サブスクリプション型サービスの普及とともに、「カスタマーサクセス」という言葉が日本でも広く知られるようになりました。しかし、その具体的な意味や実践方法を理解している人はまだ少ないのではないでしょうか。
カスタマーサクセスは、顧客の成功を支援し、企業の持続的な成長を実現するための重要な考え方です。
本記事では、カスタマーサクセスが注目される背景から、関連するキーワード、さらに具体的な業務内容までをわかりやすく解説します。この記事を読むことで、カスタマーサクセスの本質を理解し、自社での実践に活かせるヒントを得られるはずです。
この記事の内容
カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセス(Customer Success)とは、文字通り「顧客の成功」を支援することを指し、顧客が提供された商品やサービスを最大限に活用して目標を達成できるよう、能動的に働きかける業務です。
具体的には、ユーザーコミュニティの運営やサービス利用状況のモニタリング、さらには課題解決に向けたコンサルティング的な役割を担うこともあります。
従来のカスタマーサポートが「顧客からの問い合わせや問題解決を受動的に対応する」ことが主だったのに対し、カスタマーサクセスは、顧客からの要望を待つだけではありません。
顧客のビジネス目標や課題を把握し、それを達成するためのプロアクティブなサポートを行うことが特徴です。例えば、利用状況のデータを分析し、顧客にとって最適な使い方を提案することで、提供サービスの価値を最大化します。
カスタマーサクセスは単なる技術的なサポートを超え、顧客の成功体験を作り出すことを目的としています。
その結果、顧客のビジネスが成功すれば、満足度が向上するだけでなく、サービスの継続利用やリピート購入にもつながります。カスタマーサクセスは、顧客と企業の双方にとって長期的な成長を支える重要な役割を果たしているのです。
関連記事:顧客満足度(CS)とは?向上のポイント・ツール7選と具体事例
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは名前が似ているため混同されがちですが、その目的やアプローチには明確な違いがあります。
関連記事:カスタマーサポートツール8選を徹底比較 | 価格と特徴を紹介
取り組む姿勢の違い
カスタマーサクセスは「顧客の成功」を目的としており、能動的に顧客に関わる点が特徴です。
一方、カスタマーサポートは「顧客の不満や不便を解消すること」を目的としており、主に顧客からの問い合わせに対応する受動的なアプローチを取ります。
具体的な業務としては、カスタマーサクセスが利用促進の提案や課題解決のサポートを行うのに対し、カスタマーサポートはFAQの作成やクレーム対応などが主です。
KPIの違い
両者のKPI(重要業績評価指標)も異なります。カスタマーサクセスは「解約率の低下」や「アップセル・クロスセル率の向上」など、顧客の成功を測る指標を重視します。
一方、カスタマーサポートでは「問い合わせ対応時間の短縮」や「対応件数の増加」など、効率性を示す指標が主な評価基準となります。この違いは、両者の目的が異なるために生じています。
KPIについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:営業のKPIとは?設定方法や指標例・KGIとの違いを簡単に解説
必要とする商材・企業の違い
カスタマーサクセスは特にBtoB企業やSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)企業で重要視される役割です。
これらの業界では顧客がサービスを継続的に利用することがビジネスの成否を左右するため、顧客の成功を支援する専門的な職種が必要となります。
一方、カスタマーサポートはほぼすべての業種で求められる普遍的な役割と言えるでしょう。
BtoB企業やSaaS企業でカスタマーサクセスが重要な理由については後述します。
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カスタマーサクセスと『The Model』の関係
カスタマーサクセスは、営業プロセスを分業化した『The Model』型の営業フローの中で重要な役割を担います。
『The Model』とは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部門に営業プロセスを分け、それぞれが専門性を発揮しながら連携する手法を指します。
この分業により、営業効率と成果が向上することが特徴です。カスタマーサクセスは、フィールドセールスが受注した顧客を引き継ぎ、サービスを最大限に活用できるよう能動的に支援します。
つまり、営業プロセスの「最後のフェーズ」を担当する役割として、『The Model』の中で重要な位置を占めています。
この構造から考えると、カスタマーサクセスは営業活動の延長線上にある職種であり、カスタマーサポートとは全く異なる目的とアプローチを持つといえます。
以上のように、カスタマーサクセスは顧客の成功を目指すプロアクティブな支援を行い、企業にとっても顧客満足度や収益向上につながる重要な役割を果たしているのです。
カスタマーサクセスが求められる背景
カスタマーサクセスが急速に注目を集めている背景には、現代のビジネス環境や顧客ニーズの変化が深く関係しています。その要因を以下に整理します。
SaaS型ビジネスモデルの増加
近年、サブスクリプション型のビジネスが急速に拡大しています。NetflixやAmazon PrimeといったBtoCのサービスだけでなく、クラウド技術の普及に伴い、BtoB領域でもSaaS(Software as a Service)として広まりました。
このクラウド型プロダクトは、導入のしやすさやインターネット接続さえあればどこでも利用できる利便性から、現在の主流となっています。
こうしたSaaSビジネスにおいては、顧客がサービスを継続的に利用することが成功の鍵となります。そのため、顧客がサービスの価値を最大限引き出せるように支援するカスタマーサクセスが、不可欠な役割を担うようになりました。
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CXの重要性の高まり
さらに、カスタマーサクセスが求められる背景には、CX(Customer Experience:顧客体験)の概念が浸透してきたことも挙げられます。
現代では「モノ」そのものよりも、購入前から購入後にわたる「コト」、すなわち顧客が得られる体験が重視されるようになっています。
例えば、スターバックスが「コーヒーを提供する場」ではなく「居心地の良い空間=第三の場所」を作ることで成功したように、CXを重視することが競争優位性を築く鍵となっています。
この流れはBtoBにも影響を及ぼし、カスタマーサクセスが顧客とどのように接するかが、そのまま顧客体験の質に直結します。
感じの良い対応が製品やサービスの印象を高め、逆に悪い対応はその価値を損ねる可能性があります。このため、カスタマーサクセス自体がCXを向上させる重要な要素となっています。
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市場の成熟と他社サービスとの差別化の必要性
市場が成熟し、グローバル化が進む現代では、競合他社との明確な差別化が求められています。
しかし、製品や技術による差別化は情報の拡散が早いため、真似されやすく、長期的な優位性を保つのが難しいのが実情です。
そのため、企業はカスタマーサクセスを通じて、顧客一人ひとりに対して適切な支援やフォローを提供し、他社には真似できない信頼関係を構築することで、顧客維持と成長を目指しています。
カスタマーサクセスは、単なるサポート業務を超えて、顧客の成功体験を創出し、企業の競争力を強化するための重要な役割を果たしているのです。
カスタマーサクセスの理解に欠かせないキーワード
カスタマーサクセスやSaaSに関連するキーワードには、比較的新しく登場した概念も多く、慣れない用語に戸惑うこともあるかもしれません。ここでは、カスタマーサクセスを理解する上で押さえておきたい重要なキーワードをわかりやすく解説します。
LTV(Life Time Value)
LTV(ライフタイムバリュー)とは、「顧客生涯価値」を指し、1人の顧客が契約期間中に企業にもたらす収益の総額を表す指標です。
サブスクリプション型ビジネスでは、顧客がどれだけ長く契約を継続し、価値を感じ続けているかを測るために重要な概念となっています。
LTVを計算する方法はいくつかありますが、代表的なものとして以下が挙げられます:
- LTV = 年間売上 × 収益率 × 顧客の継続年数
- LTV = 顧客の平均購入単価 × 平均購入回数
この指標を活用することで、収益を最大化するための戦略が見えてきます。LTVの向上は、カスタマーサクセスが追求する大きな目標の一つです。
関連記事:LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは?意味と計算方法|LTV向上に有効な営業戦略
ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ
これらは、顧客をセグメント分けし、それぞれに適した対応を行う方法を指します。
- ハイタッチ: 大口顧客やLTVの高い顧客に対し、個別対応やコンサルティングに近い支援を提供する手法
- ロータッチ: 中規模の顧客に対し、セミナーやグループセッションを活用した効率的な支援
- テックタッチ: LTVが比較的小さい顧客には、メルマガやチャットボットなど、テクノロジーを活用した支援を行う手法
このようなセグメント分けは、限られたリソースを最適に配分し、顧客一人ひとりの満足度を高めるために欠かせません。
オンボーディング
オンボーディングは、顧客がサービスを導入した際に、スムーズに定着させるためのサポートプロセスです。この言葉は、「船や飛行機に乗る」という意味の「on-board」に由来し、新しい環境に慣れさせるニュアンスを含んでいます。
SaaS製品やBtoB向けソフトウェアは多機能で便利ですが、最初は使い方に戸惑うことも少なくありません。適切なサポートがなければ、導入直後に利用をやめてしまうこともあります。
このような状況を防ぐため、カスタマーサクセスは訪問による導入支援やワークショップの開催などを通じて、顧客が製品の価値を理解し、使いこなせるよう支援します。オンボーディングは解約率を下げるための重要な取り組みです。
関連記事:カスタマーマーケティングとは?重要な理由や施策事例を解説
カスタマーサクセス導入のメリット
カスタマーサクセスが特にBtoB企業やSaaS企業で重要視される理由は、顧客との継続的な関係を築き、収益を最大化するために欠かせない役割を果たすからです。その具体的なメリットを以下に解説します。
CX(顧客体験)を高めて解約率を下げる
従来の買い切り型ビジネスでは、一度製品を販売すればその後のサポートは限定的でした。
しかし、サブスクリプション型ビジネスでは状況が大きく異なります。顧客が簡単に他社製品に乗り換えられる環境の中では、解約率の低下が最重要課題となります。月額料金が安価な場合でも、顧客が短期間で解約してしまうと、収益に大きな影響を与えます。
この問題を解決する鍵が、カスタマーサクセスの導入です。顧客がサービスを利用して成果を得られるようサポートすることで、顧客満足度を高め、契約を継続してもらいやすくなります。
特に、顧客の成功体験をサポートすることでCX(顧客体験)が向上し、それが解約防止につながります。カスタマーサクセスは、顧客との信頼関係を構築し、顧客が満足してサービスを利用し続ける環境を整えることで、収益に直接貢献します。
LTV(顧客生涯価値)の改善
カスタマーサクセスのもう一つの重要な役割は、顧客生涯価値(LTV)の向上です。顧客が契約を継続するだけでなく、アップセル(上位プランへの移行)やクロスセル(関連製品の追加契約)を促すことで、長期的な収益の最大化を目指します。
これには、顧客の成功を支援し、サービスの価値を最大限に引き出す手助けが不可欠です。
例えば、顧客が製品の機能を十分に活用できていない場合、その利用方法を提案し、課題解決に役立つ手段を示すことがカスタマーサクセスの役割です。
このような支援を通じて、顧客がさらなる価値を感じることで、継続的な利用だけでなく追加契約の機会も生まれます。結果として、カスタマーサクセスは収益の拡大に直接寄与する存在と言えるでしょう。
顧客ニーズを汲み取った製品開発ができる
カスタマーサクセスは、顧客と密接に関わる中で顧客が抱える課題やニーズを把握します。この情報を製品開発チームにフィードバックすることで、より顧客ニーズに合致したプロダクトの進化を促します。
顧客の声を反映したアップデートは、既存顧客の満足度をさらに高め、新規顧客獲得の可能性を広げる効果があります。
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カスタマーサクセスの6つのKPI
カスタマーサクセスを成功させるためには、顧客との関係を数値で把握し、成果を分析することが欠かせません。以下の6つのKPIは、カスタマーサクセスの効果を測るために重要な指標です。
- LTV
- 解約率(チャーンレート)
- リテンションレート
- アップセル率・クロスセル率
- 顧客ロイヤルティ・NPS®
- 平均使用時間
カスタマーサクセスのKPI設定については、こちらの記事内で詳しく解説しています。
関連記事:カスタマーサクセスのKPI13選!目標設定のポイントを紹介
LTV(ライフタイムバリュー)
LTV(顧客生涯価値)は、顧客が取引期間中に企業にもたらす収益の総額を示します。LTVが高いほど、顧客が企業の収益に長期間貢献していることを意味します。
LTVを向上させるためには、顧客満足度を高め、リテンション率(継続率)を維持することが重要です。カスタマーサクセスは、顧客が製品やサービスを最大限活用し、成果を上げられるよう支援することで、LTVの向上に直接貢献します。
解約率(チャーンレート)
解約率は、一定期間内に契約を終了した顧客の割合を示す指標です。解約率が高い場合、顧客の満足度が低いか、競合製品への乗り換えが発生している可能性があります。
この指標を改善するには、解約理由をデータで分析し、顧客の課題を解決するための具体的なアクションを講じる必要があります。解約率の抑制は、収益の安定化に直結する重要なKPIです。
関連記事:チャーンレート(解約率)とは?計算方法や改善方法を解説
リテンションレート
リテンションレートは、顧客がどれだけ長期間企業と関係を維持しているかを測る指標です。
リテンションレートには、契約顧客数を基に計算する「カスタマーリテンションレート」と、収益を基にした「レベニューリテンションレート」があります。
リテンションレートの向上は、顧客が製品に満足し、信頼していることを示します。この指標を活用することで、顧客維持の戦略を強化できます。
アップセル率・クロスセル率
アップセルとは、現在利用中の製品の上位モデルへの移行を指し、クロスセルは関連製品の追加契約を指します。
これらの指標は、顧客が企業の他の製品やサービスにどれだけ興味を持ち、価値を感じているかを測る重要なKPIです。
ただし、アップセルやクロスセルの提案は、顧客の成功を最優先に考えるべきです。顧客が実際に価値を感じる提案を行うことで、LTVの向上につながります。
関連記事:アップセルとは?クロスセルとの違い・具体事例を解説
顧客ロイヤルティ・NPS®
顧客ロイヤルティは、顧客が企業や製品に対して抱く信頼や愛着を示します。
NPS®(Net Promoter Score)は、このロイヤルティを数値化する指標で、アンケートなどを通じて顧客推奨度を測定します。
NPS®が高い顧客はリピーターになる可能性が高く、他の顧客にもサービスを勧めてくれるため、収益拡大の重要な要素となります。
関連記事:NPSとは?意味や顧客のロイヤルティを高める指標について解説
平均使用時間
平均使用時間は、顧客が製品やサービスをどれだけ積極的に利用しているかを示す指標です。
この数値が高いほど、顧客が製品に価値を感じ、日常的に活用していることを意味します。利用状況を把握することで、顧客に適切なサポートや改善提案を行い、満足度をさらに向上させることができます。
カスタマーサクセスの具体的な業務内容
カスタマーサクセスの業務は多岐にわたりますが、その中でも特に特徴的なものを3つ紹介します。
面談などを通じた導入・活用支援
カスタマーサクセスの主要な役割の一つが、顧客がサービスをスムーズに導入し、最大限活用できるようサポートすることです。
このプロセスには、オンボーディング(導入支援)が含まれます。特にBtoBのソフトウェアやSaaSツールは多機能であるため、初期段階では使い方に戸惑うことが少なくありません。そのまま放置すると、ツールの利用が減少し、最終的には解約につながる可能性もあります。
さらに、SaaSツールは新機能のリリースが頻繁であるため、既存顧客が新しい機能を理解し、活用するための支援も重要です。
面談やオンラインセミナー、オウンドメディアの運営など、多様な方法で顧客に情報を提供し、活用を促進します。このため、カスタマーサクセスには、1対1のコミュニケーション能力だけでなく、マーケティング知識や1対多の対応力も求められる場合があります。
関連記事:オウンドメディアとは?|マーケティングでの成功事例と採用活動への導入
ユーザーコミュニティの運営
カスタマーサクセスは、ユーザー同士が交流し、成功事例や課題解決方法を共有できるユーザーコミュニティを運営することもあります。
この取り組みにはいくつかのメリットがあります。例えば、ユーザー同士で知識を共有することでカスタマーサクセスの業務負荷を軽減したり、サービス改善のためのフィードバックを得たりすることができます。
また、コミュニティの活性化は顧客の製品活用度を高め、結果として解約率の低下や顧客満足度の向上につながります。
こうした「コミュニティタッチ」は、他のセグメント(ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチ)と組み合わせて顧客との関係を強化する戦略の一環として活用されます。コミュニティ運営がもたらす成果は、新たな機能の開発や長期的な顧客関係の構築にも寄与します。
関連記事:カスタマーサクセスにコミュニティ運営のポイントとKPIを解説
サービス活用度のモニタリング
サービスがどれほど活用されているかを定量的に把握するモニタリングも、カスタマーサクセスの重要な業務です。
具体的には、以下のような指標を使用して活用度を測定します:
- ログイン頻度
- ログイン人数
- 利用時間
- ある特定の機能の活用頻度
これらのデータを基に、「特定の顧客がツールを十分に活用できていないのではないか」「不満を持つユーザーが存在する可能性がある」といった仮説を立て、迅速に対応することが可能になります。
モニタリングを通じて得られる洞察は、顧客の課題解決や製品価値の向上に役立つだけでなく、カスタマーサクセスの活動をより効果的に進めるための基盤ともなります。
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カスタマーサクセスのプロセス
次にカスタマーサクセスを実施するプロセスを紹介します。
カスタマーサクセスは一般的に以下のプロセスが実行されます。
- 目的を明確にする
- オンボーディングで顧客支援を行う
- タッチモデル別に顧客をセグメント分けする
- KPIとヘルススコアを設定してモニタリングする
目的を明確にする
カスタマーサクセスを始める前に、その目的を明確に定めることが必要です。たとえば、「顧客体験(CX)の向上」や「LTV(顧客生涯価値)の向上」を目指すといった目標をチーム全体で共有することで、施策の方向性が具体化されます。
また、顧客自身の成功基準も合わせて整理すると効果的です。顧客の目標や課題に基づいた支援計画を立てることで、より的確なサポートが可能になります。
オンボーディングで顧客支援を行う
次に、顧客が製品やサービスをスムーズに利用開始できるよう支援するオンボーディングを行います。このプロセスには、以下のような取り組みが含まれます:
- 新規顧客への歓迎メッセージや初期設定手順の案内
- トレーニングやデモンストレーションの実施
- FAQや動画チュートリアル、マニュアルの提供など、自主学習を促すリソースの整備
これらのサポートを通じて、顧客が製品の基本機能を理解し、迅速に活用を始められる環境を作ります。オンボーディングが適切に行われることで、解約リスクを抑える効果が期待できます。
タッチモデル別に顧客をセグメント分けする
次に、顧客をセグメント分けし、それぞれのニーズに応じたサポートを提供します。
- ハイタッチモデル: 大口顧客や重要顧客には、訪問やオンラインミーティング、個別対応などの手厚いサポートを提供する
- ロータッチモデル: 中規模の顧客には、セミナーや自動化ツールを活用した効率的なサポートを提供する
- テックタッチモデル: サポートが最小限で済む顧客には、メルマガやチャットボット、ウェビナーなどを活用した一斉対応を行う
顧客を適切に分類することで、リソースを効果的に配分し、すべての顧客に価値ある支援を届けることが可能になります。
KPIとヘルススコアを設定してモニタリングする
最後に、成果を測定し、顧客の状況を継続的に把握するためにKPI(重要業績評価指標)とヘルススコアを設定します。
これらを継続的にモニタリングすることで、顧客の不満やリスクを早期に発見し、迅速な対応が可能になります。例えば、ヘルススコアが低下した顧客には個別のアプローチを行うなど、データに基づいた具体的なアクションを取ることができます。
ヘルススコアの詳しい設定方法についてはこちらの記事をご確認ください。
関連記事:カスタマーヘルススコアとは?導入のメリットと5つのポイント
カスタマーサクセスに必要な6つのスキル
カスタマーサクセスを成功させるためには、さまざまなスキルが必要です。以下では、特に重要な6つのスキルについて解説します。
コミュニケーションスキル
顧客との信頼関係を築くためには、効果的なコミュニケーションが欠かせません。
顧客のニーズや課題を正確に把握し、適切な情報を分かりやすく伝える能力が求められます。口頭・書面のどちらでもスムーズに意思疎通を図れるスキルが重要です。また、顧客の意見を傾聴する姿勢も信頼関係を深める鍵となります。
製品知識
自社製品やサービスについて深い理解を持つことは、顧客をサポートする上で不可欠です。
製品の機能や利点を説明するだけでなく、顧客の具体的な状況に応じた活用方法を提案できる知識が求められます。
また、新しい機能や更新情報に常に敏感であることも大切です。製品知識を磨くことで、顧客に最大限の価値を提供できます。
データ分析力
顧客の利用データを分析し、利用状況やトレンドを把握する能力は、カスタマーサクセスにおける重要なスキルです。
データをもとに顧客の課題や改善点を特定し、適切な提案を行うことで、顧客満足度の向上や解約リスクの軽減につながります。基礎的なデータ分析スキルを習得することが、より効果的なサポートにつながるでしょう。
プロジェクト管理スキル
複数の顧客を同時に管理し、それぞれに適したサポートを提供するためには、プロジェクト管理スキルが必要です。
タスクの優先順位を明確にし、計画を効率的に進行させる能力が求められます。また、顧客の課題に迅速に対応するための問題解決力も欠かせません。
これらのスキルは、顧客対応の質を高めるだけでなく、自身の業務効率化にも寄与します。
チームワーク
カスタマーサクセスは、チーム全体で取り組む活動です。他部門(営業、マーケティング、サポートなど)と連携し、顧客にとって最適な対応を行うためには、情報共有や協力が欠かせません。
チーム全体の力を最大限に活用するための協調性と柔軟性が必要です。
柔軟性と適応力
顧客のニーズやビジネス環境は常に変化しています。そのため、新しいツールやプロセスを迅速に習得し、変化に対応できる柔軟性が重要です。
状況に応じた適切な判断を行い、最善のアプローチを模索する姿勢が求められます。
カスタマーサクセス成功のための3つのポイント
ここからは、カスタマーサクセス成功のための3つのポイントを紹介します。
顧客データの収集・管理・分析
顧客の成功を支援するには、まず顧客を深く理解することが不可欠です。そのための基盤となるのが、顧客データの収集、管理、分析です。データを活用することで、顧客の行動や利用状況だけでなく、潜在的なニーズや課題も明らかにできます。
自社のCRM(顧客管理ツール)やDMP(データマネジメントプラットフォーム)を活用して顧客情報を整理し、必要な時にすぐに活用できるデータドリブンな環境を構築することが重要です。これにより、個々の顧客に合わせた具体的な施策を効率的に実行できます。
関連記事:顧客データの管理方法を解説!分析と活用で企業成長に繋がる
LTVを最大化させる
LTV(ライフタイムバリュー)は、顧客が契約期間中に企業にもたらす収益の総額を指します。カスタマーサクセスの重要な目的の一つは、このLTVを最大化することです。LTVを高めるためには、顧客との継続的な取引を促進し、製品やサービスの価値を長期的に提供する必要があります。
特に注目すべきなのは、顧客との関係性です。顧客の課題を迅速に解決し、製品やサービスの価値を早期に実感してもらうことで、満足度を高め、長期間にわたる利用を促進できます。
顧客のモチベーションを維持しながら、負担を軽減することも重要なポイントです。
関連記事:LTVを最大化させるには?定義や計算方法、最大化方法を詳しく解説
顧客の状況に合わせて対応を変える
顧客ごとに異なるニーズや状況に対応するため、柔軟なアプローチが必要です。顧客をセグメント分けし、それぞれに最適な対応を提供することで、リソースを効率的に活用できます。
たとえば、ハイタッチモデルの大口顧客には、個別対応や細やかなサポートが必要です。一方、ロータッチモデルの顧客にはイベントやワークショップを活用した集団対応が適しており、テックタッチモデルの顧客には、動画マニュアルやeBookといった自動化されたリソースが効果的です。
これに加え、顧客のヘルススコア(ログイン頻度やNPSなどで測定)を活用することで、サービス活用状況に応じた適切なアプローチを選択できます。
カスタマーサクセスにおすすめのツール5選
カスタマーサクセスにおすすめのツールを見ていきましょう。
尚、カスタマーサクセスツールについては、こちらの記事内で12のツールを紹介しています。
関連記事:カスタマーサクセスツール15選|顧客管理に必要なツールとは?
Mazrica Sales|運用定着からオンボーディング管理まで
サブスクリプションモデルのビジネスを行う上では、顧客に継続して利用してもらうことを意識しなければなりません。
そのためには、一番はじめの導入時点で適切にオンボーディングを行い、運用定着させることが重要です。
そこでおすすめするツールが「Mazrica Sales」です。
Mazrica Salesは顧客管理の機能を持つCRM/SFAでありながらも、「メール一斉配信機能」をもちいてメルマガなどを顧客に配信できるため、効率的に顧客の定着サポートを行うことができます。

また、カンバン方式で見やすい案件ボードを使って、チーム内で顧客の情報を共有することも可能。
オンボーディングに課題を感じている企業にぴったりの製品です。
【料金】
- Starter:月額27,500円~
- Growth:月額110,000円~
- Enterprise:月額330,000円~
【無料トライアル】
SFA/CRM・営業支援ツール『Mazrica Sales』は無料トライアルが可能です。以下のリンクよりお申し込みください。
DealPods(ディールポッズ)|顧客とのコミュニケーションを最適化
カスタマーサクセスにおいて、自社と顧客間のコミュニケーションを円滑化するためにお勧めなツールが「DealPods(ディールポッズ)」です。
DealPods(ディールポッズ)は営業・カスタマーサクセスと顧客においてやり取りされる、
- 製品紹介やマニュアルなどの資料
- 参考Webページやデモンストレーション動画などのURL
- 議事録や案件サマリーなどのテキストメモ
- 約束や宿題、確認事項など双方のタスク管理
- 連絡や質問などのチャットコミュニケーション
上記の情報を、たったの数十秒で構築できる堅牢な招待制マイクロサイト(専用Webページ)のURL一つにまとめて共有します。
カスタマーサクセスは、マイクロサイト内での顧客の行動情報を取得し顧客分析を可能にすることで、求められている情報を求められているタイミングで提供できるようになります。
これにより顧客は、より早く、楽に、知りたい情報を取得でき顧客体験(CX)が向上します。
カスタマーサクセスは、より早く、確実に顧客と信頼関係を築きながらエンゲージメントを高めることができます。
カスタマーサクセスも顧客も、互いに協力し合い案件やプロジェクトを前に進められるようになるのです。
SuccessHub(サクセスハブ )|次にするべきアクションが見える
「SuccessHub」は、「企業とユーザーが融け合う社会を実現する」ビジョンを掲げるコミューン株式会社が提供する、効率的な営業活動・カスタマーサクセスのためのアクション基盤です。 お客様の状況をすぐに把握し、一箇所でアクション・連絡が可能になり、営業・カスタマーサクセスのアクションが最速で効率化されます。
【SuccessHubが解決する課題】
- すべてのお客様に一箇所からアクション
- すべてのお客様の状態を一括管理
- 次に何をすべきかがすぐ分かり、迷わない
【料金】
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arch(アーチ)|解約やアップセルの兆候を察知
カスタマーサクセスのkpiでもあるLTVを向上させるには、解約率をできるだけ下げて、アップセル・クロスセルを適切に促す必要があります。
そこで利用したいツールが「arch(アーチ)」です。
archは、売り手と買い手のコラボレーションの場を実現できるデジタルセールスルームツールです。
CRMやチャットツールなど社内の様々なツールに点在している顧客情報を一元化し、自動的に顧客データを分析することで解約やアップセルの兆候を発見できます。
可視化された分析データを見ながら次のうち手を考えることで、解約率の低下やアップセルの増加を図れるため、結果的にLTVの最大化を目指せるでしょう。
【料金】
お問い合わせ
EmotionTech(エモーションテック)|NPS®を簡単に計測・分析
顧客ロイヤルティ・NPS®はアンケートを活用しますが、データの収集・計測・分析作業は非常に手間ですし、専門的な知識が必要になります。
そこで利用したいツールが「EmotionTech(エモーションテック)」です。
EmotionTechを使えば、簡単に顧客の本音を聞き出すNPS®のアンケートを作成・集計し、顧客属性などのデータと合わせて分析を行うことができます。
また、分析機能も特許を取得している独自の手法を使用しているため安心です。
サービス改善のためにNPS®を集計して顧客課題を明確化させたい、と考えている企業にぴったりでしょう。
【料金】
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カスタマーサクセスの成功事例
カスタマーサクセスはここ10年ほどで普及した、日本でもかなり新しい職種ですが、既に日本国内の企業においてもカスタマーサクセスを成功させ、企業の大きな発展に繋げた事例があります。
今回紹介するのは、「Sansan株式会社」と「株式会社SmartHR」です。
Sansan株式会社
Sansan株式会社は「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」と、個人向け名刺アプリ「Eight」を展開する国内のSaaS企業です。「それ、早く言ってよ~」というCMでご存じの方も多いのではないでしょうか。
Sansan株式会社は、まだサブスクリプションが日本に浸透していなかった2007年から事業を開始し、2012年に国内初のカスタマーサクセス部門を立ち上げました。
現在では名刺管理サービスのマーケットシェアの83.5%を占め(出典:Sansan、法人向け名刺管理サービス8年連続シェアNo.1)、圧倒的な業界No.1企業となっています。
このように、現在大きな発展を遂げてきたSansan株式会社ですが、カスタマーサクセスとしてはオンボーディングに徹底的にフォーカスした戦略をとってきました。
Sansan株式会社は、はじめの導入時期にどれだけ製品の使い方を理解してもらえるか、そしてどれだけ成功体験を感じてもらえるかが大事であることを見抜いていたのでしょう。
結果、現在は解約率0.60%というSaaS業界トップクラスの驚異の数字を叩き出すことに成功しています。
企業HP:https://jp.corp-sansan.com/
▶【無料ebook】名刺管理ツール(Sansan)を営業現場でもっと活躍させる方法とは?
株式会社SmartHR
株式会社SmartHRは「社会の非合理を、ハックする。」をミッションに、法人向けのクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を展開する国内のSaaS企業です。
2015年のソフトウェアのローンチ以降より急速に拡大を続け、2021年6月にはシリーズDの156億円にものぼる資金調達を行っており(出典:クラウド人事労務ソフトを提供するSmartHR、約156億円のシリーズD資金調達を実施)、国内ユニコーン企業への仲間入りを果たしたことでも大きな話題になりました。
このように、2021年現在もっとも日本で勢いのある企業となっている株式会社SmartHRですが、継続率に関してもなんと99.5%という驚異の数値を誇っています。
強さの一つにあるのはカスタマーサクセスの戦略。
株式会社SmartHRではカスタマーサクセスチームを企業規模や導入フェーズごとに細分化し、それぞれに対して違ったアプローチをとることを戦略としてきました。
オンボーディング専門のチーム、大企業担当のチームと中小企業担当のチーム、ユーザーが自身で活用度合いを深められるようなコンテンツを企画するチーム、ユーザーの活用データを分析して適切なサポートタイミングを設計するチームなどに分け、全体のKPIを意識しつつ、それぞれのチームKPIも意識することで、継続率99.5%という数値を達成するに至ったのです。
カスタマーサクセスにおける注意点
カスタマーサクセスを成功させるためには、いくつかの注意点を押さえておくことが重要です。以下に、その中でも特に重要なポイントを解説します
顧客にとって何が成功かを意識する
カスタマーサクセスの目的は、顧客の成功を支援することですが、その「成功」が具体的にどのような状態を指すのかを明確に定義する必要があります。
これを怠ると、支援活動の方向性が不明確になり、顧客が今どの段階にいるのか、成功に向けてどれだけ進んでいるのかを正確に把握できなくなります。
特に、カスタマーサクセスを導入したばかりの組織でよくある失敗として、成功状態の定義が曖昧なまま支援を進めてしまうケースが挙げられます。
顧客ごとに異なるゴールや基準を整理し、これをチーム内で共有することが大切です。具体的な成功基準を設けることで、効果的な支援計画を立てやすくなります。
部署を超えた組織全体で取り組むことを意識する
カスタマーサクセスは、一部署だけで完結する活動ではありません。営業部門(インサイドセールスやフィールドセールス)、開発部門(エンジニアリングチーム)、さらには経営陣との密な連携が求められます。
これらの部門と連携することで、顧客に対して包括的かつ効果的な支援を提供することが可能になります。
しかし、必要な情報が共有されていなければ、適切な連携が難しくなり、結果として顧客に十分な価値を提供できなくなるリスクがあります。
たとえば、KPIやアクションプランなど、カスタマーサクセスの目標や施策に関する情報を他部署と適切に共有しておくことが欠かせません。
また、定期的なミーティングやドキュメントの整備などを通じて、部門間の目線を揃える努力が必要です。
まとめ|カスタマーサクセス実現のため自社に合ったツールの導入がおすすめ
いかがでしたでしょうか。カスタマーサクセス(Customer Success)とは、既に商品を購入している顧客に対し能動的に関わり「顧客のサクセス(成功体験)の実現」を支援することです。
また、カスタマーサクセスの概要、重要性からKPI、おすすめのツールまで紹介させていただきました。
中でも特におすすめなのがMazrica Salesです。Mazrica Salesは顧客管理の機能を持つCRM/SFAでありながらも、「メール一斉配信機能」でメルマガなどを顧客に配信できるため、効率的に顧客の定着をサポートできます。
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