BtoCビジネスでは、BtoBビジネスに比べてより多数の顧客を抱えることが多く、顧客管理のハードルが高くなりがちです。
CRMを導入すれば、顧客データや行動履歴、コミュニケーション履歴などを一元管理できるため、より容易に効果的なアプローチを行えるようになります。
しかし、実際に活用するイメージがつかめずに導入を迷っている担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、BtoCビジネスにおけるCRMの役割を具体的に解説します。また、導入するメリットや活用のポイント、導入する際の注意点もあわせて解説しますので、CRMの導入を検討されている担当者の方はぜひ参考にしてください。
この記事の内容
BtoCにおけるCRMの役割
BtoCビジネスにおいて、CRMは顧客との関係を管理し、強化するために活用されています。具体的には、顧客データの管理や顧客ごとにパーソナライズされた体験の提供、コミュニケーションの強化など、さまざまな役割を果たします。
BtoC企業がCRMを活用することで得られる成果例は以下の通りです。
- マーケティングの最適化
- 顧客サポートの向上
- ロイヤルティの向上
- データ分析による意思決定
上記は一例ですが、CRMで顧客関係を管理することで、より価値のある顧客体験を提供できるようになります。顧客満足度の向上により良好な関係を構築できれば、優良顧客へと育成できるでしょう。結果として売上やLTVの向上につながり、企業の成長に寄与します。
BtoCビジネスでCRMを導入するメリット
BtoCビジネスでCRMを導入することで得られるメリットは以下の5つです。
- 顧客行動パターンの特定や分類
- 業務効率化とコストの削減
- 顧客ごとの最適な販売チャネルを把握
- 経営戦略の立案や施策の実行
- 顧客満足度の向上
各メリットの内容を具体的に解説します。
顧客の行動パターンの特定や分類
BtoCビジネスでCRMを導入するメリットの一つは、CRMに蓄積されたデータを活用して顧客の行動パターンの特定や分類が行えることです。
近年、スマートフォンの普及により消費者行動に変容が見られるようになりました。これまでは企業が顧客に対して情報提供していた流れが変化し、消費者は自発的に情報を収集できるようになりました。Webサイトや広告、SNSと、顧客との接点も増加傾向にあります。
また、消費者の興味関心は移り替わりやすく、市場トレンドの変化も激しくなりました。
BtoCビジネスのカスタマージャーニーは、このような背景から多様化かつ複雑化しているため、顧客の行動パターンを把握しづらい状況が続いています。顧客ニーズに沿わない商品開発やフォローでは、顧客は別の商品・サービスへ乗り換えてしまうでしょう。
CRMで一元管理された顧客データを分析・活用すれば、企業は顧客の行動パターンを特定できます。また、顧客属性によりセグメントすることで、顧客対応をパーソナライズし、より最適なアプローチを行うことが可能になります。
業務効率化とコストの削減
CRMの導入は、業務効率化とコストの削減のメリットももたらします。CRMにはデータの自動集計・分析機能やセキュリティ対策が充実しているからです。
一般的なBtoCビジネスにおける顧客管理では、顧客ごとに個人名や属性、メールアドレス、問い合わせ、購買履歴などの膨大なデータを登録・管理する必要があります。これらをエクセル等に集約して手作業やアナログで管理・分析するには手間と工数がかかってしまいます。また、情報漏洩のリスクも伴うでしょう。
CRMを導入することで、膨大な顧客データを一元管理できるため、情報管理の手間や工数を大幅に削減できます。また、部門ごとに散在するデータも紐づけして一元化できるため、結果として業務を効率化でき、人件費などのコストも削減可能です。
業務効率化については、次の記事も役立つでしょう。
関連記事:業務効率化の進め方とは? 6つのアイデア・おすすめツールを紹介
顧客ごとの最適な販売チャネルを把握
CRMの多くはメールやECサイトなど幅広いチャネルに対応しているため、各チャネルから流入してきた顧客のデータを一元管理・分析できるのもメリットです。
顧客との接点となる一般的なチャネルには、BtoCでは、店舗、EC、SNS、Web広告、メールなどがあります。これらの複数のチャネルの顧客データを別々に管理する場合、分析するためにデータをエクスポートし、統合するなどの手間がかかるでしょう。
しかし、CRMを使えば複数のチャネルの顧客データを一つのシステムに統合できます。さらに、顧客属性や行動パターンなどから最適な販売チャネルを把握できるようになり、パーソナライズされた施策を実施できます。
販売チャネルの種類や活用方法は、次の記事を参考にしてください。
関連記事:マーケティングチャネルとは?種類や活用方法、活用のためのツールを紹介|SNSチャネルの種類と活用方法
経営戦略の立案や施策の実行
CRMに蓄積されたデータは、経営戦略の立案や施策の実行に活用できることもメリットです。
例えば、ECサイトとCRMを連携させて顧客データを管理しているケースでは、顧客の購買履歴を分析した結果を活用して、閲覧中の商品と関連性の高い商品を抽出して”おすすめ商品”として表示可能です。
メールマーケティングにおいても、行動履歴や属性で顧客を分類し、セグメントごとに最適化されたメールを配信することで購買意欲を醸成して購買率を高める効果が期待できます。
また、CRMのレポート作成機能を利用すれば、表やグラフを使ってデータの分析結果を可視化できるため、迅速な経営判断を可能にするでしょう。
顧客満足度の向上
CRMはそもそもが顧客関係管理のためのシステムであり、顧客とのメールや電話での応対履歴、クレームや問い合わせの内容を詳細に記録可能です。過去のやりとりの内容を保存し、リアルタイムに確認できるため、問い合わせがあった際の顧客サポートや問題解決がスムーズになります。
こうした対応を積み重ねることで、顧客満足度の向上し、良好な関係性の構築を目指せます。顧客満足度については、次の記事も参考にしてください。
関連記事:顧客満足度(CS)とは?向上のポイント・ツール7選と具体事例
BtoCビジネスでCRMを導入する際のポイント
CRMはただ導入すれば良いものではなく、戦略的に利用する必要があります。
ここでは、CRMを導入する際の以下の5つのポイントを解説します。
- ビジョンを明確にする
- 目標値を定める
- データを基に顧客情報を分析する
- 運用体制を整える
- 定期的に運用を見直す
ビジョンを明確にする
CRMを上手く活用するためには、導入前に何を成し遂げたいのかといったビジョンを明確にして、戦略を練ることが重要です。なぜなら、やみくもに導入しても活用しきれないからです。
ビジョンとは、最終的な目的を表すKGI(経営目的達成指標)として定めます。また、KGIを達成するための具体的な中間目標としてKPI(重要業績評価指標)を設定する必要があります。例えば、「年間売上額を20%増加させる」というKGIを設定した場合、KPIは「月間売上額を3%増加させる」「新規顧客獲得のための施策を実施する」などの設定が可能です。
最終目標と中間目標が決定すれば、CRMと自社や自社製品・サービスの特徴や強みをどのように活用して価値提供できるかを検討します。このように、導入前に具体的な運用戦略を練ることで、CRMをより効果的に活用できるでしょう。
KGIやKPIについては、次の記事でも詳しく解説しています。
目標値を定める
KGI、KPIが決まれば、それの達成度合いを評価するための目標値として評価指数を設定しましょう。具体的な評価指数には、顧客数、顧客単価、受注金額、継続率などが含まれます。
定量的で明確な目標値を定めて、小さな目標として日々の達成状況を検証することで進捗を把握できます。
なお、評価指数の設定には自由度を持たせることが重要です。運用中に気づいたことがあれば適宜反映させて修正しましょう。継続的に改善を重ねることで、最適な評価指数が設定されて目標達成につながります。
データをもとに顧客情報を分析する
CRMに蓄積された顧客情報を分析すれば、既存顧客のニーズを理解できるようになります。その結果を基に製品やサービスを提供することで、顧客満足度は向上します。
CRMに蓄積されたデータは、いわば自社と顧客とのコミュニケーションの記録であり、分析を通じてコミュニケーションの見直しが可能になるのが、CRMを導入するメリットです。
一般的に、既存顧客を優良顧客へ育成するコストよりも、新規顧客獲得にかかるコストの方が高いと言われています。既存顧客との関係を良好かつ長期的なものにすることで、コストのかかる新規顧客の獲得よりも効率的にアプローチを行えるでしょう。
顧客情報については、次の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:顧客情報とは?一元管理方法・活用術とCRM(顧客管理システム)を紹介!
運用体制を整える
CRMの運用効果を引き出すには、運用体制を整えることが重要です。なぜなら、CRMへの顧客データの集約には、従業員一人ひとりの協力が欠かせないからです。まずは使い方を定着させる工夫をしましょう。
社内でのCRMの利用を促進するには、サポート担当者を設置してトラブルがあった場合の問い合わせ窓口を設けたり、ベンダー側からの十分なサポート体制が整っているCRMを導入したりするのがおすすめです。
定期的に運用を見直す
CRMの運用過程は、定期的に見直すことも大切です。なぜなら、CRMのデータ活用では、分析ルールのアップデートが重要で、初期設定のままでは十分な効果が得られない可能性があるからです。
見直しをする際は、PDCAサイクル(Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善))を用いるのがおすすめです。CRMを使用していて気づいたことや気になったことを書き留めておき、PDCAサイクルを回します。PDCAの結果、課題が見つかれば、ルールの見直しが必要です。
CRMの運用時は、データの取得期間や種類、活用目的を具体的に設定することが大切です。また、SFAやMAと連携させれば情報量が増えるため、リソース不足にならないための対策も検討してください。
BtoCビジネスでCRMを導入する際の注意点
BtoCビジネスでCRMを導入する際は、以下の3点に注意が必要です。
- 導入や運用コストが発生する
- 導入には時間と工数がかかる
- 業務フローの見直しが必要になる
具体的にどのようなことに注意すべきかを解説します。
導入や運用にコストが発生する
CRM導入や運用にはコストが発生することには留意が必要です。製品によっては、初期費用と月額のライセンス料金が発生するケースがあります。
なお、オンプレミス型のCRMを導入する場合は自前でサーバを構築し、定期的に保守・管理しなければなりません。また、システムをゼロから開発する場合は開発費用やシステムの構築費用、保守・管理費用も必要です。
一方で、クラウド型CRMを導入する場合は、初期費用に加えて月額利用料もしくは年間利用料を定期的に支払いますが、保守・管理はベンダーが行ってくれるため、ランニングコストを抑えられます。長期的に利用する場合は結果として利用料の合計が高くなってしまい、時にはオンプレミス型よりも総額が高くなる可能性があります。
CRMの導入・運用コストの計算時は、初期投資とランニングコスト、予算を現場担当者が把握したうえで、長期的なコストを見積もることが重要です。
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導入には時間と工数がかかる
CRMの導入には、時間と工数がかかることにも注意しましょう。導入する場合は、導入計画を立案して、管理する情報と活用方法を策定します。具体的に、どのようなデータをCRMに集約させて、どのように活用するのかを検討してください。
CRMを適切に運用するには、活用方法を決定した後に、その条件を満たす製品を比較検討する必要があります。自社のどのような課題を解決するためにCRMを導入するのかを明確にしましょう。顧客管理やマーケティングなど、目的を明確にすれば、必要な機能が定まり、製品を選びやすくなります。
CRMが選定できれば、データベースを構築します。導入後は、既存システムに保存されていたデータをCRMへ移行し、運用してトラブルが起こらないかを検証します。
このように、CRMの導入には、選定から実際の定着までに時間と工数がかかる点に留意しなければなりません。業務にも影響を与える可能性があるため、計画的に行いましょう。
業務フローの見直しが必要になる
CRMは社内の各部門に広く関係するデータベースであり、その成果を最大化するには、継続的な運用とデータ活用が重要です。導入したものの、使いこなせずに解約してしまう事態を回避するには、業務フローの見直しを行いましょう。
業務フローを見直す際は、どの機能を使用して、蓄積されたデータをどのように分析・活用するかを事前に検討し、CRMの運用を業務に取り入れて仕組み化することが重要です。
まとめ
BtoCビジネスにおけるCRMの役割は、顧客データを一元管理して活用し、関係を強化することです。
CRMの活用により、顧客データから行動パターンを特定・分類して、顧客ごとにパーソナライズされた体験を提供したり、コミュニケーションを強化したりすることが可能です。このような対応により顧客満足度を向上できる結果、関係を強化して優良顧客への育成に寄与します。また、自動集計や分析・セキュリティ対策機能も充実しているため、業務の効率化やコストの削減効果も期待できます。
CRMは、具体的な達成目標を定めて小目標を立てながら運用を進めることが重要です。定期的にPDCAを回して運用ルールを改善していけば、効果を最大化できるでしょう。
本記事を参考に、CRMの役割や導入メリットを理解したうえで、自社に最適なCRMを運用していきましょう。

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