マーケティングにはさまざまな種類がありますが、中でも「マスマーケティング」という言葉はよく知られています。
マスマーケティングとは、特定のターゲットを絞らず、大多数の消費者に向けて同じ商品・サービスやメッセージを一斉に発信するマーケティング手法です。
しかし、時代が経るとともにニッチマーケティングと呼ばれるマーケティングの重要性が徐々に上がってきました。
しかも、現在ではマス・ニッチの市場以外にスモールマス市場という市場にも注目が集まっています。
そこで、この記事ではマスマーケティング・ニッチマーケティング・スモールマスマーケティングについてそれぞれ解説します。
どの市場が最も自社に合っているか、ぜひ考えてみてください。
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この記事の内容
マスマーケティングとニッチマーケティングの特徴
まずは、スモールマス市場について見る前に、基本的なマスマーケティングとニッチマーケティングの違いについて整理しましょう。
この2つのマーケティングの違いは、ターゲットとする市場の規模の大きさにあります。
マスマーケティングとは
まず、マスマーケティングとはマーケティングの対象者をなるべく絞り込まないマーケティング手法です。
言い換えれば、全ての人を対象としたマーケティング活動と説明することができます。
マスマーケティングでは全ての人を対象とするので、色々な人が視聴しているTVなどのマスメディアを使ったコマーシャル活動を行います。
このマーケティングを可能にしているのは、大量生産大量消費の市場です。
例えば、蚊取り線香を販売しているトップ企業を思い浮かべてみましょう。
この企業は毎年夏にテレビCMを流しています。
蚊取り線香は、日本に住んでいれば大抵の家庭が必要とするものです。
また、蚊取り線香は最もメジャーな蚊除けの商品です。
しかも、蚊取り線香は消耗品であり、大量生産大量消費を体現しています。
このように、大量生産大量消費の可能な市場のトップ企業であり、様々な人々を対象とする企業では、テレビCMを用いるマスマーケティングが有効です。
ニッチマーケティングとは
一方、ニッチマーケティングはマスマーケティングとは違い、ある小さな市場をテーマに行うマーケティング戦略です。
既存の企業が進出していない隙間を見つけて企業活動を行う隙間産業と言えるでしょう。
市場規模が小さいながらもその市場でトップのシェアを取っている企業は、安定した売上が見込めます。
2013年には、経済産業省が世界で認められているニッチ企業を選ぶ「グローバルニッチトップ企業100選」をまとめるなど、注目度が大きいマーケティング手法となっています。
ニッチ企業の例としては、男性専用の眉毛サロンなどが挙げられます。
人は見た目で9割とも言われる世の中で、男性の美意識もだんだんと上がってきましたが、その風潮に目をつけたのがこの企業です。
化粧などはハードルが高いが、眉毛を整えるくらいならやってみたい、という男性も多いでしょう。
潜在的な顧客のニーズをくんでニッチ市場を開拓した好例であると言えます。
マスマーケティングよりニッチマーケティングが選ばれている理由2つ
では、マスマーケティングとニッチマーケティング、企業はどちらを選択するべきなのでしょうか。
結論からいうと、現在の消費者意識により合っているのはニッチマーケティングです。
消費者の生活スタイルの変化
現在、消費者の意識はだんだんと多様化してきています。消費者は自分でネットなどを使って情報を仕入れることができるようになり、ただ狭い選択肢の中から選ぶだけではなく、広い選択肢の中から選ぶことができるようになりました。
さらに、環境問題などへの配慮から大量生産・大量消費は敬遠されつつあります。
画一化された商品をただ選ぶだけでなく、自分の趣味嗜好価値観に合わせた商品を選びたいという欲求が高まっているのです。その結果、消費者のセグメントはより小さなものに分岐しています。
それだけでなく、マスマーケティングではテレビや新聞といった媒体を使って広告を出すことが重要ですが、現在ではYoutubeやSNSの普及により相対的にマスメディアの影響力は弱まっています。
いわば、マスマーケティングには逆風の吹いている時代なのです。
ニッチマーケティングの重要性はますます増すばかりであり、実際に多くの企業がニッチマーケティングを選択しています。
狭い市場から市場を広げる方法の流行
しかし、ニッチマーケティングでは市場の広さが十分ではなく、爆発的な利益を得ることには向いていないと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ニッチマーケティングは確かに、ある一定の限られた消費者にのみ訴求する手法ですが、市場を広げていく努力をすれば、頭打ちになることはありません。
重要なのは、狭い市場から始め、徐々にその市場を大きくしていくことです。
例えば、先述の眉毛サロンを例にとってみましょう。
確かに、現状では日本の美意識の高い男性は限られているかもしれません。
しかし、世界に視野を広げると、非常に多くの男性を対象にすることができます。
また、他のベクトルに視野を広げて、子供向けの少し安価なプランを作ることでも対象を増やすことができます。
このように、世界に視野を広げたり、隣の新たなニッチ市場に参入してみることにより頭打ちになることは避けられることができます。
このような企業努力により成功している企業は多く存在し、一種のマーケティング手法の流行ともなっています。
最もニッチな商品を扱っていたところから市場を広げることで爆発的な例を遂げた極端な例はAmazonです。
Amazonは当初、オンライン書店でした。
しかし、オンラインであるという特色を生かして、どのようなニッチな本でも対象としている点で差別化を図りました。
他では扱っていない本も対象とするという戦略によりAmazonは成長し、徐々に取り扱う商品を増やすことによって市場を際限なく広げることに成功しました。
このように、ニッチマーケティングは大規模な成功の萌芽をも含んでおり、オススメのマーケティング方法であると言えます。
スモールマス市場の誕生
ここまで、マスマーケティングが対象とする大規模な市場・ニッチマーケティングが対象とする小規模な市場について説明してきました。
ここから紹介したいのはスモールマスと呼ばれる新たな第三の市場です。
スモールマス市場とは
スモールマス市場とは、マス市場が縮小した末に存在しているいくつかの小さな市場のことです。
洗剤や化粧品を扱うメーカーである花王が提唱し、徐々にマーケティング業界に広がっている概念です。
花王の調べでは、ヘアケア用品のジャンルにおいて、今まで800円以下のマス向け商品が占めていた割合は77%でした。
しかし、800円以下の商品の比率は2018年には50%ほどにまで縮小し、現代の市場は、より高額な商品が売れるように変化しました。
この例では、高額であるもののこだわりを反映した商品を売り出したというマーケティング手法がスモールマス マーケティングに該当します。
このようなデータを元に誕生したスモールマス市場は、ビッグデータなどの活用がキーとなっています。
ビッグデータによって売れる商品の傾向を判断し、その上で顧客の一人一人の声やニーズを鑑みるバランスによってスモールマス市場は発展しています。
スモールマス市場とニッチマーケティングの違い
スモールマスマーケティングとニッチマーケティングの違いはどのような点にあるか解説します。
第一に両者の間にはマス市場の捉え方に違いが存在します。
ニッチマーケティングではマス市場の隙間にあるニッチ市場を探すことが重要となります。
一方で、スモールマス市場の概念では、そもそもマス市場自体の存在感がなくなり、マス市場が縮小してスモールマス市場になっていると考えます。
第二には、両者の間には顧客に対する意識の違いがあります。
特に、スモールマス市場では顧客をファンと呼び、より一人一人のニーズをくみあげようとしています。
ニッチマーケティングでは、狭いニッチ市場を探しますが、ニッチ市場の中では画一な人々が存在していると想定してマーケティングを行います。
しかし、スモールマス市場では、画一的な人々がそもそもいないと想定することでより多様なニーズに対応できるように工夫します。
例えば、サイト上で自分の好みを回答するとオススメの商品をオーダーメイドに近い形で作ってくれる仕組みなどがスモールマス市場に合致していると言えるでしょう。
このように、似ているように思われるスモールマス市場とニッチ市場ですが、本質的には大きく違っています。スモールマスとSTP戦略の違い
では、マーケティングで重要視されるSTP戦略とスモールマスの違いも存在しているのでしょうか。
▶︎▶︎STP戦略について細部まできちんと説明できますか? 3つの記事で知識を確認してみましょう
- セグメンテーション(セグメント分け)とは?|事例で学ぶセグメンテーションと方法
- ターゲティングとは?|営業・マーケでのターゲティングの方法を紹介
- ポジショニングとは|ポジショニング戦略の進め方と成功事例
結論から述べると、スモールマスとSTP分析は本質的な部分は共有しているものの、スモールマスの方がよりユーザー視点であるという点で違いが存在します。
STP分析の場合は、自社のサービスありきでターゲットとする層を明確にしていきます。
一方、スモールマス戦略では、ユーザーのニーズを優先して新たな商品を開発していくことが多いです。
例えば、あるシャンプー会社のスモールマスマーケティングでは、顧客が好みの匂い・テイスト・効果などを組み合わせて自分専用のシャンプーを作ることのできるようなサービスを提供しています。
これは、ユーザーがまるでオーダーメイドのシャンプーを作っているようなサービスを受けられるという点でユーザー視点に立っています。
また、ニッチ市場とスモールマス市場の違いと同様にSTP分析とスモールマスの違いを説明することもできそうです。
つまり、スモールマス市場は一人一人異なった個を対象としますが、STP分析では、個ではなくある層を画一的に対象にしているのです。
スモールマス市場向け商品の例
スモールマス商品の例としては、花王の「ブラックリキッド」シリーズなどが挙げられそうです。
このシリーズの最大の特徴は、洗顔料であるにも関わらずその色が真っ黒なこと。
皮脂の分泌が活発な18歳から24歳くらいの若年層向けの商品として、アメリカで大人気の商品を日本でも販売し始めました。
「ブラックリキッド」シリーズは、Twitterや動画を用いた販売戦略を用いた所にマーケティングの特徴があります。
美容に関心がある層に向けてTwitterで発信を行ったり、販売店をロフト、ドン・キホーテ、PLAZAに限定したことで企業から販売店に至るまでの一括した広告を展開し、上記の店舗を使用する美容に対する意識の高い若年層というスモールマス市場にアプローチしました。
結果として、「ブラックリキッド」シリーズの一部での認知度は非常に高くなりました。
終わりに
今回の記事では、従来のマスマーケティングやニッチマーケティングに加え、注目される新たな概念「スモールマス市場」についても解説しました。
各企業の体力や特色、ターゲット層を十分に見極めた上で、自社に最適なマーケティング戦略をぜひ構築してください。

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