タスク管理は、チームの成果や生産性を大きく左右する重要なスキルです。
しかし、部下がタスク管理を苦手としている場合、上司として適切な指導・サポートが求められます。本記事では、タスク管理が苦手な部下の特徴や問題点、指導の際のポイント・注意点について解説します。
この記事の内容
タスク管理が苦手な部下の特徴
タスク管理が苦手な部下には、いくつかの共通する特徴があります。
しかし、仕事を円滑に進めるためには、タスク管理は必須です。適切な指導・支援を行うために、部下の特徴について解説します。
目先のタスクに気を取られてしまう
タスク管理が苦手な部下は、業務の全体像を理解できず、思いつくままに作業をしてしまいがちです。仕事をひとつの塊として認識してしまうため、気持ちも焦りがちになるでしょう。
与えられた仕事を細分化し、段取りを組み立てるスキルが不足しているため、周りの社員は「要領が悪い」「無駄な作業に時間を費やしている」「その場しのぎの対応」といった印象を受けがちです。
しかし、本人は決してサボっているわけではありません。
目先のタスクに気を取られているだけですが、その結果、周囲との関係性が悪化する可能性もあります。
タスクの優先順位を付けられない
タスクの細分化ができたとしても、優先順位をつけられない部下は、効率的に業務を進めることができません。
緊急性や重要度の低いタスクから手をつけてしまい、本来最優先でやるべきタスクを放置する可能性もあります。
その結果、後工程の担当者が仕事を始められずに納期に間に合わないといったケースも想定されます。
チーム内にこういったタイプの部下がいると、チーム全体の進捗効率が下がるため、他の社員にも悪影響を及ぼす可能性があります。
しかし、上司がタスクの優先順位を指示し続けることも好ましくありません。
表面上は、問題なくタスクが処理されて行くものの、部下は上司の指示を待つだけの「指示待ち社員」になります。
その結果、部下自身の成長が見込めず、別の部署に異動した際にトラブルとなるでしょう。
原因としては、部下自身にタスクの重要度や緊急度を判断する経験が不足していること、マルチタスクをこなすスキルが不足していることが挙げられます。
スケジュール管理ができない
スケジュール管理ができない部下は、時間の見積もりが甘いことが多く、タスクの遅延や納期遅れを招きやすくなります。
また、タスクの内容や納期自体を正しく理解していないケースも少なくありません。
そもそも同じタスクであっても、人によって作業に必要な時間は異なります。自分の能力やスキルを正しく理解できていなければ、スケジュールを立てたとしても計画通り進めることは困難です。
また「良い仕事をしたい」と思うあまり仕事の質にこだわりすぎる部下にも注意しましょう。
ひとつのタスクに時間をかけすぎてしまい、納期に間に合わなくなる可能性があります。
初期の段階でスケジュール管理の基本を教え、進捗状況を定期的に確認する仕組みを取り入れることで、状況の改善は可能です。
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タスク管理が苦手な部下がいる場合の問題点
部下がタスク管理に対し苦手意識を持っている場合、放置するとさまざまな問題が発生します。
タスク管理がうまくいかない場合の3つの問題点について解説します。
納期に間に合わなくなる
タスク管理ができない部下は、前述したように優先順位を考えることや、タスクごとに適切な時間配分を行うことが苦手です。
納期に対する意識が薄いことも多く、後工程への影響を深く考えないことも多いでしょう。
1人のタスク管理不足は、他のメンバーにも悪影響を与えてしまいます。
プロジェクト全体の進行に遅れが発生し、上司の責任問題にまで発展するかもしれません。
部下のタスク進捗状況管理も、上司の仕事です。
しかし、部下が複数いる場合やリモートワークや別拠点で働いている状況であれば、さらに管理や確認が難しく、余計な時間がかかってしまうでしょう。
その結果、自分の他の仕事にも影響を及ぼす可能性があります。
トラブルになりやすい
タスク管理が苦手な部下は、周囲とのコミュニケーションに対しても苦手意識を持つ傾向があります。報告・連絡・相談の重要性を理解していないため、自己判断により共有しなかったことでトラブルに発展するケースもあるでしょう。
タスク管理ができていないために、作業漏れやミスなども起こりがちです。
社内でのトラブルに加え、クライアントとのやりとりや重要な会議の準備中にミスが発生すると、会社全体の信頼性にも影響を与えかねません。
本人がタスク管理の重要性を認識していない場合、いくら注意しても状況が改善しない可能性もあります。上司の管理責任を問われ、指導方法に行き詰まりを感じるかもしれません。
作業効率や生産性の低下を招く
タスク管理が苦手な部下は、仕事の全体像を捉えることができないため、目についたことや自分の得意・好きな業務から取り掛かる可能性があります。
計画性がなく、無駄な作業が多いことから、作業効率が悪く生産性も低下します。
本人は「自分は頑張っているのに仕事量が多すぎる」と受け止め、周囲は「あの人は仕事にムダが多いのに文句ばかり言っている」と考えるようになるでしょう。
双方の溝は、深まるばかりです。その結果、チーム全体のパフォーマンスが低下し、全体進捗や組織の成果にも影響を及ぼすリスクが高まります。
業務効率化については、次の記事も役立つでしょう。
関連記事:業務効率化とは?進め方や6つのアイデア・おすすめツール7種を紹介
部下のタスク管理を円滑に進めるポイント
部下のタスク管理をスムーズに行うためには、上司の適切なサポートが欠かせません。
部下のタスク管理スキルを向上させるためのポイントについて紹介します。
タスク管理を行う前に信頼関係を構築する
部下にタスク管理の指導をする前に、信頼関係の構築を目指します。
部下から「あの上司は苦手」「何を考えているかよくわからない」と思われている状態では、適切な指導はできません。
信頼関係の構築方法には、相手への気遣いや誠実な態度などが挙げられます。
例えば、部下の話に耳を傾け、困っていることはないか、仕事の進捗状況はどうかなどを尋ねてみましょう。
部下からの質問や相談に対してしっかり話を聞くことも大切です。
仮に仕事が忙しく手が離せないタイミングであっても、片手間で聞くことは避けましょう。「今、多忙で時間が取れないが、◯時以降なら時間が確保できる」のように伝えると部下も安心するはずです。
相談を受けた際には、途中で話を遮らず、最後まで聞くことも必要です。
そのうえで、感情的にならず自分の意見や考え方を伝えましょう。ネガティブな相談内容であっても、一度は受け止めたうえで、できるだけポジティブな方向へと持っていくことが大切です。
部下とのコミュニケーションが取れている状態であれば、上司からの指示や指摘も、素直に受け入れられるでしょう。
協力体制が生まれ、スムーズなプロジェクト推進が可能です。詳しくは次の記事も参考にしてください。
関連記事:部下とのコミュニケーション7つのコツ|成長を加速させる指導術
タスクを細分化・分解する
信頼関係が構築できたのち、部下にタスクの洗い出し・細分化の指示を出します。
担当業務のタスクを、大小問わず、一旦すべて書き出させましょう。頭の中だけで考える癖のある部下にも、メモ帳やword・Excelなど、必ずアウトプットするよう伝えます。
部下が書き出している途中に「これは不要」など、口を挟むことは避けます。
気になるタスクがある場合は、すべて書き終えたとの報告を受けたあとに「なぜこのタスクを必要と思ったのか」など、質問するようにしましょう。
タスクについて、上司と部下の間で認識をすり合わせておくことで、のちの作業がスムーズに進みます。
そのうえで、さらにタスクを細分化しましょう。具体的な作業単位に落とし込むことで、部下は次に何をやるべきかが明確になり、ゴールまでの道筋が可視化できます。
可能であればこの段階で、タスクごとの「ゴール・完成」についても話し合っておくと良いでしょう。
「アイデアを出す」「連絡する」などの曖昧な言葉ではなく、「◯個アイデアを出す」「メールで連絡する」のように、明確なゴール設定をしておくと、タスク完了の達成感も得られやすく、次のタスクに進みやすくなります。
上司にとっても、進捗状況が把握しやすく管理しやすくなる点は、大きなメリットです。
また、業務内容ごとにカテゴリを分けたり、大カテゴリ・小カテゴリのように階層を作ったりする方法もあります。部下の性格や依頼する業務に合わせてアレンジしてみましょう。
具体的なスケジュールを設定する
大規模なプロジェクトだとしても、部下が関わる業務がごく一部の場合、目的が見えにくく、納期を守る重要性を理解しにくい可能性があります。
部下にタスクを任せる際には、可能であれば背景や目的、後工程を伝えたうえで、具体的な期限を提示することが重要です。「〇月〇日△時までに完成させてほしい」と、はっきり伝えます。
「手が空いたら」「今の仕事が終わったら」といった曖昧な指示は避けましょう。取り掛かるタイミングを見失い放置されるリスクがあります。
また部下に伝える納期は、イレギュラーな事態が発生する可能性や確認に時間を要する可能性も踏まえ、少し早めに設定しておくと安心です。
完璧主義で時間を忘れひとつの作業に没頭してしまいがちな部下に対しては、「タスクの半分程度の段階で一度進捗状況を共有してほしい」と伝える方法も効果的です。
優先順位を意識させる
仕事は、タスクの緊急度と重要度を基準に分析し、優先順位の高いものから進めることが基本です。しかし、タスク管理に苦手意識のある部下は、指示された業務や自分の得意業務から始めることが多く、優先順位の概念に乏しい傾向があります。
まず、仕事を効率的に進めるためには、常に優先順位を考える必要があることを丁寧に説明しましょう。
そのうえで、緊急度と重要度の概念を伝え指導します。すぐに理解することは難しいため、最初は部下も何からやるべきか戸惑うかもしれません。
上司として根気強く、優先順位を伝えながら指示を出します。
最終的に目指すのは、部下が自分でタスクの優先順位を考えることです。
指示待ちではなく、主体的に行動できるようになるために、最初は丁寧に伴走しましょう。
適切なタスクを割り振る
Aさんは言語化が得意、Bさんはスローペースだが作業が丁寧、Cさんは仕事が早く理解力が高いなど、部下の特性に合わせてタスクを割り振ることも重要です。
個々の得意分野を任せることで、チーム全体の業務効率が高まり、個々のモチベーションもアップするでしょう。進捗状況を把握したうえで、遅れが発生している業務には、人を追加するなどの対処も必要です。
ただし、部下も経験を積むことで、対応できる業務の範囲が広がります。
「◯◯の業務にもチャレンジしたい」など自発的に意見が出てくることもあるでしょう。単に同じ役割を任せ続けるのではなく、状況の変化に応じて、上司自身の柔軟な考え方・対応が求められます。
日報などで情報を共有する
部下の進捗状況を正しく把握するためには、日報など進捗報告の仕組みの導入が効果的です。
これまでも口頭やメールなどで、ある程度の進捗状況の共有はできていたかもしれません。
しかし、報告のタイミングは人によって異なるため、本当に必要な情報をタイムリーに受け取れていない可能性もあります。
部下にとっては報告不要と考えていた内容が、上司にとっては必要な情報だったという可能性もあります。
日報は、単なる進捗状況の共有ツールではありません。記載内容を通じて、部下の考え方や思い、不満なども把握できます。
また使い方によってはノウハウの蓄積にもなるため、今後の部下育成にも活用可能です。
部下に日報を定着させるポイントは次の記事でも解説しています。
関連記事:日報の書き方とは?必要項目やテンプレートと定着のポイント
自分で考え行動できるようサポートする
上司は、部下が主体的に行動できるよう、サポートする立場であることを認識しておきましょう。
過度に指示を出したり、常に先回りして発言したりしていると、部下は自ら考える意欲を失い「指示待ち人間」になります。
明らかに誤った方向に動いているときは、指示を出し修正する必要がありますが、時には部下の考えや行動を見守ることも必要です。
組織にとって必要な人材育成を目指し、部下の成長を見守りながら指導しましょう。
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部下のタスク管理における注意点
最後に、部下のタスク管理において注意すべき3つのポイントを紹介します。
部下との良好な関係を維持しつつ、業務効率を高めるために参考にしてください。
マイクロマネジメントしない
「マイクロマネジメント」とは、過度に部下の行動に干渉し、管理・監視することを指します。上司として部下のタスクの進捗状況を把握し、成果物に対して確認することは必要です。
しかし、過干渉なマネジメントは、部下に威圧感を与えます。本来の力を発揮できず、上司に咎められないかどうかだけを考えて動くようになるでしょう。
結果的に部下の自主性が失われ、業務効率が低下します。せっかく築いた信頼関係も損なわれるでしょう。あくまで必要なタイミングのみ介入するよう心がけましょう。
急かしすぎない
部下のタスク処理が想定より遅い場合も、部下のペースを尊重します。
ただ、不明点や疑問点があり、言い出せない可能性もあるため、さりげなく問いかけてみると良いでしょう。信頼関係が構築できていれば、質問してくれるはずです。
納期に間に合わない場合は、一部業務を別の社員に振り分けることも必要です。
過度に急かすことで、仕事の質が低下する可能性もあります。部下が適切なペースで作業を進められるよう、サポートを行いましょう。
結果だけでなくプロセスにも目を向ける
上司としては成果物の質に目を向けがちですが、部下の成長を考えるのであれば、プロセスにも目を向けましょう。
最初から完璧を求めるのではなく、現状よりも成長するために何が必要か、何を学ぶべきかを、部下自身が考えるきっかけになればベストです。
上司としてよかった点、期待以上だった点を評価し、そのうえで、適切なアドバイスを行います。部下のモチベーションを高め、自主性を尊重することで、次のタスクにも精力的に取り組んでくれるでしょう。
部下の褒め方やコミュニケーションのコツはこちらでも解説しています。
関連記事:部下の褒め方のコツとは?|部下とのコミュニケーションの手法とポイント
まとめ
上司に与えられている業務は、仕事の割り振りだけでなく、進捗管理やマネジメントなど多岐に渡ります。タスク管理に苦手意識を持つ部下がいると、全体マネジメントが滞る可能性があり、注意が必要です。
しかし、タスク管理を適切に指導するスキルがあれば、どれだけ部下が増えたとしても、チーム全体のモチベーション向上・成果向上といった結果を出しやすくなります。
タスク管理が苦手な部下に対しては、原因を突き止めたうえで、適切な指導とサポートを行いましょう。
効率的な業務体制を築くためにも本記事で紹介した方法の実践をおすすめします。

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