ビジネスモデルは、企業が継続的に収益を上げていくために欠かせないものです。
また、競合他社や取引先のビジネスモデルから、その企業がどのような強みを持っていてどのように収益を上げているか理解できます。
そこで本記事では、ビジネスモデルの分析に役立つフレームワークを紹介します。
また、具体的な事例も紹介しているので、ぜひご参考ください。
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この記事の内容
ビジネスモデルとは?
ビジネスモデルとは「Business=事業」「Model=型」と直訳できるように、誰に何をどのように提供して利益を生み出し、自社を成長させるのか?というビジネスの仕組みを言います。
いくら商品・サービスが優れていても、ユーザーに適切に届けられなかったり、ユーザーに価値を理解してもらえなかったりしては、自社の成長にはつながりません。
また、企業によってビジネスモデルは多岐にわたり、似たような商材でもビジネスモデルが異なれば利益にも影響します。
さらに、政府の補助金・助成金、金融機関の融資、投資家の投資などの場面でも、企業のビジネスモデルによって今後成長していくかどうか、融資や投資の対象となりえるか判断されます。
そのため、企業は優れたビジネスモデルが必要となるのです。
ビジネスモデル分析における4つの構造を理解する
ビジネスモデルは4つの要素から構成されています。
- Who:誰をターゲットとするか
- What:どのような価値を提供するか
- How:どのようにして価値を生み出すのか、どのように届けるのか
- Why:なぜ利益を生み出すことができるのか
どれか一つでも欠けていたり、相互に矛盾があったりするとうまく機能しません。この4つの構造を満たすことで、長期的に利益を生み出し成長できるビジネスモデルとなります。
ビジネスモデルを分析する際には、上記4つの構造に注目しましょう。
企業のビジネスモデル分析で使える4つのフレームワーク
ビジネスモデルを分析する際には、客観的な視点を持つことで、自社の現状や将来を広い視野で見ることができます。
そこで活用できるのがフレームワークです。
フレームワークを活用すると、客観的に情報を整理できます。分析に必要な情報を抜け・漏れなく洗い出せる点もメリットです。
そこで、ビジネスモデル分析に活用できるフレームワークを4種類紹介します。
SWOT分析
SWOT分析は、企業の現状把握に役立つフレームワークです。
自社を取り巻く環境について、以下の4つの要素から内部環境と外部環境の視点から把握します。
- Strengths:強み(内部環境)
- Weaknesses:弱み(内部環境)
- Opportunities:機会(外部環境)
- Threats:脅威(外部環境)
StrengthsとOpportunitiesはプラス要因で、WeaknessesとThreatsはマイナス要因です。プラス要因同士・マイナス要因同士で分析したり、プラス要因とマイナス要因を掛け合わせてクロス分析したりします。
- S×O:自社の強みを活かして、市場や業界の機会にどう対応するか
- S×T:自社の強みを活かして、脅威にどう立ち向かうか
- W×O:自社の弱みが、機会にどう影響するか
- W×T:自社の弱みを把握して、脅威を避ける・影響を最小限に抑える
このように、自社の現状を理解することで、自社の強み・弱みを把握した上で、市場の機会・脅威にどう対応していくか検討できます。
関連記事:SWOT分析とは?事例や分析手法をわかりやすく解説
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデル分析に必要な情報を抜け・漏れなく整理し、全体を俯瞰的に見られるフレームワークがビジネスモデルキャンバスです。
ビジネスモデルキャンバスは、以下9項目について洗い出します。
1.顧客セグメント
まずは、自社がターゲットとする顧客を定めます。
「会社員」「大企業の人事部」のように大きなくくりではなく、どのようなニーズや課題を抱えているか、どのようなライフスタイル(事業内容)か、といった内容まで詳しく掘り下げると、より顧客についての理解が深まります。
また、見込み顧客や潜在顧客まで幅広く洗い出しましょう。
関連記事:セグメンテーション(セグメント分け)とは?|事例で学ぶセグメンテーションと方法
2.提供価値
次に、自社のビジネスが顧客に対してどのような価値を提供できているか考えます。
顧客のどのような課題を解決できているか、どのようなニーズに合っているか、といった視点で考えましょう。
客観性を忘れないためにも、顧客視点で考えてみると「なぜ自社商品(サービス)にお金を払うのか」が明確になります。
関連記事:バリュープロポジションとは?6つの成功例と書き方紹介
3.チャネル/販路
自社のビジネスをどのチャネルで提供するか、どのような販路で届けるかを定めましょう。
インターネットやスマホが普及している現代では、SNSやアプリなどでも顧客に商品・サービスを提供できるようになっています。
オフラインだけでなく、オンラインにも目を向けて考えましょう。
4.顧客との関係
顧客との関係性を維持し、さらに深めていくための方法も重要です。
特に、サブスクリプション型などのストックビジネスにおいては、顧客との長期的な関係性が売上向上のポイントとなります。
顧客と過形成を維持する方法は商材によって異なりますが、たとえば「アフターサポート」や「運用支援」などが挙げられます。
5.収益の流れ
顧客に価値を提供するだけでなく、自社がその対価としてどのように収益を得るかという点も考える必要があります。
どのくらいの金額なら顧客は購入してくれるか、どのようにしたら継続して購入してくれるかを考えましょう。
また、顧客が支払いやすいような方法を考えることも重要です。たとえば「キャッシュレス決済に対応する」「送料を一律にする」などの方法があります。
6.キーリソース
ビジネスを実行する上で欠かせないリソースを洗い出します。
人材やコスト、工場やシステムなどのリソースが該当します。外注している場合は、外注先についても考える必要があるでしょう。
7.キーアクティビティ
ビジネスにおいてやらなければいけない活動も考えましょう。
生産・開発・製造・流通・販売といったサプライチェーンに当てはめて考えると、情報を整理しやすいです。
ビジネスにおけるすべてのアクティビティを洗い出すことで、特に注力しなければいけないアクティビティや、生産性を下げているアクティビティを判断できます。
8.キーパートナー
リソースやアクティビティの中で、外注や委託をしている場合はパートナーについても洗い出す必要があるでしょう。
原材料のサプライヤー、外注先、運送会社などが該当します。
9.コスト構造
ビジネスで収益を出すためには、コスト管理が重要です。どのリソースやアクティビティにどのくらいのコストがかかるか改めて考えましょう。
コストがかかりすぎている部分や、もっとコストをかけるべき部分を見極められます。
ピクト図解
ビジネスモデルをわかりやすく可視化するためには、ビジネスモデルにおける3つの重要な項目についてピクトグラムを用いて表現するピクト図解が適しています。
ピクト図解で分析する項目は、以下の3つです。
1.エレメント
まずは「エレメント」です。エレメントとは「要素」を意味し、ビジネスを進める上で重要となるプレイヤー(個人や企業)、プレイヤー間で行き来する商品・サービス、プレイヤー間で行き来するお金を書き出します。いわゆる「ヒト」「モノ」「カネ」です。
それぞれ、以下のピクトグラムで表現します。
- 個人:人間の形のシンプルなマーク
- 企業:縦長の長方形
- 商品・サービス:マル(〇)やサンカク(△)などのシンプルなマーク
- お金:¥や$
場合によっては、個人名や企業名、商品・サービスの名称、具体的な金額についても書き添えます。
2.コネクタ
次に、プレイヤー間のモノとカネの流れを矢印でつなぎます。これにより、それぞれの関係性が見えてきます。
モノの流れの場合は、先端を黒く塗りつぶして三角にした矢印が使われます。一方、カネの流れでは、矢印の先端は塗りつぶしません。
3.オプション
ピクト図解をより分かりやすくするよう、補助的にオプションも挿入します。
まとめ(中カッコ):一人のプレイヤーから複数のモノ・カネが流れている場合に中カッコで囲む
タイムライン:時間の流れを示す際に、矢印の横に「T」を書く
補足:エレメントやコネクタに補足説明をフキダシで記載する
これらのオプションによって、より直感的に理解できるピクト図解になります。
9セルフレームワーク
9セルフレームワークは、3×3のマス目に沿って9つの質問内容を埋めていくことで、ビジネスモデルを分析する方法です。
9つの質問は、以下の内容になります。
1.どんな片付けるべき用事を持った「人」か?
まずは顧客に関する質問です。
「片付けるべき用事」とは「課題」「悩み」と言い換えられるので、どのような課題を抱えている顧客か考えましょう。
2.解決策として「何」を提供するか?
顧客が抱えている課題に対し、自社ではどのように解決をサポートできるか考えます。
3.代替策との違いを「どのように」表現するか?
他の解決策との違いはどのような点か考えます。競合との差別化という視点で考え、自社が提供できる価値の優位性を見極めましょう。
4.「誰」から儲けるのか?
マネタイズポイントを考え、誰から収益を得るのか明確にします。
1つ目で挙げた顧客層だけでなく、視野を広げて考えましょう。
5.「何」で儲けるのか?
どのような商品・サービスで収益を出すか考えます。
商品やサービス自体なのか、オプションなのか、といった視点です。
6.「どのような」時間軸で儲けるのか?
時間軸に沿って、収益が生まれるプロセスを考えます。
サブスクリプションで提供する
最初は無料で提供して有料プランに移行させる
製品を提供し、オプションや関連機器のクロス販売をする
このように、さまざまな方法があります。
7.「どのような」手順でやるのか?
ビジネスを実行する手順を考えます。
顧客に商品・サービスを届けるまでのプロセスを明確にします。
8.強みは「何」か?
自社の強みを考えます。
資金力、ブランド力、技術力、ノウハウなどが該当します。
9.「誰」と組むか?
サプライヤー、外注先、代理店など、アライアンスとして組む相手を洗い出します。
ビジネスモデル理解のための2つの具体事例
ビジネスモデルの設計をより詳しく理解するために、具体的な事例を2つ紹介します。
1.不動産売買仲介のビジネスモデル
不動産売買の仲介会社は、大きく分けて「客付業者」と「元付業者」に分かれます。
客付業者とは「物件を買いたい」という顧客を対象に、最適な物件を提案して購入を仲介する仕事です。一方の元付業者は「物件を売りたい」という顧客を対象に、客付業者を通して買主に物件を売却するお手伝いをします。
どちらか一方の仲介業務しかしていない会社もあれば、どちらも自社で行っている会社もあります。
いずれの場合も、売買契約が締結されたら売主や買主から手数料を支払ってもらい収益を得るビジネスモデルになります。客付・元付どちらも行っている仲介会社は、売主・買主どちらからも仲介手数料を徴収します。
▶︎▶︎【住宅・不動産業界向け】データの力で「狙って」 受注できる強い営業組織の作り方
2.BtoB SaaS業界のビジネスモデル
BtoBのSaaS業界とは、企業向けのSaaS商材を扱うビジネスです。
一般的にはサブスクリプション型で提供されていますが、料金体系はサービスによって異なります。1ユーザーごとに料金が課される場合もあれば、1契約で複数アカウントが利用できるサービスもあります。また、機能を制限した無料プランから提供し、顧客に合わせて有料プランへとアップグレードを促すサービスも存在します。
このようにBtoBのSaaS業界はサブスクリプション型なので安定した収益が見込めるビジネスモデルですが、解約数が多くなると収益が急激に減少するリスクがあります。そのため、自社の強みや競合との差別化が重要になります。
関連記事:SaaSビジネスとSaaS営業とは?特徴や必要なスキルを紹介
ビジネスモデルの分析・作り方が学べるおすすめの本
ビジネスモデル分析についてより詳しく学びたい人は、書籍での学習も有効です。おすすめの本を3冊紹介します。
ビジネスモデルキャンバス徹底攻略ガイド
本記事でも紹介したビジネスモデルキャンバスに関する一冊。
図解や箇条書きが豊富に使われており、分かりやすいのが特徴です。
ビジネスモデルキャンバスの書き方からケーススタディまで網羅され、実践的な内容になっています。
- 書籍名:ビジネスモデル・キャンバス徹底攻略ガイド 企業、チーム、個人を成功に導く「ビジネスモデル設計書」
- 出版社:翔泳社
- 著者:今津 美樹 (著)
- 単行本:212ページ
- 備考:電子書籍版あり
ビジネスモデル2.0図鑑
実在する企業のビジネスモデルの事例を、図解で分かりやすく解説しています。
100もの事例が掲載されており、さまざまな業種や商材が網羅されているので、自社の参考になる事例が見つかるでしょう。
- 書籍名:ビジネスモデル2.0図鑑
- 出版社:KADOKAWA
- 著者:近藤 哲朗 (著)
- 単行本:256ページ
- 備考:電子書籍版あり
儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書
本記事で紹介した9セルフレームワークを生んだ川上氏の著書です。
9セルフレームワークについて詳しく書かれており、すぐにでも実践できる内容です。
- 書籍名:儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書
- 出版社:かんき出版
- 著者:川上 昌直 (著)
- 単行本:240ページ
- 備考:電子書籍版あり
終わりに
ビジネスモデルの分析は、企業が継続的に収益を得て成長していくために欠かせないものです。また、他社のビジネスモデルを分析することで、企業や業界についての理解も深まります。
しかしビジネスモデル分析は難しそうなイメージがあり、なかなか手を付けにくい人も少なくありません。
ぜひ本記事で紹介した内容を参考にして、ビジネスモデルを分析してみてください。
BtoBマーケターのためのSFA/CRM活用術
マーケティングでのSFA/CRM活用方法に関する資料です。マーケティングの役割・指標だけでなくSFA/CRM活用例についても紹介します。
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