以前まで、潜在顧客への営業手法はテレアポから商談に持ち込むことが一般的でした。
しかし、近年ではユーザーがインターネットを介して場所も時間も選ばず情報にアクセスすることができます。
このユーザーがアクセスした情報は企業にとって重要な情報を含んでいます。
そうした潜在顧客になりうるユーザーに対してアプローチするソーシャルセリングという手法を解説します。
ソーシャルセリングとは
ソーシャルセリングとは、個人がWEBを使って見込み客を発見し、関係構築をし、販売につなげる営業手法です。
現代においては相手を知ろうと「検索」を行う事は当たり前の時代です。その際にSNS等のソーシャルメディアで、自身の過去の実績が整理されているとビジネス的な関係が築けるかもしれません。
海外ではSNSを通じたビジネス上の人探しが日常的に行われていますが、日本はFacebook等で何の職業をしているのかプロフィールに書いていないケースも多く、ソーシャルメディアを使った営業、つまりソーシャルセリングの分野では後進国になっています。
ビジネスは人と人のつながりが基本であるという考えに立ち戻り、Facebookを見て「この人から買いたい!」と思われるように、日ごろからSNSの活用を意識し、ソーシャルメディア上でのプレゼンスを高めていく事がソーシャルセリングの初めの一歩です。
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従来の営業手法との違い
では、ソーシャルセリングは従来の営業手法とどのような点で異なっているのでしょうか。従来の営業手法としてアウトバウンド営業を例に、違いを解説します。
アウトバウンド営業との違い
アウトバウンド営業とは、テレアポや飛び込み営業などに代表される、企業が自らリード(見込み顧客)にアプローチする新規開拓の営業手法を指します。
これらの営業手法は、手軽に始められる一方、顧客から認知されていない状態から営業活動を始めるため、難易度が高く、受注率も低くなる傾向があります。
一方で、ソーシャルセリングでは、見込み顧客への情報提供やインタラクションを通じて、営業を行います。 Web上で見込み顧客とのコミュニケーションを取れていれば、その延長線上で商談に繋げることができるため、成約率が飛躍的に上がる傾向があります。
関連記事:アウトバウンド営業とは?インバウンド営業との違いや成功のコツ
ソーシャルセリングの現状
ここからは、ソーシャルセリングの現状について解説します。
海外での利用状況
Facebook、Instagramなどソーシャルメディアは伸長を続けています。日本国内でのニュースではユーザーの数が緩やかになったと言われているFacebookですが、それでも全世界では20億人(2017年)を超えるユーザーを獲得しています。
ソーシャルメディアとビジネスの観点で見ていくと、米国の企業の約4割がソーシャルメディアを活用して新規顧客の獲得をしており、5割の企業がTwitterを利用して顧客とコミュニケーションを取っているという報告もあります。
ソーシャルメディアは「無くてはならない」ツールへと変化してきています。企業がソーシャルメディアを利用する流れは大企業だけではなく、米国国内の中小企業でも広まっており、その増加率は加速しています。
日本におけるソーシャルセリング
アメリカでは多くの企業の営業担当者がソーシャルメディアを活用してソーシャルセリングをしているとの報告があります。
日本ではこれから導入を検討している企業が多いようですが、日本でソーシャルセリングを実施する際の懸念点を探っていきたいと思います。
まず1つめが情報開示に関することです。 海外では実績として「今日からAシステム会社のプロジェクトキックオフです!」のような投稿が写真と共に掲載されるのが一般的です。
しかし、日本の場合、クライアントに関する投稿は一切しないことが一般的です。 内情を細かく記載してしまうのは守秘義務違反となります。
日本においてSNSを利用したPRは具体的な顧客名が出せないため説得性にかけるということが言われています。
2つめに会社員としてのキャリアに関することです。 企業の購買部門としてSNS等を利用して、専門性を高め信頼感も得て、魅力的にPRができるようになったとしても、日本では定期的な人事異動によりこれまでのキャリアが崩れる場合があります。
海外と日本におけるキャリア形成と採用基準の違いによるものです。
ソーシャルセリングのメリット
次に、ソーシャルセリングを行うことで得られるメリットについて解説します。
見込み顧客に効果的にアプローチできる
ソーシャルセリングでは、接点を持ちたい見込み客をターゲットにして情報を届けることが可能です。
まずは、ターゲット顧客を決定し、その後ターゲットとした見込み客に対してSNSを通じて情報を提供します。さらに、リアクションを重ねることで接点を持ちます。
日々の情報発信やリアクションを通じて、見込み客のニーズが顕在化した時に自分が第一に思い浮かぶ存在となるよう、ライトなコミュニケーションを続けます。
リードタイムが短縮できる
ソーシャルセリングが従来の営業と異なる点は、売り手と買い手の信頼関係が構築された状態から商談が始まることです。
買い手は情報発信をしている営業担当者について知っているため、相談時には相互理解が進んでいる状態です。そのため、受注までのリードタイムを大幅に短縮することができます。
「ソーシャルメディアを利用している営業担当者の73%は、他の営業担当者より営業プロセスにおけるパフォーマンスが高い」という統計情報もあり、有効な営業手法の一つと言えます。
関連記事:営業のリードタイムとは?リードタイム管理の重要性と短縮方法を解説
ソーシャルセリングの実施方法
最後に、ソーシャルセリングを実施するための具体的手法を解説します。
1.SNSのプロフィールを最適化する
まず最初に行うのは、プロフィールの最適化です。 SNSでは、相手が何者であるかを調べる際、最初に目にするのがプロフィール欄です。
ソーシャルセリングでは、見込み客に自分が課題を解決できる存在だと感じてもらうために工夫が必要です。 プロフィール写真は顔写真にして安心感を与え、経歴や得意なことを簡潔にわかりやすく掲載しましょう。
関連記事:SNSマーケティングとは?重要性・手法・企業の成功事例|5つのSNSの特性やおすすめツールも紹介
2.毎日継続的に情報発信する
プロフィールを最適化したら、次は情報発信です。 重要なのは、以下の3種類のコンテンツを発信することです。
相手の役に立つ「ノウハウの提供」 共感を得るための「価値観や思想の共有」 自分を認知してもらうための「自社サービスについて」 発信するコンテンツの量と頻度は、1. > 2. > 3.の順に増やします。
3.のコンテンツを多く発信しがちですが、順序を守ることが重要です。
3.見込み顧客の投稿に対してリアクションをする
信頼関係を深めるためには、情報提供だけでなくこちらからのリアクションも欠かせません。
例えば、Twitterでは“いいね”や“リプライ”を使ってリアクションを重ねることで、見込み客が自分に興味を持つようになります。
ソーシャルセリングで成果を出すには時間がかかりますが、ライトなコミュニケーションを重ねることで、見込み客が検討するタイミングであなたを最初に思い浮かべてもらえるようになります。
営業活動でソーシャルセリングを使う際の注意点
先日Facebookで知らない人から友達申請があり、承認をしたら即座に「仮想通貨に興味ありませんか?」というメッセージを貰いました。一部のこうしたユーザーの行動により、ソーシャルセリングに悪い印象を持つ方も増えています。ソーシャルセリングを使う際に注意すべきポイントをご紹介します。
1.営業活動に即座に繋がると思わない
ソーシャルセリングではFacebookやTwitterを介して即座にダイレクトメッセージで営業活動するものではありません。
ソーシャルセリングの目的は関係性を構築することです。
営業活動をする前に自分自身がどのような価値を提供できるのかSNSへの投稿を通じて相手側に理解してもらいます。
2.商品やサービスの投稿をしない
パーティで自分の話しかしない人は嫌われてしまいます。SNSでも同様幅広い情報提供が求められています。
自社の商品のアピールや自慢しか投稿されていないと多くの人の関心は薄れてきてしまいます。
3.関連する分野のネットワークを作る
SNSで繋がっている人間が学生のころからの友人、というだけではソーシャルセリングは成立しません。その業界の人と繋がるための努力に時間を費やします。自分が繋がりたい情報の人たちに向けて、その人たちが興味ある投稿をするのも効果的です。
4.プロフィールを最適なものにする
日本ではSNSのプロフィールが無いユーザーも多く存在しています。
もしくは履歴書のように経歴を貼り付けているユーザーもいます。ソーシャルセリングでは、何の部活をしてきた、どこの会社を渡り歩いて来たということよりも、自分の課題を解決してくれる専門化をユーザーは探しています。
得意分野、専門分野をひと目で理解できるような内容に作り上げる必要があります。
終わりに
日本国内ではまだまだ聞きなれないソーシャルセリングという言葉ですが、海外では多くの企業担当者が高い効果を挙げ始めています。そのためには電話営業のような一方的な売り込みではなく、顧客にとって有効な情報を提供しつつ関係性を構築していかなくてはいけません。
ソーシャルセリングは日本ではまだ浸透していない分、そこには大きなチャンスが転がっているとも言えますね。
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