ビジネスの成功を目指す上で、目標達成のために正確な指標を設定することは不可欠です。

その中でも「KGI(重要目標達成指標)」は、企業の全体戦略を方向づける重要な役割を担っています。

たとえば、売上目標や市場シェアの達成といったKGIは、組織全体の共通ゴールとして機能します。

では、KGIは他の指標(KPIやOKRなど)と何が違うのでしょうか? そして、なぜ正確にKGIを設定することが重要なのでしょうか?

この記事では、KGIの基本的な意味やメリット、設定の具体例を解説します。

これを通じて、組織の目標達成を加速するためのヒントをお伝えします。

KGIとは

KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」や「経営目標達成指標」と訳されます。

これは、企業や組織が達成すべき最終的な目標を数値化した指標を指します。

たとえば、年間売上10億円の達成や新規顧客1000名の獲得など、組織全体が共有できる具体的な目標を意味します。

KGIを明確に設定し数値化することで、目標達成に向けた行動が組織内で明確化し、全員が同じ方向に向かうことが可能になります。

また、数値データは関係者との共有を容易にし、進捗確認やフィードバックにも役立ちます。

KGIがあることで、目標達成までのプロセスが見える化され、計画の実行性が高まるのです。

特に、WebやIT業界のように変化のスピードが速く、迅速な意思決定が求められる分野では、KGIは重要な役割を果たします。

ただし、製造業や小売業などの他業界でも、戦略的な目標管理に有効です。

すべての組織において、KGIは長期的な成功を支える土台となる指標といえるでしょう。

関連記事:業績管理とは?成功のポイントとKPI・KGIについても解説

KGIの活用例

KGIは、企業の経営やビジネスにおける最終目標を定量的に評価するための指標です。

代表的な例として、売上高、成約数、利益率、業界内シェアなどが挙げられます。KGIを適切に設定することで、組織全体が同じ目標に向かって効率的に進むことが可能になります。

たとえば、新たに市場に参入したスタートアップ企業では、製品やサービスの知名度向上が最優先課題となります。

「1年後までに全国的な認知度を50%向上させる」や「初年度に新規顧客を1万人獲得する」といったKGIが適切です。

KGIを設定することで市場での存在感を定量的に評価し、次の戦略を立てる基盤を築くことができます。

一方、海外進出を目指す成熟企業では、KGIの焦点が異なります。

現地市場での競争力やブランド認知度が成功の鍵となるため、「2年後までに海外市場での売上を全体の30%に拡大する」や「次年度までに海外でのブランド認知度を20%向上させる」といったKGIが効果的です。

KGIを明確に設定することで、グローバル展開に向けた成長戦略を具体化できます。

さらに、地方市場への進出を目指す中小企業の場合、「1年以内に新規取引先を50社獲得する」や「地域のイベントでの参加者満足度を90%以上にする」などのKGIを設定することで、地域密着型の成功戦略を描けるでしょう。

KGIは企業の状況や目標に応じて柔軟に設定できるため、どのようなフェーズの企業にも適用可能です。

KGIとKPI・KFS・OKRの違い

企業経営においては、KGI、KPI、KSF、OKRといった指標が、それぞれ異なる役割を持ちながら相互に補完し合う重要な存在です。

それぞれの違いを正しく理解することで、目標管理の精度を高め、組織全体の成果を向上させることができます。

KGI:最終目標

KGI(Key Goal Indicator)は、企業が目指す最終的な目標を定量的に示す指標です。

たとえば、「年間売上10億円達成」や「海外市場シェアを30%に拡大」など、全体戦略を具体化するものです。

KGIを設定することで、組織全体が共通の目標に向けて行動しやすくなります。

KPI:プロセスの進捗管理

KPI(Key Performance Indicator)は、KGIを達成するための進捗を測定する中間的な指標です。

KPIは部門やプロジェクトごとに設定され、進行状況の把握に役立ちます。

たとえば、新製品の販売目標がKGIの場合、KPIとして「月間問い合わせ数の増加」や「販売スタッフのトレーニング完了率」などが適切です。

KSF:成功の鍵となる要因

KSF(Key Success Factor)は、KGIやKPIを達成するために特に重要な成功要因を定義します。

成功要因は定性的な要素を含むことが多く、組織の競争力や成功の条件を示します。

たとえば、飲食チェーンが「新店舗の売上を既存店舗の120%に引き上げる」というKGIを設定している場合、KSFとして「地域特化のメニュー開発」や「店舗運営ノウハウの活用」が挙げられるでしょう。

OKR:柔軟で全社的な目標管理

OKR(Objectives and Key Results)は、企業全体の目標(Objective)とその達成を評価する主要な結果(Key Results)を組み合わせたフレームワークです。

KGIやKPIが特定の目標やプロセスにフォーカスするのに対し、OKRは企業全体のビジョンや長期的な戦略を共有し、進捗を定期的に見直す手法です。

たとえば、スタートアップ企業が「次の3か月で新しい市場に進出する」というObjectiveを設定し、そのための具体的な成果(Key Results)として「5つの新規取引先を確保」や「マーケットリサーチを完了」などを設定する場合、OKRは柔軟な戦略立案に役立ちます。

KGIを設定するメリット

KGIを設定することで、社内外に目標を可視化し、理解や信頼を深めることができます。

KGIがあることで企業全体での一体感や、業務効率が向上するなど、さまざまなメリットが生まれます。

目標が明確になる

KGIを数値として設定することで、企業が目指すべきゴールが明確になります。

「いつまでに何を達成するのか」を誰もが理解できるようになり、

KPIを通じて具体的なアクションプランも示されるため、従業員は日々の仕事において何を優先すべきかが明確になります。

その結果効率的に業務を進めることができるようになります。

モチベーション維持が容易になる

KGIが設定されると、会社全体として共通の目標に向かう姿勢が明確になり、社員のモチベーションが高まります。

企業のビジョンが具体的に示されることで、従業員は自分の役割をより理解しやすくなり、日々の仕事に対してのやりがいを感じやすくなるでしょう。

KGIによって、組織内の一体感も強まり、より高いパフォーマンスが期待できます。

外部に対しても信頼を築きやすくなる

KGIを設定することで、企業の最終目標が明確になり、外部のステークホルダーにも企業の方針や進捗状況をわかりやすく説明できるようになります。

具体的な数値目標を持つことは、取引先や投資家からの信頼を得る上でも有効で、会社の成長や戦略についての理解を促進しやすくなります。

長期的な戦略の一貫性を保てる

KGIは企業の最終的な目標を示すため、短期的な成果に一喜一憂せず、長期的なビジョンに基づいた経営判断を行うことが可能です。

最終的な目標があることで日々の業務に追われて大きな方向性を見失うことなく、経営の一貫性を保ちながら進めていくことができます。

特に、大規模なプロジェクトや事業展開においては、KGIがあることで組織全体が長期的な目標に集中しやすくなります。

リソースの最適な配分が可能になる

KGIを設定することで、企業の最終的なゴールがはっきりするため、どこにリソースを集中すべきかが明確になります。

限られた時間や予算、人材をどのように割り振るべきか、KGIを基に優先順位をつけることができ、無駄なリソースの消費を防ぎ、効率的な運用が可能になります。

作業優先度が明確になる

KGIを設定することで、目標達成に直結する業務が明確になり、優先すべき作業に集中できます。

たとえば、「年間売上10億円」をKGIに掲げた場合、新規顧客獲得やリピート率向上といった売上に直結する施策が優先されます。

一方、長期的な課題解決や影響の薄い業務は後回しにする判断が可能です。

チーム全体がリソースを最適化し、効率よく目標達成に向けて動けるようになります。

KGIの設定方法

KGIを設定する際には、「SMARTの法則」を活用することが非常に効果的です。

SMARTの法則とは、目標設定を行う際に重要視すべき5つの要素を指し、多くの企業や組織で広く使われているフレームワークです。この法則を用いることで、より現実的で効果的な目標設定が可能になります。

ここでは、SMARTの法則の各項目について簡単に解説します。

具体性(Specific)

目標は誰にでも理解できるよう、明確で具体的な内容に設定する必要があります。

曖昧な目標では、行動方針が不明確となり、成果が得られにくくなります。たとえば、「売上を増やす」ではなく、「第2四半期までに新規顧客数を50件増やす」といった具体的な目標設定が求められま

す。

測定性(Measurable)

設定した目標は、達成度を測定できるように数値化することが重要です。

達成状況が見えないと、進捗管理が困難になり、モチベーションの維持も難しくなります。

「売上を向上させる」という曖昧な表現よりも、「売上を前年比20%増加させる」と具体的な数値で示すことで、達成度合いが明確になります。

達成可能性(Achievable)

目標は現実的に達成可能な範囲に止めることが重要です。あまりにも高すぎる目標は、社員のやる気を失わせ、逆効果となることがあります。

リソースや時間、スキルを考慮した上で、実現可能な目標を設定することが大切です。

関連性(Relevant)

企業全体の戦略や目標と一致しているかも重要です。

個別の目標が企業全体の方向性と異なると、活動がバラバラになり、最終的なゴールに到達できません。

たとえば、企業理念で「従業員の幸福」を掲げているのに、KGIとして株主利益ばかりを優先してしまうと、目標同士が矛盾し、組織全体のバランスを崩す原因になります。

期限(Time-bound)

目標には必ず期限を設けることが重要です。

期限がないと、行動のスピード感が失われ、計画の実行が遅れがちになります。「いつまでに達成するのか」を明確にすることで、目標達成に向けた進捗管理がしやすくなり、社員一人ひとりの行動にもメリハリが生まれます。

この5つの要素は、KGIを設定する際に注意すべきポイントであり、また設定後の見直しや調整を行う際のチェックリストとしても活用できます。

SMARTの法則をしっかりと活用し、これらの要素をバランスよく設定することで、企業全体が一致団結して目標に向かって進むことができ、成果を最大化できるでしょう。

KGI設定でのよくある失敗

KGIの設定にはSMARTモデルが有効ですが、いずれかの要素が欠けていると目標達成が難しくなり、以下のような失敗例が生じることがあります。具体的な例を挙げながら説明します。

定量的に測定できない

「売上を上げる」といった曖昧なKGI設定は少なくなってきましたが、最近では「顧客との関係を強化する」や「従業員のエンゲージメントを高める」といったKGIを掲げる企業があります。

これは、明確性(Specific) と 測定可能性(Measurable) が欠けている例です。

例えば、「顧客との関係を強化する」といった目標は、具体的な内容がないため、その進捗や成功をどのように測定するかが不明確です。

このような設定では、次の段階でKGIを分解したり、KPIを抽出することが難しくなります。より効果的な設定としては、「半年後に顧客満足度調査での評価を現在の3.0から3.8に引き上げる」とすることで、目標が具体化され、測定可能なものになります。

実現可能性が低い目標を立てる

現実性(Achievable) が欠けたKGIもよく見られます。

特に、トップダウンの決定で「来年の新規顧客数を3倍に増やす」といった目標が設定される場合などです。

このようなケースでは、過去の実績や市場動向、リソースを考慮せずに設定されたため、目標が非現実的になってしまいます。

例えば、過去5年間の顧客増加率が毎年10%程度だった企業が、来年の新規顧客を3倍にする目標を掲げるのには無理があります。

現実性を担保するためには、過去のデータを分析し、成長の限界や経済状況を考慮した上で目標を設定する必要があります。

適切なKGIの例としては、「次年度の新規顧客数を前年対比20%増加させる」などが挙げられます。

関連性がない

実は SMARTモデルにおいて最も見過ごされがちな要素が、関連性(Relevant) です。

KGIとKPIが連動していない、または関連性が低い場合、目標達成に向けた取り組みがバラバラになることがあります。

たとえば、KGIが「1年以内に新製品の売上を10%増加させる」という目標であるにもかかわらず、KPIとして「広告コストを削減する」を設定した場合、KGIとの関連性が弱くなります。

広告を削減することで売上にどう影響が出るのかが不明確なため、KPIが本来の目標に寄与していない可能性が高くなります。

関連性の欠如は、KGIとKPIを適切にリンクさせていない企業でよく見られる問題です。KPIを設定する際は、最終的な目標に直結する指標を選定し、KPIがKGIにどう貢献するのかを明確にすることが重要です。

現状を把握する体制が整っていない

KGIを設定するには、現状を正確に把握することが欠かせません。

たとえば、「年間売上10億円」をKGIに設定する場合、現在の売上や顧客数、リソース状況を明確にする必要があります。

現状を正確に把握するためには、

  • 必要なデータの収集
  • CRMなどの分析ツールの活用
  • 部門間の情報共有体制の構築

の項目を整備することが大切です。

現状を把握することで、実現可能な目標設定ができ、戦略を具体化しやすくなります。

KGI設定のチェックリスト

KGIを効果的に設定するには、いくつかのポイントを確認することが重要です。

以下のチェックリストを活用して、適切なKGIが設定されているかを確認しましょう。

  • 目標が具体的で数値化されているか

「売上を伸ばす」ではなく、「年間売上を10億円に達成する」のように具体的な数字を設定することが大切です。

  • 実現可能性があるか

現状のデータやリソースを基に、達成可能な目標かを見極めましょう。

  • 組織全体で共有できる目標か

部門ごとの目標や施策と整合性が取れているか確認しましょう。

  • 期限が設定されているか

「いつまでに達成するか」を明確にすることで、進捗管理が容易になります。

  • 達成後の効果が測定可能か

目標達成が組織にどのような影響を与えるかを評価できるようにします。

このチェックリストを基にKGIを設定することで、目標が現実的かつ効果的であることを確認でき、組織全体の戦略を明確に進めることができます。

終わりに

この記事では、KGIについてご紹介するとともに、KPIやOKRとの比較、KGIの設定方法について踏み込んで解説を行いました。

自分の会社にどのような指標が合っているかよく考えて、目標設定をすることで着実に成長することが可能です。

SFAなどのツールも活用して、会社全体を前進させるような目標設定を行いましょう。

“正しいKPIマネジメント” とは?

本ebookでは、KPIという言葉の定義から、KPIマネジメントを実行する上で押さえるべき3ステップを分かりやすく解説。

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Mazrica Business Lab.はクラウドアプリケーションMazricaの開発・提供を展開する株式会社マツリカが運営するオウンドメディアです。営業・マーケティングに関するノウハウを中心に、ビジネスに関するお役立ち情報を発信しています。

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