育ってきた環境や成長過程で受けた影響は、成長してからの価値観やライフスタイルも左右します。
それは購買行動についても同じことが言えるので、営業やマーケティングの施策を考える際には、各世代の特徴を理解することで効果的な施策を実行していくことができます。
これからの消費トレンドのカギを握るのは「ミレニアル世代」や「Z世代」といわれるデジタルネイティブの層。
そしてその世代が今後のBtoBビジネスでも購買担当者や決裁者になってくるため、ミレニアル世代やZ世代を理解して今後のビジネスを考えていきましょう。
ミレニアル世代とZ世代とは?
1947~1949年頃の第一次ベビーブームで生まれた「団塊の世代」、1965~1969年頃に生まれてバブル景気の時代に成人した「バブル世代」などが、かつての日本のビジネスシーンの主役となっていました。
そして近年、ミレニアル世代とZ世代が新しいビジネスを作り、日本の消費トレンドを作り出しています。
まずは、ミレニアル世代とZ世代とはどのような特徴があるのかを解説します。
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ミレニアル世代の特徴
「ミレニアル世代」とは、1980年代から1990年代前半に生まれて2000年以降に成人した層を指します。
ちょうどバブル景気で経済が成長している最中に生まれており「ゆとり教育」を受けた層も多いため楽観的といわれていますが、阪神大震災やと東日本大震災を経験したりハラスメントが問題になったりした時代に生きているため社会問題への関心も強いといわれています。
また、IT技術やデジタルデバイスが進歩していく環境で成長してきた世代なので、デジタルネイティブ世代の先駆けでもあるのです。
学生時代から携帯電話やパソコンなどを使いこなし、日常的にインターネットで情報収集をしたりネットショッピングをしたりする環境で育ってきているため、ミレニアル世代以前の世代とは価値観やライフスタイルも異なります。
Z世代(ジェネレーションZ)の特徴
「Z世代」(ジェネレーションZ)とは、X世代・Y世代のあとの1990年代後半から2010年前後に生まれた層を指します。
ちなみに「X世代」とは1960年代後半から1970年代に生まれた人のことで、「Y世代」はX世代とZ世代の間の世代なので先述の「ミレニアル世代」と同義で使われることもあります。
Z世代はアメリカ同時多発テロやリーマンショックなどで経済が不安定な時代に生まれ育っているため、ミレニアル世代と比べて現実的な思考をもっていると言われています。
またZ世代が生まれた頃にはすでにIT技術が発達しており、デジタルデバイスを使用することが当たり前の環境で成長しています。
「Z世代レポート2018」によるとスマホデビューをした平均年齢は15.1歳であり、Y世代前半の25.5歳と比べると10歳も若いうちからスマホを使いこなしているという結果も出ています。
また、Z世代の特徴はデジタルネイティブであるということだけではありません。
FacebookやXなどのSNSの流行を経験している世代でもあるので、ソーシャルネイティブ世代でもあるのです。
積極的にSNSを利用してさまざまな人とつながりを持つため、多様性を理解して自分らしさを見つけることにも優れています。
ミレニアル世代とZ世代の違い
先述の通り、ミレニアル世代は楽観的な人が多い一方、Z世代は現実的な人が多いという違いがあります。
そのため、ミレニアル世代は将来よりも今を重視する傾向にあり、今の自分が満足できるものを求めていることが多いようです。
Salesforceの調査によると「優れたカスタマーエクスペリエンスに対して高い料金を支払う」と回答したのはミレニアル世代では75%、Z世代では69%という結果になり、満足度が高いものに対してお金を払うことには抵抗がないことがわかります。
一方、不況の中で成長したZ世代は将来安定して生きていけるように、貯蓄や節約に関心をもっている人が多く、購入の際にはコストパフォーマンスを重視する傾向が強いようです。
購買の際にはブランドよりも品質や性能を重視するという特徴も、このような背景からきているでしょう。
また、ミレニアル世代もZ世代もインターネットやデジタルデバイスに慣れ親しんでいる世代ではありますが、ミレニアル世代はデジタルテクノロジーとともに成長してきたのに対し、Z世代はすでに完成しているときに生まれたという違いがあります。
さらに、どちらもSNSの親和性が高いですが、Z世代はネット上でのいじめや炎上を幼い頃から見てきているので、ミレニアル世代よりもインターネットのリスクを理解しています。
そのため、ミレニアル世代はSNSでたくさんの人とシェアや共感をしたがる一方、Z世代は自分が信じられる人とのみつながりたいと考えている人が多い傾向です。
このように、年齢としてはそこまで大きく変わらないミレニアル世代とZ世代ですが、価値観や考え方は大きく異なります。
現在BtoBビジネスでの購買担当者や意思決定者をミレニアル世代が担っていることが多いですが、これからはZ世代も影響力が強くなっていくでしょう。
すでにBtoCビジネスでは、持ち前のデジタルスキルを駆使して家庭内でのZ世代の影響力が強くなっています。
ミレニアル世代・Z世代どちらの特徴も理解しなければ、これからの営業戦略やマーケティング戦略は成り立たないでしょう。
ミレニアル世代・Z世代の購買活動の特徴
ミレニアル世代・Z世代ともにインターネットから情報収集をするのに優れており、購買の際にもインターネットで情報を得て比較・検討を行います。
特徴的なのは、商品サイトだけでなくSNSや口コミサイトなどで他社の評価も参考にするという点。
特に、仲間意識の強いミレニアル世代はSNSで共感できたものを購入したり好きなインフルエンサーが紹介していたものを購入したりする傾向があります。
また、サブスクリプションサービスやシェアリングエコノミーもミレニアル世代・Z世代に好まれています。
満足度の高い体験にお金を払いたいと考えているミレニアル世代は、旅行やアクティビティなどの「コト消費」を好む傾向にあり、必要ないモノは持ちたくないと考えています。
そのため、必要なときに必要なものを使うことができるカーシェアやサブスクのようなサービスを活用するのです。
Z世代は多様性を受け入れやすいため自分もいろいろな経験をしたいと考えており、さまざまな体験ができるサブスクリプションを活用します。
また、お金に堅実なZ世代だからこそ、無駄な出費を抑えてさまざまな体験ができるサブスクリプションサービスが心に響いているのです。
2020年3月に発表された「20代・30代・40代の金銭感覚についての意識調査2020(SMBCコンシューマーファイナンス)」によると、サブスクサービスにお金をかけている人の割合は20代32.0%、30代24.8%、40代22.4%で、若い世代ほどサブスクにお金をかけていることも分かっています。
SNS投稿や動画視聴が当たり前になっている世代なので、実店舗だけでなくオンラインでも企業と接点を持ちたいと考えているのも特徴。
複数のチャネルから企業へアクセスできることでエンゲージメントが高まります。
オンラインでの情報収集や、オフラインでのリアルな体験など、オムニチャネルでのコミュニケーションが求められています。
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ミレニアル世代・Z世代に適したマーケティング施策
ミレニアル世代とZ世代は価値観や思考が異なりますが、インターネットが当たり前の時代に育っているため購買活動には似通っている点が多く見られます。
ミレニアル世代は2020年現在20代後半から30代くらいの年代なので企業に勤めて活躍しており、Z世代は10代から20代前半のためこれから社会に出てくる層となります。
ミレニアル世代の中には企業の購買担当者や決裁者となっている人も多いですし、Z世代は今後そのような役割になってくるでしょう。
つまり、これからのBtoBビジネスではミレニアル世代・Z世代をターゲットにしたアプローチが必要となってきます。
これらの世代に適しているのが「バイヤーイネーブルメント」というアプローチ手法なのです。
バイヤーイネーブルメント
ITリテラシーの高い層が購買担当の役割を担うようになったことで、営業担当者による巧みな営業トークや積極的なコミュニケーションの重要度が低くなり、インターネット上での情報収集の比重が大きくなってきました。
実際、Gartner社の調査によると「初回面談までに購買プロセスの57%が済んでいる」というデータもあり、営業担当者と会う前にインターネット上である程度の購買プロセスを済ませているのです。
またForrester社の調査では「67%のBtoB購買担当者が、第一の情報源として営業担当者とのコミュニケーションを選ばない」ともなっています。
そこで注目されているのが「バイヤーイネーブルメント」。
Linkedin社が2019年2月に発表したレポートでは「バイヤーイネーブルメントとは、購買担当者が良い意思決定ができるように支援することである」といった内容の記載があります。
かみ砕くと、営業担当者に頼ることなく自分で情報を収集して比較・検討していく購買担当者をサポートするため、さまざまな情報を発信・提供して、結果的に自社の商品/サービスを選んでもらおうという考え方です。
ミレニアル世代・Z世代の購買プロセスを考慮すると、バイヤーイネーブルメントはとても効果的だということがお分かりいただけると思います。
関連記事:バイヤーイネーブルメント(Buyer Enablement)とは?BtoB営業の最新トレンド
オンラインでの購買を支援するバイヤーイネーブルメント
Demand Gen Report社のレポートで発表されたBtoBの購買担当者のWEBコンテンツに対するニーズは下記のようになっています。
【質問】
営業担当者にコンタクトをとる前に通常どれだけのコンテンツを利用しますか?
【回答結果】
- 1~3:23%
- 3~5:41%
- 5~7:24%
- 7以上:12%
【質問】
どの形式のコンテンツに価値を感じますか?
【回答結果】
- ケーススタディ(導入事例):47%
- ウェビナー:39%
- 第三者/専門家のレポート:35%
- ユーザーレビュー:32%
- 動画:32%
- ホワイトペーパー(電子書籍/ebook):31%
- ビジネスブログ:24%
- インフォグラフィックス:19%
【質問】
購買プロセスの初期/中期/後期の各ステージで最も価値があるコンテンツの形式はどれですか?
【回答結果】
- 初期ステージ向きは「インフォグラフィックス」と「まとめ記事」
- 中期には「動画」と「ウェビナー」
- 初期だけでなく中期でも価値を感じてもらえるのは「電子書籍」と「ビジネスブログ」
- 初期、中期、後期で価値を感じてもらえるのは「ポッドキャスト」と「ホワイトペーパー」
これらの回答結果から、企業は購買ステップに合わせて複数のコンテンツを用意しておく必要があり、特に「すでに導入している企業がどのような効果を得られたのか」というリアルな声を知りたいと思っていることがわかります。
また、Gartner社の調査によると、77%のBtoB購買担当者が「直近の購買活動が複雑/困難だった」と回答しました。
購買活動がやり直しや再検討になる理由として
- 課題の特定:76%
- 解決策の探索:79%
- 要求仕様の具体化:80%
- サプライヤーの選定:79%
となっており、これらのオンラインコンテンツが不足しているため購買活動が困難になっているようです。
これらを踏まえて、購買担当者をサポートしていくには具体的にどのようなオンラインコンテンツを提供するといいのでしょうか。
Gartner社が提言している情報やコンテンツは、下記のようなものです。
- 分析機能…顧客にデータ分析機能を提供
- 助言機能…それぞれの購買活動に関して顧客をコーチング
- 診断機能…現状のパフォーマンスを評価したり、顧客に必要なオプションを特定
- 比較機能…顧客には入手困難な情報を活用して他社と比較する
- 共有機能…顧客が社内のステークホルダーと共有できる土台を提供
- 実験機能…解決策が顧客の環境でどのように機能するかを模擬実験する
- 案内機能…顧客の入力内容に応じた具体的な購買タスクの選択肢を提供
つまりBtoBビジネスでは、ただ複数のコンテンツを用意するのではなく、購買プロセスに合った機能のコンテンツを提供することで、より効果的なバイヤーイネーブルメントを実現することができるでしょう。
終わりに
ミレニアル世代・Z世代が今の消費トレンドを作っているだけでなく、ミレニアル世代が現在のBtoB購買を担い、Z世代がこれからのBtoB購買で重要なポジションになってくるということをご理解いただけたと思います。
これらの世代の特徴をつかみ、それぞれの心に響く施策を打ち出していくことが求められます。
withコロナの今、インターネットでの情報収集はさらに重要度が増しています。
まずは自社のオンラインコンテンツを見直すことから始めてみて、現代の購買活動に効果的なコンテンツを打ち出していきましょう。
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