ビジネスシーンでクラウドサービスが多く使われるようになっています。
インターネット環境さえあればデバイスを問わずにいつでもどこでも利用でき、コストも抑えることができるため、自社でクラウドサービス(SaaS)を利用しているという方も多いはず。
その一方でシステム連携やデータ統合などの課題に直面している組織も多いようです。
そんな課題を解決してくれるのが、今回ご紹介するiPaaS(アイパース)と呼ばれるツール。
本記事ではiPaaSの基本知識から、おすすめの製品までご紹介します。
iPaaSとSaaSの盛り上がり
以前は企業が導入するシステムは、自社内にサーバーを設置してシステムを構築し自社内で運用する「オンプレミス型」が一般的でした。
2006年~2007年くらいまではパッケージソフト買い切りのオンプレミスが主流でしたが、導入コストが高額であるうえに、管理や維持などの運用コストもかかることが問題視されてきました。
ちょうどその頃から登場したのが、クラウド上でソフトウェアを利用することができる「SaaS」(サース/サーズ)=Software as a Service。
インターネットにつながる環境であればいつでもどこでも利用することができ、ベンダー側でアップデートなどの維持・管理をしてくれるため、コストも手間もかからずに運用できるため、オンプレミスから乗り換える企業が増えました。
また「顧客管理」「営業管理」「在庫管理」「会計管理」「スケジュール管理」など必要なサービスを選択して利用することができ、毎月の利用料を支払うことで利用できるので必要なくなったら解約できるため、リソースを無駄にすることなく業務を効率化することも可能に。
ところが、こうしてSaaSが広がるなかで課題が生まれてきたのです。
それがデータの点在。
必要な機能に特化したさまざまなサービスを導入している組織は「顧客データはツールA、営業データはツールB、納品データはツールC」などデータが散らばってしまい「効率が悪くなってしまう」「多角的な分析ができない」などの課題に直面してしまいます。
それを解決するための方法がiPaaSであり、SaaSとともに注目すべきツールなのです。
関連記事:SaaSビジネスとSaaS営業とは?特徴や必要なスキルを紹介
iPaaS(アイパース)とは?
では、iPaaSではどのようなことができるのかを解説します。
iPaaSは「アイパース」と読み、Integration Platform as a Serviceの略語です。
ガートナー社ではiPaaSを「個々の組織内または複数の組織内のオンプレミスとクラウドベースのプロセス・サービス・アプリケーション・データの任意の組み合わせを結びつける統合フローの開発、実行、管理を可能にする一連のクラウドサービスである」と定義しています。
わかりやすく表現すると、異なるサービスやアプリケーション同士をつないで情報を連携させたり統合させたりすることが可能になるクラウドサービスです。
具体的には、iPaaSを用いることでオンプレミスとSaaSサービスの連携や、SaaSサービス同士の連携ができるようになります。
関連記事:オンプレミスとクラウドを比較!違いやメリット・デメリットを分かりやすく解説
iPaaS(アイパース)導入のメリット
iPaaSは先述のように異なるサービス同士をつなげることができるため、さまざまなメリットが期待できます。
・あらゆるシステムを連携できる
「過去にオンプレミスサービスを利用しており、そちらに膨大なデータが残っている」「SaaSサービスとオンプレミスどちらも利用している」「部署によって導入しているSaaSサービスが異なる」など、組織によってデータ管理の仕方はさまざまです。
このように異なるシステムを利用していてもiPaaSが橋渡しをしてくれるため、社内のあらゆるシステムを連携することができます。
iPaaSがなければ連携のためのプログラミングの必要があり、大幅なリソースを割かなければいけなくなるでしょう。
・業務効率化
社内のシステムが連携できれば、それぞれに蓄積されているデータも統合することが可能になります。
自動的にデータが統合されるという環境になるため、二重入力の手間もなくなり、情報共有もスムーズになるでしょう。
特に、部署をまたいだ情報共有が必要な案件や、スピード感が重要な業務は、iPaaSの利便性を実感することができるはずです。
業務効率化を目指す方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:業務効率化とは?手法5つと成功事例、おすすめツールを紹介
・多角的な分析が可能
部署やシステムをまたいだ情報連携やデータ統合が可能になるため、多角的な分析もスムーズにできるようになります。
今までは各部署に点在したデータを担当者から収集したり、それぞれのシステムから数値を引き出してExcelなどで表を自作したりする必要がありましたが、iPaaSであればすぐに必要なデータを確認できます。
結果としてスピーディな分析や経営判断が可能になり、事業の発展にも効果が期待できるでしょう。
・新しいシステムも導入しやすい
さまざまなSaaSサービスが次々に開発されている現代では、今後新しいシステムを導入する可能性も低くありません。
iPaaSを利用していればすでに導入しているサービスともスムーズに連携できるため、事業の発展に伴い必要になるシステムも気軽に導入できるでしょう。
iPaaS(アイパース)の活用例 -Mazrica Sales連携-
それでは、ビジネスシーンでのiPaaSの活用例を当社のSFA/CRM「Mazrica Sales」を例に挙げて解説します。
SFAに関する記事はこちら!
Mazrica SalesはiPaaS「Anyflow」を用いて他のSaaSシステムとの連携ができます。
例えば、Mazrica Salesにコンタクト(顧客)情報や取引先情報を新規追加したり更新したりすると、他のシステムへ自動的に反映されるため、転記作業が不要になります。
逆の作業も可能です。
具体的には、名刺管理システム「CAMCARD」から名刺情報を取り込んでMazrica Salesに自動同期させたり、取引先やコンタクトをスプレッドシートや「kintone」に転記してデータを加工したりすることが可能になります。
名刺交換後の営業アクションをスピーディにしたり、入力工数を削減することで営業活動に充てるリソースを増やしたりすることができ、営業生産性が向上するでしょう。
iPaaS(アイパース)ツールおすすめ12選
それでは、ここからはおすすめのiPaaSツールを12選ご紹介します。
それぞれに特徴があるので、自社に最適なツール選択の参考にしてくださいね。
1.Anyflow(エニーフロー)
先ほどのMazrica Sales連携でもご紹介したAnyflowは、SaaS型iPaaSサービス。
2020年7月の時点で、Mazrica SalesをはじめとするCRM/SFAやG Suite、名刺管理ツールやビジネスチャットなどさまざまなSaaSサービスが対象となっています。
複数のSaaSにまたがる作業を「ワークフロー」として登録しておくことにより業務が効率化。
すべてノンプログラミングで接続できるため、知識がなくても簡単に連携できることも嬉しいポイントです。
国産製品だからこそ、国内サービスへの対応や日本企業にフィットしたUIで、使いやすさを実現しています。
【料金】
・スタータープラン:月額3万円
・ベーシックプラン:月額6万円
・スタンダードプラン:月額10万円~
【URL】
https://anyflow.jp/
2.Zapier(ザピアー)
アプリケーション同士を統合してワークフローを構築することで業務の効率化が期待できるZapier。
ワークフローの構築は数回のクリックだけなので簡単。
対象となっているアプリはなんと2,000以上。
組織のワークフローに合わせて組み合わせたり、自分が使いやすいように組み合わせたりすることができます。
無料で使えるフリープランがあるので、まずは試してみたいという方でも気軽に始めることができるでしょう。
【料金】
・無料プラン
・スターター:月額19.99ドル~
・プロフェッショナル:月額49ドル~
・チーム:月額299ドル~
・会社:月額599ドル~
【URL】
https://zapier.com/
3.Workato(ワーカート)
Workatoは400種類以上のSaaSサービスとオンプレミスアプリを接続することが可能。
「レシピ」という接続方法や活用方法のなかから選択するだけなので、プログラミングの知識も不要です。
既存のレシピの数は15万通り以上あり、マーケティングや顧客サポートなどの目的別に検索することができるため、自社にぴったりの活用方法が見つかるはずですよ。
【料金】
お問い合わせ
【URL】
https://www.workato.com/
4.Informatica(インフォマティカ)
Informaticaはクラウドサービスでもオンプレミス製品でもわずか数分で統合することができます。
AIが搭載されていることも特徴で、「データカタログ」であらゆるデータを整理したり、データサイエンティストとデータアナリストを支援するデータエンジニアリングの役割をしてくれたり、iPaaSとしてだけでない活用も可能。
さまざまなシリーズ製品があるので、自社の業務に最適なツールを見つけてくださいね。
【料金】
お問い合わせ
【URL】
https://www.informatica.com/jp/products/data-integration.html
5.Mulesoft(ミュールソフト)
クラウドやオンプレミスを統合するプラットフォームMulesoftは、セキュリティが高く銀行などでも利用されているツールです。
操作も分かりやすく、1つのプラットフォームで統合や運用、管理までできるので業務の効率化を図れます。
コンサルティングやトレーニングなど運用支援が手厚いことも評価されています。
【料金】
お問い合わせ
【URL】
https://www.mulesoft.com/jp/
6.BizteX Connect(ビズテックスコネクト)
画面操作で簡単にアプリ同士の連携ができるBizteX Connect。
BizteXが提供しているRPA「cobit」とは標準連携できるため、同製品をもともと利用している組織にとっては高い利便性を感じるはずです。
公式サイトにはワークフローのシナリオ例が記載されているため、活用イメージもしやすいですよ。
【料金】
お問い合わせ
【URL】
https://service.biztex.co.jp/connect/
7.ActRecipe(アクトレシピ)
ActRecipeは財務会計領域に特化したiPaaSで、「経費精算ツールと会計ソフトの連携」などのシーンで高いパフォーマンスを発揮します。
クラウドサービスを連携するためには「レシピ」を選択するだけ。
レシピは豊富な種類が用意されているので、企業のニーズや規模、業種などに合ったレシピを見つけることができるでしょう。
公式サイトに料金プランは掲載されていませんが、柔軟に対応できるとのことなので気になる方は相談してみてください。
【料金】
お問い合わせ
【URL】
https://www.actrecipe.com/
8.Dell Boomi(デルブーミー)
Dell Boomiは、契約更新率97%という高い満足度を誇るiPaaS。
ドラッグ&ドロップの簡単操作でワークフローを構築でき、アプリケーション間の連携が自動化されることで、組織内の情報共有もスムーズに。
ユーザー間で情報交換ができるコミュニティもあるので初心者でも安心です。
【料金】
お問い合わせ
【URL】
https://boomi.com/ja/platform/
9.DataSpider Servista(データスパイダーサービスタ)
HULFTが提供しているDataSpider Servistaは、クラウドサービス、データベース、アプリケーション、ファイル、ビッグデータなどさまざまなツール同士で連携できるため、組み合わせ方も豊富。
また、少ないメモリでも大量のデータを高速処理できるので、必要なデータをすぐに取り出すことができます。
用途や事業規模に応じた料金プランのパッケージソフトと最短1ヵ月から利用可能な月額プランが用意されているほか、導入支援やコンサルティングのプロフェッショナルサービスもあります。
【料金】
・セレクトライセンス:70万円~
・DataSpider Servista Basic Server Package:300万円~
・DataSpider Servista Advanced Server Package:550万円~
・月額ライセンス:月額20万円~ ※DataSpider Servista Basic Server Packageと同じ構成
【URL】
https://www.hulft.com/software/dataspider
10.Celigo(セリゴ)
Celigoはアプリ統合がすでに構築されており、すぐに運用を開始できるメリットがあります。
マーケットプレイスから利用したいサービスを選択してから統合テンプレートを選ぶだけ。
複雑な設定をする必要もなく、わずか数ステップで統合が完了します。
【料金】
・標準:年額7,200ドル~
・プロフェッショナル:年額18,000ドル~
・プレミアム:年額36,000ドル~
・企業:年額72,000ドル~
【URL】
https://www.celigo.com/
11.trocco(トロッコ)
データの変換・加工・統合が得意なのがtrocco。
データ分析のために収集や加工に時間をかけていた人も、手軽に必要なデータを集めることができるようになります。
連携可能なツールはSFAやMAなどのクラウドサービスのほか、検索エンジンやSNSの広告、Googleアナリティクスなども含まれているため、あらゆるデータを多角的に分析することができます。
もちろん他のiPaaS同様にツールを連携してのワークフロー構築もできるので、情報共有や業務効率化に役立つでしょう。
【料金】
・Light:10万円~
・Standard:お問い合わせ
・Enterprise:お問い合わせ
【URL】
https://trocco.io/lp/index.html
12.AWS Glue
AWS(Amazon Web Service)のなかのGlueはETL型のデータ統合サービス。
テーブル定義やスキーマなどのメタデータはAWS Glueデータカタログに保存され、ETLに仕様することが可能になります。
データの検出・処理・ロードにかかった時間は秒単位での課金制で、データカタログは最大100万個のオブジェクトを無料で保存できます。
【料金】
お問い合わせ
iPaaSの種類
ここまで12製品をご紹介しましたが、iPaaSにはいくつかの種類があることにお気づきになった方もいるのではないでしょうか。
Anyflowのブログを参考に、iPaaSの大まかな分類をご紹介します。
・レシピ型
「レシピ」といわれるアプリケーション連携によるワークフローのテンプレートがあり、それを使うことですぐに連携して業務に活用することができます。
自社の業務に合ったレシピを選択するだけなので、複雑な知識も不要。
AnyflowやZapierなどがレシピ型にあたります。
・ETL/ELT型
データのExtract(抽出)、Transform(変換)、Load(格納)が得意なETL/ELT型は、それぞれのツールに点在したデータを集約したり膨大なデータを移したりするときに活躍してくれます。
先ほど紹介したなかでは、troccoやAWS Glueです。
・EAI型
EAIとは「Enterprise Application Integration」の略語。
ETL/ELT型と一括りにされることも多いようですが、EAI型のほうが多様かつ高機能な処理が可能になります。
InformaticaやDataSpiderが分類されます。
・ESB型
「Enterprise Service Bus」の略であるESB型は、システム構成の「サービス指向アーキテクチャ(SOA)」によってアプリケーションなどを統合させるミドルウェア。
Mulesoftがこちらにあたります。
終わりに
本記事を読んでくださった方のなかでも、SaaS製品を利用している人は多数いらっしゃると思います。
iPaaSは「各サービスは便利なのだけど二重入力になってしまっている」「データが点在してしまって分析に活かしきれていない」などの課題を解決してくれるため、ツール同士を連携させることで業務の効率化を図りましょう。
前述したように4つに分類されてそれぞれに特徴があるので、自社にとって最適なツールを選んでくださいね。
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