新型コロナウイルスは収束したと思ったらまた感染が拡大するなど、流行に歯止めがきかない状態です。
そんななかで働き方はリモート化し、社内のコミュニケーションはオンラインがメインとなってきました。
いつ、また緊急事態宣言が発令されるかもわからない状況のなかで、リモート化・オンライン化に対応した社内体制構築が求められています。
そこでマネージャー陣にとって不安の種となるのが、部下たちメンバーの育成。
今までの教育方法・指導方法ができなくなっている現在、どのように営業メンバーを育てていけばいいのでしょうか。
本記事では、これからの時代に求められる部下とのコミュニケーション術について解説します。
マネージャーと部下のコミュニケーションの変化
新型コロナウイルスの感染拡大によって働き方が変わり、社内コミュニケーションにも影響を与えていることは周知の事実です。
実際にどのように変化をきたし、どのような課題が露呈したかという具体的なデータをご紹介します。
緊急事態宣言真っ只中の2020年4月21日~27日の間、日経BPコンサルティングはビジネスパーソン1,556名を対象にアンケートを実施しました。
「新型コロナの影響による、企業内のコミュニケーション課題」についての設問では、上位4つの課題について3割以上もの人が課題を抱えていることが判明しました。
・上司・同僚・部下の行動が見えない 36.1%
・社内で気軽な会話ができない 35.3%
・必要な情報の共有が徹底できない 33.5%
・親睦をはかる場をもてず、コミュニケーションが激減している 31.4%
この結果では、業務に必要なコミュニケーションと同じくらい、関係性を構築するためのカジュアルなコミュニケーションの低下についても実感している人が多いことがわかります。
以前は、オフィスで部下に「ちょっといい?」と声をかけて軽く立ち話をしたり、お昼休憩時に一緒にランチを食べに行ったりして気軽にコミュニケーションが取れていました。
それによって案件の進捗状況や取引先の情報について把握できるだけでなく、部下の悩みや不安なども聞くことができたのです。
しかしリモート化の影響でコミュニケーションが取りにくくなったことにより、マネージャーは以前にも増して部下の進捗状況や悩みを把握しにくくなっているのです。
このような状況下で活躍しているのがオンラインツールです。
今までビジネスチャットやスケジュールアプリなどで情報共有をしていた組織も多いと思いますが、それに加えてZoomなどのビデオ会議ツールが活用されるようになってきました。
社外とのオンライン商談や社内会議などで利用するイメージが強いですが、上司と部下の1対1のミーティングやコーチングなどでもZoomが使われるようになっているのです。
声だけの電話やテキストだけのチャットとは違って相手の顔を見ることができる安心感で、リモートワーク特有の疎外感や孤独感を感じることなくコミュニケーションが取れます。
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部下の褒め方
今まではオフィスで目が合ったタイミングで「最近頑張っているな」と部下に声をかけてモチベーションを高めることができていましたが、上記のような環境下ではそれも難しくなっています。
リモートコミュニケーションによってリアルな雰囲気や顔色を読みにくくなっており、部下が何を求めているのかも把握しにくい状況です。
このような状況下では、部下がどのような人物なのかをより深く理解した対応が求められます。
例えば、あなたにはAさん・Bさん・Cさん・Dさんという部下がいたとして、それぞれの仕事に対するモチベーションが異なるとします。
・Aさん:将来は起業したいから、そのためにこの会社で経験を積みたい
・Bさん:人の役に立ちたい
・Cさん:会社に認めてもらって出世したい
・Dさん:安定した給料をもらって生活できればそれだけでいい
仕事のスタンスは全員異なるため、AさんやDさんのように自分自身が軸となっている場合は褒めることが必ずしも効果的とは言えません。
また他者からの評価が軸となっているBさんとCさんでも、褒めてほしい対象が異なることがわかります。
人の役に立ちたいBさんは、お客様からも会社(上司)からも褒められたいと思っていますが、Cさんは特に会社(上司)からの評価を気にしています。
このように人によって仕事のモチベーションが違うことから、BさんやCさんには「ありがとう、助かったよ」という言葉かけが有効。
その一方、Aさんに対しては「この仕事をやってみるかい?」「Aさんの判断に任せるよ」という声かけでやる気を引き出すことができるでしょう。
さきほど例に挙げた4名の仕事についてのスタンスや考え方は、マズローが提唱した「5段階欲求」に当てはめることができます。
その人が“他者からの評価”を重視するのか“自分自身の評価”を重視するのかを理解することができれば、効果的なマネジメントをすることができるのです。
それでは「5段階欲求」の法則を詳しく見てみましょう。
マズローの5段階欲求
心理学者のマズローが提唱した「5段階欲求」の法則は、消費者の心理を理解するために主にマーケティング活動などのビジネスシーンで活用されてきました。
実はそれだけではなく、ビジネスでの社内マネジメントでも活用することができるのです。
マズローの5段階欲求の法則とは、マズローが提唱した「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」というか仮説を基に、人間の欲求は5段階あるとした理論です。
「自己実現理論」と言われることもあります。
人間の5段階の欲求とは、下記の5つ。
・第一段階:生理的欲求
食欲、睡眠欲、性欲など、生きていくための基本的かつ本能的な欲求。
人間が次の段階の欲求に進むためには、生理的欲求が満たされている必要があります。
・第二段階:安全欲求
次の段階は、身体的な安全や健康、経済的な安定、国の保障など安心・安全な環境で生きたいという欲求です。
一番身近な例で言うと、新型コロナウイルスの感染拡大が収束することを望む欲求がありますね。
・第三段階:社会的欲求
この二つの欲求が満たされると「自分が社会に必要とされたい」「家庭や会社などに属して受け入れてもらいたい」という欲求が生まれます。
どこにも属していないという状況で社会的欲求が満たされない状態にあると、孤独感や疎外感を感じてしまうため「所属と愛情の欲求」とも呼ばれます。
物質的な満足だけでなく精神的な満足も生きていくためには必要なのです。
・第四段階:承認欲求
組織から受け入れてもらって所属するだけではなく「組織内で認めてもらいたい」「高く評価してほしい」と思うようになります。
承認欲求には2種類あります。
・低いレベルの承認欲求:他人から注目を浴びたり、称賛されたりしたい
・高いレベルの承認欲求:自己肯定やスキルアップ
例えば「SNSで拡散されたい」「出世したい」などは他者軸での評価が基準となりますが、レベルが高くなると「料理が上手になって嬉しい」「この案件を契約できた自分はすごい」など自分軸での評価を大事にします。
・第五段階:自己実現欲求
ここまでの4つの欲求が満たされたとしても、本当に自分がやりたいことをしていなければいずれは不満を感じてしまうでしょう。
自分の可能性を最大限に発揮し「本当になりたい自分に近づきたい」「夢を実現したい」という欲求を持つようになります。
自分の理想や夢を現実のものにする“自己実現”をすることで、はじめて人間は心から満たされるのです。
ちなみに第四段階までをまとめて「欠乏欲求」と言い、それが足りなかったり失ったりすると強く欲するようになります。
一方の第五段階のみは「存在欲求」や「成長欲求」と言い、勉強や仕事を頑張ったぶんだけ成長できるため永遠に高みを求めていくことができます。
さきほど4名の例を挙げましたが、Dさんは経済的な安定や会社の保障に一番の重点を置いているため、第二段階の「安全欲求」から仕事を続けていると言ってもいいでしょう。
BさんとCさんは「承認欲求」のうちでも低いレベルの承認欲求を重視しているようです。
そしてAさんについては「高いレベルの承認欲求」を超えて「自己実現欲求」のために仕事をしている傾向が強いと言えます。
部下とのコミュニケーションの手法とポイント
それでは、部下を褒める場合やコミュニケーションを取りたい場合は、どのような方法で行えばいいのでしょうか。
おすすめの「1on1ミーティング」「フィードバック」「コーチング」の3つの手法について、そのやり方とポイントを解説します。
1on1ミーティング
上司と部下の1対1のミーティングを1on1(ワンオンワン)ミーティングと言います。
1on1は人事評価面談や営業ミーティングとは異なり、部下の育成のためのミーティングの時間です。
ミーティングルームや会議室での1on1のほか、カフェやランチでの1on1ミーティングや、リモートワーク下でのオンラインミーティングなど、自社に適した方法を取りましょう。
1on1では、部下の悩みや不安を聞き出して寄り添ってあげたり、部下が将来像やキャリアを描けるように考える機会を提供したりします。
例えば、次にチャレンジしたい仕事について聞き出したら、そのためにいつまで何をすべきなのかを本人が考えるように質問を投げかけましょう。
時には、自分や会社として力になれることはないかを聞き出すことも大事です。
ほかにも、1on1は純粋にコミュニケーション不足を補って関係性を深める目的でも活用できます。
相手の価値観や考え方を知ることで相手について理解し、適切なマネジメントに活かすこともできるでしょう。
フィードバック
フィードバックとは、業務の内容や成果に対する評価や指摘などを本人に伝えることによって、本人が軌道修正したり振り返りをしたりすることです。
例えば仕事中にミスをしたとき、上司から「ミスをした状況の確認」「なぜこのようなミスが起きたのか」といった話をされることで、次に同じミスが起こらないようにどうしたらいいのかを考えることができるときがあります。
このようなフィードバックがあることによって、部下は自分の業務を振り返ってより高いレベルでの仕事をすることができるようになるのです。
適切なフィードバックは部下の育成やスキルアップだけでなく、部下自身の肯定感を高めてパフォーマンスを向上させたりモチベーションをアップさせたりする効果も望めます。
フィードバックには3つの型があります。
・サンドイッチ型
褒める→改善点の指摘→褒めるという、ポジティブ→ネガティブ→ポジティブという流れでフィードバックを行う方法。ネガティブな内容だけでないため、対象者のモチベーションを維持しやすい。
・SBI型
Situation(状況)→Behavior(行動)→Impact(影響)の流れで行うフィードバック。対象者がフィードバックの内容について理解しやすい。
・ペンドルトン型
心理学者のペンドルトン氏が開発したフィードバック方法。一方的なフィードバックではなく、対象者自身の内省を促して改善や行動につなげる。
コーチング
部下の育成にはコーチングも効果的です。
コーチングとは、部下の話に傾聴したり問いかけをしたりすることで、自分自身で答えを見つけることをサポートする手法です。
直接答えを与えずに、部下自身が答えを見つけるまで適切な質問をして誘導してあげる必要があります。
部下は自分で考える力が身について問題解決能力が上がるため、継続的にコーチングをしていくことで、いずれは部下が自分自身でも考えていくことができるようになります。
直接スキルを伝授したりお手本を見せたりする「ティーチング」とは異なり、間接的な教育と言えるでしょう。
コーチングについての効果や具体的な手法については、下記ページを参考にしてください。
https://product-senses.mazrica.com/senseslab/management/about-sales-coaching
終わりに
個人を尊重する時代になって一人ひとりに合わせた対応が必要になっていることに加え、新型コロナウイルスの影響により働き方が変化している現代。
部下によって最適なコミュニケーション方法や育成方法を用いて、個人個人の能力やモチベーションを引き出すことが大事になっています。
今回ご紹介した内容を参考にして、自分と部下とのコミュニケーションについて改めて見直してみましょう。