営業活動においてKPIの設定が重要だと耳にするものの、具体的な意味や効果を十分に理解していない方も多いのではないでしょうか。
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、営業成績の可視化や成果の向上を図るうえで欠かせない指標です。
この記事では、KPIの基本的な定義に加え、営業活動で成果を最大化するための設定方法を解説します。
営業成績を伸ばしたい、効率的に営業したいという人はぜひ参考にしてください。
この記事の内容
営業におけるKPIとは?
営業におけるKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)とは、営業活動の進捗を数値化し、目標達成度を測定する指標です。
営業活動は「すぐに成果が見えにくい」「どの業務に注力すべきかわかりづらい」といった課題を抱えがちですが、KPIを設定することで、目標に向かって正しく進んでいるかを確認できます。
KPIは営業担当者のパフォーマンス向上にも役立ちます。KPIが明確であれば、何を優先すべきかが分かり、業務の迷いが減ります。
例えば、法人営業では「新規見込み客100社に対して電話営業を行う」などの具体的なKPIを設定すると、進捗状況が可視化され、目標達成のために必要なアクションが明確になります。
また、営業におけるKPIの設定には、「売上目標に直結する指標を選ぶこと」が重要です。
例えば、新規顧客の獲得数、商談件数、成約率などがよく使われます。
適切なKPIを設定し、営業活動の精度を高めることで、成果の最大化を目指しましょう。
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KPIとKGIの違い
KGI(Key Goal Indicator)は、「重要目標達成指標」の略称であり、ビジネスにおいて最終的に達成したい目標を指します。 一方で、KPI(Key Performance Indicator)は、KGIを達成するための中間指標であり、各プロセスの達成度を測定するために用いられます。
例えば、営業のKPIは、営業担当者の行動レベルで管理される具体的な数値目標(例:「月に100件の新規顧客へのアプローチ」)を指し、KGIは企業全体の最終的な成果(例:「年間売上10億円達成」)を示します。
各KPIの達成が積み重なることで、最終的にKGIの達成につながると理解しておくとよいでしょう。
KPIとKFS(CSF)の違い
KFS(Key Factor for Success)は、CSF(Critical Success Factor)とも呼ばれ、「重要成功要因」を意味します。 KPIやKGIと異なり、KFSは目標達成のために必要な「要因」を示す概念であり、特定の数値指標ではありません。
例えば、営業成績向上のためのKFSとして「効果的なトレーニングの実施」「顧客データの正確な管理」などが挙げられます。これらの要因が整っている場合、KPIの達成が促進され、結果としてKGIの実現につながります。
KGI、KFS、KPIの関係性
KPI、KGI、KSFのそれぞれの関係性は下記のようになります。
- KGI(重要目標達成指標):組織の最終的な目標(例:「年間売上10億円」)↓
- KFS(重要成功要因):目標達成に必要な要因(例:「営業トレーニングの実施」「顧客データの管理」)↓
- KPI(重要業績評価指標):目標達成までの行動指標(例:「月100件の新規アプローチ」)
営業のKPIを設定するメリット
KPIとは目標を達成するための指標です。それでは、営業活動でKPIを設定することのメリットは何でしょうか。
目標の明確化
KPIを設定することで、営業チームや個々の営業担当者に明確な目標が与えられます。
これにより、何を達成する必要があるかが明確になり、業績向上に向けた努力が集中しやすくなるのです。
また、KPI達成による達成感やインセンティブ獲得が営業担当者のモチベーション向上の要因にもなります。
評価基準の設定
KPIは業績を測るための基準となります。営業活動の成果を定量的に評価し、目標達成度を把握することができます。
これにより、チームや個人の強み・改善点を明確にできます。
改善の促進
KPIは定期的に評価されるため、業績が目標に達していない場合や改善の余地がある場合には、問題点を特定し、改善策を導入するきっかけとなります。
これにより、営業プロセスや戦略の効率性が向上します。
関連記事:業績改善・業績向上とは?強い営業組織を作るための4つの条件と成功のポイント
営業戦略の調整
KPIの分析により、営業戦略やアプローチの効果を評価し、必要に応じて調整することができます。
市場の変化や競合状況に適応するためには、柔軟性を持った戦略が求められます。
営業のKPIの設定方法
それでは、ここからKPIの設定方法について詳しく解説します。
KGI(重要目標達成指標)を設定する
KPIを設定する前に、まず最終目標となるKGI(Key Goal Indicator)を明確にしましょう。KGIは「企業や部門全体としての最終的な目標」を示し、KPIはその達成のための中間指標となります。
例えば、「年間売上1億円を達成する」というKGIに対して、「月間100件の商談を行う」などのKPIを設定することで、目標達成に向けた具体的なアクションが明確になります。
【KGIと関連するKPIの例】
KGI(最終目標) | 関連するKPI(中間指標) |
年間売上1億円の達成 | 月間100件の商談実施 |
新規顧客50社の獲得 | 月間50件のアポイント獲得 |
既存顧客の契約更新率90%維持 | 3ヶ月ごとのフォローアップ実施 |
関連記事:KGIとは?ーKPI・OKRとの違いをまとめて解説
重要な営業プロセスを洗い出す
KGIを設定したら、達成のためにどの営業プロセスが鍵となるのかを整理しましょう。営業プロセスは業種や営業手法によって異なりますが、以下のようなステップが一般的です。
- リード獲得:新規顧客との接点を増やす
- アポイントメント設定:商談の機会を確保する
- 商談・提案:商品やサービスの価値を伝える
- 契約・受注:成約に結びつける
- フォローアップ:既存顧客との関係を維持し、追加販売につなげる
このプロセスを整理することで、どの段階に課題があるのかを把握し、適切なKPIを設定する準備ができます。
関連記事:営業プロセスの見える化とは?可視化の3ステップを解説
KPIを設定する
営業プロセスが明確になったら、それぞれのプロセスに対応したKPIを設定します。 KPIを設定する際は、以下のSMARTの法則を意識すると効果的です。
- Specific:「具体的な」
- Measurable:「計測可能な」
- Achievable:「達成可能な」
- Relevant:「関連する」
- Time-bound:「期限が明確な」
営業プロセスに沿って設定すると、以下のようなKPIが考えられます。
- リード獲得数(新規顧客リストの増加数)
- アポイント獲得率(リードに対するアポイントの成功率)
- 商談件数(月ごとの商談回数)
- 成約率(商談からの契約成功率)
- 顧客単価(1件あたりの平均契約額)
適切なKPIを設定することで、営業担当者が何に注力すべきかが明確になり、効率的な営業活動が可能になります。
KPIのモニタリング方法を決める
KPIを設定しただけでは意味がなく、定期的に進捗を確認し、必要に応じて軌道修正することが重要です。
KPIのモニタリング方法を決める際には、以下のポイントを考慮しましょう。
- 測定頻度の設定:KPIを毎日、週次、月次で測定するかを決める
- データの可視化:営業管理ツール(CRMやSFA)を活用し、KPIをリアルタイムで把握できるようにする
- レポートの活用:営業会議などでKPIを報告し、チーム全体で状況を共有する
適切なモニタリングを行うことで、営業チームのパフォーマンスを維持・向上させることができます。
KPIを改善・最適化する
KPIの運用は、設定したら終わりではなく、継続的に改善していくことが重要です。以下のステップでKPIを見直し、最適化していきましょう。
- 実績と目標の差を分析:目標達成率を定期的に確認し、ギャップがある場合は原因を特定する
- ボトルネックを特定:どの営業プロセスに課題があるのかを分析し、改善点を洗い出す
- KPIの見直し:現状の営業環境に適したKPIに調整する
- 新たな施策の導入:営業手法やプロセスを改善し、KPI達成を目指す
例えば、アポイント件数が目標に届かない場合、ターゲットリストの見直しやアプローチ手法の改善を検討することで、成果を向上させることができます。
▶▶KPIを毎期達成し続けるための営業改革とは?【営業組織の到達度診断シート】
営業のKPIを設定する上での注意点
KPI設定方法の解説の前に、KPIを設定するうえでの注意点を説明します。
設定するべきKPIは組織によって異なる
営業のKPIを設定するにしても、組織によって設定するべきKPIは異なることを意識する必要があります。
例えば、不動産営業と健康食品の営業では、業界が違うため、設定した方が良いKPIは自ずと異なります。
さらに、同じ不動産営業でも会社によって業務形態が異なるので、設定するべきKPIは異なります。
具体例として、インサイドセールスのKPI設定方法をこちらの記事内にまとめています。
関連記事:インサイドセールス(SDR)のKPI|目標設定と管理のポイントとは?
成果を見越したKPIを設定する
例えば、「営業のKPI訪問件数を設定すればいいんじゃないの?」と思っている人もいるかもしれませんが、訪問件数だけ設定しても効果は薄いです。
なぜなら、訪問件数を100件と設定しても、「100件訪問したけど、成約はありませんでした」という事態にもなるからです。
あくまでも目標からKPIを算出し、設定することが大切です。
▶︎▶︎KPIの設定から測定まで成功させるための更に詳しいコツはこちらから
KPIは営業担当者がコントロールできる指標にする
KPIを設定する際は、「営業担当者が自らの行動で改善できる指標」を選ぶことが重要です。
例えば、「訪問件数」や「成約率」は営業担当者の努力によって向上できますが、「商品の利益率」は営業担当者が直接コントロールできないため、KPIとして適していません。
KPIの数は絞る
KPIを多く設定しすぎると、営業担当者が混乱し、何に注力すべきかわからなくなってしまいます。
そのため、KPIの数は 「最も重要な3〜5個程度」に絞り、業務の優先度を明確にしましょう。
営業で実際に使えるKPIの具体例(営業スタイル別)
それでは、実際に使える営業のKPIについてお伝えします。
それは以下の5つです。
- 成約が見込める営業機会数(訪問件数)
- 見込み客の成約率(コンバージョン率)
- 営業案件数
- 顧客単価
- 受注期間(リードタイム)
それぞれ順番に解説しています。
① 新規開拓営業のKPI
新規顧客の獲得を目的とする営業職では、リード獲得やアポイント数が重要な指標となります。
- アポイント獲得数:1日または1週間の獲得件数
- 商談数:訪問・オンライン商談の実施回数
- リード獲得数:問い合わせや資料請求の数
- 成約率:提案した案件のうち、成約につながった割合
- 初回商談から成約までのリードタイム:顧客が契約に至るまでの期間
▶︎ 重要なポイント
- 短期間で成果を求められるため、「営業アクション系のKPI」多め
- 見込み顧客の獲得数や商談数が直接成果につながる
以下はクラウド営業支援ツールMazrica Salesの営業行動のレポートイメージです。

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② ルート営業(既存顧客営業)のKPI
既存顧客との関係構築やアップセル・クロスセルが重要な業務では、継続的な取引を測る指標が求められます。
- 顧客訪問・接触回数:1ヶ月の訪問・オンライン対応回数
- リピート率:既存顧客の継続取引の割合
- アップセル・クロスセル率:追加提案や他サービスの販売成功率
- 顧客満足度(NPS):アンケートなどで測る顧客満足度指標
- 解約率(チャーンレート):契約終了や取引停止の割合
▶︎ 重要なポイント
- 既存顧客の「維持」と「拡大」がKPIの中心
- 解約を防ぐためのKPI(リピート率やNPS)を重視
既存顧客の案件管理にはSFAの導入が非常におすすめです。
Mazrica Salesの画面では、何もアクションしていない案件は白、しばらくアプローチできていないものは「青⇒黄色⇒赤」というように変わっていき、一目でわかるようになっています!
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③ インサイドセールスのKPI
オンラインや電話を活用した営業は、商談設定の質と量がポイント。
- 架電件数・メール送信数:1日または1週間のコール・メール回数
- コール接続率:架電した際の応答率
- 商談化率:アポイントが実際に商談につながる割合
- リードナーチャリング率:育成したリードが営業に引き渡される割合
- 成約率:提案した案件のうち、成約に至った割合
▶︎ 重要なポイント
- 商談数やリードの質をKPIに組み込み、最適化を図る
- 「商談化率」や「ナーチャリング率」を重視すると、営業効率向上につながる
関連記事:受注率を上げるには?受注率向上のための5つの方法とツールを紹介!
営業で実際に使えるKPIの具体例(業界別)
ここからは、業界別の営業のKPIを紹介します。
① SaaS・IT業界
SaaSやIT業界の営業では、サブスクリプションモデルが多いため、契約継続やLTV(顧客生涯価値)を意識したKPIが重要。
- MRR(Monthly Recurring Revenue):月次の継続収益
- 新規契約件数:月ごとの新規契約数
- トライアル転換率:無料トライアルから有料契約に移行した割合
- 解約率(チャーンレート):契約解除率
- LTV(顧客生涯価値):1顧客あたりの総収益
▶︎ 重要なポイント
- 契約獲得だけでなく、「継続利用」を指標に加える
- チャーンレートを低く抑える施策をKPIに反映する
関連記事:SaaS事業で追うべきKPIとは?計算式と運用方法も解説!
② BtoB製造業
法人向けの製造業では、長期的な取引や大型案件の受注が多いため、リピート率や成約金額が重要視されます。
- 見積もり提出数:提案した見積もりの件数
- 受注額:1ヶ月または1四半期の総受注金額
- リピート率:継続して取引する企業の割合
- 商談単価:1件あたりの平均受注額
- 納品満足度:製品の品質や納期に対する顧客満足度
▶︎ 重要なポイント
- 大型案件が中心なので、短期的な成果より長期的な取引を重視
- 「見積もり提出数」や「商談単価」をKPIに含めることで成約を効率化
▶▶KPIを毎期達成し続けるための営業改革とは?【営業組織の到達度診断シート】
③ 不動産営業
不動産業界では、顧客との接触回数や成約率が営業成績に直結します。
- 来店数・問い合わせ件数:Web・電話での問い合わせや来店数
- 内見回数:物件の内覧件数
- 契約率:問い合わせから契約に至る割合
- 平均成約単価:1件あたりの平均成約額
- 紹介顧客率:既存顧客からの紹介案件の割合
▶︎ 重要なポイント
- 来店数や内見数が多いほど成約のチャンスが増えるため、KPIとして重要
- 「紹介顧客率」を測ることでリファラルマーケティングの効果を確認できる
関連記事:不動産業界向けSFA(営業支援ツール)おすすめ8選|活用事例も紹介
営業のKPIマネジメントの3つのステップ
営業におけるKPI(重要業績評価指標)は、単に設定するだけでなく、継続的に管理しながら進捗を把握し、柔軟に対応していくことが重要です。
ビジネスの現場では、計画通りに物事が進むとは限らず、設定後のフォローアップが成果を大きく左右します。
目標達成に向けては、KPIの進行状況を定期的に確認し、必要に応じて対策を講じる「KPIマネジメント」が欠かせません。
ここでは、営業の現場で実践できるKPIマネジメントの3つのステップを紹介します。
関連記事:KPIマネジメントとは?目標達成のための実行手順と事例3選を解説
1. 進捗の可視化
まずは、KPIの達成状況を見える化することが第一歩です。
SFA(営業支援システム)や専用のダッシュボードツールを活用し、進捗データをリアルタイムで確認できる仕組みを整えましょう。
チーム全体で状況を共有することで、次のアクションにすばやく移ることが可能になります。
2. 定期的な評価と見直し
KPIの進捗は、週次や月次など定期的に確認しましょう。
目標とのズレがある場合には、その原因を分析し、必要に応じてKPIや営業プロセスの内容を見直すことが重要です。
定期的なレビューが、成果につながる改善のヒントになります。
3. 改善施策の実行
KPIが未達の状態が続いている場合は、営業プロセスの見直しや、スキル向上のための追加トレーニングなど、具体的な対策を実行します。
柔軟かつ迅速な改善策の導入が、KPIの達成と営業成績の向上に直結します。
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終わりに:営業の“正しいKPIマネジメント” について知ろう
KPIの設定は、営業成績向上のスタート地点にすぎません。効果的に成果を出すためには、KPIを設定した後に継続的な測定と改善を繰り返す必要があります。
一度設定したら終わりではなく、観測と見直しを繰り返し、PDCAサイクルを継続的に回していくことが重要です。
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