顧客から注文を受けた際、受注内容を記録したり、在庫から出荷したりする業務が発生します。
このような受注に関わる業務を受注管理と言いますが、出荷できなかった分の数量を「受注残」と言います。

受注残を適切に管理できていないと、納品できなかったり納品日に間に合わなかったりするトラブルが発生してしまい、営業担当者が販売の機会を損失してしまうこともあります。

本記事では受注残管理の意味・必要性に加えて、受注残を適切に管理できる受注管理システムについても解説します。

受注残とは

受注残とは、「取引先や顧客から注文を受けた商品やサービスのうち、まだ納品(出荷)していない分の数量や金額」のことです。
受注残は「バックログ」とも言われます。

つまり、受注残が存在することは、「未納品のため、そのぶんの売上金額はまだ出ていない」ことになります。

例えば、得意先から10個の注文を受けたものの、自社の在庫は5個しかなかった場合、まずは在庫分の5個を先行納品すると、その時点で「残りの引当て未了分」は5個となります。
その後、追加分を調達して残りの5個を納めた瞬間に、未納分は解消され、受注残はゼロになります。

このように受注残を管理することを「受注残管理」と言い、販売管理プロセスの中のフェーズのひとつになっています。

受注残が起こる原因

受注残が生まれる背景には、需要を読み違えた結果としての注文超過、生産設備や人員が不足していることによる供給能力の限界、そして納期の長い案件や特注品への対応といった複合的な事情があります。

需要予測が甘い場合、市場からのオーダーが自社の供給力を一気に上回り、未処理の注文が積み上がる構図が生まれます。さらに、設備投資や人材確保が追いつかず生産能力そのものが低い状態では、平常時でも受注残が慢性的に発生します。

標準品とは異なり設計や部材手配に時間がかかる個別仕様品も、製造完了まで長い期間受注残として留まる要因です。

製造途中の仕掛品が滞留すれば、完成までのあいだ受注残が長期化しやすくなります。

販売管理の業務フロー

そもそも「受注残」は、販売管理のフローの中に組み込まれている「受注管理」の中のフェーズのひとつですが、販売管理のフローを改めて理解しておきましょう。

販売管理は「見積管理→受注管理→出荷管理(出荷指示、出荷処理)→売上・請求管理」と分かれており、業界や業種によっては「在庫管理」「仕入れ管理」などの業務の必要も出てきます。
このうちの「受注管理」のフェーズでは、納期や数量などを顧客から注文を受けて製造ラインにオーダーし、商品が完成して出荷されるまで管理されますが、ここで受注残の管理業務も発生するのです。

販売管理については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:販売管理とは?基本や目的・販売管理システム7選

受注残を理解する際に知っておくべき用語

受注残に関連する用語を3つ紹介します。

受注高

受注高とは、取引先や顧客から注文を受けた金額です。

受注した時点ですぐに納品できれば受注高=売上高となるのですが、在庫切れや工数がかかる案件の場合はすぐに納品できないため、受注高はすぐに売上高として計上することはできません。

また、仕入れ値や工数などの変動により最終的な価格が変わる場合、受注高がそのまま売上高とならないことも。

つまり、受注高=受注した時点での金額=将来的に入ってくる金額となり、売上高=売り上げた金額=すでに手元に入ってきた金額となります。

受注残高

受注高から売上高を引いた金額を、受注残高と言います。

つまり、受注した金額のうち、まだ売上として計上できていない金額を引いた残高が受注残高となります。

検収

検収とは、発注した取引先が、発注内容と相違なく納品されたかどうかを確認して正式に受け入れる作業のことを言います。

顧客側で検収が済んでから売上として計上する場合、「納品日」と「検収日」が異なりますよね。
このようなケースでは、「受注残」は納品日でなくなるのですが、「検収残」という基準が発生します。
受注残を検収まで含めるかどうかで、受注残の管理方法が変わってくるでしょう。

受注残を管理する必要性とメリット

取引先や顧客からオーダーされた商品が出荷されるまで受注数を管理することを受注残管理と言いますが、受注残管理をしなければトラブルを招いてしまいます。

例えば、在庫が10個ある時にA社から15個受注したと仮定してみましょう。
A社には残り5個も納品しなければいけないため、5個の追加製造を依頼しなければいけませんよね。
この時点で「15個の受注残がある」と管理しておかなければいけないのですが、この受注残管理ができていないとどうなるでしょう。
残り5個が出来上がるまでに他の担当者がB社から10個のオーダーを受けた場合、在庫としてあった10個をすぐにB社に納品してしまったら、A社に納品する15個のうち10個がなくなってしまいます。

このように、受注残管理ができていないと、本来は在庫がないのに出荷してしまったり、納品予定日に間に合わなかったりするなどのトラブルを引き起こしてしまうのです。

受注管理システムを導入するメリット

上記のような受注残管理をはじめとする受注に関わる管理業務を、紙の台帳へ記入したりExcelへ手入力したりして管理していると、計算ミスや転記ミスなどのトラブルに繋がりやすくなってしまいます。

そのようなミスや入力漏れなどをなくすためにも、煩雑な受注管理業務でITシステムを導入する企業が増えてきています。
受注管理システムを導入することで、複雑な計算や確認、手続きや指示などが自動化され、正確なデータを最小限のリソースで管理することが可能になるのです。

また、製造部門や開発部門、事務などとの連携もスムーズにいくようになり、納品までの時間も短縮されることで、受注数を増やせたり顧客満足度が向上したりするメリットも得られます。

受注残の効率的な管理方法

受注残を適切にコントロールできなければ、納品遅延や漏れが発生し、顧客からの信頼を大きく損ないます。

こうしたトラブルを防ぐには、工程と在庫をリアルタイムで結び付け、チーム全体で状況を共有できる管理体制が欠かせません。

受注残の可視化と優先順位づけ

最初に、受注データを一元管理し、誰もがリアルタイムで残数と納期を確認できる状態をつくりましょう。

受注日・納期・顧客名・商品名・数量といった基本項目を一覧化し、日次あるいは週次で更新します。

そのうえで納期順に並べ替えれば、遅延リスクの高い注文から着手すべき順序がひと目でわかります。

重要顧客については一覧上で区別できるようフラグを付け、滞留期間の長い案件は警告表示にする、といった仕組みを組み込むと優先順位づけがさらに明確になります。

リードタイムを考慮した生産計画の立案

次に求められるのは、受注から納品までの所要時間を踏まえた生産計画です。

納期の分布を分析して繁忙期と閑散期を把握し、部材の発注リードタイムや外注先のキャパシティを逆算して製造開始日を設定します。

工程内で最も時間を要するボトルネックを起点にスケジュールを組み、突発トラブルに備えて適度なバッファを確保しておけば、計画全体の信頼性が高まります。

調達のみを行う企業でも考え方は同じで、発注から納入までのリードタイムを綿密に逆算して手配することが肝要です。

在庫管理との連携による最適化

受注残と在庫は切っても切り離せません。両者を同じデータベースで管理し、在庫が確保された瞬間に受注残へ自動的に引き当てる仕組みを用意すると、欠品や二重販売のリスクが大幅に減少します。

安全在庫を設定したうえで、需要予測と突き合わせて適正在庫を維持すれば、在庫回転率の向上とキャッシュフローの改善も同時に達成できます。

営業と生産・調達の情報共有と連携強化

受注残を減らすには部署間のシームレスな連携が不可欠です。

営業が持つ受注予測を生産・調達部門と同じシステムで共有し、定例会議で状況と課題を擦り合わせることで、需要変動に対する社内の反応速度が格段に高まります。

日常的な現場レベルの情報交換を活発にし、予実差異が出たときは原因分析と対策立案を共同で行う体制を築いておくと、組織全体で納期遵守率を底上げできます。

受注残の定期的なモニタリングと分析

最後に、受注残の動きを定期的にモニタリングし、データドリブンで改善サイクルを回します。

月次推移をグラフ化して季節変動や市場トレンドを掴み、顧客別や製品別に深掘りして販売戦略の妥当性を検証します。

さらに、滞留期間が長い案件を洗い出してプロセスを改善し、KPIと紐づけて経営指標と連動させれば、受注残は単なる数字ではなく経営判断を支える重要な指標へと変化します。

受注残管理を効率化できる「受発注管理システム」とは

受注残管理(販売管理)にお困りの方は、一度自社の営業組織が使っているツールを見直してみるのもいいでしょう。

受発注システムとは、受注と発注に関わる一連の処理をデジタル化して省力化するツールを指します。

注文データの入力、伝票の自動作成、在庫状況のチェックなどがワンストップで行えるため、担当者の作業時間を大幅に削減できます。

これまで取引先との注文のやり取りはメールやFAXが主流で、受信した内容を社内伝票へ転記し直す手間が避けられませんでした。しかし、システムを導入すれば双方が同じ画面上で情報を入力・確認できるため、伝票起票の二度手間がなくなります。

受注数量や品目を直接システムに登録するので記載漏れや入力ミスも起こりにくく、ヒューマンエラーが原因のトラブルを抑えられる点もメリットです。

また、受注残の把握もリアルタイムで行えるため、未出荷分の管理が容易になります。なお、受注残管理機能の範囲や操作性はサービスごとに異なるため、自社の業務フローと照らし合わせて慎重に選定することが重要です。

終わりに

企業と顧客のスムーズな取引のために欠かせない受注残管理。

受注管理システムを活用することで受注残管理をしっかりと行い、受注管理業務を自動化して円滑に進めましょう。


5_フッター上部の画像

SFAとして営業力の底上げに寄与してくれるMazrica Salesですが、受注から納品までの社内フローをスムーズにしてくれる活用方法もできます。

例えば、案件ボードでは案件ごとの詳細な履歴を把握することができるため、受注までに営業担当者と顧客でどのようなやり取りをしてどんな内容で決まったのかなどを共有することが可能。

システム開発などの大きな案件のときでも、詳細な履歴が分かっていると他の部署との連携がスムーズにいって効率的に納品まで進めることができるのです。

また、案件データを数値で見ることができるファネル分析レポートを活用すると、担当者、商品、フェーズごとの受注率も把握でき、自社のボトルネックを発見することもできます。

関連記事:Mazrica Salesの機能紹介!営業支援の効果と活用方法を解説

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