日本の社会人は昔から普段の仕事の場とは違うお酒を飲む場を使って、同僚や上司との仲を深めてきました。
これは、お酒を飲む+コミュニケーションを合わせて「飲みニケーション」という造語になり、会社という組織の中でのコミュニケーション方法として重要な習慣となっていきました。
現代では、「部下の付き合いが悪い」などという上司の声や、「上司が無理やり飲ませてくるアルコールハラスメントの被害に遭った」などの部下の声も多くなってきていますが、その反面、個々の外出が多い営業部門などは飲みニケーションの場で一体感を高めることができることも事実。
飲みニケーションの実態は、どのようなものなのでしょうか。
飲みニケーションの効果とは?
「若手は飲み会の場に対して控えめ」というイメージが広まっていますが、第一三共ヘルスケア株式会社が実施した調査によると、会社の飲み会に誘われたときの気持ちを、20代・30代の約6割が「嬉しい」「やや嬉しい」と回答。
出典:第一三共ヘルスケア株式会社 働く男をアゲる健康マガジン“おれカラ”Vol.11「働く男性の職場での飲み会事情」をもとに編集部作成
会社の飲み会は、過半数の若手にとって嫌なものではないという実態が分かりました。
また、オックスフォード大学によると、「贔屓のパブでしょっちゅう飲んでいる人の方が、そうでない人に比べて友人も多くネットワークもあり、コミュニティーへの貢献度が高いため、結果として人生が充足している」という研究結果が出たのです。
これを会社という組織に置き換えると、会社の飲み会に頻繁に顔を出すことで、会社というコミュニティーへの貢献度が上がり、個々の幸福度が増すとも考えられるでしょう。
そして、お酒の力を借りることで、普段は言えない悩みを打ち明けたり、今まであまり話したことのない人とも話したりできるようになり、お互いの交友や理解を深めることにも繋がります。
株式会社ジェイアール東海エージェンシーの調査によると、「お酒の力を借りて実現できたことは?」という質問に、20代の約4割、30代の3割以上が「上司との関係がよくなった」と回答。
出典:株式会社ジェイアール東海エージェンシー「ビジネスパーソンの「お酒」に関する調査2016」をもとに編集部作成
若手にとって、飲みニケーションの場は上司との大事な接点となっていることが分かります。
更に、飲みニケーションの場では、会社ではできない仕事以外の話をすることができるのもメリットの一つ。
若手にとっては役職者とフランクに話せる唯一の場と言ってもいいでしょう。
上司にとっては、部下の疑問や本音を直接聞けるチャンスでもある上に、その人自身のことを知ることができる機会でもあります。
また、飲みニケーションの場においては、部門内だけではなく他部門とも関わり合うことができ、情報交換や人脈・ネットワークの構築、ノウハウの共有などもすることができます。
営業手法のヒントや、新しい顧客の掘り起こし、普段は時間が取れなかった案件の相談などもできるかもしれないですね。
飲みニケーションは本当に必要か?
マイナビが2016年に実施したアンケートでは、20~30代の女性が会社の飲み会に対してネガティブなイメージを持っているという調査結果が出ました。
また、男性の3割、女性の4割が飲みニケーションは不要だという調査結果もあります。
部門や飲み会の男女比によっても違うかもしれませんが、一般的には女性のほうが飲みニケーションに対してネガティブな印象を持っているようです。
しかしながら上司としては、飲みニケーションを通して組織の一体感を高めたり、部下のケアをしたりしたいという本音もありますよね。
就業時間内でそれが実現すれば良いのですが、特に外出の多い営業部門はなかなか難しい現状があります。
直行直帰が多い企業ならば、なかなか顔を合わせて話す機会も少なく、情報共有ツールを使っただけではどのように仕事を進めているのか把握しきれません。
会議という限られた時間だけでなく、部下とのコミュニケーションを図るためには、やはり飲みニケーションは必要となるでしょう。
ここで注意が必要なのは、部下の気持ちです。
先程の調査結果の通りに、会社の飲み会に対してはポジティブな気持ちの若手が多い一方で、「説教されるのは嫌だ」「自慢話に付き合うのは苦痛だ」「時間的にも金銭的にも負担がある」などといった本音もあります。
企業が費用の一部を負担したり、説教やパワハラを公で禁止するなど、部下も参加しやすくなるルール作りをすることが大事になるでしょう。
また、先述のように飲み会に対して消極的な女性層が参加しやすくなるよう、セクハラ禁止も設けることで、会社としての公式行事として飲み会を開催することができるでしょう。
飲みニケーションのデメリット
1.金銭的な負担
お酒の場を上司と部下のコミュニケーションの場とするということは、まず金銭的な負担が生まれてしまいます。
家庭を持っている上司なら小遣い制という場合も多いでしょう。
そのような中で、以前は上司の奢りが一般的でしたが、現在では割り勘もしくは7:3の負担なども多くなっているようです。
飲みニケーションの場が増えることは、上司にとっても部下にとっても、金銭的な負担は大きくなってしまいます。
2.時間的な負担
飲み会の時間が長引いてしまったり、何軒も連れまわされたりしてしまうと、拘束時間が長くなってしまいます。
それによって家族団らんの時間や、趣味の時間、友人・恋人と過ごす時間を削ることになってしまうのです。
3.精神的な負担
説教や自慢話に付き合わされることや、仕事の後に上司と何時間も一緒に居ることは、部下にとっては精神的に負担があります。
また、お酒を飲めない人や弱い人にとっては、飲酒の強要なども精神的苦痛を感じるでしょう。
4.翌日のパフォーマンスが落ちる
「お酒の場は無礼講」という上司もいますが、部下にとってはやはり気を遣うもの。
酔った勢いで軽口を叩かないように気を付けないといけないですし、上司のグラスを空にしないようにお酒を注いだり注文したりと動かなければなりません。
結果的にそれがストレスとなり、疲労を溜めてしまって、翌朝のパフォーマンスは落ちてしまいます。
当然、お酒を飲みすぎると二日酔いになるので翌日の体調にも響きますよね。
5.実現性の低い話が展開される
飲酒によって気持ちが大きくなった上司が「昇格させてやる」などと言っても、人事権のない人が言ったらそれはほとんど実現性なし。
また、部下のミスを「フォローしてやる」などと言っていても、翌日相談したら「あれ?そんなこと言ったか?」などと、アルコールによって忘れていることも。
お酒の場では実現性の低い話が展開されることも多くなってしまうのです。
6.断った場合にしこりが残る
フリーペーパー「R25」の調査によると「嘘をついて上司からの飲みの誘いを断った経験がある人」は約7割という調査結果が出ており、嘘の予定を作って断っている人も多いようです。
しかし、せっかくのお誘いを断るのは気持ちのいいものではないですよね。
それは、思い切って誘ったのに断られたほうも同じ。
どうしても不都合があって飲み会を断らざるを得ない状況でも、断った側も断られた側もどうしてもギクシャクとした雰囲気になってしまいます。
飲みニケーションを改善するには?
デメリットはありますが、若手は飲み会の場で上司とのコミュニケーションが取れるのでポジティブに参加しているという事実もあります。
会社が費用を負担したり、説教・各種ハラスメントの禁止や一次会で解散するなどのルール作りをしたりすることで、縦の関係としてではなく横の関係で、フランクに話して楽しむことができる親睦の場にすることができます。
参加者全員にとって苦痛ではなく、「飲みニケーション」という言葉の通りに、飲み会を通してコミュニケーションを取る場として社内に認知されることで、プラスの意味を持った場になることでしょう。
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