以前から「日本人は働き過ぎ」と言われてきましたが、なかなか改革が進みませんでした。
しかし、ここにきて労働環境が一気に変わろうとしています。何故、労働環境が変わろうとしているのでしょうか。そもそも、働き方改革は何故始まったのでしょうか。
具体的な事例を紹介しながら「働き方改革とは何か?」改めて紹介していきます。
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働き方改革とは?わかりやすく解説
2016年頃から政府主導による働き方改革が進みだしました。この改革の背景にあるのは、今日本の置かれている状況にあります。
日本の総人口は今後も減少が予想されており、2050年には国内人口が1億人を下回ると言われています。
人口の減少にともない、労働人口も当然急速な勢いで減っていきます。
労働人口が減るとどのようなデメリットが発生するのでしょうか?
想像しやすいことだと、「働き手」が若者を中心に減っていくので、我々の実生活にも影響が出てくることが挙げられると思います。
さらに、働き手が減少することで国の生産力も落ち「世界から見た日本の経済力」という観点でも非常に悪い状況になります。他国が経済的に伸長する中、日本だけが取り残されていってしまうかもしれません。
働き方改革とはこのような背景から、「総人口が減り、少ない労働人口の中でも効率的に日本の経済を回す方法」を考えています。
もちろん少子化対策や社会福祉制度もあわせて考えていかなくてはいけませんが、働き方改革では労働における効率化を中心に議論されています。
①労働の効率化:残業して長時間働くのではなく、労働生産性を上げる
②労働の多様化:ITやクラウドツール等を利用しオフィス以外で仕事ができる環境をつくる
③労働の一般化:高齢者の雇用、育児中の女性の労働参加促進
という3つの視点で働き方が見直されています。
それでは、具体的な事例をご紹介しながら働き方改革を考えていきましょう。
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働き方改革の具体的な取り組み方
かつて日本では「モーレツ社員」といって長時間働く者が優秀とされてきました。
極端な例ですが「10時間働いて10万円分の成果を出す人」と「6時間働いて10万円分の成果を出す人」では、前者の方が「残業をしていてがんばっている」と評価されました。しかし、これは本来の評価の視点では不公平です。
「長時間残業をしている人が偉い」という考えを無くし、どれほど効率よくアウトプット(=成果物)を生み出せているのかを図ろうという動きに変わってきています。
関連記事:ディーセントワークとは?意味や国ごとの取り組み紹介
テレワーク
労働生産性を上げる方法のひとつとしてテレワーク(在宅勤務)の制度を導入する企業が増えつつあります。
オフィスでなければできない仕事なのか?という視点で仕事を見直します。
例えば営業先の店舗からオフィスに戻り、日報を書いて提出する。当たり前のように行っている業務ですが、日報を書く業務は本当にオフィスでなければできない仕事なのでしょうか?
最近では、クラウドを使いオンラインで日報を作成して共有できるツールもあります。訪問先からオフィスに戻らず家で日報を作成することも可能です。さらに、訪問の予定が無ければ、ビデオ会議やチャットツール等を使って出社せずとも仕事をする事が可能です。
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企業にとってもアウトプットだけを評価すれば良く、交通費の削減などのメリットもあります。
育児休暇
既に大部分の企業で取り組まれている制度ですが、女性だけではなく男性へ育児休暇取得を促進する企業が増加しています。
男性社員が育児休暇を取得し子育てに参加することで家族とのコミュニケーションも高まります。
また、女性の活躍という視点でも男性の育児休暇取得は有効です。
日用品の大手メーカーである花王では子どもの生まれた男性社員に対して、育児休暇取得の促進を行っています。対象の男性社員本人だけではなく、その上長に対しても育児休暇のリーフレットを配布して取得を啓発しているようです。
短時間勤務制度
育児休暇と同様に既に多くの企業で制度導入が見られていますが、この制度でも男性社員への時短勤務も視野に取り入れてみましょう。
制度自体は多くの方が知っている内容だと思いますが、育児や介護にたずさわる社員を対象にして勤務時間を通常より何時間か短縮する制度です。通常は8時から17時までの就業時間だった場合、例えば8時から15時までになるなど、就業時間が短くなる制度です。
現在は小さい子どもがいる女性社員の取得が圧倒的に多いのですが、今後は男性の育児参加も視野に入れて取り組む制度となりそうです。また、8時から15時までと固定するのではなく、10時から16時までの勤務であったり、午前中までの勤務であったりと柔軟に設定する企業も多いようです。
近年では小さい子どもを育てる社員だけではなく、社員の両親の介護を目的とした時短勤務取得者も増えていくことが予想されます。
フレックスタイム制度
フレックスタイム制度も働き方改革が進む前から浸透している制度ですが、今後より一層期待される制度です。
時短勤務と異なり総労働時間は短くなりません。しかし、1ヶ月の範囲内で始業の時刻と終業の時刻を柔軟に変更できる仕組みです。
9時~18時までが終業時間だった場合、1時間早く出社して1時間早く帰宅することも可能ですし、昨日1時間残業したから今日1時間早く帰るというように日を跨ぐことも可能です。
「昨日頑張ったから今日仕事早く終わってしまったけど、18時までが終業時間だから座ってないといけない。」という非生産的なことが減少します。
本当に毎日9時に全社員が集まる必要があるのか、18時に全員で終礼を行って業務を終える必要があるのか今一度考えてみると良いかもしれません。
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働き方改革の罠
働き方改革を推進する上で気をつけて欲しいのは、「働き方改革」とは「労働時間を短くすることではない」ということです。先述の通り、「働き方改革」を推進するために多くの企業では「育児休暇」「短時間勤務制度」「テレワーク」「フレックスタイム制度」などの施策が実施されてきました。
しかしながら、それらの施策の定着度合いには大きな開きが見られるます。その差は「労働時間短縮と同時に労働生産性向上が意識がされているか」という点にあります。
「育児休暇」と「短時間勤務制度」は結局のところ「労働時間を減らしている」に過ぎません。そのため、そもそも一人一人に課せられた労働量を減らすことができなければ、その制度は社員のためにならず、定着させることはできません。「会社が短時間勤務制度を実現するために、強制消灯時間を設けたが、結局業務が終わらず、翌朝早くに出勤する羽目になった」や「会社が男性にも育児休暇取得を推奨しているが、現在人手不足で取得はとてもじゃないが考えられない」などの話が聞かれるのは「労働量」が減っていないのに、労働時間を減らそうとしていることが原因です。「労働時間を減らす」という行為は、手段に過ぎません。それを通じて、「従来の業務を見直し、無駄を省く、もしくはかかる時間を圧縮する」という目的を達成したいのだということを強く意識することが肝心になってきます。
また、「テレワーク」「フレックスタイム制」についても定着しない原因として「業務内容の見直し」という意味での労働生産性向上が意識されていない点があげられます。例えば、「テレワーク」や「フレックスタイム制」を利用しようにも、「朝礼」「毎日の会議」「上司への進捗報告」「日報の提出」などの業務を会社で行わなければいけない状況では、これらの制度は形骸化してしまうでしょう。
働き方改革を支える「労働生産性向上」
それでは「労働生産性」を向上させるにはどうすれば良いのでしょうか?「働き方改革」のとりあえずの目標を「少ない時間で多くの売り上げをあげること」とします。
営業部を例にとって考えてみましょう。「労働(営業)生産性」は「売上高」を「労働コスト」で割ったものと考えると、次のように定義されます。
これを見ると「労働生産性」を高めるには一人当たりの「労働時間/育成コスト/リードタイム」を減らし、「商談数/成約率/単価」を増やすことを目標にすれば良いということがわかります。
この方程式のうち最大の分母となっているのは労働時間ですので、まずは「労働時間を減らす」ことを考えてみましょう。
・営業職の労働時間の内訳は?
営業の一日の業務内訳の調査結果を見ると次のようになります。
また、JMCAが「日米生産財営業マンの労働時間の内訳」を調べたところ、日本の営業マンは労働時間を9時間29分のうち「会議と書類整理」54%、「顧客との面談時間」25%、「移動時間」19%、アメリカの営業マンは「書類整理と会議」20%、「顧客との面談時間」41%、「移動時間」35%という結果になりました。
働き方改革に定評のある「味の素」では、日本経済新聞社の取材に社長である西井孝明がこう語っています。「男性社員は平均1日10時間半、女性社員は9時間半働いていた。内訳にあきれる。会議とその資料準備に、男女とも1日平均4時間を費やしていた。会議が多く、長すぎるうえ、会議中にまったく発言しない社員も珍しくない。「こんな非効率な働き方は、海外法人ではありえない。会議は集まって結論を出す場。情報共有だけの会議はいらない。」
これらの事実は、日本の営業職は「会議、書類整理、移動時間」に大きな改善の余地があるということを示しています。また、それらの業務に時間を取られるがために、「売り上げ向上」に直結する「顧客との面談時間」が圧迫されていると推測することができます。「会議、書類整理、移動時間」を改善するためにそれらの業務の内訳を考え、その妥当性を吟味していきましょう。
・会議→会議の目的を考えると「情報共有/意見出し/意思決定」に分けられます。
その場合、「情報共有」が目的ならば、その時間に全員が時間を割いて集まる必要はなく、掲示板上で告知、もしくはチャットツール上にアップし、個人のタイミングで確認するのが良いでしょう。「意見出し」ならば、発案者が事前情報を共有し、争点を明確にしておくとスムーズに進むでしょう。「意思決定」ならば、決裁権をもつ人がいれば十分なので、他の人がその場に居合わせる必要はないと考えられます。「会議中社員が全く発言しない会議」が頻発するのは、「事前情報共有が不十分な意見出し会議」や「そもそも発言が求められていない情報共有のための会議」などが原因なのではないかと考えられます。
・書類整理→ヨミ情報/案件情報/顧客情報/日報/会計/退勤書類/名刺などなど。
これらの書類のうち、特に整理が大変なものは「更新頻度が高く、多くの人が編集に携わる」という特徴をもちます。更新頻度が高いと最新の情報を保ち続けることが手間となり、多くの人が携わると書類の所在がわからなくなってしまうからです。そのため、まずはみんなが必要なデータへ簡単にアクセスできるように、「紙」で管理している情報をデータに移していくことが大切になってきます。その際には、データ管理専門のクラウドサービスを利用することがおすすめです。具体的には、名刺管理ツールの「Sansan」、営業支援ツール(SFA)「Mazrica Sales」などの導入が考えられます。
例えば上記はMazrica Salesの案件の進捗状況を可視化する「案件ボード」という画面です。担当営業がそれぞれどんな状況の案件を持っているのかを一目で把握することができます。営業に関わらず社内でのプロジェクト管理やwebメディアの制作管理など様々な場面での活用も可能です。
更に上記のようなレポートを活用することで現在の売上状況や活動量を把握することができます。
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・移動時間→通勤/顧客訪問
移動時間は削減もしくは活用することが肝心になってきます。通勤時間削減にはリモート勤務やサテライトオフィスの準備が効果的でしょう。また、顧客訪問時間はウェブ会議に切り替えることで削減できます。また、スマホから使える日報アプリやSFAを導入すれば、顧客訪問時間に顧客情報を確認したり、その日の営業の実施結果を登録したりと時間を有効に活用することができます。
このようにクラウドツールを活用すれば、「会議、書類整理、移動」など時間がかかりすぎている業務をなくしたり、それにかけなければいけない時間を減らせます。そして、余った時間を「顧客との面談時間」という本業に費やすことができれば、売り上げ、ひいては「労働生産性」をあげることができます。
働き方改革の事例
NECの事例
従来から働き方改革に取り組んで来たNEC社。当初は育児する母親への時短勤務やフレックス制の導入などの環境づくりを行っていました。近年ではICTの進展とともに住宅勤務や裁量労働など柔軟な働き方を推進しているようです。
1.テレワークの拡大
テレワーク制度は以前から導入していましたが、育児や介護従事者だけではなく全社員を対象とした制度に拡大をしました。当初は「見えないところで働く事への不安」が組織にはつきまとっていましたが、対策としてPCの利用状況や勤務状況を可視化するクラウドサービスを活用しているようです。また、テレワーク勤務者が別々の場所にいながら会議が行えるようにSkypeも活用しているようです。
2.AI・RPAによる自動化の推進
RPAを導入して、定期的なチェックやデータの転記作業などルーティン業務を人に変わって自動処理させるようにしています。NECのグループ会社では、経理・財務・資材・調達部門などでトライアルで活用を開始しているそうです。
AIを活用した先進的な取り組みも進めており、業務システムをAIが代行したり、社員一人ひとりの専門性やナレッジなどをAIが自動で提示したりするような取り組みも始めているそうです。
関連記事:AIを活用した経営戦略とツール8選
マツリカの事例
2020年4月で創立5周年を迎える株式会社マツリカは、「Initiative」「Liberty」「Creativity」をバリューとして掲げ、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境づくりにこだわってきました。
マツリカでは、「いつ、どこで、どう働くか」を各々の裁量で決められるよう、住む場所を問わず在宅や遠隔で働けるリモートワーク、勤務時間を固定しないフルフレックス制などの就業環境を整えています。多様性ある従業員が、自由と責任のもと、各々の持ち場で裁量を発揮して、生産性高く創造的に働ける企業を目指しています。
2020年版「日本における働きがいのある会社」ランキング従業員25〜99人部門にて、ベストカンパニー第16位を受賞しました。マツリカに興味を持った方はこちらを参考に。
終わりに
ノー残業デーを導入してみたが形だけで終わっている、男性の育児休暇取得推進も人事が盛り上がっているだけで実態としては誰も取らない…という声が多く聞かれます。
今回紹介したような働き方改革は、制度やITの導入などハード面だけではなく、企業風土に合わせて活用していかなければなりません。
そのためにはまず管理職自ら率先して行動する事で、組織に制度を馴染ませてあげる必要があります。今回の事例を参考に始められる所から働き方改革を進めてみましょう。
エクセルから脱却すべきタイミングとは?
営業管理におけるExcelの課題とSFA/CRMの特徴についての資料です。ExcelからSFA/CRMに移行すべきタイミングとSFA/CRM導入によるメリットを紹介します。
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