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セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、ビジネスで中・長期的に成果を上げるために行う、営業組織の強化や最適化のための取り組みです。
これまでの営業は、営業活動が属人化し、活動内容が組織内で共有されていなかった・・・というケースも多々ありました。
セールスイネーブルメントはテクノロジーを活用しながら売上を上げる仕組みを作ったり、営業の人材を育てるための仕組みを作るなど、組織全体で「成果を出す営業パーソンを輩出し続ける人材育成の仕組み」を作っていきます。
今回はセールスイネーブルメントについて、意味や定義、実践することで得られるメリットを事例を交えて解説します。
この記事の内容
セールスイネーブルメントとは?
ここ数年で認知をされてきたセールスイネーブルメントですが、ここではセールスイネーブルメントの定義や内容について紹介します。
セールスイネーブルメントの定義
セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、簡単に言うと「テクノロジーを活⽤した売れる営業の仕組み化」を意味します。
人事採用や新人研修、顧客流入経路、コーチングなど各部門で行われる施策が売上に対してどれぐらい影響を与えているか?という視点で施策を管理していくのが特徴です。
それぞれの施策が売上に対してどの程度の成果を出せたのか?を測定可能な(数値化できる)状態にすること、数値を基に売上に対する成果を上げていくことが大切になってきます。
これまでは研修や教育はHR(人事部門)、営業プロセスの管理や営業戦術の決定は営業部門、ツール設計や開発はシステム部門など、それぞれの仕組みを部門で分けて取り組んできました。
しかし、“売上を最大化する”という目的に立ち返った時、分業化した人材育成の方法では、なかなか成果に結びつきません。
各種施策を部門によって分断せずに一貫して設計・測定(全体設計)する方が、より高い効果が見込めるのではないかと考え、生まれたのがセールスイネーブルメント(Sales Enablement)という概念です。
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セールスイネーブルメントの主な取り組み
セールスイネーブルメントの主な取り組みを3つ紹介します。
営業コンテンツの作成・管理
セールスイネーブルメントの重要な取り組みの1つは、営業チームが顧客との対話で使用する資料や情報(営業コンテンツ)を作成して営業ナレッジを仕組み化し、管理することです。
営業コンテンツには、製品情報、ケーススタディ、ホワイトペーパー、プレゼンテーション資料などが含まれます。
コンテンツを作成したら、効果を定期的に評価し、最新情報や市場動向に合わせて更新・最適化しましょう。
関連記事:コンテンツSEOとは?8ステップで成果を出す手順と事例を紹介
営業担当者のトレーニング
営業担当者が必要な知識とスキルを習得するため、トレーニングを体系化することもセールスイネーブルメントの取り組みです。
具体的には、新規営業担当者が迅速に業務に適応できるよう、企業の製品・サービス、販売プロセス、企業文化に関する基礎的なオンボーディングプログラムを実施します。
既存の営業担当者に対しては、最新の知識とスキルを持ち続けるために、定期的なワークショップ、ウェビナー、eラーニングプログラムを提供します。
トレーニング後にはフィードバックを提供し、改善点を明確にしましょう。
関連記事:オンライン研修とは?種類・選び方とツール・サービスを紹介
ITツールの活用
セールスイネーブルメントを「テクノロジーを活⽤した売れる営業の仕組み化」と定義したように、営業にテクノロジー、つまりITツールの導入がセールスイネーブルメントの主要な取り組みです。
具体的には、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)などのITツールを活用し、営業プロセスの効率化と効果的な管理を実現します。
営業の効率化の面では、営業プロセスの自動化ツール、見積書作成ツールなどのツールも有効です。
また、営業データ分析ツールを活用すると、パフォーマンスのレポーティング・分析機能によって営業戦略の改善点を特定し、データに基づいた意思決定を実現できます。
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セールスイネーブルメントの実施手順
ポイント1. カスタマーパスの定義(購買へと進む心理的なプロセスと行動を整理する)
見込み客と接点を持ってから受注に至るまでの流れを把握する<認知・購買・導入>。
・見込客の状態
認知フェーズ:見込客は自らの課題を定義したり、どのような取り組みが可能なのかを情報収集
購買フェーズ:定義した課題に対してベストなソリューションを選定している
導入フェーズ:サービスを導入して品質に対して評価をする
ポイント2. 部門間の連携(見込み客の購買プロセスに合わせたアクション)
経営(重点的に攻めるターゲットを決め、受注につなげるプロセスを最適化する。 マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス。
ポイント3. データプラットフォームの構築とオペレーションの効率化
各プロセスの活動を数値化・可視化して組織の改善に役立てる。
マーケティング部門と営業部門の連携が重要だとは理解していても「いろいろなツールを使っているから情報共有がしにくい」「部署によって使っているツールが異なる」といった課題も見受けられます。
実際、マーケティング部門で使うツールは名刺管理システムやメールマーケティングシステム、SEOツールやMAなど多岐にわたります。
また、インサイドセールスはCTIやCRM、フィールドセールスはスケジュールとSFAというように、営業部門でもさまざまなツールを導入していることも少なくありません。
このようにさまざまなツールを使っていると情報が散在してしまい、スムーズな連携が困難になる原因となります。
さらに成果を出すためには、営業実績に基づいたマーケティング施策や、マーケティングデータに基づいた営業活動も求められます。
しかし、これらを実現するためには部署間でのデータ連携が大前提。
このようなズレをなくすため、マーケティング部門で導入しているシステムと営業部門で使っているシステムを連携して情報共有を進める体制構築が必要です。
関連記事:Slack連携ツール・アプリおすすめ21選!スケジュール・タスク管理を効率化
MA・SFA/CRMの導入
システム連携をするために、まずは各部署において基幹的に活用できるツールを導入しましょう。
マーケティング部門においてはMA(マーケティングオートメーション)、営業部門においてはSFA(営業支援システム)またはCRM(顧客関係管理ツール)がおすすめです。
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MAはマーケティング活動を自動化・効率化するためのツール。搭載されている機能はツールによって異なりますが、主に以下の機能が搭載されています。
- リード情報管理
- キャンペーン配信
- メールマーケティング
- WEBコンテンツ制作(LPやお問い合わせフォームなど)
- スコアリング
一方のSFA/CRMには以下の機能が搭載されています。
- 顧客情報管理
- 案件管理
- 営業アクション管理
- スケジュール管理
- 売上分析
これらのツールを連携すると情報共有が容易になるだけでなく、データが相互に同期されて入力負荷の軽減にもつながります。
セールスイネーブルメントの効果とメリット
セールスイネーブルメントがビジネスにもたらすメリットは、主に以下の4つです。
- 営業活動や人材育成の「仕組み化」
- 営業サイクルの短縮
- 施策効果の可視化
- 売上の増加
- 営業・マーケティング部門間の連携強化
営業活動や人材育成の「仕組み化」
セールスイネーブルメントによって見込まれるビジネスへの効果・メリットは営業活動や人材育成を「仕組み化」できることです。
営業活動や人材育成の「仕組み化」によって営業活動を「最適化」できるため、効率的に売上を上げられます。
営業組織の中には「売れる営業パーソン」がいる一方で、「売れない営業パーソン」も存在します。
セールスイネーブルメントの導入によって「営業の属人化」の問題が解消し、営業パーソン全体のパフォーマンスが向上し、会社全体の売上の向上が可能です。
営業活動はどうしても属人化する傾向にあります。
「売れる営業パーソン」が感覚で行っていることを見える化し、仕組みとして落とし込むことで、組織全体としての底上げが可能になり、「営業研修がどの程度売上に貢献しているのか?」なども可視化できるでしょう。
▶▶【売れる営業の秘訣】トップセールスが実践している4つの法則を徹底解説!
営業サイクルの短縮
セールスイネーブルメントの導入によってCRMシステムや自動化ツールを活用することで、営業担当者は必要な営業資料や顧客情報に迅速にアクセスできるようになります。
これにより、顧客のニーズを即座に把握し、適切な提案を迅速に行えるのです。
同時に、営業プロセスが可視化され、ボトルネックと対処が効率化されるため、商談成立までの時間が短縮します。
関連記事:セールスベロシティーとは?計算方法や向上させるポイントを分かりやすく解説
施策の効果を可視化できる
セールスイネーブルメントによって、営業活動の効果を可視化し、最適な戦略立案が可能になります。
これにより、各種施策の効果や貢献度を明確に把握できるようになります。具体的には、顧客に対してどのようなセールスコンテンツが最も刺さるかを詳細に分析できます。
例えば、どの資料や提案書が顧客の関心を引き、商談を進展させているのかが明らかになります。
この分析結果を基に、今後どのようなコンテンツを制作すべきか、戦略的な判断が可能になります。効果の高いコンテンツの特徴を洗い出し、それを踏まえた新たな資料作りにつなげられるのです。
売上の増加
セールスイネーブルメントにより、営業チーム全体がパフォーマンス向上のための知識やスキルを共有できます。
さらに、体系化されたトレーニングを通じて、営業担当者は顧客のニーズを正確に把握し、最適な提案を行えるようになります。
このように、営業チームの総合力の強化と個々の営業マンの教育によって、成約率が向上し、その結果、売上が増加するのです。
加えて、セールスイネーブルメントはクロスセルやアップセルの機会を見逃さないようにするため、既存顧客からの追加売上も期待できます。
関連記事:売上拡大に必要なことは?拡大を妨げる要素と8つの具体施策
営業・マーケティング部門間の連携強化
セールスイネーブルメントの導入によって、営業部門とマーケティング部門の連携強化を見込めます。
従来、別々に活動しがちだった両部門が、より緊密に協力し合う体制を築くきっかけとなるのです。
特に、マーケティング部門が蓄積したデータ分析結果を営業部門が有効活用することで、リード獲得や成約率の向上につながる効果的な営業戦略を展開できるようになります。
顧客行動の傾向や市場動向といったマーケティングインサイトを営業活動に反映させることで、より的確なアプローチが可能となるのです。
現代の営業力強化には、データの戦略的な利活用が不可欠です。セールスイネーブルメントの導入は、必然的に各部門間の横断的な連携体制の構築を促します。
この過程で、営業部門とマーケティング部門の間に新たなコミュニケーションチャネルが生まれ、情報共有や戦略策定の場が自然と形成されていきます。
セールスイネーブルメントが注目されている背景は?
それではなぜ、セールスイネーブルメントは注目されているのでしょうか。
営業活動(Sales)の領域でテクノロジーを活用することを「Sales Tech(セールステック)」と言い、欧米を中心に市場が確立されています。
関連記事:セールステックとは?7つのカテゴリーを解説|今後の営業に求められる4つのスキル
身近な例では、CRMやSFAの活用です。
- セールスイネーブルメントの市場規模は高い成長率が見込まれている
- WEBマーケティングやMAの普及によりリードの質と量が向上している
- 営業活動の属人化(可視化されていない)
2019年にMILLER HEIMAN GROUPが発表した「CSO-Insights-5th-Annual-Sales-Enablement-Study」によると、2010年代からアメリカにおいてセールス・イネーブルメントに取り組む企業が増え、2019年には61.3%の企業が取り組んでいるとの報告がなされています。
また、2018年に同グループが発表した調査では、セールス・イネーブルメントに取り組んでいる会社と、そうでない会社との比較では、「取り組んでいる方が約25%目標達成率が高くなっている」との報告が上がっています。
ビジネスにおいて、大きなインパクトがあるからこそ、取り組む企業が増えていると言っていいでしょう。
セールスイネーブルメントの市場規模は高い成長率が見込まれている
Sales Enablement Platforms(Global Industry Analysts、2024)によると、セールスイネーブルメント市場規模は近年大幅な伸びを見せており、2022年度の売上金額は25億ドルと推定され、2030年までに79億ドルに達すると予想されています。
これまで2016-2023年の間にも年16.4%以上の成長率を継続しており、今後も高い成長率が見込まれています。
さらに、セールスイネーブルメントの市場規模の拡大を機に、今後も新規企業の参入があると見られています。
WEBマーケティングやMAの普及によりリードの質と量が向上している
セールスイネーブルメントが普及した背景の一つには、WEBマーケティングやMAが普及したことによってリードの質と量が向上したことが挙げられるでしょう。
マーケティング部門からテクノロジーの進歩によって質の高いリードが大量に供給されるようになったことで、営業が質の高いリードに対して、効率的にアプローチする体制が必要になったのです。
営業活動の属人化(可視化されていない)
メンバーが個々のやり方で営業を行っていることで営業の質にばらつきが生まれており、かつ営業情報が共有されておらず不透明な状態、すなわち「営業の属人化」です。
この「営業の属人化」という問題は近年非常に注目されており、こちらもセールスイネーブルメントが注目される理由の一つといえるでしょう。
営業活動の属人化が何故ダメなのか?こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:営業の属人化はなぜ起こる?何が悪いのか、解消するためにやるべきこと
日本のセールスイネーブルメントの現状
それでは日本国内でのセールスイネーブルメントの浸透度合いについて紹介していきます。マツリカが公開した「Japan Sales Report 2023」( セールスイネーブルメントの実態調査)によると何らかのセールスイネーブルメント施策を行なっている企業が過半数を占めることがわかりました。
また、実施しているセールスイネーブルメントの取り組みとしては、営業プロセスの再構築・トレーニング・マネージャーの強化などの取り組みを実施する企業が多いようです。
様々なセールスイネーブルメントに対する取り組みをしている一方で、明確にセールスイネーブルメントの効果が認められている組織は全体の15%にすぎないと結果がでました。
以下に調査結果を簡単にまとめます。
- 日本において、何らかのセールスイネーブルメント施策を行なっている企業が過半数を占める
- 営業プロセスの再構築・トレーニング・マネージャーの強化などの取り組みを実施する企業が多い
- 明確にセールスイネーブルメントの効果が認められている組織は全体の15%にすぎない
>>>参考資料:Japan Sales Report 2023 セールスイネーブルメントの実態調査
セールスイネーブルメント成功のための6つのポイント
セールスイネーブメント成功のためのポイントは以下の通りです。
- 専用の担当者を配置する
- CRM/SFAツールを活用して営業業務を効率化する
- DSRツールを活用して営業コンテンツを一元管理する
- BIツールを活用してデータ分析を行う
- 施策ごとの貢献度を測定する
- 営業パーソンの強みや弱みを可視化して評価する
それぞれ解説していきます。
専用の担当者を配置する
セールスイネーブルメントの実装には、営業に関する知識だけでなく、人事やシステム開発などに関するスキルやノウハウが必要です。
そのため、組織内にセールスイネーブルメント推進のための専用の部署と担当者を配置することをおすすめします。
専門の担当者は、セールスプロセスの改善やツールの導入に関する戦略を策定し、プロジェクトをリードすることで、セールスイネーブルメントをスムーズに実施できるでしょう。
自社内での進行が難しい場合は、外部のコンサルタントに依頼するのも1つの手です。
SFA/CRMツールを活用して営業業務を効率化する
セールスイネーブルメントを実現するためには、SFA/CRMの活用が欠かせません。
- SFA:営業支援ツール・営業支援システムで、商談開始から受注までの営業情報の可視化と共有をサポートする
- CRM:顧客管理システムで、顧客との関係性を構築する(顧客満足度を上げる)ことで売上を増加させる
関連記事:
セールスイネーブルメントツールとして、SFA/CRMが必要な理由は以下の通りです。
営業活動や顧客情報の管理が重要なため
セールスイネーブルメントにおいては、営業活動や顧客情報の管理が重要になります。
なぜなら、セールスイネーブルメントの目的は「営業活動の仕組み化」によって売上を最大化することだからです。
従って、顧客情報や商談の履歴内容などの様々な情報をデータとして蓄積する必要があるため、SFA/CRMが必須となるでしょう。
量的な数字で可視化し計測するため
セールスイネーブルメントのポイントの一つは「数値化・計測」で、感覚的な部分ではなく、きちんとデータで裏付けされた情報をもとに、成果を分析する必要があります。その際にもSFA/CRMは重要です。
SFA/CRMでは「売上予測」や「受注率」、「案件進捗率」などの情報を分かりやすく可視化できますのでセールスイネーブルメントを促進できます。
関連記事:
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DSRツールを活用して営業コンテンツを一元管理する
DSR(デジタルセールスルーム)ツールとは、企業が見込み顧客と営業コンテンツを共有し、効率的な営業活動を行うことを目的としたツールです。
DSRでは営業資料、プレゼンテーション、デモンストレーションなどのコンテンツを一元管理し、リアルタイムでの情報共有を可能にします。
コンテンツ管理や顧客とのコミュニケーションの効率化が重要なセールスイネーブルメントにおいて、DSRの活用は欠かせません。
関連記事:デジタルセールスルーム(DSR)とは?複雑化するBtoB営業プロセスに有効な情報共有の場
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BIツールを活用してデータ分析を行う
ビジネスインテリジェンス(BI)ツールは、企業内にある様々なデータを基に分析・可視化するツールであり、セールスイネーブルメントの成果向上に役立ちます。
BIツールを用いて売上動向、顧客の傾向、市場の変化などの情報を可視化することで、営業担当者はデータに基づいた戦略の立案ができるようになるのです。
関連記事:BIツールとは?仕組み・機能・料金とおすすめツール比較9選
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施策試作ごとの貢献度を測定する
営業力強化の取り組みには、多岐にわたる施策が含まれます。
具体的には、教育研修の実施、営業プロセスの改善、新たなツールの開発・導入など、様々なアプローチが考えられます。
しかし、これらの施策を単に実行するだけでは不十分です。重要なのは、各施策が実際にどれだけの成果をもたらしているかを正確に把握することです。
具体的には、教育研修が営業スキルの向上にどの程度寄与しているか、プロセス改善が商談の効率化にどれほど貢献しているか、新ツールの導入が成約率の向上にどう影響しているかなど、施策ごとの効果を詳細に分析する必要があります。
同時に、最終的な目標に対する進捗状況も定期的にチェックしなければなりません。売上目標や顧客獲得目標など、設定した指標に対して、現状がどの程度達成できているかを常に把握しておくことが肝要です。
このような継続的な効果測定と進捗管理を通じて、各施策の有効性を評価し、必要に応じて戦略の見直しや改善を図ることができます。効果の低い施策は修正または廃止し、高い効果を示す施策にリソースを集中させるなど、柔軟な対応が可能となります。
営業パーソンの強みや弱みを可視化して評価する
セールスイネーブルメントの成功には、営業担当者の強みや弱みを明確に把握し、適切なトレーニングや支援を行うことが不可欠です。
パフォーマンスの測定とフィードバックを通じて、個々の営業担当者の成長を促進し、チームの営業力向上に努めましょう。
関連記事:営業パーソンの適切な評価とは?営業力を向上させる評価基準・評価項目を解説
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企業でのセールスイネーブルメントの具体的な事例
セールスイネーブルメントは、海外だけでなく日本でも広がりを見せています。 具体的には、どのような取り組みが行われているのでしょうか? 代表的なものについて見ていきましょう。
事例①営業教育におけるセールスイネーブルメントの事例
中小企業庁の調査結果によると、企業が実施している主な人材育成方法は「従業員間の自主的な取り組み」や「資格取得支援」の割合が高くなっています。
つまり、従業員の主体性に任せっきりということですね。
それでは、従業員の成長をモチベーションや確保できる時間など個人に委ねることになってしまいます。
この場合、従業員の成長にばらつきが出てしまい、会社全体の売上を向上させるという観点から見ると望ましくありません。
また、一般的な日系企業の営業職では、採用担当が新入社員研修や役職別の研修を提供し、営業部門のOJT研修は営業現場任せ、外部研修はコンサルティング会社というケースが多くなっています。
つまり、営業強化のための教育が部門によって分断されているのです。
会社が発展していくためには新たな人材の採用が必要不可欠ですが、このようなバラバラな教育体制では、個々の営業担当者のスキルアップや売上の強化に繋がりにくくなってしまいます。
特に現場任せのOJT研修は指導を担当する営業のスキルに研修のクオリティが大きく左右され、営業知識に偏りが出たり、営業についての間違った認識をもってしまうことが懸念されます。
そこに、セールスイネーブルメントの「全体計画」や「数値測定」という考え方を用いるとどうなるでしょうか。
結論から言うと、根拠をもって研修内容を定められるようになります。
順を追って見ていきましょう。
まず、営業教育において「全体計画」を実施するには、営業部の人材に必要な素質を明確に定義する必要があります。
これは営業成績上位(下位)の営業にアンケートや面談を実施することで得られるでしょう。
アンケートや面談で導き出された、多くの営業が必要と指摘した素質を身につけられるような研修を行うことが大切です。
そして、研修の結果を数値で計測します。
研修を終え現場に出た営業にどの研修が役立ち、またどんな研修があったらよかったか聞いていきましょう。
(行った研修を全てリストアップしそれぞれの満足度を数値化してもらうと、尚良いでしょう。 )
満足度が高かった研修内容は次年度も実施し、満足度が低かったものについては希望のあった研修に替えると、毎年研修のクオリティを上げていけます。
なお、一般的な新人研修に含まれる「日報」や「社会人のマナー講座」などの項目が、どの組織にとっても本当に必要な情報とは言えません。
もしかすると、営業が研修で知りたい情報は、自分で調べると骨の折れる競合製品情報や、顧客のHPのチェックポイントかも知れません。
採用担当者や人事担当者は、新人営業の要望や課題感を汲み取り、真に重要な資料やコンテンツの作成に注力する必要があります。
このサイクルを繰り返すことで、営業教育と営業現場をつなげ、営業現場で実際に必要になトレーニングやコンテンツを継続的に提供できるのです。
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事例②マーケティングにおけるセールスイネーブルメントの事例
営業が売上を上げやすくためにマーケティング部門ができることは、良質なリードをインサイドセールス以降に提供し続けることにつきます。
良質なリードとは受注につながる確率の高いリードです。
そのため、流入経路にセールスイネーブルメントの考え方を照らしあわせて見ると、どのチャネルが受注にいたるのか測定し、受注に至らないチャネルを改善し、受注に至るチャネルを強化するという全体設計が必要になります。
下の図はある会社のチャネル別受注率を示したものです。
縦軸は案件維持率、横軸は営業フローとなっています。
上記のレポートから各チャネルの受注率との関係がわかります。
- 概要資料→受注しているが商談から受注のフェーズ進捗が良くない→失注要因から顧客の懸念要素を分析し、概要資料内で払拭できるようにする
- 営業代理店→商談化するが受注に至らない→代理店に営業コンテンツや成功事例を共有することで受注を目指す
- 自社ウェビナー→受注に至るが商談化率が低い→ウェビナー受講後早めにアポ取りの電話を入れる/ウェビナーの内容と聞きたかった内容に齟齬がないか調べる
- 展示会→受注に全く結びつかない→注力しない この場合、「展示会」に割くリソースを減らし、「概要資料」と「自社ウェビナー」からの集客増加に注力する
という施策を取るのがもっともセールスイネーブルメントにつながるでしょう。
このように、各チャネルから獲得できたリードの数だけではなく、営業プロセスにおけるチャネルの貢献度を調べることで、最終的な売り上げに結びつくチャネル設計ができます。
事例③採用におけるセールスイネーブルメントの事例
採用に関してもセールスイネーブルメントの観点を導入することで、営業に与える成果を最大化できます。
営業教育におけるセールスイネーブルメント同様、採用においてもまず、自社営業として活躍するために必要な性格や能力を明確にする必要があります。
研修同様、アンケートや他者評価、面談によって社内の売上上位層に共通する要素を特定することが必要です。
その能力を測ることができる選考方法を考えながら、採用活動を行いましょう。
採用後、侵入社員が活動しているかを継続的に追っていくことで、自社に適した営業像を作ることができます。
1つ例を見てみましょう。
BtoBでCRMツールを販売しているHubspot社で行われたセールスイネーブルメントの例です。
Hubspot社では、社内調査の結果、「クロージング力」「ロジカルシンキング力」よりも「コーチング応用力」「事前準備」「好奇心」が重要だと明らかになりました。
顧客に興味を持って、顧客をよく調べ、上司からのフィードバックを素直に聞ける社員ほど成果を残すということでしょうか。
調査の結果を受けて、Hubspot社では面接において、「コーチング応用力」を測るための模擬商談を実施しました。
まず1回目の商談では、故意に把握しきれないほどの複雑な顧客情報を与え、その中でも顧客に興味を持って商談できるかを見ます。
フィードバック後に二度目の商談を行い、フィードバックを活かした商談ができているか確認しました。(採用部門に営業経験の豊富な社員を配置すると、こういった選考もスムーズに進めていくことができます。)
そして、採用した営業担当が入社後、実際に売り上げに貢献しているかを追跡することで、選考項目の精度を向上できたのです。
このように、採用にもセールスイネーブルメントの基本的な考えである「全体設計」「数値測定」という観点を活かすことができます。
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最先端セールスイネーブルメントツールおすすめ2選
セールスイネーブルメントツールとして活用できるツールをご紹介します。
尚、セールスイネーブルメントツールを中心にまとめたこちらの記事もご参考ください。
関連記事:セールスイネーブルメントツールおすすめ比較15選
バイヤー&セールスイネーブルメントプラットフォーム「DealPods(ディールポッズ)」
顧客ごとにDeal Roomという専用サイトを作成し、サイト内で売り手と買い手がコミュニケーションを取ることができる「DealPods(ディールポッズ)」。
買い手の企業内での意思決定プロセスの進捗状況の確認や、売り手と買い手のタスク管理をしながら、案件を円滑に受注まで進めます。
買い手側には営業資料をクラウド上で保存できるだけでなく、各資料の利用回数や顧客の閲覧データなどを分析できる機能も搭載。
データに基づいて、より成果につながる営業資料にブラッシュアップできます。顧客から反応の良かった提案資料の発見にもつながり組織の営業力強化につながります。
主な機能を紹介します。
顧客向け検討推進ページ
今までメールでバラバラでやりとりをしていた、資料・議事録・タスクなどを1ページにまとめて管理することができます。検討に必要な情報が一元化されます。
コンテンツ管理機能
組織のナレッジをシェアできる機能です。「あの資料はどこにあるっけ?」という状態をなくし、「ほしいコンテンツをすぐに見つけ、送れる」状態を作ることができます。
商談テンプレート機能
商談の進め方をチームで標準化できる機能です。商談の進め方をテンプレートに登録し、営業プロセスを標準化することができます。
インテントデータ取得
顧客の「誰が・いつ・どこに・どれくらい」興味を持っているのか、ページのアクセス状況を解析することで確認ができます。「ご検討状況はいかがですか?」をなくすことができます。
SFA/CRM自動入力
顧客向け商談ページの中に記載された内容はSFA/CRMにワンクリックで転記をすることができます。面倒な社内報告を減らすことができます。
公式サイト:https://product-senses.mazrica.com/lp-enterprise-sales-dealpods-io
直観的に扱いやすいSFA/CRM「Mazrica Sales(マツリカセールス)」
Mazrica Salesは「現場の定着」にもっともフォーカスした純国産のSFA/CRM(SFA機能を併せ持つCRM)です。
誰でも直感的に使いこなせる画面や、現場の営業活動を効率化させる機能に特徴があり、従来のSFA/CRMとは現場への定着率が圧倒的に異なります。
【特徴】
- 直感的に営業の状況を把握できる案件管理画面
- 営業のボトルネックを分析できるレポートやAIによるネクストアクションのレコメンドなど、データの蓄積から営業の分析・改善までをカバー
- Gsuite、Office365などのメール、カレンダー連携により入力負荷の軽減
- CRM機能、BI機能を持つSFAであるため、Mazrica Sales1つでセールスイネーブルメントが実現
【こんな企業にオススメ】
- 案件管理、進捗管理を手軽に行いたい企業
- 営業の入力負荷を下げ、営業効率を上げたい企業
- データを溜めて活用する文化を醸成したい企業
- SlackやGmailなど、様々なツールと連携して営業管理がしたい企業
公式サイト:https://product-senses.mazrica.com/
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SFA/CRM(Mazrica Sales)でできるセールスイネーブルメント
セールスイネーブルメントのポイントは「数値化・計測」です。
つまり、感覚的な部分ではなく、きちんとデータで裏付けされた情報を基にして、成果を分析していきます。
営業活動を数値化して管理するためには、SFAやCRMを用いて情報を蓄積していくことをおすすめします。
SFAやCRMでは次のような数値情報を蓄積可能です。
- 売上実績の予測
- 受注率
- 営業案件の進捗率
これらの指標は営業活動の成果を定量的な把握に役立ちます。
また、
- 顧客情報
- 営業アクションの履歴
- 商談履歴
- 社内コミュニケーションの履歴
上記の情報も一元管理ができるので、具体的な営業施策を打ちだすのに役立つでしょう。
更に
- トレーニング履歴
- フィールドコーチング履歴
- 活用したコンテンツの履歴
なども記録しておくことで、人材開発支援を活用した情報も蓄積できます。
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セールスイネーブルメントが学べるおすすめ書籍
最後に、セールスイネーブルメントをご自身で学び、実践したい方のために、おすすめの書籍をご紹介します。
今回ご紹介するのは「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」、「営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント」の2つです。
セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方
山下貴宏(著)/2019年12月18日発売/ISBN:4761274581
一冊目にご紹介するのは「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」です。
セールスフォース・ドットコム(Salesforce)社のセールス・イネーブルメント本部長としてグローバルトップの営業生産性を実現した著者によって書かれた一冊。
事例を含めた具体的な手法も紹介されているのが特徴です。
セールスイネーブルメントに取り組みたいと考える企業が、何をどのような手順で進めればいいのか、進めるうえで前提として整備すべきことが何なのか?営業に関わる全ての方に向けて解説しています。
購入リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/B082VW6554
営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント
バイロン・マシューズ 他(著)/2019年1月17日/ISBN:4877718052
次に紹介するのは「営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント」です。
営業力強化分野のリーディングカンパニーであるミラーハイマングループの手法を、豊富なデータやベストプラクティス事例と共に紹介した「セールス・イネーブルメント」の実践的ガイドブックとなっています。
BtoBビジネスにおけるセールス、マーケティングチームを強化していく意味でも有用な一冊です。
購入リンク:https://amzn.asia/d/4hHkFqb
THE BUILDING BLOCKS ビルディングブロック式セールスイネーブルメント営業パフォーマンスを劇的に変える実践的戦略
猪瀬 竜馬 (翻訳), マイク・カンクル (原著)/2024年2月5日/ISBN:9784344949980
次に紹介するのは「THE BUILDING BLOCKS ビルディングブロック式セールスイネーブルメント営業パフォーマンスを劇的に変える実践的戦略」です。属人化されやすい営業現場をセールス・イネーブルメントでいかにシステマティックに変革するか。セールス・イネーブルメントの構造を網羅的に理解できる、変革推進者必見の一冊です。
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データを活用してチームの業績を底上げする セールス・イネーブルメントの教科書
徳田泰幸 (著)/2023年5月17日/ISBN:9784781622040
次に紹介するのは「データを活用してチームの業績を底上げする セールス・イネーブルメントの教科書」です。企業の大小を問わず、セールス・イネーブルメント推進の具体的な方法を、用語解説を含め平易に解説した決定版・教科書です。
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まとめ|セールスイネーブルメントとは
営業施策をトータルで設計・管理するセールスイネーブルメント。
運用するためには、ここまで述べてきたようにSFA/CRMの活用が必要です。
SFAに蓄積された多くの情報で、セールスイネーブルメントがどのくらい営業実績に結び付いたのかを分析できます。
営業達成度(売上目標・実績、または前年対比など)は、営業施策がどれだけの成果に結びついたのかを具体的に把握する指標となります。
そして、トレーニング履歴やコンテンツの活用履歴は、人材開発施策をどの程度活用されたのかを把握する指標になります。
この二つのデータを掛け合わせてプロット図を作ると、どの営業担当者にどのようなトレーニングを施すべきなのかが見えてきます。
この検証・分析を経て、次に提供すべきトレーニングやコンテンツの開発を行い、再度数値を検証することで、体系的・継続的にセールスイネーブルメントを実践できるのです。
つまり、セールスイネーブルメントを継続して行い、自社の営業力を更に強化していくためには、PDCAサイクルを回していくことが最も大事です。
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自社内の営業情報を見える化し、セールスイネーブルメントに活用していきましょう!
セールスイネーブルメント -経営層・営業マネージャーが取り組むべき営業改革-
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