世界的に大流行している感染症「新型コロナウイルス」(COVID-19)の影響は、私たちの健康だけでなくさまざまなところに波及しています。
マクロで見ると、経済や政治、医療体制などが多大な影響を受け、各国で差はあるものの日本だけでなく全世界で大きな損害を被っています。
ミクロで見ると、家庭での消費活動や休校による家での過ごし方、そして仕事や働き方について大きな変化を実感している人が多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの影響で世の中がものすごいスピードで変化している現在ですが、ウイルスの勢いが弱まり以前の生活を取り戻せた「アフターコロナ」の時代を想定し、今から準備をすることもビジネスには必要です。
今回は、アフターコロナの世界を迎えた時のために、ビジネス環境やビジネスパーソンに求められるものを理解しておきましょう。
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新型コロナウイルスの影響と変化
日本で初めて新型コロナウイルス感染が確認されたのは2020年1月。
そこから急激に日本各地に広がり、もはや感染経路を把握することが困難になっています。
日本では新型コロナ関連の対策は以下の通りです。
・2月27日 小中高・特別支援学校に3月2日から春休みまでの休校を要請
・3月13日 「新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案」が可決・成立
・3月25日 不要不急の渡航の自粛要請、東京都独自で週末の不要不急の外出自粛要請とリモートワーク要請
・4月7日 7都府県に「緊急事態宣言」発令
・4月10日 東京都独自で休業要請
・4月16日 緊急事態宣言の対象を全国へ
これらの対応策の影響で消費が落ち込み、経済的に大打撃を受けている企業も多くなっています。
帝国データバンクが2020年4月20日に公表した、新型コロナの影響や対応を余儀なくされた上場企業1,602社を対象に行った調査では、「業績へのマイナス影響」を感じている企業が700社もいました。
次いで上位なのは458社が回答した「働き方の変更」であり、具体的にはテレワークの導入や時間差出勤などの対策を講じているようでした。
この「働き方の変化」については、サイボウズ チームワーク総研が2020年3月19日~22日にビジネスパーソンを対象に実施した調査でも「時差通勤」「テレワーク」といった働く時間や場所の変化が「新型コロナによる働き方の良い変化」の上位に挙げられました。
特に首都圏でのスコアが高く、どちらの項目も50%以上の回答を得ています。
実際に、都市部の人の流れが変化しているデータも出ています。
株式会社unerryは同社が運営しているリアル行動データを解析することができる「Beacon Bank®」で人流ビッグデータをAI解析し、緊急事態宣言の前と後の東京都の外出率を算出した結果が以下の通りです。
・2020年1月27日(月) 66.6% (外出自粛要請前)
・2020年3月26日(木) 64.0% (都によるリモートワーク要請の翌日)
・2020年4月8日(水) 52.0% (緊急事態宣言の翌日)
・2020年4月13日(月) 48.1% (出勤者7割減要請の翌日)
このデータから、政府や自治体の要請によって出勤者が減少していることが分かり、テレワーク等の出勤が必要ない働き方を取り入れ始めた企業が少しずつ増えていると予想できます。
アフターコロナのトレンドの大きな変化
現在のコロナ・ショックで、さまざまな変化を痛感している人も多いはずです。
しかし、この新型コロナが収束に向かっても、現在のこの変化が完全に元に戻ることはないでしょう。
コロナ・ショックで多くの人が大打撃を受けている一方で、今まで以上にITツールが使われるようになったり仕事仲間や家族との関わり方を変えたりしている人が増えていることは、コロナ・ショック後に訪れるアフターコロナの時代のビジネスチャンスにもなります。
アフターコロナを迎えた時に訪れるであろう大きな変化を「ビジネス環境」「コミュニケーション」「住環境」の三つの視点から見てみましょう。
ビジネス環境 DXの促進
新型コロナの流行を機に出勤人数の削減やテレワーク推進が謳われ、ビジネス環境の大きな転換期を迎えています。
同じ空間にいる人数を減らしつつも業務を円滑に進めるため、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が進んでいきます。
具体的に、どのような変化が訪れるでしょうか。
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1.クラウドサービス中心の業務オペレーション
今回のコロナ・ショックによる影響は、ここまで甚大になるとは予測ができませんでした。
このような予測不可能な事態が起きたことで、誰しも未来が必ずしも想定していた通りに進まないと痛感したと思います。
だからこそ、これからはスピーディーに変化に対応できる仕組み作りが企業経営に必要となるのです。
“変化に対応しやすい仕組み作り”はヒト・カネ・モノの側面で検討することができますが、自社で利用するサービスについても考え直す必要があります。
今までは、自社の業務内容や組織体制に合わせて一からシステムを開発する企業が多かったですが、そのようなオンプレミスのシステムばかりを利用していては、現場のフィードバックやシステム改善、運用定着まで時間がかかってしまいかねません。
そこで、SaaS型のクラウドサービスを活用することが有効となります。
クラウドサービスはそれぞれの業務に合わせてすでに最適に設計されているため、自社内での構築や開発のリソースを省き、本来の業務へリソースを投資することができるのです。
また、クラウドサービスはメンテナンスや法改正に合わせた修正などをベンダーが担ってくれるのもポイント。
そして、クラウドサービスを使うことでオフィスにいなくても同様の仕事をすることも可能になり、外出先や移動中、更には自宅やホテルなどでも仕事をすることができるようになるのです。
もちろんクラウドサービスだけでは補いきれない部分も出てくると思うので、クラウドサービスを中心にオンプレミスのシステムなどを組み合わせて仕事の仕組み作りをする必要があります。
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2.リモートワークの浸透
新型コロナの日本での流行に伴って満員電車やオフィス内での三密を防ぐため、リモートワークも急激に広がり新しい働き方として定着してきました。
今までリモートワーク・テレワークを導入していなかった企業でも導入が進み、それに合わせた仕組みを急いで構築した企業も多いのではないでしょうか。
自粛期間が延びるにつれて、企業側もリモートワークに対応した環境整備に本腰を据えて行っていくようになるでしょう。
具体的には、紙の書類からクラウドでの書類管理への移行、ワークフローの変更、クラウドツールの導入・運用定着などです。これらの環境整備が進むことでリモートワークが更に当たり前の世の中になっていき、恩恵を受ける人たちも増えてくることが予想されます。
例えば、通勤に時間がかかる人や育児・介護で仕事の時間が制限されている人は、自宅で業務を遂行できることで効率化にもなりますし、会社へ対するエンゲージメントも高まります。
このようなリモートワークのメリットがどんどん広がることで、アフターコロナの時代が到来してもリモートワークが廃れることはなくなるでしょう。
3.顧客接点のオンライン化
空間に複数人が密集することを避けるビジネスの取り組みは、リモートワークだけではありません。
顧客とのFace to Faceの機会がなくなるため、展示会、セミナー、訪問営業といった営業活動ができなくなるのです。
そこで、顧客との接点もオンラインにシフトして営業活動もリモート化しています。
例えば、オンラインでのセミナー(ウェビナー)を開催したり、撮影したセミナー動画を公開したり、WEB会議システムを利用して営業をしたりすることが進んでいます。
展示会が開催できないので、認知のためにWEB広告やメールマーケティングを進めたり、比較検討のためにオウンドメディアやホワイトペーパーも充実させたりする必要もあるでしょう。
顧客との接点がデジタル化していくことで今までの体制を大きく転換させざるを得ませんが、メリットもあります。
新しく営業環境を整備するということは、今まで属人的だった営業活動を標準化させて、営業組織としての生産性を高めるチャンスでもあるのです。
アフターコロナの時代に向けて、自社の営業活動にも組織的にテコ入れをする時期が訪れているのではないでしょうか。
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コミュニケーション テレワークの普及と新しいコツ
先述の通りテレワーク・リモートワークの普及が進むと、社内外の人と面と向かって仕事をする機会が減ります。
つまり、仕事の仕方が変わるということは、コミュニケーションの仕方も変化するということ。
新しいコミュニケーションの方法を取り入れ、テレワークでも関係性を構築していくことが大切です。
1.「空気を読む」が通用しなくなる
離れた場所で仕事をするということは、今まで当たり前だった「空気を読む」ということができなくなります。
今までビジネスパーソンには、相手の求めていることを読み取って行動したり、ふんわりとした表現をされても本心を読み取ったりすることが求められていましたが、違う空間で顔も合わせず仕事をしていると空気を読むことは難しくなってしまいます。
つまり、自分の意見を正確に伝えたり、具体的に仕事の指示をしたりしなければ、認識がズレてしまって大きなミスにも繋がりかねません。
顔を合わせないテレワークだからこそ、今まで以上に細やかな擦り合わせが必要となるのです。
2.テレワークでのコミュニケーションの新しいコツ
テレワークは相手のことが見えないので、全員がきちんと業務をしているかどうかを管理しにくいという側面もあります。
基本的なコミュニケーションの手段がビジネスチャットになるため、すぐにレスポンスがなければ「何をしているのだろう?」と不安に感じることも仕方ないが、テレワークはお互いの信頼関係が成り立っていなければ円滑に運用することは難しいでしょう。
そのため、カレンダーでスケジュールを共有したりチャットでこまめに報告したりして自分の状況をなるべくオープンにすること、タスクは期日を守って見える形で成果を出すことは、テレワークを円滑に進めるために必要最低限のこと。
また、ビジネスチャットは基本的にテキストのみのやり取りなので、ちょっとしたことでも誤解やすれ違いが生じがちです。
資料やファイルを送って具体的に示したり、時には顔文字や絵文字を使ったりすることも効果的でしょう。
とは言え、やはり相手の表情が見えずにテキストのみで仕事を進めているとお互いにストレスになってしまうこともあるので、音声チャットやビデオチャットなどを適宜取り入れることでスムーズにコミュニケーションを取ることができます。
住環境 UターンIターンと地方再生
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リモートワークが浸透することにより、もう一つ新たな活路を見出すことができます。
それは、過疎化した地方都市の再生。
今回のリモートワークの急激な広がりによって「自分の仕事は、インターネット環境さえあればどこでもできる」と気付いた人も多かったでしょう。
つまり、アフターコロナがやってくる時には、東京やその近辺に住んで満員電車に揺られ大変な思いをして通勤するよりも、出身地へUターンしたり出身地以外の地へIターンしたりする地方移住者が増えてくる可能性があります。
UターンやIターンをすることで、当人にとっては「今までの仕事を辞めることなく好きな土地に住むことができる」というメリットがありますが、地方自治体にとってもメリットが生まれるのです。
税収や消費が増えることで地方経済が潤いますし、移住者を増やすためのインフラなどの設備投資によってより住みやすい街になります。
また、東京都の新型コロナ感染者数が日々増加しているのは三密が原因と言われていますが、東京だけでなく全国に人口を分散させることで三密を解消させ、今後新たな感染症が発生した時にも有効に働くのではないでしょうか。
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アフターコロナで求められるスキルとマインドセット
新型コロナの騒動が収まった時に向け、クラウドサービスを中心にしたリモートの仕組み作りを進めていく必要があると述べましたが、そのためにはオンラインツールの活用が欠かせません。
しかし、オンラインツールの活用には社内の理解が必要だということが分かってきました。
人材開発のウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社が2020年4月15日~30日に実施した調査によると、回答した61社のうち「オンラインツールを使ったセールスの割合」は38%であるという結果でした。
その弊害となっているのが、以下の項目です。
・顧客側のITに関する苦手意識 18%
・顧客のネットワーク環境 18%
・セキュリティに関するハードル 12%
・営業担当者のITツールに対する苦手意識 11%
・自社のネットワーク環境 11%
・営業担当者のマインド 10%
・営業責任者・管理者のマインド 9%
・営業管理者のITツールに対する苦手意識 9%
・その他 3%
この結果から、自社の営業に関わる社員のマインドや苦手意識が弊害となっている企業が約4割にも上っていることが分かります。
対面営業は難しいと理解している一方で、どうしてもITツールでの営業活動を敬遠してしまう社員も一定数いるため、まずはこの数値を下げることがアフターコロナの時代の営業活動には求められるでしょう。
アフターコロナの営業パーソンに求められる3つのスキル
企業の存続のために営業活動を変革しなくてはいけないということは、今までの営業パーソンに求められていた提案力やヒアリング力などの他に新たなスキルも必要となってきます。
今の状況が過ぎるのを待つのではなく、時代に適応して柔軟に変化することが必要なのです。
1.新しいデジタルツールを使いこなす
営業活動のリモート化にはデジタルツールの活用が不可欠。
そのため、これからの営業パーソンはITツールを活用して顧客の心をつかんでいくことが大切なのです。
例えば、MAツールで優良なリードを獲得する、ウェビナーツールでリードとの接点を持つ、SFAで案件を一元管理し営業活動を標準化する、SNSを活用して顧客とコミュニケーションを取る。
これらのWEB施策にリソースを投入することで、これからの時代に適応した営業スタイルを作り出すことができるはずです。
営業支援に特化したツール、SFA(営業支援システム)に関する記事はこちら:
2.既存顧客の維持に注力する
今の状況ではなかなか新規顧客の開拓が難しいという企業が多いと思いますが、新規開拓よりも既存顧客との関係維持に注力しましょう
今は、誰しもが不安や不満を抱えている時期です。
そんな時に、アフターフォローやサポートなどで顧客を支えて成功体験を作り出すことで、エンゲージメントを高めてLTVを最大化していくことができるでしょう。
そのためには、自社の強み・弱みや自分の得意・不得意を分析し、顧客から選ばれるための価値を創造していくスキルが必要になります。
3.社内外のコミュニケーションを円滑に
アフターコロナでは、社内のメンバーだけでなく、顧客やパートナー企業などとも直接顔を合わせる機会が減ってしまうことが予想されます。
つまり、今までのコミュニケーションスキルとは違ったコミュニケーション方法が必要となってきます。
例えば、自分の意思や意見を正確に伝える、理解しやすい言葉で伝える、共感してもらえる伝え方をする、など、伝え方が重要になってくるでしょう。
顔や表情が見えないと言葉の裏にある感情が読み取りにくいため、今よりも伝え方がコミュニケーションのポイントになってきます。
終わりに
新型コロナウイルスは、心身の健康だけでなく時間の過ごし方や働き方までも影響しています。
ビジネスの大きな転換期を迎えている今だからこそ、新しいツールを始めたりマインドセットをしたりして、アフターコロナを生き抜くための準備をしておくこともポイントです。
新しい時代となるであろうアフターコロナの時代に向け、今からみんなで力を合わせて乗り越えていきましょう。