初対面の人との商談では「初めまして。それでは商談を始めます」と切り出しても、お互いに緊張感や警戒心があるためうまくいきません。

そんなとき、重苦しい空気を和ませる「アイスブレイク」の時間を設けることで、相手との距離感を縮めて商談をスムーズにできます。

今回は営業シーンで活用できるアイスブレイクの効果やネタについて紹介します。タブーなネタやアイスブレイクの注意点も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

アイスブレイクとは

アイスブレイクとは、初対面の人との商談や緊張感のある会議などのシーンにおいて、場を和ませるためのコミュニケーション手段を指します。

緊張感のある堅苦しい空気を「アイス」と例え、その空気感を壊すという意味から「アイスブレイク」と言われています。

アイスブレイクでは、相手の関心に触れられるかどうかが打ち解ける鍵となります。そのため、事前の準備が重要です。

しかし、初対面で相手の興味を見抜き、その話題を提供するのは難しいことです。そのため、誰にでも使えるアイスブレイクの話題を多くストックしておくことが大切です。

関連記事:営業準備・商談準備で使える4つの営業フレームワークとは?

アイスブレイクが必要な理由とメリット

では、なぜアイスブレイクが重要なのでしょうか。アイスブレイクによって得られるメリットとともに解説します。

営業におけるアイスブレイクの効果

営業で商談をする際、自分はもちろん商談相手も緊張していることは少なくありません。

特に初対面の場合、まだ信頼関係が構築されていないため、相手は警戒していることが多い傾向にあります。もしくは、相手が最初は乗り気ではなく場が白けてしまっていることもあるでしょう。

そんなときアイスブレイクとして雑談を挟むと、堅苦しい空気が和んでスムーズに商談に入れる効果があるのです。

またアイスブレイクは相手との信頼関係構築にも効果的です。自分のことを知ってもらい、相手のことを知ることができる手段としても有用です。

また雑談から思わずビジネスチャンスが生まれる可能性もあり、さまざまな効果が期待できます。

関連記事:商談の進め方・商談の流れや成約に繋げる方法を解説

会議におけるアイスブレイクの効果

アイスブレイクは、緊張感ただよう会議のシーンでも効果を発揮します。
堅苦しい空気感では、せっかく良いアイデアがあっても発言しにくくなり、建設的な会議になるとは言いがたいです。

会議が始まる前にアイスブレイクの時間を設けることで、会議の重苦しい空気感を和ませて発言しやすい雰囲気を作れます。
ただし会議でのアイスブレイクは、雑談よりもゲーム性の高いワークを取り入れることが多い傾向です。

関連記事:営業会議とは?効率的な進め方や具体的な議題例を解説

アイスブレイクの鉄板ネタ「木戸に立てかけし衣食住」

アイスブレイク・雑談の鉄板ネタとして広く認知されているのが、それぞれの雑談テーマの頭文字を取った「木戸に立てかけし衣食住」です。

内容は、季節・道楽・ニュース・旅・天気・家族・健康・仕事・衣食住になります。

「テ:天気」が「チ:知人」のネタとなる「木戸に立ちかけし衣食住」や、「セ:性」のネタが含まれた「木戸に立てかけせし衣食住」などもあります。

キ:季節ネタ

季節ネタは、初対面の人にも面識のある人にも活用できるネタです。工

夫次第で、季節ネタから相手の話を引き出して相手について理解することもできます。季節ネタを切り口にしてうまく会話を広げることで、緊張した場の雰囲気が和みます。

【例】
「最近は蒸し暑いですね。この時期、休日はどのように過ごしていますか?」
「そろそろ年末で、弊社が忙しくなってきました。御社はどうですか?」

ド:道楽ネタ

道楽、つまり趣味やハマっていることの話題も、会話の切り口として活用できます。
道楽ネタは相手との共通点を見つける際にも有効です。共通の趣味があれば場も盛り上がりますよね。

【例】
「ゴルフが趣味だと聞きましたが、私も最近ゴルフを始めたんですよ」
「最近話題になっている○○というドラマにハマっているのですが、見ていますか?」

ニ:ニュースネタ

ニュースネタも万能な会話ネタです。年代が違う相手との会話で活用できるでしょう。相手の業界のニュースにも敏感になることがポイントです。

【例】
「そういえば先ほどニュースで見たのですが、~~となったそうです。ご存じですか?」
「先日の~~によりA社は経営不振に陥っているようですが、御社には影響はないですか?」

タ:旅ネタ

旅行の感想や行ったことのある場所についての話題も、話のネタとしては最適です。
感想や旅行の予定だけだと自慢話になりかねませんが、相手への問いかけを挟むことで会話の糸口になります。

【例】
「年末年始は○○に旅行に行ったんです。行ったことありますか?」
「Aさんは○○のご出身でしたよね。今度旅行で行くのですが、おすすめのスポットはありますか?」
「最近忙しくて旅行に行けないですが、行ってみたい場所はありますか?」

テ:天気ネタ

天気は誰しも気になるネタなので、年代・性別問わずに使える話題です。相手を気遣う一言があると好印象を与えます。

【例】
「今日は午後から雨が降るみたいなので、お帰りの際は気を付けてくださいね」
「今ここに来る途中、急な雨が降ってきて…予報と違いますよね。Aさんは傘をお持ちですか?」

カ:家族ネタ

家族の話は親近感を与えるので、信頼関係にも良い影響があります。

ただし、人によっては家族の話をしたくない場合もあります。また独身の人にとっては、配偶者や子どもの話が自慢に聞こえてしまうことも。
家族ネタを話すときには相手や場面を見極めましょう。

【例】
「お子さんはおいくつになるんでしたっけ?」
「先月、第二子が生まれたんです。Aさんも、お子さんはお二人でしたよね?」

ケ:健康

健康の話題は、年を重ねるほど関心が高いトピックになります。
特に年配になると「健康自慢」だけでなく「病気自慢」をする人もいるので、相手に合わせて話題を振りましょう。

【例】
「新型コロナのワクチンは打ちましたか?」
「最近太ってきたのでジョギングを始めたんです。Aさんは健康の秘訣ありますか?」
「先週、初めてぎっくり腰をしてしまいました。Aさんは経験ありますか?」

シ:仕事ネタ

ビジネスシーンなら、仕事ネタは鉄板と言っても過言ではありません。会話の糸口になるだけでなく、ビジネスチャンスが見つかるきっかけにもなりえます。

ただしあまり深いところまで聞いてしまうと、話が長引いてしまうリスクも。適度に切り上げるためにも、あくまでも雑談レベルの会話を心がけましょう。

【例】
「仕事で使うパソコンを新調するんですが、御社ではどのメーカーを使っていますか?」
「御社のノー残業デーを参考にして、弊社でも取り入れたんですよ」
「先日、仕事でこんな失敗をしてしまって…。あるあるですよね」

衣:ファッションネタ

ファッションにこだわっている人は、服装や持ち物を褒められれば嬉しくないわけがありません。相手を観察してファッションについて話題にしましょう。

【例】
「今日のネクタイ、すてきですね。ご自分で選んだんですか?」
「Aさんがいつもピカピカに磨いた靴を履いているのを見習って、私も靴に気を遣うようになりました」

食:食事ネタ

食べ物のネタは初対面でもそうでなくても活用できるトピックです。食べたいもの、今日食べたもの、好きな食べ物、おすすめの店など、会話の選択肢が多いため非常に便利です。

【例】
「この商談が終わったらお昼をこのへんで食べていこうと思うのですが、良いお店はありますか?」
「御社のグループ会社が開発している○○を食べてみましたが、とてもおいしかったです」

住:住まいネタ

住んでいる場所・出身地・住んでいる物件などのネタは、プライベートな話題ではありますがそれほど私的な部分には踏み込まないので、話題として取り上げやすいネタです。
近くに住んでいたり同郷だったり、意外な発見につながるかもしれません。

【例】
「Aさんのイントネーションが関西っぽいなと思っていたのですが、どちらの出身ですか?」
「そろそろマンションを買おうと思っているのですが、Aさんもマンションにお住まいですよね?買うときの注意点ってありますか?」

▶︎▶︎トップセールスに共通する4つの法則を知りたい方はこちらから

アイスブレイクでタブーなネタ

アイスブレイクではどんな話題でも構わないというわけではありません。トピックによっては、さらに空気を凍らせることもありえます…。

アイスブレイクで避けるべきネタは、以下が挙げられます。

  • 政治や宗教:思想や信条に関するトピックのため対立を生む可能性がある
  • 愚痴:聞いていて気持ちの良いものではない

また共通の知人がいる場合、その人のことを話題にしやすいですよね。しかし悪口や陰口になってしまうと、相手に不快感を与えてしまいます。

適度な距離感を保ってネタを考えましょう。

事前にトークスクリプトを作っておくと安心です。トークスクリプトの作り方については以下の記事で解説しています。
関連記事:トークスクリプトとは?営業力が上がる作り方のポイントと例文を紹介

アイスブレイクのポイント

アイスブレイクを活用する際のポイントがいくつかあるので、頭に入れておきましょう。

アイスブレイクが不要な相手もいる

アイスブレイクは誰にでも効果があるわけではありません。アイスブレイクが不要な相手もいるのです。

たとえば相手の確度が非常に高い商談では、相手は早く提案を聞きたいと思っているかもしれません。それなのにアイスブレイクをされたら「早く本題に入ってくれ」と思うでしょう。

もしくは単純に人見知りやコミュニケーション嫌いで、アイスブレイクが苦手な人もいます。

相手や空気を見極め、アイスブレイクを活用するかどうか、どのネタにするかどうかを柔軟に判断しましょう。

長くなりすぎないように終わらせる

アイスブレイクは不要な人がいるのと同じように、アイスブレイク・雑談が好きな人も一定数います。

思いがけず話が盛り上がって、雑談が長くなることもあるでしょう。雑談の時間が多いと相手と深くコミュニケーションを取って信頼性を得るには効果的かもしれませんが、本題の話に時間を割けなくなります。

限られた時間を有効に使うため、アイスブレイクを切り上げるタイミングは注意が必要です。

商談後の雑談のほうが盛り上がる場合も

初対面の相手では、商談前のアイスブレイクよりも商談後の雑談のほうが盛り上がるケースも少なくありません。

商談中のヒアリングや提案を通してお互いについて理解が深まるため、商談後のほうが気持ちも打ち解けているはずなので、商談後が盛り上がるのは当然とも言えるでしょう。

商談前のアイスブレイクがあまり盛り上がらなくても落ち込まず、商談後に少しでも雑談の時間を設けて信頼関係を構築しましょう。

営業の商談に役立つSPIN話法についての記事も併せてご覧ください。

関連記事:SPIN話法とは?営業でSPIN話法が必要な理由と4つの具体例を解説

終わりに

アイスブレイクは緊張感のある営業シーンでは有効な手段です。ネタ次第で相手との距離感が縮まったり、新たなビジネスチャンスが見つかったりすることもあるでしょう。

ただしアイスブレイクに向いていないネタや、そもそもアイスブレイクを必要としない人もいます。

その場に合わせて柔軟に対応できるよう、営業スキルを磨きます。

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