これから部長へ昇進・転職する予定の方は、実際どのような仕事をするのか気になるのではないでしょうか。部長は現場視点だけでなく経営視点を持つ必要があるので、課長の延長線上だと思っていると後悔することになります。

今回の記事では、部長の役割や仕事について、わかりやすく説明します。

実際の仕事を知ることで、上司への理解が深まってコミュニケーションが円滑になったり、部長になるために自分に求められるスキルがわかったりするでしょう。部長になって活躍したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

部長とは?

部長とは、組織内の管理職であり、部署の責任者として最終的な意思決定を担う役職です。

部長は経営層の一員として位置づけられ、経営資源を適切に活用し、組織の成長と収益向上に直接貢献することが求められます。

また、部門や部署の業務を管理し、人材スキルの管理や体制の整備を行うだけでなく、業務の改善策や新規事業の立ち上げなど、長期的な視野を持って業務を進める役割も担います。

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部長が抱える課題と対策方法

次に、部長が抱える課題と、課題が生じる背景について紹介し、その対策方法まで解説します。

OJTの限界

日本の人材育成は従来、OJTや研修を中心に行われてきましたが、スキルが多様化した現代では、上司が全ての必要スキルを持ち合わせているとは限りません。

そのため、部下は自ら学ぶ姿勢が求められる一方で、日本では自主学習に取り組む人の割合が低い現状があります。 このため、部下が育たないという課題が生じています。

部長には、部下を一方的に育てようとするのではなく、部下自身が主体的に学び成長できる環境を整えることが求められます。コーチングやキャリア支援を通じて、内発的動機を引き出し、主体性を促進する取り組みが必要です。

プロセスが見えにくい

「部下の人事評価が難しい」という課題の背景には、新しい働き方によるプロセスの見えにくさが影響しています。

リモートワークが広がる中、部下の取り組み方や努力の過程が把握しづらくなり、結果を基準とした評価が増加しています。 数値で成果が測れる業務であれば評価が容易ですが、そうでない部署では業務のアウトプットだけでは正当な評価が難しい場合もあります。

部長には、リモート環境でもプロセスを可視化する仕組みや、新しい評価基準の導入が求められます。

人手不足と業務量の増加

「業務量が多すぎる」という悩みは、社会の急速な変化に対応する必要性と、労働人口の減少が主な原因です。

デジタル化、SDGs、グリーントランスフォーメーション(GX)など新たな課題が次々と現れる中、人材不足により、社内異動で対応せざるを得ない状況が続いています。

その結果、残されたメンバーに過重な負担がかかり、業務量が増大しています。加えて、生産性の低さもこの問題を悪化させています。

部長には、自身と部下の業務を分類し、完全に任せられる業務を増やすための育成を進める必要があります。 また、業務の棚卸しや効率化を図り、増え続ける課題に組織として対応できる体制を整えることが求められます。

こうした取り組みを通じて、課題を解決し、組織全体の持続的な成長を支えることが部長の役割といえるでしょう。

部長の役割・業務内容

部長の業務内容は多岐にわたります。部下の育成や戦略策定、コンプライアンスやハラスメント対応に加え、プレイヤーとしての業務もこなさなければなりません。

ここでは、部長の仕事内容について詳しく解説します。

部署全体の管理

部長職では、課長時代と異なり数十名から100名規模の部下を管理することが求められます。一人で全員を直接見ることは現実的ではなく、課長を通じた間接的なマネジメントが基本です。

部長には「個人」と「組織」の両面からの視点が必要であり、特にモチベーション管理、目標達成の支援、全体の調整が重要となります。

まず、モチベーションの変化に気を配ることが不可欠です。メンバーが意欲を失っていれば、能力を発揮することは難しくなります。

変化を見逃さず、適切な対策を講じることで士気を高め、成果につなげることができます。また、部署全体の目標をメンバーの目標に分解し、その意義を

しっかり伝えることで、個々が目標達成に向けて積極的に取り組む姿勢を引き出すことが可能です。無理のない範囲で挑戦的な目標を設定することも、達成感や成長を促すポイントです。

さらに、複数の課やプロジェクトが進行する中で、全体の状況を把握し、進捗が遅れている場合や課題が発生している場合には速やかに軌道修正を行う役割も重要です。

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課長や現場の教育

部長として部下を成長させることは、組織全体の成果を高める上で欠かせない役割の一つです。

ただ単に「仕事だからやれ」と指示を出しても、短期的には動くかもしれませんが、モチベーションを損なう可能性が高く、長期的な成長にはつながりません。部下を育成するためには、仕事の割り振り方と指導方法に工夫が必要です。

まず、部下の能力や性格を正確に把握し、適材適所で仕事を割り振ることが重要です。自身に合った仕事を任されると、部下は意欲的に取り組むようになり、そのプロセスで自然とスキルや知識が向上します。逆に、不向きな仕事ばかり与えると、成果が出ず、意欲の低下につながることがあります。適切な仕事の配分は、成長への第一歩です。

次に、データに基づいた指導を行うことが効果的です。経験談だけで指導する場合、「時代が違う」「押し付けられている」と感じる部下も多いかもしれません。

しかし、データを活用すれば、客観的な根拠をもとに指導できるため、部下の納得感を高めることができます。

具体的には、目標を明確に設定し、定期的に目標と実績を比較することで、課題を洗い出し、改善案を考えるサイクルを回します。このプロセスを繰り返すことで、部下の成長を促すことができます。

また、経験豊富なメンバーに対しては、具体的な課題や解決策を示すのではなく、あえて自分で考えさせるアプローチも有効です。自ら課題を発見し、解決策を導き出す力を育てることで、さらに主体的に行動できる人材へと成長します。

部下を成長させるには、適切な仕事の割り振りとデータを活用した指導、そして個々の経験やスキルに応じた柔軟な対応が欠かせません。これらを意識的に実践することで、部下が意欲を持って働き、組織全体のパフォーマンスが向上していくでしょう。

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対外的な仕事

部長は部署の経営者、いわば最高責任者です。

発言したことや行動に対する影響は全社に及び、社外・社内の別部署・経営層など、自署以外の「対外的な」矢面に立たされることになります。

行っているプロジェクトやメンバーについての説明責任があることはもちろん、他部署と利益相反する場合には交渉もしなくてはなりません。

また、問題が発生した場合には、謝罪や問題解決をすることが求められます。自らの判断だけでなく、部下が行う全ての行動に対して責任を持つ必要があります。

経営戦略の実行と部署への浸透

部長は「部署としていかに会社に貢献していくか」だけでなく「経営戦略に沿って新しい価値、事業、仕事を創り出す」ことを意識する必要があります。

ただし、自分だけが意識していればいいわけではありません。

課長や部署のメンバーに、会社のビジョンや目的、仕事をする意義を理解してもらうことで、目標達成へと意識が向かい、チームワークが醸成され、会社全体の成長や成果に繋げることができるようになります。

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部下のキャリア支援

部長の仕事には、部下のキャリアを考慮し、本人と組織の双方にとってプラスとなるような役割や仕事の采配を行うことも含まれます。

現在の役割や仕事を踏まえ、部下が今後どのようなキャリアを積んでいきたいのかを理解し、そのためにどのようなキャリアパスが適切かを考えます。

重要なのは、部下のキャリアに対する考え方や価値観を尊重しつつ、組織全体のパフォーマンスを向上させる方向性を見出し、それを実行していくことです。

部下の評価

部下にとって、給料や昇進に直結する「評価」は非常に大きな関心事です。一方で、適切な評価を行うためには、部下の日々の行動をしっかり観察し、商談や社内でのコミュニケーション、仕事への取り組み方、モチベーション、成績など、幅広い視点から判断する必要があります。

しかし、数十名規模の部下全員の行動を細かく把握することは現実的ではありません。

そこで、評価すべきポイントを絞り込み、部下の成長や貢献度を正当に判断することが重要です。

まず、自分の役割をしっかりと理解し、それを果たそうとする姿勢を持つ部下は評価に値します。このような部下は、指示がなくても自主的に行動し、チームや会社に対して積極的な貢献をすることが期待できます。

次に、自社が社会に提供している価値を意識しながら働ける部下も評価すべきです。単なる目標達成だけでなく、自社のビジネスモデルや社会的な役割を

理解し、それに基づいて行動する部下は、経営者視点を持つ将来性のある人材と言えます。さらに、スキルアップのために自発的な努力をしているかどうかも重要な評価基準です。

例えば、資格取得を目指した勉強や社内資料を活用した自己学習に取り組む姿勢は、成長意欲の現れです。このような部下は、スキルや知識を磨き続けることで、将来的に会社により大きな貢献をする可能性を秘めています。

関連記事:営業パーソンの適切な評価とは?営業力を向上させる評価基準・評価項目を解説

リスク管理

部長は数10〜100人を管理するため、ミスはつきものです。課長と適宜連携を図りつつ、業務やルールの可視化・周知、罰則の明確化などを行って、ミスが起こらないような仕組みを構築します。

部長は部署の責任を負う必要があるので、リスクに対する危機感を持っておかなければなりません。トラブルが発生したときには指示を出し、現場が混乱しないように統率する必要があります。

部長と課長の違いとは

「部長と課長の違いがよくわからない」という声をよく聞きます。まず、部長の組織の中での立ち位置を整理してみましょう。

部長が経営側に位置し、会社の経営視点や外部対応に重点を置くのに対して、課長は現場管理職として現場視点やミドルマネジメントを担当する点です。

部長は戦略的な方向性を考え、組織の成長や業績拡大を実現するための経営判断をサポートします。

一方、課長は現場で部下と直接仕事をし、部署の戦略を実行し、現場のトラブル解決や教育管理に取り組みます。部長は組織のデザインやリスク管理に関与し、新しい仕事を創出することが期待されます。

役割や責任の違い

以下に部長と課長の違いをわかりやすく簡単にまとめました。

部長

 

  • 経営視点
  • 戦略を考える(進むべき方向性とシナリオを描く)
  • 間接的に部下や部門と関わり、組織を動かしたり、影響を与える
  • 意思決定力が求められる(相談できる相手がほとんどいない)
  • 部下(課長)を育成する際には気づかせる力が求められる

 

課長

 

  • 現場視点
  • 戦術を実行する(戦略を実現するために、具体的に何をすべきか考え、実行する)
  • 直接的に部下と関わり、個人に影響を与える
  • 実務遂行能力が求められる(迷った時には、部長に相談する)
  • 部下(一般社員)を育成する際には教える力が求められる

 

関与範囲の違い

部長は会社全体の経営に関わるため、意思決定力と実行力が求められます。会社の方針に従い、組織の成長戦略やリスク管理を担当します。

一方、課長は現場で部下と直接仕事をし、現場視点やミドルマネジメントの役割を持ちながら部署の戦略を実行します。課長は部下の指導やトラブル解決に取り組み、現場の管理を行います。

部長に求められる能力・スキル

部長の役割や業務内容がわかったところで、具体的にどのような能力・スキルが必要なのかわからない方もいるでしょう。

ここでは、部長に求められるスキルについて解説します。

関連記事:マネジメント能力とは?7つのスキルと能力を高める方法

業務マネジメント能力

部長にはビジョンや目標を明確にし、業務達成のためのプロセスを設計するスキルが求められます。

実際の業務では、PDCAサイクルを回すための資源配分も行います。PDCAサイクルは、「Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)」のことで、このプロセスの中で誰がどのくらいの資源を使って業務を行うのかを考えます。

また、部署メンバーが同じ方向性に進めるように目標を設定し、働きやすい環境を作ることも重要です。

業務に関しては、部下一人ひとりの進捗状況や成長具合を見守るとともに、部署全体を俯瞰して見る視点も必要です。

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リスクマネジメント能力

数10〜100人のチームで仕事をするにあたって、ミスが起きることもあるでしょう。そのため、部下にリスクを周知することや、起きたときにどうすればいいのか事前に教育しておく必要があります。

トラブル後の対応も重要ですが、部下にトラブルのリスクを事前に察知できるよう教育することも大切です。

部長自身が率先してコンプライアンス意識を高め、部署で発生し得るあらゆるリスクを洗い出すよう努めるべきです。

人材マネジメント能力

人材マネジメントは、優秀な人材を確保し、育成し、適材適所に配置することで、組織の発展を支える重要な役割を担っています。

この中で、管理職としての部長には、特に部下の育成と公正な評価が求められます。

大規模な組織においては、部長は直属の課長陣の育成に尽力する必要があります。課長候補者を慎重に選定し、将来の管理職としてトレーニングの機会を設け、計画的に育成を行う必要があります。

また、部下一人ひとりの実力を適切に評価し、個人の成長を後押ししていくことが重要です。

年度末には、昇進・昇格への評価を下すことになるため、部長には日頃から部下の具体的な行動を注視し、冷静な判断力が求められます。

関連記事:人材マネジメントとは?パフォーマンス最大化・最適化の「4つのポイント」

コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルは概念化能力とも言われ、物事の本質を見極めることで個人やチームの能力を最大限引き出すスキルのことです。

部長は課長と異なり多くの階層をマネジメントすることになります。定量的な数字だけでなく、戦略や市場の変化など抽象的な情報をリサーチする必要もあり、物事の本質を見極める能力が不可欠です。

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 ヒューマンスキル

スキルだけでなく人間性もよくないといけません。ヒューマンスキルがあれば部下とも経営層とも良好な関係を築け、仕事をしやすい雰囲気の組織を作れます。結果として会社の業績アップにもつながるでしょう。

具体的には、周りの意見を聞くことや、相手の目線に立って物事を考えることが求められます。

次期部長の育成のポイント

次期部長候補である課長やその他メンバーの育成は、現在の部長にとって重要な仕事です。以下のポイントを押さえ、効果的に育成を進めましょう。

役割の違いを理解させる

部長と課長の役割や責任、求められるスキルの違いを明確にし、部下に理解させることが育成の第一歩です。 部長に求められる役割について、部下自身に考えさせることで、理解が深まり、自発的な成長を促せます。

経営の視点を持たせる

部長は経営陣の一員として、組織全体を俯瞰し、長期的な視点で物事を判断する力が求められます。 部下には、部長の視点や考え方を共有し、業績向上や企業価値の向上について主体的に考える姿勢を養うよう働きかけましょう。

目標と目指すべき姿を明確にする

明確な目標やゴールを設定し、部下が成長の方向性を見失わないようにします。 目標が不明確だと、部下は努力の方向を見失い、モチベーションの低下を招く可能性があります。定期的に目標や期待を共有し、部下の成長をサポートしましょう。

育成効果の評価とフォローを行う

定期的な評価とアフターフォローは、部下の成長を実感させる上で重要です。 月1回の面談などを通じて、部下の進捗を客観的に評価し、成長を確認させることで、モチベーションを高めましょう。

外部研修を活用する

外部研修を利用することで、部下の育成を効率的に行うことができます。 外部の専門家による研修で、経営に必要な知識や最新のトレンドを学ぶ機会を提供し、部下の成長を促進しましょう。

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まとめ|営業部長・経営層向けが取り組むべき営業改革

部長の役割と仕事についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

たくさんの業務をしていて、どれもが難しい判断を伴い、会社にとって重要な仕事であることが、お分かりいただけたと思います。

部署内や社内の目標達成率を向上させていくには、部長や経営層が先頭に立って改革を進めていくほかありません。

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