IT化により顧客の購買行動が複雑化し、それに合わせて求められる営業スタイルも高度化しています。
今後、顧客自身も気づいていない課題を指摘して商談を有利に進めていく「チャレンジャー」と言われる営業タイプを強化していく必要があります。
しかし、「チャレンジャー」というセールスタイプは耳慣れないという人も多いのではないでしょうか。
今回は「チャレンジャー」の営業スタイルを紐解いて、どのように育成・強化していけばいいのかを解説します。
また、売れる営業パーソンはそれぞれ突出したスキルを所有していますが、彼らには普遍的な4つの法則があります。詳しく知りたい方はぜひ下の資料をダウンロードしてみてください。
営業の高度化とインサイト
営業現場で働いていると、顧客に求められている営業スタイルが高度になっていると感じている人も多いのではないでしょうか。
その理由は、顧客の購買行動の変化にあります。
以前は、顧客は課題に気づいていても解決する方法や手段が分からずにいたため、自社の商材を活用して解決方法を提案する『ソリューション営業』という営業スタイルが主流でした。
一方、現在はIT化が進んだことで顧客はほしい情報をすぐに手に入れられるようになり、課題の解決策を自ら見つけることができるようになりました。
つまり、従来のソリューション営業が行っていた手法は通用しなくなり、顧客は入手したいくつかの解決策を自分自身で比較検討するようになったのです。
そこで現代では、顧客の先手を取る営業スタイルの必要性が出てきました。
具体的には、顧客自身ですらまだ気づいていない課題を指摘し、それを解決するためのソリューションを提案する営業のことです。
顧客の気づいていない課題を解決する営業スタイルは、顧客の潜在的な課題を“洞察”するという意味から『インサイト営業』と言います。
関連記事:インサイト営業とは?プロダクト営業など3つの営業スタイルとの違いや事例紹介|AIを駆使した未来型営業
インサイト営業では潜在的ニーズを掴むためにAIなどを用いることも多いです。
顧客に対するヒアリングや市場調査だけでは潜在ニーズを把握するには不十分なため、ITツールなどを活用して営業活動を展開していく必要があるのです。
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営業の5つのタイプと「チャレンジャー」セールス
マシュー・ディクソン、ブレント・アダムソンが共著し2015年に日本語訳版が発行された『チャレンジャー・セールス・モデル』では、BtoB営業は5つのタイプに分類できるとしています。
- 向上心が高いため、圧倒的な行動量で受注を獲得する「ハードワーカー」
- 顧客との関係構築を得意としている「リレーションシップビルダー」
- 直感的な営業だが成果を上げる「ローンウルフ」
- 顧客との約束を最優先するサービス精神旺盛な「リアクティブ・プロブレムソルバー」
- 社内外問わず発展的な議論を展開することが大好きな「チャレンジャー」
チャレンジャータイプは、議論好きゆえに、顧客へ訪問する際にも徹底的に情報を集めて顧客理解を深めてから商談に臨みます。
そして、商談の場では、さまざまな情報を多角的に分析しながら議論を展開していきます。
時には、顧客とは違った見方をしたり、気づかなかったポイントを指摘したりするでしょう。
『チャレンジャー・セールス・モデル』によると、チャレンジャーは顧客を「指導」し、顧客組織内で共感を得るため「適応」し、商談の主導権を「支配」するとしています。
つまり、チャレンジャータイプはインサイト営業を具現化している営業スタイルとも言えます。
最もパフォーマンスが高い営業タイプ
比較的シンプルな商品を短いスパンで売るには、どの営業タイプでもそれほど差はなく売ることができます。
しかし商材のソリューション化や購入意思決定者の増加などにより案件が複雑化するほどチャレンジャータイプのパフォーマンスが高くなります。
『チャレンジャー・セールス・モデル』では、複雑な案件のハイパフォーマーのうち、54%がチャレンジャータイプであると示しています。
チャレンジャータイプは指導・適応・支配を行うことで商談での存在感を強め、商談を有利に進めていくことができることが要因です。
「チャレンジャー」に必要なスキル
チャレンジャータイプは「指導」「適応」「支配」という3つのプロセスを実行しています。
つまり、チャレンジャーを目指すためにはその3つのスキルが必須になりますが、具体的にどのようなスキルなのでしょうか。
1.差別化のための「指導」
ITの進歩は、多くの情報を瞬時に入手できるというメリットと同時に、情報がありすぎて選別することが難しいというデメリットももたらしています。
情報過多により、顧客は選び方や買い方が分からなくなってしまっている状態。
そこで、営業は顧客の現状や取り巻く環境などから「どの商品(サービス)を選ぶべきか」を指導することが求められます。
顧客との議論から潜在的な課題を導き出し、他社との差別化ポイントを的確に教えるという、インサイト営業のスキルが必要とされます。
2.共感を得るための「適応」
購入の意思決定に多くの人が関わるようになり、顧客の企業内での決裁プロセスは複雑化・煩雑化しています。
営業は、顧客組織内での正しい人に正しい情報を伝えて理解してもらわなければいけません。
そのために、チャレンジャーはキーマンに共感してもらうために適応することができるのです。
3.商談プロセスの「支配」
チャレンジャーは、顧客にプレッシャーをかけることもできます。
予算やスケジュールの話を出しながら、多少強引でも顧客を誘導していくことで、クロージングまで進めていきます。
ここで注意が必要なのは「押し売り」と勘違いしないこと。
チャレンジャーは、あくまでも顧客企業がよりよい状態になるために導いているのです。
関連記事:営業に必要な8つのスキルとスキルアップの方法とは?
「チャレンジャー」セールスの育成
受注までのプロセスが複雑化している現代では、複雑な案件に強いチャレンジャータイプの育成が求められています。
『チャレンジャー・セールス・モデル』でもチャレンジャーは育成できるとしていますが、個人だけでなく組織の能力も開発し、完全な移行には年単位で時間がかかる(つまり短期間で成果が出ない)と説いています。
つまり、マネージャーは営業現場で活躍できるチャレンジャーを増やして強固な営業組織にするために、個人に対する取組みと組織的な営業改革にいち早く取り組むべきなのです。
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適切な営業コーチング
まず、営業担当者一人ひとりに対しては、適切な営業コーチング(セールスコーチング)をします。
営業面での指導をする「セールスティーチング」とは異なり、営業コーチングとは部下の気付きや成長をサポートして目標を達成させます。
営業コーチングは部下が自分自身で考えて可能性を引き出す手法のため、個々の部下に合わせてカスタマイズしなければ十分な効果は得られません。
つまり、マネージャーは部下の営業スタイルや強み・弱みなどをきちんと理解したうえで、問いかけやアドバイスをする必要があります。
更に、もともと持っているスキルだけでなく、チャレンジャーにとって必要とされているスキルをいかに獲得し、どのように活用するかを示すことも重要です。
関連記事:営業(セールス)コーチングの意味と活用方法とは?|営業組織強化の第一歩
セールスイネーブルメントの実践
個人に対する営業コーチングと並行して、組織の営業改革をしていく必要もあります。
そこで、営業に関わるデータを数値化して管理し、全社的に営業プロセスを設計していく「セールスイネーブルメント」の実践が求められます。
目標達成度合いを数値データとして具体的に示し、効率的に売れる仕組みを作り上げるためには、データを蓄積・活用していくことができるSFA/CRMの導入が欠かせません。
そして、部門を分断せずに全社的に営業改革を進めるためには、他のITツールとシームレスに連携できるSFA/CRMを選択することもポイントとなるでしょう。
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終わりに|チャレンジャーが企業の成長を担う
今後更に営業プロセスが複雑化していくことが予想される現代で、「チャレンジャー」は企業の成長を左右するカギになるでしょう。
これからの営業人材に求められる「チャレンジャー」という人材開発と、それを支える組織作りに、今こそ着手すべきではないでしょうか。
また、最初にも説明した通り、個人だけでなく営業組織自体の改善も非常に重要です。「セールスイネーブルメント」を実践していくことが良いでしょう。
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