「SALES SOFA TALK」は、VUCA時代といわれる今、競争激しいビジネスシーンをサバイブする営業パーソン、経営者・役員・営業責任者の皆様に有益な情報をお届けするトークイベントです。毎回豪華なゲストをお招きし、営業にまつわる旬な話題や課題をテーマに最新のノウハウをお話しいただきます。
第5回目は、Wovn Technologies株式会社 執行役員/ VP of Salesの桐原 理有氏をゲストにお招きし、「売れる営業が実践しているノウハウ」について対談しました。
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<GUEST>
Wovn Technologies株式会社
執行役員/ VP of Sales
桐原 理有氏
大学卒業後、ベルシステム24を経て、2004年にワークスアプリケーションズ入社以降、大手企業向け新規営業/プロジェクトマネジメントを経験。史上最高額受注など実績を重ねる。同時に、セミナー講師、インターンシップ企画運営等幅広く経験。
IBMで経営コンサルタントを経験後、ワークスアプリケーションズにカムバックし、既存顧客セールス部門の責任者に就任。3年間で若手中心の100名組織をNo1売上組織に。2019年よりWovn Technologiesに参画し、執行役員/営業責任者に就任。並行して、エグゼクティブ・コーチング、BtoBセールスのアドバイザー活動も行う。
<聞き手>
株式会社マツリカ
執行役員 VP of Sales & Marketing
中谷 真史
新卒にて外資系製薬会社へ入社、MR約1000名中トップセールスを経験。その後コンサルティングファーム2社にて、セールス分野のプロジェクトを中心としたコンサルティングに従事。
2018年よりマツリカに入社。カスタマーサクセス統括部長に就任し、顧客のMazrica Sales活用による営業成果向上の支援に従事した後、現在では執行役員として営業・マーケティング組織を管掌する。また平行し、Sales Science Lab, Inc. Founder & CEOを務める。
この記事の内容
売れる営業のポイント1. 自分自身のパフォーマンスを常に疑おう
中谷さん:売れる営業が実践しているノウハウということで、商談で重要なポイントをお聞きできればと思います。まず、商談において一番大事にしている部分はどこでしょうか?
桐原さん:商談だと、相手のリアクションや話に目がいきがちですが、まず自分自身のパフォーマンスを疑うことが重要です。ある程度、セールスが上手くいくようになると、セールストークやプロセスがルーチン化していきます。そうすると、不遜な気持ちや飽きが出てきて無自覚にパフォーマンスが落ちていきます。
なので、自身のパフォーマンスを常に疑い、スクリプト、顧客のリアクション、資料の出し方・引き方、メモのとり方、すべて意識的に改善することが重要です。
中谷さん:確かに。大切ですね。
桐原さん:売れるセールスは、商談における言い方や表情などを少しずつ変えています。そうすることで、緊張感を自ら作り出しているんです。もちろん、結果は上下しますが、パフォーマンス自体は向上します。
中谷さん:「慣れ」という名の怠惰なのかもしれませんね。
桐原さん:もちろん、最初はスクリプトは大切ですが、そこからステップアップして、どうすればオリジナリティを出せるかを考えることが重要です。それを怠ると、「スクリプトに話をさせられている」状態になります。スクリプトは重要だけど、それをどうすれば自分の言葉にできるか、常に自分自身の脳みそで動かすという感覚を持つことが大切です。
中谷さん:与えられたスクリプトをこなすのが「レベル1」、そこから自分の言葉に置き換えられるのが「レベル2」、顧客やその場に合わせて作り変えられるのが「レベル3」だとしたら、桐原さんの話はまさにこの「レベル3」のことですよね?
桐原さん:そうですね。スクリプトは自分の言葉ではないので、気持ちを込めて話せないし楽しくないじゃないですか。私が新卒の頃は、お客さんが話してくれた内容を次の訪問で話すしていました。例えば、「〇〇の会社さんはこういっていましたが、御社はどういう状況になりますか?」というと、新人でも複数の会社を見てきた担当者、つまり実績のある人と映るんですね。
中谷さん:「常にお客さんが営業を成長させてくれる」というのは当たり前だけど、つい忘れてしまう事実ですよね。
売れる営業のポイント2. 顧客をプロファイリングする
桐原さん:次に商談で重要なポイントが「プロファイリング」です。インサイドセールスがレギュレーション(部門間の決まり:リードの質や量についてのSLA)で絞り、受注見込みの高い担当者に提案するという方法をしているケースが多いですが、大手企業だとそう上手くもいきません。まず会うところから始まり、社内で紹介をしてもらい、上や横につながっていく形でライトパーソンをサーチするのが対大手企業の営業ですが、最初の段階でどこまでお客さんのプロファイリングができるか、ここがとても重要です。
プロファイリングでは、まず業務経験を見ます。大手企業の場合、数年でローテーションをするので、別部署を経験していることが多いです。どこの部署で、どこの転職者で、どういうプロセスで現在に至るかは、非常に重要な情報です。こういう話をヒアリングしていくと、どこかで盛り上がるポイントがあります。そこは、その人が仕事に誇りを持っていたり、自信に持っていたりする可能性が高いです。そして、今の仕事だけでなく、他の部門の仕事にも詳しいかもしれないという新しい情報が分かるわけです。
中谷さん:今でこそ、初回商談の勝ちパターンや、クライアントの社内攻略のメソッドや手法が浸透し、信頼を勝ち取ることが軽視される風潮があるなかで、トップセールスになる分かれ目は、結局、相手の懐に入ることっていうのを改めて感じますね。
桐原さん:手法も重要ですが、結局、顧客は人なんです。ロジカルに進められると、なんとなく気持ち悪いと思ってしまうわけです。さまざまな企業のCxO、CIOの人と話をする機会があるのですが、オンライン商談になって型化した商談が増えていると聞きます。つまり、お客さんがセールスにオリジナリティがないという印象を持ち始めているわけです。
この型化を脱却するには、お客さんとどれだけ温度のある話題ができるか。つまり、アイスブレイクでいかにお客さんに好きになってもらえるか、どれだけこの人と話していると楽しいなという状態を作れるか、です。今は、オンライン商談がベースなので、最初の3分で勝負が決まってきます。
前職のワークスの言葉を借りていうと、「話の許可を得る」ということですね。よく、商談の前にプロフィールの紹介をする人がいますが、正直プロフィールは重要ではなくて。この人は話すに値する人か、最初の対話でそういう状態を作ることがなにより重要なわけです。
中谷さん:たしかに……。いきなり雑談で天気や趣味の話をされても、それはそれで求めてないとなりますよね。商談に直結する話とプライべーとの話をなめらかに接続するような中継ポイントを作ることが大切ですね。
売れる営業のポイント3. 商談相手の経験を見よう
桐原さん:私がプロファイリングで特に見ているポイントが、「商談相手の経験」です。とはいえ、アイスブレイクの時間も限られているので、プロジェクトにどう関わっていたか、関わったプロジェクトの規模感など、過去のプロジェクト経験をまず確認します。ステークホルダーが多いプロジェクトを経験している人ほど実力があり、社内での認知も高く、社内の進め方を知っています。そうでない場合は、伴走が必要になるので、それを前提にシナリオを立てる必要があります。
中谷さん:とはいえ、カウンターパートに立つ人はそういう経験がある人ばかりでないと思うのですが、そういう経験がない場合はどのようにリードするのですか?
桐原さん:経験がない場合、リードができないわけです。つまり、「検討しておきます」で終わってしまい、商談が一向に進みません。なので、相手に経験の有無を話してもらい、自覚してもらいます。人は自分で言葉にしたその内容を自分で聞いてはじめて「自覚する」わけです。そうすることで、自分では解決できない、つまり誰かを紹介する必要があると思わせることができます。
中谷さん:これは、明日から使えるTipsですね……!ただ、この自覚させるという質問はかなりセンシティブだと思うのですが、言い回しはどのように工夫されていますか?
桐原さん:セールスは、真摯に情報をヒアリングしたいから、ダイレクトに聞きがちなんですが、それだとお客さんにはプレッシャーに感じて営業っぽくなってしまいます。普段の会話って、そんな直接聞くことってないじゃないですか。そんな感じで、会話のキャッチボールの回数を多くすることを意識しています。
売れる営業のポイント4.信頼が持てる人かどうか見極める
桐原さん:検討が進んでいくと、お客さんを好きになってしまうんですね。いい人だなと。ただ、契約するまで本当に信頼できる人かは分からないわけで、検討フェーズの後半戦でひっくり返されることもあります。この「信頼を持てる人」かどうかは、自分が最初に持った「違和感」を頼りにします。売れないセールスほど、この違和感を「そんなことはない」と楽観視してなかったことにしてしまいます。
売れる営業のポイント5.「問題の優先度」を把握する
桐原さん:そして最後が「問題の優先度」です。まずは、どこに問題があるのか、なにが大変なのかを把握します。ただ、問題があったとしても火がつかなければ煙は立ちませんよね。
僕の場合は、煙が立たないと感じたら「今は問題になるとは思えません」と伝えます。そのうえで「〇〇な状況になっていたり、〇〇なことが起こったらアラートです。その判断材料として、メールでお送りする他者事例なをご覧になり、なにか気になる部分があれば、いつでもご連絡ください」と付け加えます。こうすることで、もう営業されることはないとお客さんに安心感を与えることができます。そして、この手法なら、今煙が立っていないお客さんでも、顕在顧客化したときに、受注見込みの高いお客さんに育成することができます。
中谷さん:どこまでいっても、営業は検討に寄り添うパートナーですよね。
桐原さん:どうしても、自分たちのゴール設定に紐づく問題ばかり聞きたくなりますが、本来は検討に寄り添うべきなんです。なぜなら、部署や組織が抱えている問題や課題によって、優先順位が決まるからです。つまり、他の問題の優先順位が高ければ、煙は立ちませんよね。つまり、他の組織が抱えている問題を聞いてはじめて、自分たちが提案するソリューションが必要かを判定できるのです。
中谷さん:組織の課題の全体像を見て、提供する価値があるかをジャッジすることが重要ですよね。ジャッジできる前提で動いてしまうと、「押し売りされている」と感じて、お客さんの心は離れてしまいますよね。
桐原さん:オンラインセールスが中心になってから、今まで以上に顧客の課題感が高くならないと、アクションにはつながりにくくなっています。というのも、出社していたころは、提案資料を自分のデスクに置いて、上司に「それなに?ちょっと見せて」と言われて「これよさそうだね」というプロセスがありましたが、在宅になったことで、もらった資料を上司に送って、提案内容の必要性や価値を説明することは手間になったし、ぶっちゃけそこまでやる義理はないよねと思うようになっています。つまり、セールスは煙が立つのかを見極めなければならないし、煙を立たせる必要もあるわけです。
Q&Aコーナー
Q:アイスブレイクで相手が気持ちいいと思えるポイントを見つけるコツは?
桐原さん:「今までで一番面白かった仕事は?」と聞くことですね。飲み会で聞くような一般的な話題を入れるのがポイントです。そうすることで、セールストークに温度が入ります。商談ではなく、対話として捉えることが大切です。
Q:外資と日本企業でアプローチの違いはありますか?
桐原さん:一般的に、外資企業はキャリアチェンジしている人が多いので、キャリアという言葉をつかうと刺さりやすいですね。しかし、日本企業の場合は刺さりにくいので、言い方を変えています。転職経験者には、「なんでこの会社を選んだか?」と聞くと、その人の仕事観やモチベーションのポイントを探り当てることができます。
よく問題と課題という話がありますが、これを聞いてしまうと、相手は「A部署の人」になり、「一個人」ではなくなってしまうんですよ。そうすると、その人のモチベーションポイントは見えなくなってしまいます。
精密にセールスを進めるなら、その人のモチベーションポイント、その人に与えられた役割・ミッション、そしてその役割自体にモチベーションがあるかも知らないといけません。「モチベーションポイントはなんですか?」とよく聞かれるのですが、僕は”怒り”なんです。「一緒にあのむかつくところを改善していきましょう」とこの怒りポイントをおさえて着火させていくようなセールスをされたらやっぱりやる気になるわけです。
Q:見込みがないと判断するタイミングは?
桐原さん:課題、問題の大きさですね。セールスの仕事は、Noを削っていくことだと思っているので、判定できないうちはターゲットとして判断しています。
Q:スクリプトから自分の言葉にするチャレンジをしているメンバーを、どう評価をすればよいでしょうか?
桐原さん:結果を評価はしなくて、まずそのセールスが感じたことを聞きます。そこでうまくいっていないと感じていたら、「変えてみよう」とアドバイスします。評価というより、内省を促すことが大切だと思います。
Q:会社紹介から商談に入るまでのつなぎとしてどんなことを話したり、ヒアリングしていることがあれば教えてください。
桐原さん:僕は自社のビジョンが好きなので、入りのところでまず話します。昔、僕が教えてもらったのは、全ページ分、次のページにいくときの枕詞を作れと教わりました。そこの工夫は意識していますね。特に、オンライン商談になってからは、その演出はかなり重要になっていると思います。
Q:ライトパーソンに会える確率は?また、支援者をライトパーソンに転換することはできるものでしょうか?
桐原さん:初回商談で会える確率は5%くらいかなと。支援者にはできるけど、支援者を超えてライトパーソンに育てるのはまず難しいですね。
Q:アイスブレイクが上達のために、部下になにを教えればいいでしょうか?
桐原さん:「ロープレします」といって指導するのはNGで、1on1の場でフランクに行うのがベターです。実体験でしか改善はできないと思っているので、まずやってみせることと、やらせてみせること、そして緊張感のないところで実践させること、この3つをおさえて愚直にロープレを重ねることが大事と思います。
Q:エンタープライズ開拓で、ライトパーソンが見つからず、打ち手が見えないとき、どういったアクションをとりますか?
桐原さん:ライトパーソンがいない前提に立つことは非常に重要です。まず、ライトパーソンが見つからない場合、検討プロジェクトの真ん中に食い込めていないことが多いです。縦の関係、つまり提案する立場になってしまっているわけです。僕が売れていた頃は、自分がそのプロジェクトの推進者になっていました。そうすると、ライトパーソンは自分になるわけです。
終わりに
中谷さん:ここまで、色々なお話しをお伺いしましたが、最後に桐原さんから一言、セールスパーソンに向けて何か一言いただけたらと思います。
桐原さん:営業は人に出会える仕事で、その人の人生を知れる仕事です。一旦、「型」から離れてみて、営業はとにかく楽しいという初心に帰り、仕事に臨んでもらえるといいのかなと思います。
SFAに関する紹介記事はこちら:
セールスイネーブルメント -経営層・営業マネージャーが取り組むべき営業改革-
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