耳慣れた言葉である「カスタマーバリュー」。
実際の意味は「製品やサービスに対して顧客が適正と認める価値」や、「製品やサービスを利用することで顧客が実際に得られる価値」であり、この概念は様々な場面で応用が可能です。
そこで、この記事ではカスタマーバリューそのものについて詳述してから、カスタマーバリューを用いた価格設定方法について解説します。
カスタマーバリューとは?
「製品やサービスに対して顧客が適正と認める価値」、または、「製品やサービスを利用することで顧客が実際に得られる価値」を意味するカスタマーバリュー。
文字通り、「顧客が感じる価値」と一言で言うことが可能です。
4C理論の1つであるカスタマーバリュー
カスタマーバリューはロバート・ラウターボーン(Robert F. Lauterborn)の紹介した4C理論の1つとして1990年代に提唱されました。
ここで4C理論について知ることでカスタマーバリューへの理解を深めましょう。
まず、4CとはCustomer Value(顧客にとっての価値)、Customer Cost(顧客が費やすお金)、Convenience(顧客にとっての利便性)、Communication(顧客とのコミュニケーション)の4つを指しています。
それぞれ顧客視点のビジネスが拡大する中、新しいフレームワークとして顧客視点から作られたのが4C理論です。
それぞれ顧客がビジネスを提供する側とどのような価値やお金、利便性やコミュニケーションで繋がっているかが可視化されるようになっています。
そもそも4C理論は4P理論を顧客側の視点から見直したものであり、4PはそれぞれProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)を指しています。
ビジネスの4つの要素を表すマーケティングのフレームワークであった4Pが顧客目線からさらに応用されたのが4Cなのです。
そして、この中のProduct(製品)が4Cではカスタマーバリューとされている部分です。
すなわち、製品とは企業が利益を得るための道具としてあるのではなく、顧客が自らの課題を解決するためにあるものだと考えることにより、顧客視点からビジネスを眺め、ビジネスを加速させていくことができるのです。
カスタマーバリューと価格
カスタマーバリューと価格には密接な関係があります。
顧客の購買活動は、「カスタマーバリューが価格よりも高い際」に行われると考えられるからです。
価格調整帯
顧客は自らが商品によって手に入れられる価値と価格を比べて、価値が高い場合にのみ商品を購入します。
それを鑑みると、企業側からは以下のような値段のつけ方ができることがわかります。
カスタマーバリューがコストよりも高いことは当然として、どのような利益率で商品を売るか、価格調整帯の部分で調節して値段をつけることができます。
言い換えれば、「カスタマーバリューとコストの差分、つまり企業側は利益が出せる範囲」のことを価格調整帯と言い、値段をつけるときはここに注意をすべきなのです。
カスタマーバリューと価格設定方法
カスタマーバリューを用いて値段を決定できることを「価格調整帯」と言う言葉を用いて開設しましたが、実際にはどのような値付けの戦略があるのでしょうか。
ここでは従来製品と新規製品に分けてプライシング戦略について紹介します。
従来製品のプライシング
従来製品のプライシングの戦略において重要なのは「売上の最大化」「価格の安定化」「シェアの拡大・維持」「競合への対応」といったことです。
もちろん新規製品においてもこれらのことは大事ですが、特に従来製品においては価格の安定化などに注意しなければ「価格が下がったし品質も下がったのかな」などと思われかねず、慎重になるべき部分が多いです。
そこで、従来製品のプライシングには主に4つの価格設定方法があります。
・コスト志向型価格設定方法
コストに一定の幅を加えることによって価格を設定するのがこの方法です。
つまり、価格調整帯の中で「どれほどの利益を出したいのか」を第一に考える方法だと言えます。
最も基本的な価格の設定の仕方とも言えるでしょう。
・需要志向型価格設定法
最もカスタマーバリューの考え方を用いる方法がこの需要志向型価格設定方法
です。
この方法では顧客の志向を第一に価格を設定します。
つまり、まず顧客にアンケートをとって、最適な価格帯を導いてから価格を設定するのです。
カスタマーバリューにもっとも寄り添った考え方と言えるでしょう。
・競争志向型価格設定法
競合との競争を意識して価格を設定するのがこの方法です。
競合の製品の価格よりも安く設定することが大事となってきます。
しかし、利益を出さなければ意味がないため、コストと競合との競争とをしっかりと見極める必要があります。
・心理的価格設定法
ブランドが持つステータスや98円などの端数を用いて割安感を利用するのがこの心理的価格設定方法です。
例えば、タピオカはもともと原価としてはとても安い品物でしたが、日本では「若者に人気の少し高級感のある飲み物」としてブランドを確立させたためにカスタマーバリューが高くなり、割高の値段でも売れました。
また、一時期のサイゼリアが心理的価格設定方法を用いていたことは有名だと思います。
299円や599円といった設定にすることで割安感を演出していました。
一方で、端数の価格設定をやめたことでサイゼリアは利益を増やしたと言う事実もあり、端数の設定には慎重になることが大事です。
顧客の心理に寄り添った方法がこの心理的価格設定方法だと言えるでしょう。
新規製品のプライシング
新規製品のプライシングでは、上にあげた従来製品でも注意すべき価格設定の方法に気をつけるだけでなく、思い切った戦略も大事です。
ここでは2つの方法を紹介します。
・ペネトレーション・プライシング
ペネトレーション・プライシングは日本語では「市場浸透価格戦略」と呼ばれます。
つまり、市場に新製品が浸透することを第一の目的とした価格を設定すると言うことです。
顧客にものを買わせるために手っ取り早いのは価格を下げることです。
すなわち、ペネトレーション・プライシングではギリギリまで価格を下げて販売するという特徴があります。
技術の転用・大量生産・流通コストの削減といった特別に製品を安く生産できる事情がある場合、市場への新製品の浸透を図るために低い価格設定をすることは有用です。
・スキミング・プライシング
スキミング・プライシングは日本語では「上澄み価格戦略」と呼ばれ、ペネトレーション・プライシングとは逆の方向性で価格を設定します。
新製品の段階では高めに価格を設定し、徐々に価格を下げて定着と拡大を図るのです。
この方法は、「高くても新しいもの」というカスタマーバリューを持つ人々が多数いる場合に有効になります。
例えば、Appleの新製品などがこの価格戦略に当てはまるでしょう。
終わりに
この記事では、「カスマターバリューとは何か」というところから出発して、価格設定の方法まで解説しました。
カスタマーバリューを意識して、価格の見直しを行いましょう。