新しい商品は、すぐに社会全体に行き渡るわけではありません。
情報感度の高い人の中では受け入れられても、その他の人には受け入れられない、ということが往々にしてあります。
これらを説明したものが「キャズム理論」です。
この記事では、キャズム理論について説明すると共に、どのようにすれば社会全体に商品を受け入れてもらえるか?3つの方法についてご紹介します。
イノベーター理論とは?
イノベーター理論とは、市場を5つに分けて新商品の市場普及を考える理論です。市場におけるユーザー層は、製品の普及率に合わせて5つ(イノベーター、アーリーアダプターアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガード)に分類します。
キャズム理論とは?
キャズム理論とは、新製品が世に出た場合、その製品が市場を獲得するために超えなければならない一線のことを指します。
キャズム理論では市場の顧客を5つに分類し、その顧客ごとにアプローチ法が違います。
キャズム理論における顧客の5つの分類とは、
- イノベーター(Innovator)
- アーリーアダプター(Early Adopters)
- アーリーマジョリティー(Early Majority)
- レイトマジョリティー(Late Majority)
- ラガート(Laggards)
であり、情報感度が高いアーリーアダプターまでは商品が売れやすいものの、アーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間にはキャズム と呼ばれる深い溝があると言われています。
これを超えなければ、市場を開拓できないというのです。
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イノベーター理論における5つの顧客グループ
イノベーター理論とは、上で述べた市場を5つに分けて新商品の市場普及を考える理論です。
イノベーター理論に沿って顧客の分類を考えることで、キャズムを超える方法が見えてきます。
早速イノベーター理論に則り、5つに分類された顧客の特徴を見ていきましょう。
イノベーター(革新者)
市場の2.5%を占め、情報感度が高く、新商品をいち早く手に入れたいと考えている層です。
彼らは、多少のリスクを冒してでも新しい商品にアクセスしたいと考えています。新しく、実績のない会社の商品を、時にはそれが未完成であっても採用するのが彼らの特徴です。技術そのものに興味を惹かれて購入します。
アーリーアダプター(初期採用者)
市場の13.5%を占める、流行に敏感でそれを取り入れたいと考えている層です。
初期市場を形成する上で重要な役割を果たします。
彼らは多少のリスクを冒してもいいと考えている点でイノベーターと共通項を持っていますが、アーリーアダプターは技術そのものに熱狂しているわけではなく、その技術を通して何かを成し遂げようとしている点でイノベーターと異なります。
アーリーアダプターと次のアーリーマジョリティの間にキャズムが横たわっています。
アーリーマジョリティ(前期追随者)
市場の34%を占め、すでに広まっているものを乗り遅れないように積極的に取り入れようとする層です。
市場の主流の初期を占める人たちであり、その数の多さから最も利益を生み出す層と言っても過言ではありません。
イノベーターやアーリーアダプターと違ってリスクに対する許容度が低く、安全策を取りながらも流行に乗り遅れまいとする点で特色があります。
レイトマジョリティ(後期追随者)
市場の34%を占める、新しい技術や商品に懐疑的な層です。
レイトマジョリティは、新しい商品や技術を導入している割合が多数派であると確信しなければ購買意欲が掻き立てられません。
保守的であるレイトマジョリティの攻略には、商品が普及するのを待たなくてはなりません。
ラガード
市場全体の約16%を占め、新しい商品や技術を嫌う層がこのラガードです。
彼らは商品が十分に浸透しなければ商品を買うことはありません。
イノベーターやアーリーアダプターが新しい技術にすぐに飛びつき、アーリーマジョリティが技術を取り入れていち早く前進しようとし、レイトマジョリティが競合他社に乗り遅れないようにしている中で異色を放つのがこのラガードの存在です。
最も攻略が難しいと言えるでしょう。
なぜキャズムが発生するのか?
では、このような購買層が存在する中で、キャズムがどうして発生してしまうのでしょうか?
一般的に言われているのは、イノベーターとアーリーアダプターの属する初期市場とその他の購買層が属するメインストリームの市場の求める価値が違うということです。
前者は、「新しさ」に価値を置いて商品を求める一方で、後者は「安心感」を求めて商品を購入するという違いがあります。
初期市場は市場全体の16%ですが、たった16%ではメインストリームの購買層に安心感をもたらしてはくれません。
このズレこそがキャズムの発生する原因なのです。
どうやってキャズムを超えるか?
アーリーアダプターからアーリーマジョリティに移行するための間に横たわるキャズムという存在があることが分かりました。
では、どうやってキャズムを乗り越えればいいのでしょうか?
ここでは代表的な3つの方法を解説します。
アーリーマジョリティにアプローチをする
キャズムを越えるためには、メインストリームの入り口であるアーリーマジョリティに存在をアピールすることが不可欠です。
そして、アーリーマジョリティにアプローチをすることによってキャズムを乗り越えるということが1つの正攻法であるとも言えます。
アーリーマジョリティにアプローチをするためには以下のことが不可欠です。
- 利用する際のリスクを最小化する
- 数字を提示する
- 実績を強調する
メインストリームの消費者は、とにかく安心感があることを求めます。
そのため、利用の際のリスクをなるべく減らし、どのような効果が得られるのか数字で示し、今までの導入の実績を強調することが大事になってきます。
関連記事:パーソナライズとは?意味やメリット・デメリットとツール紹介
ユーザビリティに重きを置く
ユーザーが使いやすい商品にすることが、メインストリームに参入する大きな一歩です。
イノベーターや一部のアーリーアダプターは高い技術力を持っており、ユーザビリティが悪くてもアイデアさえ面白ければ商品をうまく使いこなしてくれます。
しかし、世の中の大半はイノベーターのように高い技術力を有しているわけではありません。
そのため、ユーザビリティを良くすることがメインストリームに受け入れられる1つの方法なのです。
また、ユーザビリティを良くするためには顧客の意見を十分に聞く必要があります。
顧客の意見を聞きながらユーザビリティを改善させ、新たな顧客を掴んでいく必要があります。
トライアンドエラーで商品を発展させて、より良いUI/UXを提供していくことがメインストリームに参入していくには重要です。
ユーザビリティについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:ユーザビリティとは?定義やアクセシビリティとの違いをわかりやすく解説
市場を狭く定義しスピルオーバーさせる
キャズムを乗り越えるためには、商品をパワーアップさせることも大事ですが、マーケティングのやり方にもポイントがあります。
キャズムを越えるために重要なのは、市場を狭く定義し、その中で確実なシェアをとっていくことなのです。
そして、狭い市場の中でシェアを獲得したら同じように狭く定義した隣の市場にも乗り込むようにし、スピルオーバーさせていきます。
結果として、狭い市場を1つ1つ制覇していくことでいつの間にかキャズムを乗り越え、売上を上げることができるのです。
マーケットシェア理論に関しましては、ランチェスター戦略の記事も参考になります。
関連記事:ランチェスター戦略とは?基礎知識と成功事例紹介
キャズムを超えた例
どの商品もキャズムを越えることが生き残るために必要です。
そこで、ここではキャズムを越えるヒントになるよう2つの事例をご紹介します。
ネスカフェアンバサダー
ネスカフェアンバサダーは2012年に販売されたネスレのコーヒーメーカー「バリスタ」を販売する仕組みです。
ネスレは「バリスタ」をオフィスに普及させるために「アンバサダー」と呼ばれる人々を募集し、機械代は無料でコーヒー代だけでオフィスに設置できるようにしました。
アンバサダーは「アーリーアダプター」にあたります。アーリーアダプターであるアンバサダーやその周りの人々は安価な値段で「バリスタ」の良質なコーヒーを体験できました。
その結果、アンバサダーの口コミや実際に機械を体験することで「バリスタ」は広がっていき、シェアを獲得できるようになったのです。
このとき、メインストリームへの波及できるようになった要因は、メインストリームの人々に「アンバサダーの口コミ」や「実際の体験」といったことで安心感を与えられたことです。
また、バリスタの高いユーザビリティもこの成功に一役買ったと言えそうです。
メルカリ
今でこそ飛ぶ鳥を落とす勢いのメルカリですが、もちろん初めからそこまでの利用者数がいたわけではありません。
当初は、UI/UXを改善するという地道な努力を積み重ね、ユーザーが使いやすいプラットフォームにすることでユーザー数を徐々に獲得していきました。
そして、アプリが200万ダウンロードされたところで大規模にCMを打ち、一気にキャズムを越える信頼感とお手軽さのイメージを消費者に植えつけたのです。
結果として、メルカリはフリマアプリの人気調査では軒並み一位を獲得するほどの莫大なシェアを獲得しました。
終わりに
新しいサービス・モノが展開する上で見落としてはならないキャズム理論。
キャズムの越え方はそれぞれですがとにかくメインストリームの市場にどのように受け入れてもらえるかを熟考することが大事と言えそうです。
キャズム理論を自分のものとして新しいサービスの展開をスムーズにしましょう!