「SALES SOFA TALK」は、VUCA時代と言われる今、競争激しいビジネスシーンをサバイブする営業パーソン、経営者・役員・営業責任者の皆様に有益な情報をお届けするトークイベントです。
毎回豪華なゲストをお招きし、営業にまつわる旬な話題や課題をテーマに最新のノウハウをお話しいただきます。
第一回目は、セレブリックスの今井 晶也氏をゲストにお招きし、「withコロナの営業スタイル」について対談しました。
<GUEST>
株式会社セレブリックス営業企画本部 本部長 今井 晶也氏
株式会社セレブリックスのエバンジェリストとして、営業に関する公演・講義を全国で実施。営業組織に関するテーマから、具体的な営業テクニックやコンテンツ作りまで専門領域は多岐にわたる。営業はアートとサイエンスで成り立つという思いで「データドリブンセールス」を提唱し、セレブリックスの営業ノウハウである「顧客開拓メソッド」「マネジメントメソッド」の製作総指揮と監修を務める。
<聞き手>
株式会社マツリカ執行役員 VP of Sales & Marketing 中谷 真史
新卒にて外資系製薬会社へ入社、MR約1000名中トップセールスを経験。その後コンサルティングファーム2社にて、セールス分野のプロジェクトを中心としたコンサルティングに従事。2018年よりマツリカに入社。カスタマーサクセス統括部長に就任し、顧客のSenses活用による営業成果向上の支援に従事した後、現在では執行役員として営業・マーケティング組織を管掌する。また平行し、Sales Science Lab, Inc. Founder & CEOを務める。
ソーシャルセリングの重要性とはじめかた
中谷さん:「ソーシャルセリング」の重要性やはじめかたの前に、「ソーシャルセリング」がどういうものか教えてください。
今井さん:まず、「ソーシャルセリング」の前に、現在の購買環境についてお話しさせてください。この前、最新の営業ナレッジやノウハウを体系化した「シン・セールス理論」というnoteを書いたのですが、思った以上に反響がありました。コロナで状況が変わり営業しにくくなっているのに、営業する人は増えていて難しくなっているのです。だから、これを機に情報を整理しようと。このnoteの内容をざっくりまとめると、「購買方法と営業の基本が変わったよ」ということです。
今井さん:今は先行き不透明だからこそ、不要不急なものを買いたくない、比較検討するのも面倒くさい。だから、信用している人がすすめたものを買うことが増えてくるのかなと。弊社でも、発信している情報やセミナーをきっかけに、相談を受ける機会が増えています。ネット検索もいわゆる指名検索が多くなっています。
つまり、インサイドセールスや営業プロセスのあり方を見直す必要があるということです。対面で会えないからこそ、信じられる人になるためにセールスコンテンツを工夫して会話が生まれやすい状態を作ったり、不要不急の時代に、いま買いたくなる体験を作ることが大切になります。
その一つの方法として、SNSなどでファンや人脈を構築しながらセールスする「ソーシャルセリング」があります。
中谷さん:ソーシャルセリングも、形は違えど昭和の時代からありましたよね。例えば、日系のコンサル会社とかだと経営者クラブを作っていたり。
とはいえ、実際にSNSにはさまざまなものがあって、何からはじめれば、どこから進めればいいのか分からない方も多いのかなと思います。何か媒体を選ぶコツはありますか?
今井さん:「セールスでTwitterが使われているから始めよう」というのは違う気がしていて。結局、自分たちの商品やサービスの強みを宣伝するときに、どの媒体と相性がいいのかを考えることが大切ですよね。
中谷さん:今井さんはどのSNSをされているのですか?
今井さん:個人ではFacebook、Twitter,LinkedIn、note、会社ではWantedly、資料でたまにSlideShareを使っています。
中谷さん:今井さんはお話するのが得意ですが、音声に特化したVoicyやstand.fmなどは使われないんですか?
今井さん:Voicyやstand.fmは個人のファンは増えるけど、二次利用はしにくいのかなと。noteならセレブリックスのダウンロードコンテンツにも再利用できますよね。それに、noteはSEOにも有利なので、セレブリックスのセールスに活かしやすいと思い、選びました。
中谷さん:SNSの更新って大変じゃないですか?私もやっていますが、毎回ネタを考えるのが大変で……。
今井さん:私はよく二次利用をしています。メンバーからきた相談を少し加工してネタとして活用していますね。
中谷さん:確かに、それだと思考の整理にもなるし、やりやすいですね。
今井さん:あと、SNSでありがちなのが、フォロワーやいいね数を稼ぐことが目的化することです。バズると気持ちいいですが、「ほんとうに目的はそこだったっけ?」と問い直すことが重要ですね。だからといって、仕事のことばかりつぶやいていると、それはそれでファンが増えないし。バランスをとるのは難しいですね。
また、ソーシャルコンテンツは売り込むのではなく、無償の愛じゃないですけど、giveを増やすことが大切ですね。ファンになる人が増えて、コミュニティが形成され、その状態ではじめて相談が来るようになります。
営業に求められるコンテンツファースト
中谷さん:つぎに、営業におけるコンテンツというテーマでトークしたいと思います。営業でコンテンツといえば、商談資料が浮かびますが、こちらいかがでしょう?
今井さん:コンテンツには、マーケティングコンテンツとセールスコンテンツの2つがあると思っていて。マーケティングコンテンツは、属性変容を促すもので不特定多数をターゲットとするもの、セールスコンテンツは目の前の人の価値観や態度を変えるきっかけになるコンテンツを指します。この先、オンラインでのセールスが主流になれば、コンテンツをうまく活用するセールスが勝つ時代が来るのかなと。
中谷さん:コンテンツの重要性は分かりつつも、フィールドセールスはクロージングすることにフォーカスしがちで、商談資料は企画系やマーケ系の人が作ってそれを使うだけ、伝わらなければあとはトークでなんとかするみたいな部分がいまだにあると思います。ここからまた逆行していくイメージですよね。
今井さん:そうですね。弊社では、アカウントセールスの近くに、コンテンツ制作に特化した「セールスコンテンツスペシャリスト」を作っています。もちろん、営業経験者の方をアサインしています。うちは、マーケティングをしている人も、全員経験者なんです。現場の解像度を高くするために、営業を経験してもらっています。営業を知らないと営業のマーケティングができないと思うので。
中谷さん:今年の1月からセールスマネージャーになって、3ヶ月あたり1人当たり596%上がったという実績を出せたのですが、そのときにはやはり、初回商談の資料の内容、伝え方、出すタイミングを変えていましたね。
僕は、スクリプトでがんじがらめにするよりも、コアメッセージだけ作り、あとはセールスの人によって柔軟に変えるほうが効果が大きいと思っていますが、その点どう思いますか?
今井さん:段階によるかなと。新人に指導する際はトークスクリプトは必要ですよね。ただし、特定の企業に対するスクリプトではなく、料理のレシピみたいに、あくまで誰でも使える基本の型でしかないですよね。レシピどおりに作れるようにしておきながら、その人なりの営業ができるか、最後にはやっぱり自己流がないと、人がやる意味はないですよね。
中谷さん:「営業をサイエンスする」といってますが、究極にロジックだけで突き詰めることは無理だと思っていて。スクリプトによって7割品質が担保できたとして、2〜3割の独自のクリエイティビティが乗ってきてはじめて、その人のよさが活きて、組織としての可能性を切り開けると思っています。今お話ししていたことって、それに通じることかなと思っています。
セールスコンテンツに意味をもたせる
今井さん:みなさん、セールスコンテンツが重要とわかっていても、何を作ればいいのか分からない方が多いと思います。まず、コンテンツを一括にせず、購買のステージに合わせてコンテンツを使い分けることが大事です。事例一つとっても、業界の事例、ニーズの事例、成功事例、活用事例など、様々あって、シーンによって使い分けることができますよね。
今井さん:大事なのは「導入できそう」と思ってもらうことです。期待値があがったけど、使えるかどうか分からないとなったら意味ないですよね。セレブリックスは、事例だけでも80パターンくらいは用意しています。
中谷さん:事例は、どのような属性分類で作成しているんですか?
今井さん:まず、ニーズが大前提ですね。あとは業界。決済者は競合の成功事例を気にしているので。複数の検索軸でソートできるよう、さまざまな要素をタグ付けしています。
中谷さん:同じ業界の事例は?と聞かれたときにその事例だけではなく、他の切り口の事例を見せて、失礼がないように新たな気づきを与える姿勢でいくと付加価値を出せるのかなと。
今井さん:今までは、対面で営業ができたからトークでなんとかできました。今後はリモートでセールスのマネジメントする必要があります。トップセールスのノウハウをできる限りコンテンツとして体系化し、誰がやっても同じタイミングで必要なツールを使える状態にすることが大切です。
また、オンラインだと質問しにくかったり、会話しにくかったりする難点があります。戦略的にコンテンツを作っておけば、自分が引き出したい問いや議論を作り出すことができます。一言で言えば、反論対策ですね。先によく失注になる例を話してしまい、論点を絞ってしまうことで、失注しない状態に持っていくことが大切ですね。
今井さん:あと僕はケイパビリティシート(競合比較表)の活用をおすすめしています。導入が重要と思っているけど、今やるべきか悩んでいる企業に、「繁忙期は〇〇月なので導入するなら今だと思います」と逆算スケジュールを引いてあげるなど、顧客視点で今やる理由を設計することが重要です。
会う前にどれだけ勝負を決められるか
中谷さん:外資でトップセールス、コンサル会社で営業改革をしていましたが、話すのはそんなに得意では方ではなくて。やはり、営業の究極は「これを買ってください」といったら買ってくれることだと思っています。まず、営業って商談の発揮力で100%決まるってことはなくて。資料作り、ターゲティング、営業戦略から、その人のブランディングなど、いろいろな要因が相まって成功するかが決まります。だから僕は前者の準備の方で勝負するようにしています。
今井さん:営業を簡単にするってことですね。相性もありますよね。お客さんには話すのがきらいな人もいるし、逆に元気いっぱいの営業マンが好きな人もいるし、法人になると利害関係が多くなって、一方に好かれて一方に嫌われることもあります。何を持ってトークが頼りになるのか、だから、トークに頼る営業組織は逆に怠慢だとおもいますね。再現性の低い組織を作るマネージャーはどうなんだと。
トークは武器になるけど、再現性が大事です。人がやめたとしても、やり方だけが自然と継承されていくことを考えると、コンテンツはどうしても外せませんよね。
営業マネージャーが重要視するSFAの管理項目と活用方法
中谷さん:時間もあまりないので、ポジショントークにならないよう、手短にお話ししますね。SFAの活用方法は全部で3つあると思っていて、1つは「ヨミの管理を正確にする」ことです。経営では、売上から経費を引いたいわゆる利益を事業投資に回します。そのため、売上がいくらで着地するかのヨミがとても重要になります。トップセールスだと、ヨミの10%前後で着地させることが前提です。SFA管理では、フェーズ管理、金額、契約予定日を日次で最新にしていくことで、ヨミのズレを防ぎます。
次が失注理由です。営業要因、プロダクト要因の2つから分析することができます。プロダクト要因では、競合とどこが当たって失注したのか、プロダクトのどこが足りなくて失注したのか、とか、さまざまな要素をタグ付けをしながら分析します。顧客側における要因なら、お金、人など、細かくタグ付けしていき、失注要因を細かく分析し、失注しない商談設計を行います。
最後が、案件を前に進めるための管理項目で、これは分析というより情報共有に近いですね。外資系だとMEDDIC(メディック)ともいわれます。組織内で、反対者、決済者、そして決済者の味方になる人など、商談に関係する利害関係者や決済ルートや判断指標などを把握・管理して、いかに商談を成約に近づけていくか。
この上記3つをチェックし分析することがSFAを進めていく肝だと思います。
※MEDDIC(メディック)は、Metrics(測定指標)、Economic Buyer(決裁権限者)、Decision Criteria(意思決定基準)、Decision Process(意思決定プロセス)、Identify Pain(課題)、Champion(擁護者)の6つの頭文字をとった言葉で、予測の精度を高めるために活用されるフレームワークのこと。
Q&Aセッション
Q:コンテンツスペシャリストをおくと、アカウントセールスがその人に依存して作成するスキルが身につかないと思いますが、そのあたりはいかがでしょう?
今井さん:まず、コンテンツスペシャリストは、案件ごとの資料を作成していません。そして、大前提として、営業はカスタマーサクセスから逃げてはいけないと思っています。営業の提案がカスタマーサクセスではなかったら嘘になりますから。自分の提案が本当に目の前のお客さんのためになっているか、しっかり考えて提案をすることが大切です。
本人が企画書を作るのを前提として、事例集や逆算スケジュールなど新しいコンテンツの開発はスペシャリストに任せています。企画書づくりに関しては、言語化できていない基準をできる限り標準化させるため、私が内容を精査し、その場でzoomで公開フィードバッグをし、その場で手直しをしています。
Q:お客さんが本当の失注理由を話しているとは限りません。どうやって失注理由の精度を高めていますか?
今井さん:書かれている通り、断り文句を失注理由にしてしまうと、適切な検証ができません。シンプルに、一歩踏み込んだ質問をすることですね。例えば、「予算が足りないから」という理由だとして、「どういう状態だったら買いたいですか?」と聞けば失注理由が明確になります。また、「では来期、このサービスを導入したいと思いますか?」と聞き、「導入したいと思わない」と言われたら、それは予算が理由ではないということがわかりますよね。さらに、踏み込んで「予算を組むまではいかないと思った理由を聞いてもいいですか?」と聞くと、深い本音を聞くことができます。
中谷さん:これは現場ベースの話ですね。
今井さん:これが集まってこないと分析できないので、「どういう状態だったら買っていただけるか」というところまで聞くことが大切ですね。
中谷さん:僕は経営目線で話しますね。まず、失注分析をする際は、機能要因と営業要因にわけます。機能要因には営業要因も多く含まれています。例えば、お金が足りなかった、機能が足りなかったという理由に関しては、こういうアプローチでいけば回避できたよねという分析をすることができます。このように、失注データから、営業要因にもう一度再分配していきます。
さらに、トップセールスに見てもらい、肌感でも無理と思ったものは機能要因として除外し、残った営業要因を再度分析をしていき、改善策を考えます。
今井さん:まさに具体と抽象をいったり来たりして、分析しているわけですね。
Q:フリーランス営業は今後増えると思いますか?
今井さん:コロナの影響で、会社への帰属意識が薄れている人、自分の人生を生きようという人が増えてきています。営業も子育てしながらコアタイムだけ働くママさんや、特定の企業に所属しないフリーランスのセールスマンが増えるだろうなと思います。だからこそ、だれがやっても同じトークが展開できる、訴求ができるように、コンテンツが重要になるんだと思います。
中谷さん:営業目線で見れば、スキルさえ持っていれば、さまざまな企業で活躍できるし報酬も高くなるでしょう。ナレッジやノウハウを体系化できて、発信できるスキルがあれば、さらに活躍できる人材になるでしょうね。
今井さん:成功体験や実績はまとめておいたほうがいいですよね。ナレッジやノウハウを体系化という部分で話すと、わたしは慎重派でセレブリックスに入社してから1年間はいつでも転職できるよう、新しいスキルが身につくたびに、職務経歴書を更新していましたね。
中谷さん:わたしは面倒くさがりなので、検索で上位表示されるように取材を受けたり、noteで記事を書いたりして、「名前で検索してもらえれば、自分のことがわかります」という状態にしていますね。
まとめ
今回のウェビナーでは、今井氏・中谷氏のセールス経験に基づいた具体的なソーシャルセリングをする上での心構えやポイント、セールスコンテンツのつくりかたについて聞くことができました。第2回目は、株式会社RocketsのCSO(最高戦略責任者)の鈴木 純太氏をゲストにお招きし「営業パーソンのコンテンツ戦略」をテーマにお話しを伺います。
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