経営に関わる方は「経営戦略」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。企業経営の上で重要なものだとは理解していながら、具体的にどのようなものなのか、どのように立案するのか、わかっていない方も少なくありません。

本記事では「経営戦略を立てたい」「今の経営戦略で良いのかわからない」という方に向け、経営戦略の概要から立案方法、経営戦略策定に役立つフレームワークを紹介します。

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経営戦略とは?

「経営戦略」という言葉はよく使っていても、詳しい意味をいまいち理解できていない方も多いのではないでしょうか。そこで、まずは経営戦略の定義と目的を解説し、経営戦略の意味を理解しましょう。

経営戦略の定義

経営戦略とは、企業が事業目的を達成するための方針や方策を指します。

経営戦略は具体的な一つひとつの施策ではなく、中長期的に見た全体的な方向性です。経営戦略がなければ、企業は軸がない状態なので、進むべき方向を見誤る恐れもあるでしょう。

そのため、優れた経営戦略が必要となるのです。

経営戦略の目的

企業の経営戦略の目的は、限られた経営リソース(ヒト・モノ・カネ・情報)を最適に活用し、事業を推進することにあります。自社の強みと弱みを把握し、リソースを配分し、優先順位を定めることが重要です。

現代では、多くの企業が同じような目標を持ち、競合が激化しています。豊富な商品やサービスが存在する中で、他社に勝つためには差別化が必要です。

経営戦略は、企業が進むべき方向を定め、他社との差別化を図りながら競争優位性を確立する手段となります。

経営戦略の存在は、企業が目標を達成する方向性を示し、競争環境において優位性を築くための枠組みを提供します。

営業・販売・マーケティングなど、現場の目的に合わせて目標を達成するための戦略を立案することも重要です。以下の記事も併せてご覧ください。

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経営「戦略」と「戦術」の違い

経営戦略と同じように、よく耳にする用語が「経営戦術」です。

「略」という言葉には「はかりごと」「知恵」などの意味があるため、戦略とはもともと「戦のはかりごと」という意味です。

一方、「術」には「方法」「手段」といった意味があり、戦術とは「戦うための方法」と言い換えられます。

つまり、全体的な方針である「経営戦略」を実現するための具体的な手段が「経営戦術」と言えます。

経営戦略により中長期的に事業目標へのシナリオを作り、具体的なタスクとして短期的な経営戦術を定めていくとイメージすると良いでしょう。

経営戦略の3つのレベル

経営戦略は、企業を成り立たせる要素によって3つの戦略に分けられます。具体的には、以下の3つです。

  • 企業戦略
  • 事業戦略
  • 機能別戦略

全体を包括する企業戦略を軸とし、事業を成長させるための事業戦略があり、事業を推進するための機能別戦略があります。企業戦略→事業戦略→機能別戦略という階層のイメージです。

1. 企業戦略

企業戦略とは「全社戦略」とも言い、企業全体の経営戦略です。

どのような事業を運営し、どのように経営リソースを分配するか。自社はどのようなビジョンを目指し、どのように差別化を図るか。といった、中長期的な視点での経営戦略が企業戦略になります。

2. 事業戦略

事業戦略は、企業戦略の下に位置し、事業ごとの経営戦略です。企業戦略に則って、それぞれの事業の進むべき方向性を定めます。

事業戦略は、どのような商品・サービスを作るのか、どういった価値を提供するのか、どのように収益を得るのか、といった視点で立案します。

特に、多角的に事業を展開している企業は、一つひとつの事業ごとに戦略を定めなければ、優先度を見誤ったり経営リソースを適正に分配できなくなったりする可能性があります。

そのため、事業ごとの経営戦略を立てて、事業の方向性を定めましょう。

事業のDX戦略を立案する際は、こちらの記事が役に立つでしょう。
関連記事:DX戦略とは?戦略立案・推進の4つのポイントとDX化の成功事例を紹介!

3. 機能別戦略

機能別戦略とは、事業を推進していくために、社内機能ごとに立案する経営戦略です。

たとえば「商品企画」「開発」「マーケティング」「営業」「物流」「総務」などの機能に分け、それぞれの機能がどのような領域を担当するのか、どのようにリソースを分配するのか、どのように事業に影響を与えるのか、といった内容を考えます。

経営戦略の作り方

「経営戦略を見直そう」「経営戦略を立ててみよう」と思っても、どのように進めたら良いかわからない方も少なくありません。そこで、経営戦略を策定する手順を解説します。

経営理念・ビジョンの明確化

まずは、自社の経営理念とビジョンを明確化します。

経営理念とは、企業活動において根本となる考え方や信念のことを指します。そしてビジョンとは、経営理念を基盤として、具体的にどのような企業になりたいのかという未来像のことです。

経営理念とビジョンは、経営戦略を策定するにあたって土台となります。まずはこの2つを明確に打ち出し、自社の土台を作りましょう。

現状分析

次は、自社の現状を分析します。経営理念に従っているか、ビジョンに近づいているかを、客観的に分析しましょう。

分析する際には、自社を取り巻く外部環境分析と、自社内についての内部環境分析を行います。社内外に視野を広げると、今まで見えていなかったことも見えてくるでしょう。

また、フレームワークを活用すると、客観的に現状を分析できます。分析に役立つフレームワークは次章で紹介しているので、ぜひご参考ください。

▶▶経営戦略の現状分析に必要なSFA/CRMツールとは?

戦略の策定

自社の現状を踏まえ、目標を達成するためにどのような方向を目指すべきかを定めます。

とは言え、いざ戦略を策定するとなると、数パターンの方向性が見えてくる場合もあります。そのときは、戦略を実行した際に予想される結果を仮説立てたり、自社の経営リソースがどれだけあるか洗い出したりすることで、優先すべき方向性が定まるでしょう。

また、経営戦略が適切に推進されているかどうかを判断するため、測定できる指標も設定することをおすすめします。売上や市場シェアなどの定量的な指標を設定しておくと、どのくらい目標に近づいているか判断できます。

戦略の実行

策定した経営戦略を実行していきます。

先述の通り、戦略を実行するための手段が戦術となるので、経営戦略を基にして経営戦術を策定して実行しましょう。

場合によっては複数の戦術を並行しながら進め、経営戦略を推進します。

戦略の振り返り

経営戦略を立てたからと言って、必ずしもその戦略が自社にとっての正解であるかはわかりません。目標へと進んでいるか定期的に振り返り、自社にとって適している戦略か判断する必要があります。

「経営戦略の策定」の際に設定している定量的な指標を基に、経営戦略が推進できているか、成果を測りましょう。

経営戦略の策定に役立つ7つのフレームワーク

経営戦略の策定をどのように進めたら良いかわからない方は、フレームワークを活用しましょう。型にはめて考えることで、抜け・漏れなく、かつ客観的に分析できます。

現状分析や経営戦略策定などに役立つフレームワークを7種類紹介します。

売上分析に役立つフレームワークについての記事もぜひ併せてご覧ください。

関連記事:売上分析に使える7つの手法・フレームワークと分析ツールを紹介!

①SWOT分析

SWOT分析は、自社の外部環境と内部環境を分析する際に活用できるフレームワークです。

SWOTとは、分析する各項目の頭文字から取っています。

  • Strength:強み(内部環境)
  • Weakness:弱み(内部環境)
  • Opportunity:機会(外部環境)
  • Threat:脅威(外部環境)

各項目を独立させて分析するだけでなく、「強み×機会」「弱み×機会」「強み×脅威」「弱み×脅威」といった
クロス分析することで、より自社について深く理解できます。

関連記事:SWOT分析とは?事例や分析手法をわかりやすく解説

②3C分析

3C分析は、以下3つの要素を分析して、自社の現状を把握するフレームワークです。

  • Customer:顧客・市場
  • Company:自社
  • Competitor:競合

分析対象が3つの要素のみなので手軽に実施できるフレームワークですが、各要素を深掘りして分析することで、客観的に現状を把握できます。

③VRIO分析

VRIO分析は、自社の経営資源の観点から分析できるため、経営戦略の立案に役立つフレームワークです。

自社の経営資源を以下の4つの項目に沿って「YES」か「NO」で分析します。

  • Value:経済的価値
  • Rarity:希少性
  • Inimitability:模倣困難性
  • Organization:組織

すべての項目において「YES」であれば、その経営資源は自社にとっての強みと言えます。逆に「NO」が多ければ弱みとなりえるため、改善が必要です

④4P分析

4P分析は、自社商材の販売戦略を考える際に活用できます。

  • Product:製品・サービス
  • Price:価格
  • Place:販売場所・チャネル
  • Promotion:販促活動

どの製品・サービスを、どのくらいの価格で、どのチャネルにて、どのように販売するか考える際に活用するフレームワークで、マーケティングにおいてよく使われています。

⑤ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、自社を取り巻く5つのForce=脅威について分析する手法です。

  • 競合他社の脅威
  • 新規参入の脅威
  • 代替品の脅威
  • 売り手の交渉力の脅威
  • 買い手の交渉力の脅威

上記5つの要因を分析し、自社を取り巻く外的環境を把握して自社の立ち位置を明確にします。

⑥PEST分析

経営戦略を立案する際には、自社の業界や市場だけでなく、さらに広い視野で外部環境を分析しなければなりません。そこで役立つのがPEST分析です。

PEST分析とは、以下の4項目からマクロの外部環境要因を分析するフレームワークです。

  • 政治的要因(Politics)
    市場競争の基盤である「市場競争の規則」そのものに変化をもたらす。
    (例: 法律、政府および関連組織の動向、消費者保護、公正競争など)
  • 経済的要因(Economy)
    収益に直結技術的する「価値連鎖」に影響を及ぼす。
    (例:景気、価格変動、貯蓄率、為替、金利など)
  • 社会的要因(Society)
    売上の根幹となる消費者の需要構造に影響を与える。
    (例: 宗教、価値観、倫理観・社会規範、世論、教育レベル、習俗習慣、ライフスタイルなど)
  • 技術的要因(Technology)
    市場競争の主要成功要因(KSF)を変容させる。
    (例: 技術革新、特許、技術のライフサイクル、生産・商品化技術、代替技術など)

自社ではコントロールできない外部要因を分析することで、将来の予測が立てやすくなるでしょう。

⑦STP分析

STP分析とは、以下の4要素を分析してマーケティングに役立てる手法です。

  • Segmentationセグメンテーション):顧客属性(性別・年齢・職業など)や住んでいるエリア、ライフスタイルなどを基準に市場を細分化する
  • Targetingターゲティング):細分化したそれぞれの市場を事業性や成長性などからニーズを評価し、自社の商品・サービスを売り込むべきセグメントを絞る
  • Positioningポジショニング):ターゲットセグメントにとって、競合他社には取って代われない立ち位置を決める

市場や顧客をセグメント(まとまりで区切る)し、自社がターゲットとする層を見極め、市場の中で立ち位置を確立するためのフレームワークです。

経営戦略の策定に成功した企業の具体事例

実際に経営戦略を策定し、売り上げ拡大に成功した企業の事例を紹介します。

株式会社ファーストリテイリング【ユニクロ】

カジュアル衣料品ブランドとして有名なファーストリテイリング(ユニクロ)は、高品質と低価格を両立させるため、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略に重きを置いた経営戦略を策定しています。

具体的には、SPA(製造小売業:開発から販売までをすべて手掛ける)というビジネスモデルを採用することで、自社オリジナルの衣料品を低価格で売り出すことに成功しました。

また、ユニクロはシンプルで機能性に特化したデザインに特徴があり、他社との差別化に成功しています。シーズンごとにアップデートはしており、流行は取り入れつつも、「ユニクロらしさ」に割り切っている点が、ユニクロの強さを表す経営戦略だといえます。

株式会社小松製作所【コマツ】

株式会社小松製作所、通称コマツは、アメリカ・ キャピタラー社に次ぐ売上世界第2位の建設機械メーカーとして広く知られています。

コマツは世界各地に生産・販売拠点を設置しており、現在の売上の9割が海外市場経由であるということからもわかるように、日本でもいち早くグローバルに着手した経営戦略に特徴があります。

具体的な戦略として、商品の需要地で生産することを基本方針とし、開発機能を持つ「マザー工場」が海外の「チャイルド工場」に対して安全・品質・コスト・納期の責任を持つ「マザー工場体制」を採っています。

このような生産体制を通して、顧客や地域社会に密着しつつグローバルに事業を展開することに成功しました。

また、QC活動(Quality Control)という、社員の現場力・コミュニケーション力・リーダーシップ力を高める場をグローバルに展開することで、コマツ行動理念である「コマツウェイ」を広く共有し、コマツの卓越した品質や信頼性、生産性を成長させ続けています。

グロ―バルに拡大しながらも品質管理や人材育成に徹底して取り組むことで、広く深い信頼に根付いた企業経営を実現しているのです。

▶▶経営戦略の策定に成功するSFA/CRMツールとは?

終わりに

経営戦略は、企業の軸や土台となるものです。優れた経営戦略があれば、優れた経営戦術にもつながり、大きな成果が期待できるでしょう。

経営戦略を立案する際には、本記事で紹介したように、現状を把握した上で経営戦略を立案する必要があります。また成果につながっているか判断するため、定期的な振り返りも行いましょう。

ぜひ本記事を、自社の経営戦略立案にお役立てください。

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