FABE分析は、提案活動や商品設計の質を高めるためのフレームワークです。Feature(特徴)、Advantage(優位性)、Benefit(顧客便益)、Evidence(証拠)の4つの要素で構成され、情報をシンプルに整理することができます。

FABE分析を活用すれば、提案書作成や日々の商談、さらにはプレゼンテーションといった幅広いビジネスシーンで、提案の説得力を大きく高めることができます。

FABE分析とは

FABE分析は、商品やサービスの「特徴(Feature)」「優位性(Advantage)」「顧客便益(Benefit)」「証拠(Evidence)」の頭文字を取ったフレームワークです。この分析手法を用いることで、提案書作成や商品設計においてコンセプトをシンプルに整理できます。

具体的には、Featureで提案や商品の概要を説明し、Advantageで競合との比較における優位性を示します。Benefitでは、その商品や提案が顧客にもたらすメリットを明確にし、Evidenceでそれらの優位性やメリットを裏付けるデータや実績を提示します。

例:AIを使ったオンライン英会話サービスの場合

要素 説明
Feature ネイティブ講師による24時間レッスンが受け放題のオンライン英会話サービス。
Advantage 独自のAI発音分析機能により、日本人学習者が苦手とする発音もピンポイントで矯正できる。一般的な英会話サービスではカバーしきれない細かな発音まで指導可能。
Benefit 短期間でネイティブに近い発音を習得し、自信を持って英語を話せるようになる。海外出張や旅行でのコミュニケーションがスムーズになり、ビジネスやプライベートの機会が広がる。
Evidence 実際にサービスを利用した受講生の声として、「3ヶ月でTOEICスピーキングスコアが平均100点アップした」というデータや、発音矯正前後の音声比較データ。

BEAF法との違い

FABE分析と類似するフレームワークにBEAF法がありますが、主な違いは要素を提示する順番にあります。

項目 FABE法 BEAF法
目的 プレゼンテーションや提案において、相手が最後まで話を聞いてくれることを想定し、順序立てて説得力を高める。 商品開発やWebページ作成など、相手が最初から最後まで必ず読んでくれる保証がない場合に、最初に興味を引きつけ、読み進めてもらう。
順番 1. Feature(特徴)2. Advantage(優位性)3. Benefit(顧客便益)4. Evidence(証拠) 1. Benefit(顧客便益)2. Evidence(証拠)3. Advantage(優位性)4. Feature(特徴)
展開 まず商品の特徴を説明し、競合との優位性、顧客が得られるメリット、そしてそれを裏付ける証拠の順でロジカルに情報を展開します。 最初に顧客にとって最大のメリットを提示し、そのメリットの根拠となる証拠、次に競合との優位性、最後に商品の具体的な特徴を説明することで、冒頭で強いインパクトを与え、興味を継続させます。
適した場面 対面での商談、プレゼンテーション、じっくり説明できるカタログや提案書など。 Webサイトのランディングページ(LP)、広告クリエイティブ、メールマガジン、店頭POPなど、短時間でユーザーの心を掴みたい場面。

FABE分析の構成要素

FABE分析の各要素には、提案の説得力を高められるよう、それぞれに重要な役割があります。

特徴(Feature)

特徴(Feature)は、商品やサービスが持つ具体的な特性や機能のことです。これは提案の根幹を成し、顧客が商品を理解するための出発点となります。

例えば、新たに開発されたCRMシステムの場合「直感的なユーザーインターフェース」や「高度なデータ分析機能」などが挙げられます。

競合他社の同ランク商品や従来のサービス内容と比較して優れている点、つまりNo.1機能やオンリーワン機能を簡潔に表現することが重要です。

優位性(Advantage)

優位性(Advantage)は、自社の商品やサービスの特性が競合と比較してどのように優れているのかを示す要素です。

Featureで明らかにした際立った機能やスペックを持つ商品・サービスを利用した結果、ユーザーがどうなるのか、何ができるのか、という「ユーザーの行動レベル」に焦点を当てることが重要です。

例えば、製品の価格が競合よりもリーズナブルであることや、特定の機能が他社製品にはないことなどを強調することで、コストパフォーマンスの良さや差別化を図ることができます。

顧客便益(Benefit)

顧客便益(Benefit)は、提供する商品やサービスが顧客にどのような具体的な利益をもたらすのかを示す非常に重要な要素です。

単に商品の特徴(Feature)や利点(Advantage)を伝えるだけでなく、それが顧客の課題解決や目標達成にどう貢献するのかを明確にすることが求められます。

顧客便益は、製品の持つ機能や競合との比較優位性といった客観的な事実から一歩踏み込み、「お客様がその結果どうなるのか、どんな良いことが得られるのか」という、より個人的で感情的な価値に焦点を当てます。

例えば「AIによる自動音声認識機能」という特徴を持つ議事録作成ツールの場合を考えてみましょう。

例:AIによる自動音声認識機能付きの議事録作成ツール

FABEの要素 AI議事録作成ツールの例
Feature AIによる自動音声認識機能
Advantage 手動入力に比べて議事録作成時間が80%削減できる(競合ツール比)
Benefit 時間的な余裕:
議事録作成にかかっていた時間を、営業戦略の立案や顧客フォローなど、より生産性の高い業務に充てられるようになる。
精神的なゆとり:
会議後の議事録作成のプレッシャーから解放され、心にゆとりを持って仕事に取り組める。
情報の精度向上:
聞き漏らしや誤記がなくなり、会議内容が正確に共有されることで、チーム全体の意思決定が迅速かつスムーズになる。
Evidence 実際にサービスを導入した企業の導入事例(例:〇〇社の議事録作成コストが半減)、または音声認識精度の検証データ(例:95%の認識精度を達成)。

顧客便益は「相手を主語にして『このようなメリットを得ることができますよ』と伝える」工夫が重要です。物理的なメリットだけでなく、時間的な余裕や精神的なゆとりといった心情的なBenefitを見つけることが、より顧客の心に響く提案に繋がります。

証拠(Evidence)

証拠(Evidence)は、提案の信頼性を高めるために、商品の特徴や利点を裏付ける具体的なデータや実績を示す要素です。

BtoBの商談においては、お客様自身があなたの提案に納得するだけでなく、社内の稟議を上げ、承認を得る必要があります。稟議のプロセスにおいて、客観的な証拠は不可欠です。「この提案は、私たちのビジネスにとってこれだけのメリットがある」と、数字や事例で明確に示すことで、担当者は自信を持って社内を説得できるようになります。

証拠として活用できる具体的なデータや実績には、以下のようなものがあります。

  • 体感データ: デモやトライアルでの具体的な使用感、改善された作業フローの体験など
  • 専門家の意見: 業界アナリストによる評価、第三者機関の推奨コメントなど
  • 調査機関などの評価: 市場調査レポートでのポジショニング、専門誌での高評価など
  • 各種数値データ: コスト削減率、売上増加率、ROI(投資対効果)、工数削減時間など
  • 過去の成功事例: 他社での導入実績、具体的な導入効果(Before/After)
  • 顧客の声: 導入企業からの推薦コメント、満足度調査の結果など
  • 統計情報: 業界全体のトレンドデータ、市場成長率、競合との比較データなど

特に、現代のビジネスにおいてデータは、「証拠」をより強力にするための不可欠な要素です。営業成果を最大化するために、お客様が自信を持って稟議を上げられる「信頼できる提案」を作りましょう。

提案活動での具体的な活用方法

FABE分析は、提案内容の考案からプレゼンテーション資料作成まで、幅広い提案活動で活用できます。

提案内容考案でのFABE分析

FABE分析は、商品やサービスの提案においてその価値を強調するための手法です。活用することで、提案内容を具体的かつ分かりやすく伝えることが可能になります。

FABEの視点 思考のステップ 考えるべきポイント
Feature まずは自社の商品やサービスが持つ「どんな機能があるのか」「どんな仕様なのか」といった基本的な特徴をリストアップします。 お客様が「これって何?」と最初に理解するための客観的な情報。
Advantage その特徴が、競合他社の製品や既存の解決策と比較して、どのような「優位性」があるのかを明確にします。 「なぜ、他ではなく私たちの製品(サービス)なのか?」を説明できる、差別化のポイント。例:「より速い」「より安全」「より低コスト」など。
Benefit 優位性がお客様にとって具体的にどのような「良いこと」をもたらすのか、つまり「顧客便益」へと転換させます。ここが最も重要です。 お客様が「それによって自分にどんなメリットがある?」と感じる価値。直接的なメリット(例:時間短縮、コスト削減)に加え、心情的なメリット(例:精神的なゆとり、社員のモチベーション向上)も深掘りします。
Evidence 最後に、洗い出した特徴、優位性、顧客便益が「本当である」とお客様に信じてもらうための「証拠」を検討します。 提案の信頼性を裏付ける客観的な根拠。例:数値データ、導入事例、顧客の声、第三者機関の評価など。

FABE分析を活用することで、提案がより説得力を持つようになり、相手の理解を深めることができます。

プレゼン資料作成でのFABE分析

FABE分析は、プレゼンテーション資料作成の初期段階、具体的には提案内容(ソリューション)が完成した後に、提案コンセプトを整理するために使用されるフレームワークです。
プレゼン資料を作成する前にFABE分析を行い、提案骨子やコンセプトを決定することで、具体的なストーリーや資料に落とし込むことができます。また、プレゼン前にチェックツールとして、FABEの各要素が相手に伝わる記載方法になっているかを確認することも可能です。

活用フェーズ FABE分析の役割 具体的な活用例
初期段階:
コンセプト整理
提案内容(ソリューション)の核となるコンセプトを整理し、明瞭にする。
  • 各スライドで何を伝えるべきか、どの情報を強調するかをFABEの視点でリストアップ。
  • 複雑な技術や機能を、お客様にとってのメリットに繋がる言葉に変換。
  • 提案全体のストーリーライン(導入→課題→解決策→メリット→証拠→クロージング)の中で、FABEの要素をどこに配置するかを検討。
作成前:
骨子・ストーリー決定
プレゼン資料の構成や、お客様へのメッセージ伝達順序を決定する。
  • プレゼンの冒頭で「Benefit」から入ることで興味を惹きつけ、その後に「Evidence」で信頼性を高めるなど、BEAF法の考え方を取り入れるか検討。
  • 各FABE要素に対応する具体的なスライド内容(グラフ、画像、お客様の声など)を事前に洗い出し、資料作成の手間を削減。
  • 提案の核となるメッセージが、どのFABE要素で表現されるかを明確にし、一貫性のある資料構成にする。
作成後:
チェック・改善
プレゼン資料の分かりやすさや説得力を最終確認する。
  • 各スライドにFABEのいずれかの要素が明確に盛り込まれているか確認。
  • 「このFeatureはどんなAdvantageに繋がり、お客様のどんなBenefitになるのか?」「そのBenefitには具体的なEvidenceがあるか?」といった問いを立てて、お客様目線で論理が飛躍していないかチェック。
  • お客様が最も知りたい情報(BenefitやEvidence)が適切に強調されているか、視覚的に分かりやすいかを確認し、修正する。

FABE分析の活用事例

FABE分析は、身近な製品の魅力を整理する際にも役立ちます。そこで、代表的な商品の事例をご紹介します。

ユニクロヒートテックシャツ

FABEの要素

ユニクロ ヒートテックシャツ

Feature 東レとの共同開発した繊維を使った、薄くて高機能なインナーシャツ。
Advantage 普通のシャツを3枚重ね着したくらいの暖かさを、薄さ一枚で実現。
Benefit ごわつかずスマートに防寒でき、冬の着こなしが軽やかになる。重ね着のストレスから解放される。
Evidence 表面積の大きな特殊繊維が汗を素早く吸収・乾燥させ体温低下を抑制。素材自体が発熱するメカニズムで高い保温性を実現。

BALMUDA The Toaster

FABEの要素 BALMUDAThe Toaster
Feature 独自のスチームテクノロジーと完璧な温度制御を組み合わせた高性能トースター。
Advantage パンの種類(トースト、クロワッサン、フランスパンなど)ごとに異なる最適な加熱プログラムを持ち、まるで窯から出したばかりのような、外はカリッと中はふんわりとした食感を実現。一般的なトースターでは再現できない、パン本来の美味しさを引き出す。
Benefit 自宅で手軽に「最高においしいトースト」を味わえ、毎日の朝食が贅沢な時間になる。焦げつきやすいパンも失敗なく美味しく焼き上げられ、パンを焼くのが楽しくなる。
Evidence 1秒単位の緻密な温度管理を可能にする特許技術。開発過程で1000時間以上にも及ぶ焼き上げ実験を重ねて最適なパラメータを追求した実績。

ダイソンコードレス掃除機

FABEの要素 ダイソンコードレス掃除機
Feature パワフルな吸引力を実現するデジタルモーターと、様々なゴミに対応する多機能なヘッドを備えたコードレススティック掃除機。サイクロン技術で微細なゴミも分離。
Advantage コードレスながら、一般的なキャニスター型掃除機(ヘッド部分と本体がホースで繋がっているタイプの掃除機)に匹敵する、あるいはそれ以上の強力な吸引力を長時間維持。部屋の隅々までコードに邪魔されることなく、スムーズかつ効率的に掃除が可能。PM 0.1レベルの微細な粒⼦を99.95%除去する。
Benefit 掃除が億劫だった部屋の隅や高い場所も手軽に綺麗にでき、常に清潔な空間で快適に過ごせる。ハウスダストや花粉を気にせず、家族みんなが安心して暮らせる。充電スタンドに立てるだけで収納でき、インテリアを損なわない。
Evidence 自社で開発したV8/V10/V11などの高回転デジタルモーターの特許技術と、その吸引力に関する具体的な数値データ。独立した第三者機関によるアレルギー物質捕集率の認定。世界中で数千万台以上の販売実績。

まとめ

FABE分析は、商品やサービスの魅力を最大限に引き出し、ターゲットに響く提案を行うための効果的なフレームワークです。特徴、優位性、顧客便益、証拠の4つの要素を整理することで、説得力のある提案資料を作成し、顧客の意思決定を促すことができます。

特に営業活動においてデータ活用は、FABE分析の「証拠」をより強力にする上で不可欠です。

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投稿者プロフィール

静 理絵
静 理絵

ITベンチャー企業にて、インサイドセールス・マーケティング組織の立ち上げを経験。その後はSaaSのマーケターとしてコンテンツ作成や記事制作、ウェビナー・カンファレンスの企画、クリエイティブ制作などを約4年間経験。現在はBtoBマーケターとしてCRM領域を担当し、メールマーケティングやコンテンツ制作に注力中。

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