WEBサイトを訪問するユーザーのうち、大多数は匿名の「アンノウンユーザー」です。
実名化されていないユーザーに対してのアプローチは難しそうなイメージがありますが、「アンノウンマーケティング」であれば実名化されていなくても個々に最適なアプローチを展開できます。
本記事では、匿名ユーザーを実名化へと導くアンノウンマーケティングについて詳しく解説します。
アプローチ方法や施策内容などを具体的に紹介するので、ぜひご参考ください。
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この記事の内容
アンノウンマーケティングとは?
アンノウンマーケティングとは、Unknown(=知らない/未知の)のユーザーを対象にしたマーケティング手法です。
たとえば、自社のWEBサイトに訪問したユーザーが100人いたとします。そのうち、問い合わせフォームや資料請求などで自社に氏名や連絡先などの個人情報を渡したユーザーは3人だとしましょう。
すると、残りの97人はせっかくWEBサイトに訪問してくれたにも関わらず、接点を持つことなく関係性が終わってしまっています。
この例にある97人のような、自社に個人情報を渡しておらず正体がわからないユーザーを「アンノウン」と定義し、アンノウンユーザーが個人情報を渡してくれるよう促すマーケティングを「アンノウンマーケティング」と言います。
リードジェネレーションの課題
アンノウンマーケティングを進めるうえで、マーケティングにおけるリードジェネレーションの課題を理解する必要があります。
リードジェネレーションとは、見込み顧客を獲得することです。
もう少し具体的に言うと「自社の顧客になる見込みのあるユーザーの個人情報(氏名や連絡先など)を入手すること」と言えます。
より多くのリードを獲得するほど、後々の受注数や売上などの成果も大きくなります。
リードジェネレーションの方法は「セミナー」「展示会」などのオフライン施策が主流でしたが、近年はオンライン化しています。そのうちの一つの方法が「WEBサイト」です。
WEBサイトからお問い合わせフォームで連絡をしたり、ホワイトペーパーやeBookをダウンロードしたりする際に、ユーザーの個人情報を入力する必要があります。
そうしてユーザーの個人情報を入手し、リードジェネレーションを実現します。
ユーザーが「個人情報を入力してまで、この情報がほしい」と思うほどの価値のあるコンテンツを設置することで、ユーザーの関心度を高めて個人情報入手へとつながります。
ただし、実際にはユーザー全員が個人情報を入力するわけではありません。
関心があっても「問い合わせるほどではない」「個人情報を入力するのが面倒」といった理由から、多くのユーザーが『アンノウン』になっているのです。
これでは、せっかくリソースをかけてSEO対策やコンテンツ制作をしても、成果には結び付いていないと言えます。
関連記事:リードジェネレーションとは?意味や手法・おすすめのツール3選を紹介
アンノウンマーケティングが注目されている背景
先述の通り、今までは、氏名や連絡先などの個人情報を得ているユーザーに対してしかアプローチできませんでした。
たとえば「メールアドレスを入手したユーザーに対してメルマガを配信する」「住所を知ることができたから資料を送付する」など、個人情報を得ていなければアプローチにもつながらなかったのです。
つまり、個人情報を入手できていない「その他大勢」はリード(見込み顧客)と見なすことができず、多くの機会損失を招いていました。
しかし現代はテクノロジーが進歩し、個人情報を入手しなくても、IPアドレスによるアクセス解析やAIによる行動分析などが可能になっています。
それらの分析結果を基に、WEBサイト上でポップアップを表示したり、関連する商品をレコメンドしたりする機能も追加されています。
このように個人情報がなくてもアプローチできる仕組みが構築されたことで、今までは見逃していたアンノウンユーザーたちにもアプローチができるようになっています。
このような背景から、近年はアンノウンマーケティングが注目されるようになりました。
アンノウンマーケティングの「潜在層」と「顕在層」
アンノウンマーケティングを展開する上で、ユーザーを「潜在層」と「顕在層」を明確に分類しなければなりません。
潜在層と顕在層では関心度が異なるので、それぞれの適切なアプローチが必要になるためです。
それでは、潜在層と顕在層はどのような層を指すのか、下記で解説します。
潜在層
潜在層とは、偶発的に自社のWEBサイトに訪問したユーザー層です。たとえば「気になるキーワードで検索した際、上位にランキングされていたから訪問した」といったユーザーは、潜在層となります。
潜在層はサイト訪問の目的が明確になっていないため、自社商品・サービスに対するニーズも生まれていません。したがって、個人情報の入力をしないユーザーがほとんどです。
しかしサイト内のコンテンツや導線によっては、関心度を高めて個人情報を入手することもできるでしょう。
顕在層
一方の顕在層は、何らかの目的があって自社のWEBサイトに訪問したユーザー層です。
たとえば、商品・サービスへのニーズが明確になっていたり、自社サイトのファンだったりする場合です。
商品・サービスの魅力をアプローチすることで、個人情報の入力につながりやすいと言えます。
アンノウンマーケティングの仕組み
アンノウンマーケティングでは、基本的にオンライン上でしかユーザーとの接点がありません。
しかも、相手の氏名や所属企業などの個人情報は不明なので、手探りでアプローチすることになります。
ただし、未知のユーザーであっても、実はツールを活用することで個々に合わせたアプローチが可能です。
たとえば以下のようなツールです。
- オープンDMP(Data Management Platform)
自社サイト外のオンライン上の行動履歴や、性別・年齢などの属性といったデータを入手できる - MAツール
獲得したリード情報の管理や、お問い合わせフォーム作成・LP作成・メルマガ配信の実行、自社サイト上のアクセス解析などができる - WEB広告配信システム
オンライン上の行動や属性に合わせてWEB広告を配信できる
これらのツールを活用すると、以下のようにアンノウンマーケティングを展開できます。
- 自社サイトを訪問したユーザーのCookieやIPアドレスなどでIDを振り分ける
- オープンDMPを使って各IDのオンライン上の行動を分析する
- 自社サイト上にポップアップを表示したり、関心度の高いジャンルのWEB広告を表示させたりする
たとえば、WEBサイトを閲覧している途中で、初回限定の割引クーポンが表示された経験がある方もいるのではないでしょうか。
また、Amazonなどで過去に検索した商品の関連商品・類似商品などが、広告枠に表示されたことがある方も多いかと思います。
これらは、すべてオンライン上の行動を解析した上で表示させています。
このような仕組みがあるため、実名化できていないユーザーに対しても最適なマーケティング施策を展開できるのです。
アンノウンマーケティングで取り組むべき5つの施策
アンノウンユーザーはこれから自社の顧客になる可能性を持つため、適切にアプローチしたいですよね。しかし未知の相手を対象にするので、どのような施策が効果的なのかわからない方も多いのではないでしょうか。
アンノウンマーケティングでは、以下の施策に取り組むことで効果が期待できます。
リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、過去に自社サイトを訪問したユーザーに対し、サイト離脱後にも行動を追跡して広告を配信する仕組みです。
たとえば、とあるECサイトを閲覧した後、検索エンジンや別のWEBサイトの広告枠にECサイトの広告が表示されることがあります。それがリターゲティング広告です。
一度は離脱してしまったユーザーでも、その商品に関心を持ち続けている場合もあります。そのようなユーザーに対してリターゲティング広告を配信することで、購買意欲を刺激して再び自社サイトへと呼び戻し、コンバージョンにつなげることを目的としています。
コンテンツ作成
自社サイトにさまざまなコンテンツを設置しておくことで、ユーザーの関心度を引き上げてコンバージョンへと誘導することが可能です。
その時にはコンバージョンに至らなくても、ユーザーがどのようなジャンルに興味を持っているか分析するために役立てることもできるでしょう。
WEBサイトに設置すると効果が期待できるコンテンツは、主に以下の種類があります。
- 記事コンテンツ
- 動画コンテンツ
- ホワイトペーパーやeBook
いずれもユーザーにとっての有益性を意識し、関心度を刺激する内容を心がけましょう。
関連記事:コンテンツマーケティングとは?実践のメリット・手法・具体事例を紹介
サイト上にポップアップを設置
自社サイトでのポップアップの設置も、アンノウンマーケティングでは有効です。
自社サイトに訪問した回数や、特定のページの閲覧時間、サイト内のページを閲覧した履歴などを解析し、必要としている情報をポップアップで表示する仕組みです。
ユーザーごとに最適な情報を提供できるため、関心度を引き上げられます。
プッシュ通知
アプリのプッシュ通知機能はご存知の方も多いと思いますが、実はWEBサイトでもプッシュ通知を設定できます。
WEBサイト上の情報更新のお知らせや、割引セールの案内などを送ることができ、ユーザーの再訪やコンバージョンを促します。
チャットボット
チャットボットとは、チャット上にて自動でやり取りを行うロボットプログラムのことで、シナリオを設計しておけばユーザーに自動で質問をしたり回答を返したりすることができるツールです。
サイトに訪問した目的や興味のあるジャンルなどを直接聞けるため、貴重なデータを収集できるでしょう。
アンノウンマーケティング実施のために必要な3つのステップ
アンノウンマーケティングの進め方がわからない方は、以下の3つのステップに沿って進めましょう
ユーザーの閲覧履歴データの蓄積
まずは、アンノウンユーザーのオンライン上での行動データを取得します。
- ユーザーが、どのチャネルから自社サイトに流入したか
- WEBサイト上でどのページを閲覧したか
- そのページのどの部分を重点的に閲覧したか
これらのデータを取得する際には、以下のツールが役立ちます。
- Googleアナリティクス
- Googleサーチコンソール
- ヒートマップツール
これらのツールを使って閲覧データを取得し、データベース上に蓄積しましょう。
なお、コーポレートサイトやサービスサイト、オウンドメディアなど複数のWEBサイトを運営している場合は、別々のデータベースに分けると分析が複雑化します。なるべく1つのデータベースでデータ管理をしましょう。
蓄積データを基に仮説をたてる
さまざまなデータを分析すると、アンノウンユーザーが興味を持っているジャンル・テーマや、コンバージョンにつながりやすいコンテンツなどが見えてきます。それらの分析結果を基にして仮説を立てましょう。
たとえば、興味のあるジャンルから「どのような課題を抱えているか」「他にどのような情報を求めているか」といった仮説を立てられます。
これらの仮説を基にして、アンノウンユーザーを属性や行動でセグメンテーション(分類)しましょう。
セグメントされたユーザーに最適なコンテンツを届ける
セグメントごとにニーズが異なるので、それぞれのセグメントにWEBサイトやWEB広告などを活用して最適なコンテンツを提供します。
たとえば、以下のようなアプローチが考えられます。
- 特定のジャンルに興味を持っているセグメントに対して、そのジャンルのホワイトペーパーや記事コンテンツをポップアップで表示する
- 過去の閲覧履歴が似通っているセグメントに、関連商品をリターゲティング広告で訴求する
これらの施策を通じてアンノウンユーザーとの関係を構築し、実名化へと導きます。
MAツールを活用したアンノウンマーケティングの具体事例
アンノウンマーケティングは未知の相手を対象にするため、人手による分析や作業では限界があります。そこで、MAツールを活用することで効率的にアンノウンマーケティングを行うことができます。
ここでは、MAツールを活用してどのようにアンノウンマーケティングを展開するのか、具体事例を紹介します。
関連記事:MAツール比較12選!失敗しないマーケティングオートメーションの選び方とは?
アンノウンユーザーのデータベース化
実名化されていないアンノウンユーザーにIDを振り分け、データベース化します。MAツールではCookieなどの情報に基づいてIDを付与できるため、実名化していなくてもデータベース化が可能です。
IDに紐づいてWEBサイトの閲覧履歴や滞在時間なども解析できるため、アンノウンユーザーごとに興味のあるジャンルを紐解くことができます。
最適な情報を提供
IDごとにニーズや興味のあるジャンルなどを分析したら、一人ひとりに最適な情報を提供します。
MAツールによっては、サイト内にポップアップ表示やホワイトペーパー設置などが設定できるものもあります。さらに広告配信機能が搭載されているMAツールもあるので、アンノウンユーザーのデータに紐づけた施策を実行できるでしょう。
アンノウン顧客の実名化
ここまでアンノウンマーケティングを実行してきたら、いよいよ実名化へと導くための施策へと進みます。主に以下の方法で、個人情報を獲得しましょう。
メールマガジンへの登録
一つ目は、無料のメールマガジンを配信し、購読者として登録してもらう方法です。メールアドレスだけでなく、氏名や企業名なども登録するように促すと、個人情報を獲得できます。
メルマガで価値のある情報を配信することでユーザーの信頼感を得ることもできるため、リードナーチャリングにも効果的です。
ホワイトペーパーや資料のダウンロード
二つ目が、ユーザーにとって有益な情報を掲載したホワイトペーパーや資料を作成し、ダウンロードするために個人情報を入力してもらう方法です。ノウハウ集や事例集、調査結果など、ユーザーが「個人情報を入力してでも、この情報を知りたい」と思わせるコンテンツにすることが重要です。
関連記事:ホワイトペーパーの作り方とは?作成のコツとマーケティングの活用事例も解説
無料ウェビナーやイベントへの参加申込み
三つ目は、無料で参加できるウェビナーやイベントなどを開催し、参加申込み時に個人情報を入力してもらう方法です。
ウェビナーはインターネット環境とデバイスさえあれば参加でき、参加のハードルが低いため申込みにつながりやすくなります。
問い合わせフォームの利用
そして最後は、問い合わせフォームからの個人情報の獲得です。
問い合わせフォームと一口に言っても、以下のようにさまざまな切り口で利用できます。
- 資料請求
- 無料トライアルの申込み
- 営業担当者とのアポイント
- 商品購入・サービス契約
- その他クレーム・要望など
アンノウンユーザーの実名化だけでなく、そのユーザーがどのような目的で自社サイトを利用したのかも把握できます。
終わりに
WEBサイトを訪問するほとんどはアンノウンユーザーです。「個人情報がわからないから打つ手がない」と諦めるのではなく、DMPやMAツールなどを活用するとアンノウンユーザーに対してもアプローチができます。
せっかく自社サイトに訪問してくれたのだから、その機会を大事にしてアンノウンマーケティングを実行しましょう。