スタートアップや新規事業の際に重要となる「PMF」。自社プロダクトが市場にマッチしている状態を指す言葉です。
PMFを達成することで継続的な利用が見込め、売上の安定につながります。
本記事ではPMFの意味だけでなく、あわせて覚えておきたいPSFについても詳しく解説します。
ビジネスでPMFを重視したい方、起業したばかりの方は、ぜひ参考にしてみてください。
▶️▶️PMFしたプロダクトの急成長に必要な営業戦略の詳細はこちらの無料ebookをご覧ください
この記事の内容
PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?
PMF(Product Market Fit:プロダクトマーケットフィット)とは、簡単に表現すると「プロダクトが市場に受け入れられている状態」です。
いくら素晴らしいプロダクト(=製品・サービス)であっても、ニーズのない市場で展開しては、ユーザーに受け入れられません。たとえば、アスリート向けの器具を、ダイエット初心者向けの市場で展開しても、ニーズは見込めないでしょう。このように、製品・サービスを提供する市場が少しでもズレていると、本来のニーズのあるユーザーに届けられません。
そのため「ニーズを満たす製品・サービスを作る」だけではなく「適切な市場が選択できている」ことも、ビジネスの成長には欠かせないのです。
特にスタートアップや新規事業では、PMFが実現できていなければ成長につながりません。そのため、プロダクトがPMFを満たしているか重要視しながら事業を進めていく必要があります。
PMFすると起こる変化
PMFすると、その効果を明確に感じ取れるほど状況が変わります。
ここでは、PFMが達成された時に起こる変化についてご紹介します。
・問い合わせ・申し込み数が激増する
・低コストで受注が継続的に獲得できる
・採用が事業の成長に追いつかない
・顧客から絶賛の声が届く
・口コミベースで導入が広がっていく
具体的には、上記のような変化が訪れるでしょう。今は当てはまっていなくても、何らかの契機でPMFが達成できる可能性は大いにあります。
PMFが注目される理由
PMFが重要視されているのには、以下の理由があります。
顧客ニーズの細分化や商品の多様化がすすんでいるため
多様な価値観が認められる時代になり、顧客のニーズは細分化しています。たとえば、広い視野で見ると「痩せたい」というニーズであっても、より狭い視野で見てみると「脂肪を筋肉に変えたい」や「楽に痩せたい」など、細かなニーズに分かれます。
また、ニーズは普遍的なものではなく、情勢や流行などによって変化します。あるときを境にいきなり需要がなくなってしまった、ということが起きても珍しくありません。
さらに、現代の日本は市場が成熟し、モノやサービスがあふれています。類似品や代替品なども増え、顧客の選択肢は非常に広がっている状態です。
こうしたなかで企業が成長していくためには、顧客の細かなニーズに応えることと、他社と差別化することです。ニーズを満たしたプロダクトを適切な市場で提供することで、他社よりも優位に立つことができ成長につながります。
常にPMFを意識していれば、万が一、急にニーズがなくなったとしてもすぐに気づくことができ、早急に次の一手を打ち出せるでしょう。
既存顧客維持の重要性が高まっているため
少子高齢化は、労働力不足や過疎化などさまざまな影響がありますが、日本国内の消費が減少して市場が縮小していくことも懸念されています。商品を購入する消費者やサービスを利用するユーザーが減っていくため、今までのように新規顧客を獲得するだけでは、ビジネスの拡大は見込めません。
そのため、商品をリピート購入してくれたり、サービスを継続的に利用したりしてくれる既存顧客を維持する必要性が高まっています。自社プロダクトのファンになってくれれば、アップセルやクロスセルも期待できます。
自社プロダクトがPMFを満たした状態であれば、顧客はプロダクトに満足してファンになってくれるでしょう。もし既存顧客のニーズが変化していっても、プロダクトも柔軟にブラッシュアップさせていくことで、ニーズを満たし続けることができ継続利用につながります。
PMFを達成するためのPSF(プロブレムソリューションフィット)とは?
PMFを理解するうえで、PSFもあわせて覚えておくことが重要です。
PSF(Problem Solution Fit:プロブレムソリューションフィット)とは、簡単に言うと「課題に対する解決策が適合している状態」です。ここで言う「解決策」とは、具体的には「商品」や「サービス」などのプロダクトを指します。
つまりPSFは、プロダクトが顧客の課題を解決できている状態を言います。
PMFとPSFの関係性
PMFとPSFは、密接な関係性で成り立っています。
プロダクトを開発する際には、まずは顧客の課題(ニーズ)の解決策を見つけてプロダクトに反映させることが一般的です。この状態がPSFです。
まずは顧客の課題解決につながるプロダクトを開発してから、適切な市場で展開していくという、PMFの段階になります。
つまり、PSFはPMFを達成するための前段階と言えるでしょう。
PMF達成を目指すメリット
PMFを達成することには様々なメリットがあります。ここでは、以下2つのメリットについて詳しく解説します。
- 事業判断の指標になる
- 他領域にも応用できる
事業判断の指標になる
PMF達成を目指すことで、事業の拡大、撤退の指標として役立てることが可能です。
新規事業の場合、事業の方向性が間違っていないかの判断が可能になります。新たな市場が絶えず生み出される現代では、スタートアップに限らずあらゆる企業でPMFを意識することが大切になります。
また、事業撤退の際にも有力な判断材料となります。事業が顧客ニーズを満たせていないと、PMFの達成度も下がります。
事業撤退の判断を見誤り、無駄な投資を続けてしまうと、会社全体へ悪影響を及ぼします。適切なタイミングで事業撤退を行うために、PMFという指標を活用することをおすすめします。
関連記事:営業戦略とは?戦略の立て方と5つの分析フレームワークを解説
他領域にも応用できる
PMFの考え方は、マーケティングや人事など、様々な場面で活かすことができます。 どちらもターゲット層のニーズを満たすという意味で共通しており、PMF達成の考え方を応用することで、自社の競争力を底上げすることが可能です。
PSFを達成するための手順
PMFを達成するためには、先にPSFを達成しなければなりません。そこで、まずはPSFを達成するためのステップを解説します。
インタビューで顧客の課題を特定する
まずは顧客にインタビューを行い、どのような課題を抱えているか調査します。
フレームワークによる分析では、どうしても主観的な視点が入ってしまい、顧客視点での課題が見えにくくなります。そのため、実際に顧客にインタビューして調査することがおすすめです。
インタビュー以外にも、競合プロダクトの分析も有効。競合プロダクトの機能や使い勝手を分析すると、顧客のニーズを紐解くヒントが見つかります。
インタビューとあわせて、競合分析も行いましょう。
課題解決の方法を検討する
顧客の課題が特定できたら、課題に対する解決策を考えます。複数の解決策が導き出された場合には、よりニーズがありそうなものを優先しましょう。
そして、課題解決策をプロダクトに反映していきます。とはいえ、いきなり完成品を目指すのではなく、プロトタイプ(試作品)から始めます。
この際、まずは課題解決につながると思われる機能だけを絞って搭載しましょう。最初から多くの機能を搭載していると、どの機能が本当に必要なのかわからなくなり、収拾がつかなくなるからです。
課題解決が可能か見極め、ブラッシュアップする
プロトタイプが完成したら、課題解決につながるかどうか検証します。そのためにはソリューションインタビューが有効で、実際にプロトタイプを使ってもらい、搭載された機能で満足するか、新たな機能が必要か、などをヒアリングします。
改善点が見つかったら、即座にプロトタイプに反映します。ニーズは移ろいやすいものなので、スピーディに対応していかなければ遅れを取ってしまうこともあるため、スピード感をもってブラッシュアップしていくことが重要です。
PMFを達成するための手順
PSFを達成できたら、PMFを達成するためのステップに入ります。具体的には、以下の手順で進めましょう。
MVPを作成する
PSFを満たしたプロトタイプを参考に、MVP(Minimum Viable Product)を作成します。
MVPとは「実用最小限のプロダクト」を意味し、必要最低限の機能のみを搭載したプロダクトのことです。
課題解決につながるから必ず必要である「マスト」の機能だけでなく、あったら良いなというレベルの「ベター」の機能までも最初から搭載すると、顧客が必要としている機能の評価がブレてしまう可能性があります。そのため、最初はMVPを作成する必要があるのです。
顧客にMVPを使ってもらい、評価を分析する
MVPが完成したら、市場に投入して顧客に利用してもらいます。利用した顧客の評価を分析し、課題解決につながっているか、市場は適切か、など検証していきます。
分析の際には、顧客インタビューのほか、顧客満足度や契約継続率(解約率)などを分析しても良いでしょう。
改善を繰り返す
分析結果をもとに、PMFを達成できているか検証します。最初からPMFを達成できている可能性は限りなく低いため、分析結果から改善点を見つけ出してブラッシュアップしていき、PMFの状態に近づけていきます。
PMFの指標・3つの検証方法
PMFを達成できているか検証する方法はいくつかありますが、主なものを3つ紹介します。
PMFsurvey
PMFsurveyとは、起業家のショーン・エリス氏によって考案された、アンケート形式の調査方法です。
「もし、このプロダクトを利用できなくなったら、あなたはどう思いますか?」という質問を投げかけ、顧客には「非常に残念」「やや残念」「残念ではない」「該当しない(製品を使用していない)」という4つの選択肢から回答してもらいます。
この結果、40%以上が「非常に残念」と回答した場合は、そのプロダクトは将来的にもニーズが見込めるため、PMFを達成できていると判断できるでしょう。
NPS
NPS(ネットプロモータースコア)は、顧客のロイヤリティを調査するための方法です。
「このプロダクトを、どのくらい家族や友人に勧めたいですか?」という質問を投げかけ、顧客には0~10の11段階で評価してもらいます。そして、回答結果から顧客を以下の3つに分類します。
- 0~6:批判者
- 7、8:中立者
- 9、10:推奨者
そして、推奨者の人数から批判者の人数を引いた数が、NPSとなります。
NPSの数値が高いほど顧客はロイヤリティを感じていると判断できるため、PMFを達成している可能性が高いと言えます。
関連記事:NPSとは?意味や顧客のロイヤルティを高める指標について解説
リテンションカーブ
リテンションカーブとは、縦軸を「リテンション率」、横軸を「プロダクトリリースからの経過期間」としたグラフです。
リテンションとは「顧客維持」を意味するため、カーブが横ばいであるほど継続利用している顧客が多いと言えます。そのためプロダクトに満足していて、PMFを満たしていると判断できるでしょう。
PMF達成の具体事例
ここでは、2015年の創業以降、テクノロジーを活用して営業パーソンを中心に働く環境づくりを支援してきたマツリカのPMFの過程を事例としてご紹介します。
SFA/CRM領域で顧客の課題を解決したいという思いから、100社以上のさまざまな属性の顧客にヒアリング・調査を実施し、顧客のニーズを確実に掴みます。
それらを元に、「現場ファースト」思想のプロダクトを開発し、使いにくく、導入しても現場でなかなか定着しないという、既存のSFA/CRMの課題点を解決しました。
これが功を奏し、提供開始1年後には従業員数が数百名規模のSmall Marketにおいて、3年後には従業員数が数千名規模のMid MarketにおいてPMFを達成しました。
▶︎▶︎現場のことを第一に考えた、使いやすいSFA/CRMの「Mazrica Sales」の詳細はこちら
まとめ|まずはPSMからPMFを目指そう
PMFとは、自社プロダクトが市場に受け入れられている状態を言います。自社プロダクトが顧客のニーズを満たしているだけでなく、適切な市場で展開されていることも求められます。
そのため、まずはPSFの状態を目指し、次なるステップとしてPMFを目指すことをおすすめします。
ぜひ本記事で紹介した内容を参考に、自社プロダクトがPSFとPMFを達成しているか確認し、さらなるブラッシュアップを目指しましょう。
尚、PMFしたプロダクトの急成長に必要な営業戦略については、以下の資料が役に立つでしょう。