批判的思考と訳されるクリティカルシンキングは、今やビジネスにおいてロジカルシンキングと並んで欠かすことのできないものです。
この記事では、クリティカルシンキングをいますぐビジネスに取り入れるために必要な3つの問いやクリティカルシンキングの枠組みを説明しています。
ぜひこの記事を読んでクリティカルシンキングの手法を身につけてみてください。
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クリティカルシンキングとは?
クリティカルシンキングは、批判的思考と訳される、考え方の1つの形です。
ある物事について「なぜ?」「本当に?」「この場合は?」といった疑問を持ち続けることで客観的で本質をついた結果をもたらすことがこの思考法のポイントです。
クリティカルシンキングの基本姿勢3つ
クリティカルシンキングには基本的な3つの姿勢があります。
①目的は何かを常に意識する
1点目は、常にゴールを意識することです。
何かについて批判的思考を行っている際に、目的を意識しないでいると枝葉末節にこだわり過ぎてしまったり、本来求めているゴールとはずれた結論が出てしまうことがあります。
例えば、現在の教育問題について議論しようとしていたのに、そもそも子供の特質とは何か? ということを批判的思考してしまって本来の教育の問題から離れてしまうことがありそうですよね。
クリティカルシンキングを行っている際は常に本来の目的・ゴールを意識することが大事です。
②自他に思考のクセがあることを前提に考える
人間は、誰しも思考のクセを持っています。
なぜなら、人間は自分の知っている範囲だけで判断を下そうとしたり、かつての経験に基づいて思考を行ったりしようとするからです。
しかし、その自他の思考のクセに惑わされていては正確なクリティカルシンキングはできません。
そのため、クリティカルシンキングを行おうとする際は必ず自分の思考のクセを客観視することが大事です。
そのためには、ノートをつけて自分の思考の道筋を客観的に見つめ直してみたり、他者に思考のクセを指摘してもらうことが大事になります。
常に新しい情報を自分にアップデートしながら、自分を客観視することで自分の思考のクセは最大限矯正することができます。
クリティカルシンキングの際には、このように自分の思考にばかり埋没せずに、客観的に広い視野を持って行いましょう。
③問い続ける
ある物事についてあくまでも批判的な姿勢を崩さず、問いを投げかけ続けることが大事です。
例えば、後述しますが「So what?」「Why so?」「True?」といった疑問の言葉がクリティカルシンキングの際の助けになってくれるでしょう。
批判的思考というものは、決して何かの物事を否定しようとする営みではありません。
疑問を投げかけてより本質的な事柄に歩み寄ろうとする思考法なのです。
そのため、教育について考えよう、というときには「そもそも人は教育されるべきものなのか?」といった根幹から考えて本質に迫っていくことが大事になります。
これは、一見遠回りのように見えますがくまなく疑問点を出していくことにより後述のMECEに近い状況になります。
(https://globis.jp/article/2221参照)
クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違いとは?
クリティカルシンキングと並んで有名な思考法がロジカルシンキング。
どちらも理論的に思考を行うということであり、一見よく似ているように見受けられます。
しかし、実際には根本的に違うものです。
一体、その違いとはどんなところなのでしょうか?
ロジカルシンキングとは、ある問いを立て、根拠を用いて論理的に結論を導き出すもの。
問い→結論→それに対する根拠という一方向の論理となります。
一方で、クリティカルシンキングはより多面的で、結論を疑う思考法です。
つまり、想定された結論に対して様々な角度から疑問を呈し、検討し尽くす、というものがクリティカルシンキングの実態なのです。
つまり、問い→結論→それに対する根拠という一方向の論理にはなりません。
何度も何度も結論や根拠、問いを反駁し、より精度の高いものに仕上げていくのがクリティカルシンキングです。
クリティカルシンキングを行うための切り口
では、実際にクリティカルシンキングを行う場合、どういった切り口が有効なのでしょうか?
この節ではクリティカルシンキングに有効な切り口をご紹介します。
3つの疑問
前述のように、クリティカルシンキングでは問い続けることが大事です。
その際に、重要となる3つの疑問が先ほどにも登場した「So what?」「Why so?」「True?」の3つです。
①So what?
So what? は今持っている情報から、新しい結論や推論を引き出す際に使える問いかけです。
例えば、子供の貧困の度合いが子供の成績とも関係がありそうだ、というデータがあったとします。その際に、So what? と問いかけて、貧困世帯の子供への教育支援が必要だ、という結論を導出する必要があるのです。
疑問がなければ、データも活用できません。クリティカルシンキングの際は、「So what?」と積極的に問いかけて結論を引き出しましょう。
②Why so?
Why so? はなぜそう言えるのか? という問いかけです。
結論に対し、「なぜそう言えるのか?」と問いかけることでそれに関連するデータなどを集めることができ、結論の強度を強くすることができます。また、結論が本質的でない場合には、それが明らかになる問いかけです。
例えば、貧困世帯への教育支援が必要だ、という結論に対してWhy so? と問いかけてみたならば、先ほどの「貧困と成績の不調には相関がある」というデータが提示できそうです。
③True?
So what? とWhy so? だけでは議論が堂々巡りになってしまう恐れがあります。その際に有用なのがTrue? という問いかけです。
それは本当なのか? と問いかけることで本質が見えてくることがあるのです。
例えば、子供の貧困と成績の問題に対してTrue?という問いを投げかけてみたならば、子供の成績の不調の原因は貧困ではなく親の不在であるという別の要素が出てくるかもしれません。
True? という問いを投げかけることで、閉塞しがちな議論が開けることが多いです。ぜひ使ってみてください。
また、Anything else? (他には?)という問いかけで新しい道が開けることもあります。
成績の原因を貧困に結びつけるのではなく、朝ごはんの有無などに結びつけてみることができるのがこのAnytinig else? という問いかけの強みです。
補助的に使ってみると良さそうですね。
MECE
これは、ロジカルシンキングの際にもよく使われる単語で、「もれなくだぶりなく」という意味です。
隅々まで批判が行き渡り、全てが検討し尽くされた状態のことを言います。
これは、クリティカルシンキングが一通り終わった後に、本当にMECEであるか検討をしてみることで新たな問題点が見つかったり、その結論の補強がなされたりすることができるというものです。
ロジカルツリーなどを有効に使って、クリティカルシンキングの一応の達成後の結論を一度検討し直してみるといいですよ。
クリティカルシンキングの事例とツール
クリティカルシンキングについて説明をしてきましたが、ここで例題にとなるような事例と実際にクリティカルシンキングを使いこなすためのツールをみてみましょう。
会社における事例
・株式会社Mazrica Sales Lab.のある社員の主張
「営業部の業績が最近上がらないのはみんなのやる気がないせいだ」
・ある社員がそう考えた理由
「だって、みんな残業をしているのに成績が上がらないなんてだらだら仕事をしているからに違いない(根拠①)。それに、リードに対するアポも取れていないし、アポを取る時点から失敗するなんて気が緩んでいるからだ(根拠②)」
・その社員に対する社長のクリティカルシンキング
「みんなやる気がないというのは本当だろうか? 残業が多いというのは頑張っている結果のようにも思える」
「残業が多く、非効率な仕事ぶりに見えてしまうのはなぜだろうか?」
「リードからのアポが取れていないと言うが、マーケティング部から渡されたリードの質は果たして最適だっただろうか?」
「やる気がないと業績がすぐに落ちてしまうなんてノウハウはどうなっているのだろうか?」
どうやら、Mazrica Sales Lab.社のある社員の意見は社長のクリティカルシンキングにより覆されてしまうか、よりブラッシュアップされたものとなりそうですね。
クリティカルシンキングのためのツール
・クリティカルシンキングのための講座等
クリティカルシンキングを磨くために、講座等が用意されている場合もあります。そういった講座やセミナーに参加して思考法を磨くことは1つの手です。
・SFA/CRM/MAの活用
クリティカルシンキングをするためには、まずは思考のための基礎体力として情報を仕入れておくことが一番大事です。
その際に有用になるのが、SFA/CRM/MAなどの活用です。
情報を蓄積できるツールを使って、より精度の高いクリティカルシンキングを行いましょう。
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終わりに
ビジネスに有用なクリティカルシンキング。なかなか奥深く、身につけるには長い時間のかかるものでもあります。
しかし、クリティカルシンキングを行えるようになれば、思考力は一段とアップするはずです。
ぜひ、クリティカルシンキングを実践して、本質に近づいた議論ができるようになりましょう。