。

製造業では「専門性が高く、説明が難しい商材」が多いため、業界理解に長けたパートナーを選定することが、成果に直結します。

関連記事:パートナーセールスとは?SaaS企業における重要性や戦略成功のポイントを解説

製造業が営業で成功するためのポイント

営業戦略や手法を整えることは重要ですが、それだけでは持続的な成果にはつながりません。
製造業において営業で成果を上げ続けるためには、組織的な改善や仕組みづくりも不可欠です。

ここでは、製造業の営業現場で押さえておきたい3つの成功ポイントをご紹介します。

営業リストを改善する

営業活動の出発点となるのが「営業リスト」です。どれだけ優れた戦略やトークがあっても、リストの質が低ければ成果は限定的になってしまいます。

製造業では、商材の特性や対応エリア、業界ごとのニーズを踏まえたターゲティングが特に重要です。リストを整備する際は、以下のような観点から見直すことが効果的です。

  • 自社商材と親和性の高い業種かどうか
  • 企業規模や所在地がアプローチ可能な範囲か
  • 過去にアプローチした履歴があるかどうか

また、既存の取引先や展示会で獲得した名刺情報を定期的に更新・統合することで、営業効率の改善につながります。

関連記事:営業リストとは?作成方法やおすすめリスト作成ツールを解説

外部の力に頼る

すべての営業プロセスを自社内だけで完結させようとすると、リソース不足や属人化のリスクが高まります。
そこで有効なのが、必要な部分に外部の専門リソースを活用するという考え方です。

外部リソース活用の具体例としては、以下のようなケースがあげられます。

  • 新規開拓に特化した営業代行の活用
  • 営業研修やコンサルティングによるスキル強化
  • リード獲得のためのマーケティング支援

目的に応じて外部の専門性を取り入れることで、営業活動のスピードと質を大きく向上させることが可能です。

特に製造業のように、営業担当者が技術部門と兼務している場合などは、外部パートナーの活用が営業組織の安定運用に直結します。

SFAで営業効率を上げる

SFA(Sales Force Automation:営業支援ツール)を活用することで、営業活動の見える化・標準化が進み、チーム全体の生産性を大きく引き上げることができます。

製造業においては、次の3つの観点から特に効果を発揮します。

案件管理と進捗の可視化

各営業担当者が抱える案件のステータスを一元管理でき、フォロー漏れや重複対応を防止できます。
マネージャーは全体の進捗を俯瞰できるため、適切なタイミングでの支援や判断が可能になります。

見積もり・原価管理との連携

SFAをERPや見積作成ツールと連携させることで、商談から見積・原価確認までをスムーズにつなぐことができます。
これにより、提案精度の向上と業務効率の両立が実現します。

顧客情報の一元管理と共有

営業・技術・生産など複数部門で情報を共有できるようになり、属人化を防止できます。
例えば、過去の問い合わせ履歴や仕様変更の経緯なども記録されるため、誰が対応してもスムーズな引き継ぎが可能です。

SFAの導入により、「経験と勘」に頼った営業から脱却し、再現性のある営業プロセスを構築することが可能になります。

関連記事:SFAとは?CRM・MAとの違いや選び方と営業の成功事例まで解説

SFAによる製造業の営業効率化事例

SFAは、営業活動の見える化・効率化を実現する仕組みとして、製造業でも急速に導入が進んでいます。ここでは、SFAを活用して営業組織の生産性を向上させた2つの製造業企業の事例をご紹介します。

一正蒲鉾株式会社

老舗食品メーカーである一正蒲鉾株式会社では、営業現場における「勘と経験」に頼った営業スタイルからの脱却を目指し、Mazrica Salesを導入。
これにより、営業活動の質とスピードの両面で大きな変革を実現しました。

  • 属人化していた営業情報の一元管理を実現。商談履歴や顧客ごとの要望をチーム全体で共有でき、引き継ぎや対応漏れを防止
  • 営業活動の進捗管理がリアルタイムで可視化。案件の優先度や滞留状況が明確になり、アクションの精度が向上
  • 数値を根拠とした提案が可能になり、導入から半年で商品採用率が約2倍に!

従来の紙ベースの管理や口頭での情報共有から脱却し、データドリブンな営業体制への転換に成功した好例です。

参照記事:半年で商品採用率は約2倍に!Mazrica Sales導入で効率的かつ効果的なデータ利活用が実現

ミズノ株式会社

総合スポーツ用品メーカーのミズノ株式会社では、営業現場での情報管理に課題を感じており、Mazrica Salesを導入しました。
導入にあたっては「現場の使いやすさ」と「管理側の分析視点」の両立を重視しました。

  • レポート作成や分析にかかる時間を大幅に削減。データの可視化とレポート自動生成により、報告作業の工数を削減し、本来の営業活動に集中できる体制を構築
  • スマートフォンからの入力や、直感的な操作が使いやすさ重視のUIで営業現場での活用も推進
  • 充実した運用サポートと導入支援で、ユーザーと運用管理者双方の視点を意識した支援体制が、導入後の継続活用を後押し

SFAの導入で終わらずに、本来の目的である「営業プロセス管理の効率化」まで実現したユースケースです。

参照記事:ユーザーと運用管理者、両方の視点で選ばれたMazrica Sales―「活用の自由度の高さと導入後のサポートに期待」

まとめ

製造業における営業活動は、製品力や技術力だけで完結するものではありません。
むしろ、営業課題の複雑さや組織内外との調整の多さといった構造的な障壁を乗り越えるために、戦略的かつ体系的なアプローチが求められます。

本記事では、製造業が直面しがちな営業課題を整理し、効果的な営業戦略の立て方や、具体的な営業手法、さらに成果を出すための仕組みづくりについて解説してきました。

特に、SFAの活用による業務効率化と属人化の解消は、営業組織の成長を加速させる鍵となります。
これから営業成果をさらに高めていきたいとお考えであれば、まずは自社の営業プロセスを可視化し、改善余地を明らかにすることから始めてみてはいかがでしょうか。

そのうえで、デジタルツールの導入や外部リソースの活用といった手段を組み合わせることで、営業力は飛躍的に向上します。

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投稿者プロフィール

山本和希
山本和希

営業代行企業でIS・FS支援事業に携わった後、スタートアップ企業でインサイドセールス・マーケティングチームの立ち上げを経験。リテール系商材からIT・SaaS商材まで、幅広い領域の営業実績を持つ。その経験から、マス向けのマーケティング観点と現場での営業観点を掛け合わせた戦略立案を得意としている。

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