これから部長へ昇進・転職する予定の方は、実際どのような仕事をするのか気になるのではないでしょうか。部長は現場視点だけでなく経営視点を持つ必要があるので、課長の延長線上だと思っていると後悔することになります。

今回の記事では、部長の役割や仕事について、わかりやすく説明します。

実際の仕事を知ることで、上司への理解が深まってコミュニケーションが円滑になったり、部長になるために自分に求められるスキルがわかったりするでしょう。部長になって活躍したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

部長とは?

部長は、組織内の管理職であり、部署の責任者として最終的な意思決定を担う役職です。

部長は経営層の一員として位置づけられ、経営資源を適切に活用し、組織の成長と収益向上に直接貢献することが求められます。

また、部門や部署の業務を管理し、人材スキルの管理や体制の整備を行うだけでなく、業務の改善策や新規事業の立ち上げなど、長期的な視野を持って業務を進めることも求められます。

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「ヒト・モノ・カネ」の経営資源を上手く使う

部長は、会社の経営資源を使って、事業や組織を成長させる方法(戦略)を考え、実行します。

たとえば、以下のように自らがプレイヤーとして直接利益を生み出すのではなく、成長できる仕組みや環境をつくることで、間接的に、そして広範囲に渡って組織を動かしていくことが求められます。

  • 経営方針や戦略に基づいて、どのプロジェクトにどれだけの投資をするか、年間で何人採用するかなど決定する
  • 部下を動かすことで業績をつくり、組織や部下を成長させる

将来のメシの種を創り出す

部長には、将来のメシの種を創り出す役割もあります。

会社の業務は、短期・中期・長期に分けることができます。

  • 短期:直近1カ月の目標達成や業務の進捗管理、部下支援
  • 中期:直近3カ月〜1年程度の目標達成や業務改善や業務プロセスの設計、部下育成
  • 長期:1年から3年先の戦略の立案や業務体系の構想、組織開発と能力開発

利益を出すには、短期・中期の目標を達成することが必要です。
しかし、いつまでも目先の利益を追いかけているだけでは、会社の成長は望めません。

そこで、人材を育成して一人あたりの利益を増やしたり、新しい事業を立ち上げたりと、継続して成長を続けるための戦略(いわば、メシの種)が必要になってきます。
これが、部長が担っている「長期」の業務です。

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部長と課長の違いとは

「部長と課長の違いがよくわからない」という声をよく聞きます。まず、部長の組織の中での立ち位置を整理してみましょう。

部長が経営側に位置し、会社の経営視点や外部対応に重点を置くのに対して、課長は現場管理職として現場視点やミドルマネジメントを担当する点です。

部長は戦略的な方向性を考え、組織の成長や業績拡大を実現するための経営判断をサポートします。

一方、課長は現場で部下と直接仕事をし、部署の戦略を実行し、現場のトラブル解決や教育管理に取り組みます。部長は組織のデザインやリスク管理に関与し、新しい仕事を創出することが期待されます。

役割や責任の違い

以下に部長と課長の違いをわかりやすく簡単にまとめました。

部長

 

  • 経営視点
  • 戦略を考える(進むべき方向性とシナリオを描く)
  • 間接的に部下や部門と関わり、組織を動かしたり、影響を与える
  • 意思決定力が求められる(相談できる相手がほとんどいない)
  • 部下(課長)を育成する際には気づかせる力が求められる

 

課長

 

  • 現場視点
  • 戦術を実行する(戦略を実現するために、具体的に何をすべきか考え、実行する)
  • 直接的に部下と関わり、個人に影響を与える
  • 実務遂行能力が求められる(迷った時には、部長に相談する)
  • 部下(一般社員)を育成する際には教える力が求められる

 

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関与範囲の違い

部長は会社全体の経営に関わるため、意思決定力と実行力が求められます。会社の方針に従い、組織の成長戦略やリスク管理を担当します。

一方、課長は現場で部下と直接仕事をし、現場視点やミドルマネジメントの役割を持ちながら部署の戦略を実行します。課長は部下の指導やトラブル解決に取り組み、現場の管理を行います。

部長の仕事内容

部長の業務内容は多岐にわたります。部下の育成や戦略策定、コンプライアンスやハラスメント対応に加え、プレイヤーとしての業務もこなさなければなりません。

ここでは、部長の仕事内容について詳しく解説します。

部署全体の管理

課長であれば、管理の対象は数名〜10名前後ですが、部長になると一気に、数10名〜100名近い単位になります。

全員を一人で見るのは、事実上不可能であり、課長を通じてマネジメントするのが通常です。

部長は、課長ほどは一人ひとりに細かいアプローチやフォローをする必要はありませんが、「個人」と「組織」2つの視点から考え、行動を起こすことが求められます。

部署全体を管理する際には、以下の3つが重要なポイントになります。

①モチベーションに気を配る

部署として成果を出すには、メンバー全員で協力することが必要です。個人の能力やスキルを高めることも大切ですが、それ以前に、仕事に対するモチベーションがなければ、能力を最大限に発揮することはできません。

まずは、モチベーションの変化に気づくことが第一歩です。

「どうやら、先月達成できなかったことで、みんなが落ち込んでいるようだ」など、モチベーションが下がっていることがわかれば、高める対策が必要になります。

モチベーションを高める具体的な方法は以下をご覧ください。

関連記事:営業マネジメントでマネージャーに必要な役割とスキル・5つの具体施策とは?

②目標達成を後押しする

メンバー一人ひとりの目標達成が、部署としての目標達成に繋がります。
そこで重要になるのが、目標管理です。

経営目標で掲げられた数字から、部署、チーム、個人の目標に落とし込んでいくのですが、ここでは「なぜこの目標・数字になったのか」をしっかりと伝えるようにします。

こうすることで目標の意義が理解でき、達成に向けてコミットすることができるようになります。

また、現状よりも少し背伸びをすれば達成できるくらいの目標を設定することもポイントです。

関連記事:MBO(目標管理制度)とは?メリットや目標設定の方法を解説

③全体の調整をする

部署内にはいくつかの課があり、それぞれで複数のプロジェクトが進行することになります。
そのすべての進捗を把握・管理し、遅れていたり、上手くいっていなければ軌道修正をします。

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課長や現場の教育

部下を成長させることも、部長の大切な役割の一つです。

「仕事なんだから、文句を言わずにやれ!」と言えば、仕事はするかもしれませんが、モチベーションの低下は避けられません。

部下を成長させるためには、以下の2つのことを意識して教育・育成していく必要があります。

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①仕事は適材適所で割り振る

部下の能力や性格を把握し、適材適所で仕事を割り振ることが重要です。

自身に合った仕事を割り振ってもらえれば、仕事に意欲的に取り組むことができ、自然と成長に繋がります。

②データに基づいた指示・アドバイス

上司から「俺はこのやり方で成功した」「こうやれば上手くいく」というアドバイスを受けたことがあると思います。

しかし、経験談で話されても「今は時代が違う」と思ってしまったり、押し付けられるだけでは納得できないことも多いでしょう。

そこで有効なのが、データドリブンな指導をすることです。データドリブンとは、データをもとに判断・アクションをしていくことです。

データを指導に活かすには、以下のステップを踏んでいきます。

▼Step.1 目標を設定する

目指すべき人物像や理想の数字を基準に、部下一人ひとりの目標を設定します。

▼Step.2 目標と実績を比較する

定期的に(月ごとや3ヶ月ごとなど)、設定した目標と実績の比較をします。

▼Step.3 改善する

Step.2で到達できていない目標について、「達成できなかった理由」と「どうすれば達成できるのか」の仮説を考え、次の期に実行させます。

つまり、課題となっているところを見つけ、改善していくことで、部下の成長に繋げていくというわけです。

ちなみに、教育や指導をする対象が経験のあるメンバーの場合は、Step.3の部分をアレンジします。

あえて課題や具体的な手段を示さずに相手に考えさせることで、何が課題かに気づく力や、解決する力を育てることができます。

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関連記事:データドリブン営業とは?データドリブンセールスパーソンの育成方法!

対外的な仕事

部長は部署の経営者、いわば最高責任者です。

発言したことや行動に対する影響は全社に及び、社外・社内の別部署・経営層など、自署以外の「対外的な」矢面に立たされることになります。

行っているプロジェクトやメンバーについての説明責任があることはもちろん、他部署と利益相反する場合には交渉もしなくてはなりません。

また、問題が発生した場合には、謝罪や問題解決をすることが求められます。自らの判断だけでなく、部下が行う全ての行動に対して責任を持つ必要があります。

経営戦略の実行と部署への浸透

部長は「部署としていかに会社に貢献していくか」だけでなく「経営戦略に沿って新しい価値、事業、仕事を創り出す」ことを意識する必要があります。

ただし、自分だけが意識していればいいわけではありません。

課長や部署のメンバーに、会社のビジョンや目的、仕事をする意義を理解してもらうことで、目標達成へと意識が向かい、チームワークが醸成され、会社全体の成長や成果に繋げることができるようになります。

関連記事:経営戦略とは?作り方・種類・事例・フレームワークを紹介!

部下のキャリア支援

部長の仕事には、部下のキャリアを考慮し、本人と組織の双方にとってプラスとなるような役割や仕事の采配を行うことも含まれます。

現在の役割や仕事を踏まえ、部下が今後どのようなキャリアを積んでいきたいのかを理解し、そのためにどのようなキャリアパスが適切かを考えます。

重要なのは、部下のキャリアに対する考え方や価値観を尊重しつつ、組織全体のパフォーマンスを向上させる方向性を見出し、それを実行していくことです。

部下の評価

給料や昇進などに関わる「評価」は、部下にとって最大の関心事の一つです。

適正な評価をするには、顧客との商談や社内でのコミュニケーション、仕事の取り組み方、モチベーション、成績など、日常的に部下の行動を観察する必要があります。

しかし、数10名もの部下の行動を逐一、見ていることはできません。

なお、営業パーソンの適切な評価方法については以下の記事で詳しく説明しています。

関連記事:営業パーソンの適切な評価とは?営業力を向上させる評価基準・評価項目を解説

そこでここでは、どんな行動を取っている部下を評価すべきなのか、3つのポイントを紹介します。

①自分の役割を果たそうとしている

自分にはどんな役割が求められていて、会社にどんな影響を与えられるのかという意識があるメンバーは、指示を出さなくても率先して仕事に取り組んでくれます。

②会社が社会に提供している価値を考えながら仕事をしている

目先の目標達成だけでなく、自社が社会に対してどんな価値を提供しているのか、どのように利益を得ているのかまで考えられるのは、経営者の視点を持っていると言えます。

③スキルアップのための努力をしているか

仕事の合間や休憩時間などに、資格取得に向けた勉強をしたり、社内の資料を読んで知識を得ようとするなど、自ら成長しようとする姿勢があるかどうかで、のびしろの大きさを見ることができます。

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リスク管理

部長は数10〜100人を管理するため、ミスはつきもの。課長と適宜連携を図りつつ、業務やルールの可視化・周知、罰則の明確化などを行って、ミスが起こらないような仕組みを構築します。

部長は部署の責任を負う必要があるので、リスクに対する危機感を持っておかなければなりません。トラブルが発生したときには指示を出し、現場が混乱しないように統率する必要があります。

部長に求められる能力・スキル

部長の役割や業務内容がわかったところで、具体的にどのような能力・スキルが必要なのかわからない方もいるでしょう。

ここでは、部長に求められるスキルについて解説します。

業務マネジメント能力

部長にはビジョンや目標を明確にし、業務達成のためのプロセスを設計するスキルが求められます。

実際の業務では、PDCAサイクルを回すための資源配分も行います。PDCAサイクルは、「Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)」のことで、このプロセスの中で誰がどのくらいの資源を使って業務を行うのかを考えます。

また、部署メンバーが同じ方向性に進めるように目標を設定し、働きやすい環境を作ることも重要です。

業務に関しては、部下一人ひとりの進捗状況や成長具合を見守るとともに、部署全体を俯瞰して見る視点も必要です。

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リスクマネジメント能力

数10〜100人のチームで仕事をするにあたって、ミスが起きることもあるでしょう。そのため、部下にリスクを周知することや、起きたときにどうすればいいのか事前に教育しておく必要があります。

トラブル後の対応も重要ですが、部下にトラブルのリスクを事前に察知できるよう教育することも大切です。

部長自身が率先してコンプライアンス意識を高め、部署で発生し得るあらゆるリスクを洗い出すよう努めるべきです。

人材マネジメント能力

人材マネジメントは、優秀な人材を確保し、育成し、適材適所に配置することで、組織の発展を支える重要な役割を担っています。

この中で、管理職としての部長には、特に部下の育成と公正な評価が求められます。

大規模な組織においては、部長は直属の課長陣の育成に尽力する必要があります。課長候補者を慎重に選定し、将来の管理職としてトレーニングの機会を設け、計画的に育成を行う必要があります。

また、部下一人ひとりの実力を適切に評価し、個人の成長を後押ししていくことが重要です。

年度末には、昇進・昇格への評価を下すことになるため、部長には日頃から部下の具体的な行動を注視し、冷静な判断力が求められます。

営業の行動履歴の蓄積やナレッジ共有に役立つ、SFA(営業支援ツール)に関する記事はこちら:

コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルは概念化能力とも言われ、物事の本質を見極めることで個人やチームの能力を最大限引き出すスキルのことです。

部長は課長と異なり多くの階層をマネジメントすることになります。定量的な数字だけでなく、戦略や市場の変化など抽象的な情報をリサーチする必要もあり、物事の本質を見極める能力が不可欠です。

▶▶【営業部長・マネージャー必見】営業部長が実践している情報リサーチ/他社交流の秘訣とは?

 ヒューマンスキル

スキルだけでなく人間性もよくないといけません。ヒューマンスキルがあれば部下とも経営層とも良好な関係を築け、仕事をしやすい雰囲気の組織を作れます。結果として会社の業績アップにもつながるでしょう。

具体的には、周りの意見を聞くことや、相手の目線に立って物事を考えることが求められます。

まとめ|営業部長・経営層向けが取り組むべき営業改革

部長の役割と仕事についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

意外とたくさんの業務をしていて、どれもが難しい判断を伴い、会社にとって重要な仕事であることが、お分かりいただけたと思います。

この記事をお読みいただいたことで、部長を目指したり、部長自身が自らの仕事の意義を見直すなど、みなさんにとっていい変化を起こすきっかけになれば嬉しいです。

部署内や社内の目標達成率を向上させていくには、部長や経営層が先頭に立って改革を進めていくほかありません。

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Mazrica Business Lab.はクラウドアプリケーションMazricaの開発・提供を展開する株式会社マツリカが運営するオウンドメディアです。営業・マーケティングに関するノウハウを中心に、ビジネスに関するお役立ち情報を発信しています。

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