企業経営やビジネス活動において、目標達成のためにはさまざまな指標が活用されます。
その中でも特に重要なのが「KGI(重要目標達成指標)」です。
KGIは、KPIやKSF、OKRと並んで、企業の戦略的判断を支える重要な指標のひとつです。
正確にKGIを設定することで、社内外での共通理解が深まり、信頼性の高い組織運営が可能になります。
また、組織の体制やツールの見直しを行うことで、目標達成に向けたプロセスをさらに効率化できるでしょう。
KGIとは
KGIとは”Key Goal Indicator”の略で、日本語では「重要目標達成指標」や「経営目標達成指標」と説明されます。
つまり、KGIとは達成すべき目標のことであり、特に最終的に達成すべき目標のことをさしています。
企業が目指す最終的な目標を数値で見える化することで、組織全体での理解が深まり、目標達成に向けた行動が明確になります。
また、数値化されているため、関係者との共有がしやすく、進捗状況の確認や目標に対するフィードバックも行いやすくなるという特徴があります。
特に、変化のスピードが速く、データに基づいた迅速な意思決定が求められるWebやIT業界においては、こうした指標を積極的に取り入れることが重要です。
関連記事:業績管理とは?成功のポイントとKPI・KGIについても解説
KGIの活用例
KGIは、企業の経営やビジネスにおける最終目標を定量的に評価するための指標です。代表的なものとして、売上高、成約数、利益率、業界内シェアなどが挙げられます。
たとえば、新たに市場に参入したスタートアップ企業の場合、まずは製品の知名度を高めることが重要です。
この段階では、「1年後までに全国的な認知度を50%向上させる」や、「初年度に新規顧客を1万人獲得する」といったKGIが適切でしょう。
これにより、市場でのプレゼンスを確実に評価できます。
一方、海外進出を目指す成熟企業では、KGIの設定が異なります。
現地市場での競争力やブランド認知度を重視するため、これらを考慮したKGIを設定する必要があります。
たとえば、「2年後までに海外市場での売上を全体の30%に拡大する」や、「次年度までに海外でのブランド認知度を20%向上させる」といった具体的なKGIを設けることで、グローバル展開に向けた成長戦略を効果的に進められるでしょう。
KGIとKPI・KFS・OKRの違い
企業経営においては、KGI、KPI、KSF、OKRといった指標がそれぞれ異なる役割を持っており、よく混同されています。
それぞれの指標の違いを理解することで、目標管理の精度が上がり、組織全体の成果を高めることができます。
KPI:中間目標
KPI(Key Performance Indicator)は、KGIを達成するための進捗状況を測る指標です。
KGIが最終目標であるのに対し、KPIはその目標に向かうプロセスを数値化し、進捗を評価するために用いられます。
各部門やプロジェクトで設定され、目標達成に向けた進行具合を確認するのに役立ちます。
たとえば、新製品の販売目標がKGIであれば、そのためのKPIは「月間問い合わせ数の増加」や「販売スタッフのトレーニング完了率」などが設定されることがあります。
関連記事:営業のKPIとは?設定方法や指標例・KGIとの違いを簡単に解説
KSF:成功要因
KSF(Key Success Factor)は、KPIやKGIを達成するために必要な成功要因を定性的に示す指標です。
KGIが目標を指すのに対し、KSFはその目標を達成するための要因や条件を表しています。
たとえば、飲食チェーンが「新店舗の売上を既存店舗の120%に引き上げる」というKGIを設定している場合、KSFとして「消費者ニーズに合ったメニュー開発」や「店舗運営のノウハウ活用」といった成功要因が重要となります。
OKR:目標と成果
OKR(Objective and Key Results)はKGIやKPIとは異なり、企業全体の目標設定に適しています。
OKRの特徴は、企業の全ての階層で共通の目標を設定し、それに向けた具体的な成果を測ることにあります。
経営層から現場のスタッフまで、一貫した目標に向かって努力できる体制を築くのに適しています。
KGIやKPIは特定の目標やプロセスの評価に適していますが、OKRはより柔軟で、企業のビジョンや戦略を全社員で共有し、四半期ごとに進捗を見直す手法です。
例えば、あるスタートアップ企業が、次の3か月で新しい市場に進出することを目標に設定し、そのための具体的な成果を定めて進捗を管理する場合、OKRが効果的です。
KGIやKPIといった指標が日々の業務や短期的な目標達成に役立つ一方、OKRは全社的なビジョンや長期的な成長に向けた指標として活用されることが多く、新興企業や規模の小さな組織でも、全体の方向性を明確にする手法として有効です。
KGIを設定するメリット
KGIを設定することで、社内外に目標を可視化し、理解や信頼を深めることができます。 これにより、企業全体での一体感や、業務効率が向上するなど、さまざまなメリットが生まれます。
目標が明確になる
KGIを数値として設定することで、企業が目指すべきゴールが明確になります。
これにより、「いつまでに何を達成するのか」を誰もが理解できるようになります。 KPIを通じて具体的なアクションプランも示されるため、従業員は日々の仕事において何を優先すべきかが明確になり、効率的に業務を進めることができるようになります。
モチベーション維持が容易になる
KGIが設定されると、会社全体として共通の目標に向かう姿勢が明確になり、社員のモチベーションが高まります。
企業のビジョンが具体的に示されることで、従業員は自分の役割をより理解しやすくなり、日々の仕事に対してのやりがいを感じやすくなるでしょう。 これにより、組織内の一体感も強まり、より高いパフォーマンスが期待できます。
外部に対しても信頼を築きやすくなる
KGIを設定することで、企業の最終目標が明確になり、外部のステークホルダーにも企業の方針や進捗状況をわかりやすく説明できるようになります。
具体的な数値目標を持つことは、取引先や投資家からの信頼を得る上でも有効で、会社の成長や戦略についての理解を促進しやすくなります。
長期的な戦略の一貫性を保てる
KGIは企業の最終的な目標を示すため、短期的な成果に一喜一憂せず、長期的なビジョンに基づいた経営判断を行うことが可能です。
これにより、日々の業務に追われて大きな方向性を見失うことなく、経営の一貫性を保ちながら進めていくことができます。 特に、大規模なプロジェクトや事業展開においては、KGIがあることで組織全体が長期的な目標に集中しやすくなります。
リソースの最適な配分が可能になる
KGIを設定することで、企業の最終的なゴールがはっきりするため、どこにリソースを集中すべきかが明確になります。
限られた時間や予算、人材をどのように割り振るべきか、KGIを基に優先順位をつけることができ、無駄なリソースの消費を防ぎ、効率的な運用が可能になります。
KGIの設定方法
KGIを設定する際には、「SMARTの法則」を活用することが非常に効果的です。
SMARTの法則とは、目標設定を行う際に重要視すべき5つの要素を指し、多くの企業や組織で広く使われているフレームワークです。この法則を用いることで、より現実的で効果的な目標設定が可能になります。
ここでは、SMARTの法則の各項目について簡単に解説します。
具体性(Specific)
目標は誰にでも理解できるよう、明確で具体的な内容に設定する必要があります。
曖昧な目標では、行動方針が不明確となり、成果が得られにくくなります。たとえば、「売上を増やす」ではなく、「第2四半期までに新規顧客数を50件増やす」といった具体的な目標設定が求められま
す。
測定性(Measurable)
設定した目標は、達成度を測定できるように数値化することが重要です。
達成状況が見えないと、進捗管理が困難になり、モチベーションの維持も難しくなります。
「売上を向上させる」という曖昧な表現よりも、「売上を前年比20%増加させる」と具体的な数値で示すことで、達成度合いが明確になります。
達成可能性(Achievable)
目標は現実的に達成可能な範囲に止めることが重要です。あまりにも高すぎる目標は、社員のやる気を失わせ、逆効果となることがあります。
リソースや時間、スキルを考慮した上で、実現可能な目標を設定することが大切です。
関連性(Relevant)
企業全体の戦略や目標と一致しているかも重要です。
個別の目標が企業全体の方向性と異なると、活動がバラバラになり、最終的なゴールに到達できません。
たとえば、企業理念で「従業員の幸福」を掲げているのに、KGIとして株主利益ばかりを優先してしまうと、目標同士が矛盾し、組織全体のバランスを崩す原因になります。
期限(Time-bound)
目標には必ず期限を設けることが重要です。
期限がないと、行動のスピード感が失われ、計画の実行が遅れがちになります。「いつまでに達成するのか」を明確にすることで、目標達成に向けた進捗管理がしやすくなり、社員一人ひとりの行動にもメリハリが生まれます。
この5つの要素は、KGIを設定する際に注意すべきポイントであり、また設定後の見直しや調整を行う際のチェックリストとしても活用できます。
SMARTの法則をしっかりと活用し、これらの要素をバランスよく設定することで、企業全体が一致団結して目標に向かって進むことができ、成果を最大化できるでしょう。
KGI設定でのよくある失敗
KGIの設定にはSMARTモデルが有効ですが、いずれかの要素が欠けていると目標達成が難しくなり、以下のような失敗例が生じることがあります。具体的な例を挙げながら説明します。
定量的に測定できない
「売上を上げる」といった曖昧なKGI設定は少なくなってきましたが、最近では「顧客との関係を強化する」や「従業員のエンゲージメントを高める」といったKGIを掲げる企業があります。
これは、明確性(Specific) と 測定可能性(Measurable) が欠けている例です。
例えば、「顧客との関係を強化する」といった目標は、具体的な内容がないため、その進捗や成功をどのように測定するかが不明確です。
このような設定では、次の段階でKGIを分解したり、KPIを抽出することが難しくなります。より効果的な設定としては、「半年後に顧客満足度調査での評価を現在の3.0から3.8に引き上げる」とすることで、目標が具体化され、測定可能なものになります。
実現可能性が低い目標を立てる
現実性(Achievable) が欠けたKGIもよく見られます。
特に、トップダウンの決定で「来年の新規顧客数を3倍に増やす」といった目標が設定される場合などです。
このようなケースでは、過去の実績や市場動向、リソースを考慮せずに設定されたため、目標が非現実的になってしまいます。
例えば、過去5年間の顧客増加率が毎年10%程度だった企業が、来年の新規顧客を3倍にする目標を掲げるのには無理があります。
現実性を担保するためには、過去のデータを分析し、成長の限界や経済状況を考慮した上で目標を設定する必要があります。
適切なKGIの例としては、「次年度の新規顧客数を前年対比20%増加させる」などが挙げられます。
関連性がない
実は SMARTモデルにおいて最も見過ごされがちな要素が、関連性(Relevant) です。
KGIとKPIが連動していない、または関連性が低い場合、目標達成に向けた取り組みがバラバラになることがあります。
たとえば、KGIが「1年以内に新製品の売上を10%増加させる」という目標であるにもかかわらず、KPIとして「広告コストを削減する」を設定した場合、KGIとの関連性が弱くなります。
広告を削減することで売上にどう影響が出るのかが不明確なため、KPIが本来の目標に寄与していない可能性が高くなります。
関連性の欠如は、KGIとKPIを適切にリンクさせていない企業でよく見られる問題です。KPIを設定する際は、最終的な目標に直結する指標を選定し、KPIがKGIにどう貢献するのかを明確にすることが重要です。
終わりに
この記事では、KGIについてご紹介するとともに、新しい指標であるOKRについても踏み込んで解説を行いました。
自分の会社にどのような指標が合っているかよく考えて、目標設定をすることが大事です。
SFAなどのツールも活用して、会社全体を前進させるような目標設定を行いましょう。