営業マネージャーであれば、部下が顧客に出す提案書をチェックして、レビューをすることが頻繁にあると思います。
そのときに、一字一句修正して戻したり、逆に「ぜんぜんダメだ!やり直し!」などと言って、突っ返してしまったりしていませんか?
こんな対応をしているとしたら、もったいないです!
提案書のレビューは、部下を成長させられる、またとない機会なのですから。
ぜひ、この記事の方法を使って、提案書のレビューを部下の育成に役立てていただければと思います。
この記事の内容
1.提案書の目的を聞き出す
提案書の作成に限ったことではないですが、どんな仕事にも達成すべき目的があります。
しかし、経験が少なかったり、まだ若いメンバーの場合は、仕事をしているうちに目的を忘れてしまうことがあります。
例えばテレアポならアポを取り、商談の機会をつくることが目的です。
しかし、いつの間にかアポの数を取ることそのものが目的になってしまい、強引なアポを設定してしまうということは、よくあると思います。
提案書の場合も、本来の目的は「顧客にとっての、商品・サービスの良さを伝える」ことにあるはずなのに、その顧客には何のメリットもない機能の特徴を並べ立てただけの提案書を作ってしまう、ということが起こり得ます。
この時に、いきなり修正を指示するのではなく、まずは提案書をつくる目的を部下に問いかけてみましょう。
こうすることで本来の目的を思い出し、どこを直すべきかを部下自身で見つけることができるようになります。
2.修正が必要な点は部下に考えさせる
部下が作成した提案書に赤入れをして、部下に修正をさせても意味がありません(これならマネージャー自身が修正しているのと同じですよね)。
レビューをする目的は、部下を成長させることにあります。
細かく修正の指示をしたり、アドバイスをしたくなる気持ちはわかりますが、ここはぐっと堪えて、問いかけを繰り返してみてください。
営業マネージャー:「決裁者の判断基準はなんだっけ?」
部下:「サポートが充実していることです・・・。」
営業マネージャー:「そうなると、対応時間の他に必要な情報はないかな?」
部下:「メールと電話だけじゃなく、訪問のサポートもあること・・・ですかね?」
このやり取りを見ると、問いかけに対しての答えを考える過程で、部下自身が改善すべきところに気づいているということがわかります。
指示するだけの場合、部下はすぐに修正をしてきますが、単なる作業をしているだけなので何の学びも得られず、恐らく同じことをまた繰り返してしまう可能性が高いでしょう。
一方、時間は掛かりますが、上述したやり取りにより気づきを与えることで、仕事に対する理解が深まると同時に、部下は自分の頭で考えるようになります。
部下の成長のためには、こうした手間や時間をかけることを惜しんではいけないのです。
3.決裁者と判断基準を聞き出す
提案書ではついつい、自分や会社として魅力的だと考えているポイントを打ち出してしまいがちです。
しかし、最終的に購入するのを決定する顧客企業の決裁者が、そこに魅力を感じなければ、どれだけ言葉を尽くして伝えても意味がありません。
例えば、価格の安さを重視している決裁者に対して、たくさんの機能があることを伝えても、「いいね!」とはなりませんよね。
価格の安さが決裁基準なのであれば、“業界最安値”という言葉が一番魅力的なはずです。
つまり、決裁者の判断基準をもとに提案書をつくるのが、受注への一番の近道だということです。
決裁者の判断基準を知るために必要な情報は、以下の2点です。
・決裁者は誰か
・決裁者が抱えている課題は何か
部下が提案書を持ってきたら、まずはこの2点を聞いてみてください。
答えられないようであれば、ヒアリングができていない=決裁者の判断基準を知らない、ということ。
この場合は提案書ではなく、商談におけるポイントや注意点などをアドバイスすることで、部下の成長に繋げることができます。
4.提案書で伝えたいメッセージを聞き出す
提案書には、決裁者の判断基準に沿ったメッセージを盛り込む必要があります。
むしろ、それ以外のメッセージは不要といっても過言ではありません。
決裁者の判断基準に沿ったメッセージも入っているけど、他の内容も盛りだくさん、という状況ですと、メッセージがぼやけてしまったり、検討材料が増えることで迷いが生じてしまうからです。
提案書の中に、決裁者の判断基準に沿ったメッセージ以外のものがある場合には、「この内容でメッセージは伝えられている?」と、部下に問いかけてみましょう。
すぐにはわからなくても、このように考えるきっかけを与えることで、気づきが得られるはずです。
5.決裁者の立場に立たせる
部下を聞き手、つまり決裁者の立場に立たせて、「きみなら、買うかな?」と問いかけてみましょう。
もし「買わない」と答えたなら、決裁者も買わないということ。
・課題に対するソリューションが最適なものではない
・提案書での伝え方がよくない
・・・など、買わない理由はいくつかありますが、部下自身が「買いたい」と思うようになるまで、問いかけを繰り返していきます。
ただし、顧客企業が抱えている課題を自社の商品では解決できないなど、そもそもニーズが合っていない場合には、提案書というよりはヒアリングや商談に問題がある可能性が高いので、切り替えて指導するようにしてください。
6.部下に改善点を理解してもらう
部下全員の提案書をすべてチェックして、毎回、同じようなレビューをしていては、いつまで経っても上司であるあなたの仕事は減りませんし、部下も成長しません。
最終的には、作った提案書を部下が自分で読み返してみたときに、問題点や改善すべき点に気づき、自分で修正できる、というのが理想です。
もちろん、いきなりこの状態にするのは難しいので、段階を踏んでいきます。
まずはレビューをするときに必ず、部下自身が改善点と、改善をすべき理由を理解しているかどうか確認をするようにしましょう。
一つ、具体例を挙げてみますね。
営業マネージャー:「決裁者の立場を考えると、この文章は必要あるかな?」
部下:「必要ない・・・かもしれないですね。」
→ここで部下は、問題点や改善点に気づくことができます。
営業マネージャー:「じゃあ、どうしたらいいと思う?」
部下:「この文章を削除して、代わりに◯◯の話を入れて・・・。」
→ここでさらに、改善方法がわかります
このやり取りで部下は、決裁者の立場を考えて文章をつくっていなかった(問題点・改善点)ということに気づき→その上で、決裁者の立場に立って文章を修正する(改善方法)を理解することができます。
これを繰り返すことで、確実に間違いや改善しなければならないことが減っていくはずです。
まとめ
今回の記事では、提案書のレビューを通して部下を育成する方法を6つご紹介しました。
共通するポイントは、以下の2点です。
①指示・アドバイスをするのではなく、問いかける
②部下に考えさせる
部下に気づきを与え、自分の力で考えさせることが、上司の役割でもあり、本当の意味で部下の成長に繋がります。
部下が成長して独り立ちすれば、上司であるあなたもレビューしていた時間を他の仕事に使えるようになりますし、そうなれば組織全体としての生産性向上にも繋がっていきます。
慣れないうちは時間もかかりますし、面倒に感じてしまうこともあるかもしれませんが、かけた時間、労力以上に部下の成長によるメリットを感じられるはずです。
ぜひ一度、提案書のレビュー方法を見直してみていただければと思います。
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