昨今のテクノロジーの伸長に伴って、データの利活用が進み、社会全体としてデータ利活用の流れが進んでいます。

また、企業に目を向けても、データの利活用が徐々にではあるが進んでいます。例えば、社内に蓄積された様々なデータを使って、売上向上や業務改善を図るといったことが増えてきています。

しかしながら、これらのデータを分析する社員というのは、従業員のごく一部に限られるのが現状です。

分析業務に携わったことがない社員が、いざデータ分析をするとなっても、社内に点在する数あるデータをどのように使って分析したらいいのか、正直分からないというのが実情ではないでしょうか?

このような社員にとってデータ分析をイチから学ぶのはそう簡単ではありません。

しかしながら、データ分析を学ぶにあたって、最短ルートでスキルを身に付ける方法があります。それは、「思考力」を上手く活用することです。

この思考力さえ身に付ければ、たとえ文系出身で数字に苦手意識がある人でも、データを扱うことに抵抗を持つことなく分析ができるようになるでしょう。

今回は、データ分析において必要とされる思考力について解説します。また、データ分析を行うには一連のプロセスがあり、そのプロセスにおいてどのように思考力を活用するのかも併せて解説します。

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データ分析とは?

そもそもデータ分析とは何か?

一言でいうと、客観的な視点で物事を意思決定するためのツールであると言えます。

例えば、自分自身「最近売上が減ってきたな」と感じる状態というのは、あくまでも主観的な視点となります。

一方で、客観的な視点というのは、実際に売上金額のデータを集計してみて、金額が減少していることをデータを使って確認することです。

関連記事:データドリブンとは?営業にデータドリブン戦略が必要な理由と促進ツール紹介

では、具体的な事例を使ってデータ分析とは何かを説明していきましょう。

例えば、ある会社の営業部において受注金額を調べることになり、以下のような棒グラフを作成することになりました

下記は年間の受注金額の推移を示したグラフですが、グラフを見るとここ直近3年において、受注金額が鈍化していることが分かります。

年間の受注金額の推移

果たして上記のグラフでは、これはデータ分析と言えるのか?言えないのか?

答えはデータ分析とは言えません。

なぜなら、このグラフでは受注金額の鈍化という現状把握はできましたが、なぜ受注金額が鈍化したのかが分からないからです。加えて、鈍化を解消する施策、言い換えると売上を上げるための施策や示唆が全くないからです。

従って、この一連の作業はデータ集計でありデータ分析とはいえません。

データ分析において最も重要なことは、グラフや表から課題点や原因を特定し、具体的な打ち手を導き出すことです。

データ分析の目的

本題に入る前に、データ分析の目的について話しをしたいと思います。

データ分析の目的について端的に言うと、データ分析結果を見る読み手に対して、定量的な視点から相手にメッセージを伝え、相手を動かすことです。

つまり相手が何かしらの意思決定をするための判断材料を提供することがデータ分析の目的となります。

この目的を取り違えているデータ分析をよく目にします。つまり、読み手を意識したデータ分析になっていないということです。

よくある事例として2つ挙げると、1つ目はデータ分析をすること自体が目的となっているということです。

前述の売上鈍化のグラフは典型的な例であると言えます。例えば上司から依頼されたやらされ仕事の場合だと、このように全く読み手を意識していないグラフとなることが多いです。

2つ目は、独りよがりなデータ分析になっていることです。言いかえると、分析者自身のスキルをアピールすることが目的となっているということです。

社内の分析資料の中で、考察のないデータ分析結果だけが莫大に掲載された資料を見た経験があるかと思います。

読み手はこれらの分析結果をみて、自身が結果を解釈して何かしらの意思決定をしなければなりません。これも読み手のことを全く考えていない典型的な例の一つです。

データ分析者は誰に何を伝え、読み手に何をしてもらいたいのかを常に意識して分析をすることが重要であると言えます。

データ分析のメリット

少し前から、データ分析の重要性が叫ばれているのには、データ分析を行うことで大きなメリットを得られるからに他なりません。 ここでは、データ分析を通して得られる具体的なメリットを解説します。

データドリブンな経営になる

データドリブンとは、ビジネス上で収集したData(データ)をDriven(起点として)することで、何らかの判断・行動することを意味します。 経営者や役員の感覚に頼った経営から脱却し、客観的な根拠を元に経営を行うことが可能になれば、経営を安定させることができます。

起こす行動がデータに基づいていれば、都度適切なアクションを取ることが可能になります。

現代では特に、企業と顧客を繋ぐ場面が多様化し、顧客行動も複雑になっています。その流れに遅れないためにも、データ分析は非常に重要です。 例えば、営業業務に関して考えると、「データ分析の結果を元に、リストの顧客に対してのトークスクリプトを顧客の特徴ごとに最適化し、成約率を高める」などの施策を取ることができます。

意思決定の速度が上がる

データに基づいた意思決定が浸透すれば、その速度も自ずと向上します。

主観を入れることなく、客観的な意思決定を迅速に行えることは、スピード感が重要となる現代ビジネスにおいて非常に重要なことです。また、因果関係が不明瞭だったビジネス上での課題も、データ分析によって解決できる可能性があります。

事業に役立つ新たな洞察が得られる

社内に点在しているデータを収集し、分析することにより、事業に関する新たな洞察を得られる可能性も高いです。

部署内だけのデータでは、価値の高い分析ができないとしても、他部署に存在しているデータと掛け合わせることで、新たな洞察が生まれる可能性があります。

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データ分析の一連のプロセス

データ分析を行う上での一連のプロセスについてお話すると、以下4つのフェーズに分けることができます。

各フェーズについて具体的に見ていきましょう。

データ分析の一連のプロセス

  • 現状把握
    「現状把握」は、前述した受注金額推移のグラフに該当します。このグラフでは、受注金額が鈍化しているという現状把握だけに留まっています。
  • 詳細分析
    「詳細分析」は、現状を把握した上でより詳細な分析を行うことです。例えば、上記グラフの現況把握を踏まえた上で、様々な属性(担当者別、商品別など)で分析することです。
  • 原因特定
    「原因特定」は、例えばチャネル別に詳細分析をすると、ホームページ経由での問合せの受注金額が、他のチャネルと比べて少ないといった原因が特定されることです。
  • 打ち手
    最後の「打ち手」は、ホームページ経由からの受注金額の減少という原因が特定されたのであれば、自社のデジタルマーケティングにおける施策の改善を図るといった打ち手となる示唆を得ることになります。

上記がデータ分析の一連の流れです。

関連記事:営業データ分析の手法3つ!見るべき項目やSFAを活用した分析手法

しかしながら、データ分析のスキルがないと、いざ分析を着手しても原因を上手く特定することができずに、結果として打ち手となる示唆を得ることができません。

この一連のプロセスをスムーズに行うために必要となるのが思考力であり、具体的には「仮説思考」です。

この仮説思考を上手く活用することで、効率的なデータ分析を行うことが可能です。

つまり現状把握から打ち手までの一連のプロセスを効率化することができます。

一方で、仮説思考を活用しないと原因の特定までに時間を要し、最後の打ち手まで辿り着くことがなかなかできません。

データ分析において仮説思考をどのように活用するのかの前に、そもそもの仮説思考について簡単に説明していきます。

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データ分析における仮説思考とは?

仮説を一言でいうなら「仮の答え」です。

これは分析業務に関係なく、そもそも仕事をする上で必要とされるスキルの1つとなります。

仮説思考を日々の業務で上手く取り入れないと、生産性を高めることができず、結果として成果を上げることができません。

では日々の業務においてどのように仮説思考を使うのか?具体的に、取引先の商談において提案をするというシーンをもとに説明します。

仮説というのは、分かりやすく言うと「恐らくこうなりそうだ」ということです。仮説思考力のある営業パーソンというのは、商談前において、取引先に提案すると恐らくこうなるだろうという精度の高い仮の答えを持って商談に臨んでいます。

言い換えると、顧客が提案内容に対してどのような反応を示すのかをあらかじめ予期しているということです。従って、自分が思い描くシナリオ通りに商談を進めることができ、結果として成約に至る確率が他の営業パーソンと比べて高くなります。

一方で、仮説思考力が低い営業パーソンは、仮の答えの精度が低い。つまり、商談においては自分が思い描くシナリオとは全く異なる展開となることが多く、結果として失注となる確率が他の営業パーソンと比べて高くなります。

仮説思考力を鍛えるには、商談前により多くの仮説を設定した上で商談に臨むことが重要です。そうすれば自ずと仮説思考力は身に付きます。

データ分析においても、同様にこの仮説思考力が求められます。分析をする前に仮説を設定し、その答えを導き出すために必要なデータを集めて分析をするという流れになるわけです。

ではデータ分析において仮説思考をどのように使うのか、まずは仮説思考を使わないでデータ分析をするとどうなるのでしょうか?

仮説思考を用いないデータ分析手法

データ分析が苦手な人のプロセスは、前述した以下プロセスの通りに分析を進めてしまうことに、そもそも問題があります。

このプロセスで分析すると、最後の打ち手まで辿り着かないことが多々あるわけです。

上記フローで分析をすると、なぜいけないのか?以下の図と事例をもとに解説していきましょう。

上記の図について説明をすると、現状把握後に詳細分析を①〜④の順で行ったという意味です。

具体的には、①〜③の詳細分析では原因が特定されず、④の詳細分析で初めて原因が特定されたという意味となります。

仮説思考を用いないデータ分析というのは、自分自身がこれだったら出来そうと思う分析を片っ端から行うことです。

例えば、前述の受注金額の事例をもとに説明すると、以下①→④の順番で片っ端から詳細分析を行った結果、たまたま運良く④のチャネルに原因があると特定できたということになります。

  • 分析①:営業担当者別の詳細分析→原因特定✗
  • 分析②:支店別の詳細分析→原因特定✗
  • 分析③:商品別の詳細分析→原因特定✗
  • 分析④:チャネル別の詳細分析→原因特定◯

仮説思考を使わずに分析すると、とても非効率であることが明白です。

なぜなら、最初のステップ(分析①)でチャネル分析をしていれば1回の分析で済んだにも関わらず、この事例では無駄に3回も分析をしていることになります。

しかしながら、仮説思考を活用すると効率的に分析ができ、かつ最後の打ち手に辿り着く確率が格段に高まります。

仮説思考を用いたデータ分析方法

仮説思考を用いた場合のプロセスは以下の通りとなります。

前項との違いとしては詳細分析をする前に、原因であろうと思われる仮説を事前に設定することです。

つまり、いきなり詳細分析をするのではなく、仮説作りを優先する。

そして仮説が決まったら詳細分析を行い、その分析結果が仮説と一致するのかを検証すること。

前項の事例を使って説明するなら、鈍化しているという現状把握の段階で、「売上鈍化の理由として、最近自社のホームページ経由からの問合せ件数が減少しているので、恐らく鈍化の理由はここにありそうだ。」と、このような仮説を立てた上で詳細分析をすることです。

ただし、仮説思考を用いた分析をする前提条件として、自社製品・サービスの理解に加えて顧客理解など全てを把握しておかないと、そもそも仮説を立てることができません。

つまり、いくらデータ分析が得意な人であっても、その業界に一定の知識や理解がないと仮説を立てることができず、結果として原因特定や打ち手に辿り着くことができません。

例えば、製薬会社の臨床開発業務でデータ分析の実績がある人が、仮に全く畑違いのマーケティングリサーチ会社に転職をしても、入社早々から即戦力になるかというと、そうではありません。

なぜなら、業界に関する知識がなく、仮説を立てることができないからです。

よって、仮説思考の前にまずベースとしてその業界に関する知識を理解することが必要不可欠となります。

つまり、業界や顧客をどのくらい理解しているかで、データ分析の質が決まるわけです。

売上分析に使える手法やフレームワークをこちらの記事にまとめています。
関連記事:売上分析に使える7つの手法・フレームワークと分析ツールを紹介!

データ分析への抵抗感をなくそう

今後数年後において、データの利活用がより進んでいくはずです。

まだまだ自分はデータ分析とは無縁だと感じている方も、いずれは分析業務をいずれ担当する、そんな日がいずれ来ると思われます。

そのためにも今の段階からデータリテラシーを高めておく必要があるでしょう。

しかしながら、本業務を行いながらデータ分析のスキルを体得するのは一筋縄ではいきません。

今回説明をした一連の流れで分析スキルを磨くのは正直ハードルが高く、まずは以下2点を重点的に意識してみるのがおすすめです。

①データをいじる前に考える癖をつけること
 (=手を動かす前に仮説を設定すること)
②仮説(原因特定)をより具体的にイメージしてみること

①と②を少しでも日々意識しながら業務を行えば、データ分析への抵抗感が薄れ、いずれは「打ち手を考えたいのでデータ分析をしたい」というマインドに自ずと変化するはずです。

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投稿者プロフィール

中村 有輝久
人事採用分野のデータコンサルタントとして、人事データの統合やデータを活用した組織・人材の可視化など、大手企業を中心に多種多様の業種で実施。
また、自社オウンドメディアの定量データをもとに、HR系専門紙にて定常的な発信をしている。新卒採用市場においては、就活生・企業側の就活・採用動向を定量的に可視化し、今では主流となっているインターン採用や博士採用市場への認知推進に貢献。
現在は営業のデータサイエンス分野の知見を踏まえた情報発信を併せて行なっている。
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