ウェブマーケティングを行う際には、様々な専門用語が登場します。
今回は、その中でもROIと呼ばれる、投資した資本に対しどれほどの利益を得られたかを計る指標に特に注目しながら、他の指標との違いを確認していきます。
マーケティングの用語に自信がないという方は、この記事を読めばそれぞれの違いが一目瞭然です。
ぜひ自分の用語の認識があっているか確認してみてください。
この記事の内容
ROIとは?
ROI(Return On Investment)とは、投資した資本に対しどれだけの利益が得られたかを計る指標です。
ROIが高ければ高いほど利益が大きかったということになりますし、ROIが低ければ低いほど行なった施策の効果があまり出ていないということになります。
ROIの計算方法
ROI は、投下したコストに対してどれだけの利益を得られたかを示す指標で、次の計算式で求められます。
ROI =〔売上高 - 売上原価 - 投資額〕 ÷ 投資額 × 100
純利益を投資額で割り、その結果を 100 倍することでパーセンテージを算出します。投資額と同額の利益が出れば ROI は 100%、それより利益が大きければ 100%超で黒字、小さければ 100%未満で赤字という判断になります。
- 投資額:300 万円
- 売上高:900 万円
- 売上原価:240 万円
まず利益を求めると、
900 万円 - 240 万円 - 300 万円 = 360 万円になります。
これを投資額で割り、100 を掛けると、
360 万円 ÷ 300 万円 × 100 = 120%です。
このケースでは、投資した 300 万円に対して 360 万円の利益を上げているため、ROI は 120%となり、投資は黒字であると判断できます。
ROIの良し悪しを計る基準
ROIの適切な水準は、業界の特性や事業フェーズ、さらには施策の目的(短期的な成果を求めるのか、長期的な成長を見据えるのか)によって大きく異なるため、絶対的な数値として一律の目安を設けることはできません。
しかし、自社のROIを評価する際に参考となるいくつかの視点や判断基準は存在します。
たとえば、自社が過去に実施した類似施策と比較することで、ROIの改善傾向や成果の進捗を確認することができます。
また、施策開始前に設定した目標ROIが達成されているかどうかを検証することも、有効な評価軸となります。さらに、可能であれば業界レポートや公表データを活用し、平均的なROIと照らし合わせて自社の立ち位置を把握することも一つの手段です。
ただし、業界横断で比較可能なデータには限りがあるため、その点には注意が必要です。
最も重要なのは、そうした指標に振り回されるのではなく、自社の状況に応じた現実的な目標を設定し、定期的にROIを測定・分析しながら、改善に向けた取り組みを継続していく姿勢です。
ROIのメリット・デメリット
ROIにはメリットがあるだけでなく、デメリットも存在します。
それぞれについて簡単に解説します。
ROIのメリット
ROIを活用すると、大きく二つのメリットが得られます。
一つ目は、事業規模がまったく異なる場合でも、投入コストに対するリターンという同じ物差しで優劣を検討できる点です。
たとえば「売上は大きいが利益率の低い事業」と「売上規模は小さいものの高収益な事業」を横並びに評価し、どこへ資源を重点的に配分するかを客観的に判断できます。
もう一つは、ROIは事業単位だけでなく個別施策レベルにも適用できるため、広告キャンペーンや製造ラインの改善など細かな取り組み単位で費用対効果を洗い出せる点である。
実際、製造業ではROI分析によって材料見直しやライン再編といった具体的な改善策を導き出し、利益率向上に結び付けています。
ROIのデメリット
一方でROIにはデメリットも存在します。短期的な利益を基準に算出する性質上、成果が出るまで時間を要する施策の真価を測ることには向きません。
測定期間を誤ると「費用だけ先行してROIが低い」といった見かけの悪化を招き、正しい経営判断を阻害する恐れがあります。
また、ROIは数値化できる利益とコストを前提とするため、ブランド認知の向上や顧客満足度の改善のように金額換算が難しい活動を評価する指標としては適切ではありません。
ROIを用いる際は、期間設定と数値化の可否をあらかじめ検討し、必要に応じて別の定性評価や中長期の指標と併用することが重要です。
ROIとROASの違い
ROAS(Return On Advertising Spend)は、日本語で「広告費用対効果」と訳され、投下した広告費がどれだけ売上を生み出したかを示す比率です。
ROIが設備投資や人件費などを含む“あらゆる投資”を母数に取るのに対し、ROASは広告費という一項目だけを投資額として扱う点が最大の違いです。
言い換えれば、ROIは経営全体の採算性を測る指標、ROASは純粋に広告施策の収益性を測る指標といえます。
ROASの計算方法
ROASの計算式は「広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100」で表されます。
たとえば、広告費を20万円かけて400万円の売上が発生した場合、400万円を20万円で割り100倍すると2,000%となり、1円の広告費が20円の売上を生み出したことがわかります。
その他関連指標との違い
ROIと混同されやすい指標として、他にもCPAやCVR、LTVなどがあります。それぞれについて簡単に解説します。
CPA
CPAは、Cost Per Acquisitionの頭文字をとったものであり、1コンバージョンあたりのコストを図るものです。
つまり、この数値が低ければ低いほど理想の状態であると言えます。
計算式は、 コスト÷コンバージョン数 です。
月に10万円のコストをかけて125件のコンバージョンを得ているのならば、これを式に代入してCPA=800円となります。
CPAは主にインターネット広告に用いられるものであり、メリットとしては広告に対する費用対効果が分かる点にあります。
CPAが低い場合、リスティング広告の文言は適切か、SEOの管理がきちんとなされているか、などウェブマーケティンに置ける基本的な見直しが必要となってきます。
関連記事:CAC(顧客獲得コスト)とは?CPAとの違いや計算方法・削減方法を解説
CVR
CVRという値は、Conversion Rateの頭文字をとったもので、ウェブサイトへのアクセスのうちどれくらいがコンバージョンに繋がったかを見る指標です。
サイト全体のアクセス数を見るだけでなく、特定のページにアクセスした人数とコンバージョンを比べる場合もあります。
この値は コンバージョン数÷サイト訪問数(セッション数)×100 で求められます。
例えば、サイトのコンバージョン数が200だったとして、サイト訪問数が4000だとすると、値を代入して 200÷4000×100=5 となります。
CVRのメリットは、サイト別のCVRを求めることでどのサイトのページが効果がなく、逆にどのページに効果があるのかということを可視化できる点です。
さらに、CPAとCVRを組み合わせることで、サイトの運営の問題点などをより複合的に見ることができます。
また、CPAを下げるにはCVRを上げていくことが不可欠です。
CVRの改善方法はページや導線の刷新であり、コンバージョンに直結することなのでCVRを計ることは非常に重要であると言えます。
LTV
LTV(Life Time Value)とは、顧客生涯価値と訳されるマーケティングの指標のひとつです。
これは、「生涯」と付いているように、ある広告で商品を買った人がリピートも含めてどれほどの利益を落としてくれるか、という考え方になります。
LTVの式としては、平均顧客単価×平均購買頻度×平均継続期間というものがもっとも代表的です。他にも、顧客の平均購入単価×平均購入回数や(売上高-売上原価)÷購入者数という式もありますので参考にしてみてください。
もし、平均顧客単価が月額1500円で、平均購買頻度が月1回、平均継続時間が6ヶ月だとすると、代表的な式で計算すればLTV=1500×1×6=9000となります。
LTVで注目すべきなのは、リピートが考えられているという点です。大抵の顧客は購入を継続して行いますし、そうなることが理想です。リピートが考えられうことによって企業のより長期的な目標が見えやすくなります。
また、LTVはもっとも初めに着手すべき指標であるとも言えます。
なぜなら、リピート(平均継続期間)が十分でないのにCPAやCVRを伸ばしたとしても、最終的に十分な利益を上げることができないためです。
LTVから逆算してCPAやCVRを計算してみるということが重要でしょう。
関連記事:LTV(ライフタイムバリュー)とは?意味と計算方法・LTV向上に有効な営業戦略
ROIの活用シーン例
ROIは、単に計算するだけでなく、様々なビジネスシーンにおける意思決定や効果測定に活用することで真価を発揮します。
ここでは、代表的なROIの活用シーンをいくつかご紹介します。
マーケティング施策の効果測定と改善
ROIを活用すると、広告キャンペーン、コンテンツ配信、展示会やセミナー運営などの施策を客観的に評価することが可能です。
広告費に対して生まれた利益を比較すれば高いパフォーマンスの媒体やクリエイティブが特定でき、制作費などのコストを売上増と照らし合わせればリソース配分を最適化できます。
イベントも同様に、出展料や資料作成費と獲得商談・受注額を突き合わせることで次回の開催可否や改善点を判断できます。
営業施策の評価
人員追加、外部ツール導入など、施策ごとに発生したコストを「投資額」として集計し、施策がもたらした純粋な粗利を「利益」として算出すれば、個々の施策がどれだけ経営に貢献したかを同一指標で比較できます。
ROI が高い施策には予算と人員を厚く配分し、低い施策は要因分析を行って改善するか、思い切って撤退するなど、定量的な判断を繰り返すことで、営業戦略全体の資源配分が最適化されます。
さらに月次・四半期単位で推移をモニタリングすれば、計画段階の収益予測と現実とのギャップが早期に可視化され、素早い軌道修正も可能になります。
ROI を中心に据えた効果測定は、現場感覚だけに頼らない科学的な営業マネジメントの土台となるのです。
新規事業・プロジェクトの収益評価
市場規模や売上予測、開発・販促コストを基に事業開始前に ROI を試算することで将来的な収益性を見通せます。
開始後は実績データから算出した ROI を計画値と照合し、数値が想定を下回る場合には施策の立て直しや撤退判断の材料として活用します。
こうしたプロセスにより、資源配分の最適化と施策のブラッシュアップが可能になります。
ROIを高めるための方法
ROI を押し上げるためには、式の分子である「利益」を増やすか、分母である「投資額」を削減するか、あるいはその両方に手を打つ必要があります。
以下では ①投資コストの圧縮 ②収益性の向上 という二つの方向からアプローチを整理します。
投資コストを抑える
最優先すべきは、利益創出に直結しない支出をそぎ落とすことです。たとえば新規設備を導入する場合、実際の業務で使わない機能を思い切って省けば大幅な投資削減につながります。
ただしコスト削減がサービス品質や生産能力を下げては元も子もないので、「利益を守る」観点を常に保持することが重要です。
広告費についても同様で、購買確度の高い層に絞り込めば無駄な露出を減らせます。
リスティング広告ならクリック単価と成果が見合うキーワードを厳選し、Web メディア出稿なら購買ターゲットが集まる媒体やアドネットワークを選定することで、投下額を抑えつつ収益を確保できます。
収益性を高める
コストを据え置いたまま利益を積み上げるには「販売数量の拡大」「単価アップ」「原価低減」の三つの施策が核になります。
まず販売数量を伸ばすには、広告クリエイティブを複数パターン用意して AB テストを実施し、CTR や CVR の高いパターンへ迅速に絞り込むといった運用型の改善が有効です。
単価アップの手段としては上位プランの追加やセット販売が挙げられます。既存資産を組み合わせたアップセルであれば、追加コストをほとんどかけずに客単価を押し上げることができます。
原価低減については、扱う商材を集中させて仕入れボリュームを確保し単価を下げる、あるいは RPA を導入して人件費を抑えるなど、直接費・間接費の両面から削減を図ります。
終わりに
ROI は投下資本に対して得られた利益を数値化し、事業や施策同士の費用対効果を横並びで評価できる便利な指標です。
ただし、正確な算出と継続的な改善には、信頼できる定量データが欠かせません。
そのためには、SFAで商談情報や活動ログをリアルタイムに記録し、AI 予測機能で受注見込みや売上を先読みする仕組みを整え、収益とコストの動きを可視化できる環境を築くことが有効です。
ROI 改善の第一歩としては、SFA 導入・データ利活用の最適化をサポートしてくれる専門ベンダーに相談するのも有効なアプローチです。

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