「なかなか売上目標を達成できない」「目標達成までの道筋を立てたい」
こうした課題を抱えている方や組織は、KPI設計を行うことをおすすめします。
最終目標から逆算して中間目標であるKPIを設計していくことで、確実に最終目標を達成するための方法です。
本記事では、KPI設計の手順やポイント、KPIとして設定する指標の事例などを紹介します。
自社のKPI設計に課題を抱えている方は、ぜひご参考ください。
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KPI設計とは?
KPI設計とは、目標達成のための適切なKPIを設計することです。具体的にどのようなことなのか、詳しく解説します。
そもそもKPIとは?
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。
KPIを理解するには、KPIとあわせて覚えておきたい言葉「KGI」についても理解しておく必要があります。KGI(Key Goal Indicator)とは「重要目標達成指標」のことで、企業や部署などの組織が達成すべき最終目標です。
KGIを達成するためには、さまざまなプロセスを踏むことが重要です。たとえば「月間売上を30%上げる」というKGIを設定した場合、架電数やアポイント数、商談数や提案数などを増やさなければなりません。
このように、KGIを達成するために必要な各プロセスの達成度を測る指標がKPIです。そのため、KPIはKGIを達成するための中間目標と言われることもあります。
関連記事:KPIとは?営業のKPI設定方法と指標例・KGIとの違いを簡単に解説
KPI設計の目的
「KPIを設計しなくても、最終的に目標を達成できれば良いのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかしKPI設計は目標達成のために必要不可欠と言えます。
なぜなら、KPI設計の目的として以下の点があるためです。
業務の進捗を可視化して課題を明確にするため
KPIを設計することで、目標達成までどのくらい業務が進んでいるか可視化できます。基本的にKPIは数値として測定できる定量的な指標が設定されるため、「目標30件に対して、現状は10件」というように、数値で進捗を判断できるのです。
また、各KPIの進捗度を定量的に測定していくと、課題も明確になります。たとえば「指標Aは70%進捗しているのに、指標Bは30%しか達成していない」となると、早急に指標Bに関する対策を打ち出すことができます。
課題に対して即座に対策できるため早い段階でリカバリーができ、目標達成に近づけるでしょう。
評価基準を統一化して公平な評価をするため
近年、企業の課題となっているのが人事評価です。評価をする側の主観と、評価される側の頑張りにズレが生じ、不公平な評価をされたと感じる従業員も少なくありません。
公平な人事評価を実行するためには、KPI設計が効果的です。KPIは定量的な指標のため、一人ひとりの成果を判断しやすくなります。
評価する側の主観が排除されることで公平な評価が可能になり、数値を上げるために頑張ろうとモチベーションが上がる従業員も増えるでしょう。
ただし、仕事に向かう姿勢や経営方針の理解など、定性的な側面を無視して良いわけではありません。数値にこだわりチームの輪を乱す従業員が増えないよう、定性的な評価も組み合わせると良いでしょう。
組織・個人のモチベーションを上げ成長を促すため
KPIは、組織全体や一人ひとりの従業員に対して設定します。そのため、目標が明確になり、モチベーションアップが期待できます。
たとえば「売上アップしましょう」という漠然とした目標では、一人ひとりの認識にズレが生じ、「売上を10万円アップさせた」という人もいれば「売上を1円でもアップさせたから良い」という人も現れかねません。
しかしKPIとして具体的な数値目標を設定すると、組織や自分が目指すべき目標が明確になります。
具体的な目標があれば、目標を達成するためにやらなければならないことも明確になるため、パフォーマンスを最大化しようと努力するでしょう。
関連記事:KPIマネジメントとは?KPIの設定方法とマネジメント事例を解説
KPI設計の手順
KPIは、感覚や勘だけで適当に設計してはいけません。手順を踏んで設計することで、組織や個人の最終目標達成に大きく貢献できるのです。
KGIを設定する
KPI設計で重要なのは、最終的な目標であるKGIを定めることです。最終的に達成すべきゴールが見えていないと、どのような中間目標を立てるべきかわかりません。
KGIは「今月の利益○万円を達成する」「今年度の売上○億円を達成する」というように、期日と具体的な数値を設定しましょう。
KSFを設定する
KPI設計において、KGIと関連してKSFの設定も重要になります。
KSF(Key Success Factor)とは「重要成功要因」のことで、KGIを成功させるための要因です。
KSFは必ずしも定量的な指標である必要はなく「販売数を増やす」「顧客満足度を向上させる」「商品の質を高める」など、定性的なもので構いません。
KPIを決定する
一つひとつのKSFを、具体的かつ定量的な指標に落とし込んだものがKPIとなります。
たとえば「販売数を増やす」というKSFを紐解くと「新規顧客数を○人増やす」「リピート率を○%にする」などの指標に細分化できます。これがKPIとなるのです。
KSFがないと、KGIに関係のない指標もKPIとして設定してしまい、結局KGIを達成できなかったということにもなりかねません。したがって、KGI→KSF→KPIという流れで設計していきましょう。
KPI設計の5つのポイント
適切なKPI設計は、ビジネスの成果を最大化させます。そのため、KPIを設計する際には、以下の5つのポイントを意識しましょう。
定量的なKPIを設定する
KPIは達成の度合いを数値として測定していくため、定量的な指標を用いましょう。
「商談数を増やす」などの曖昧な指標だと、達成率を測れません。また、一人ひとりによって認識にズレがあるため、成果につながりにくくなります。
「月間商談数○件」「商談数○%アップ」など、具体的な数値で設定することが重要です。
KPIの数は絞る
KPI設計の際に陥りやすい失敗として「多くの指標を設定してしまう」ということが挙げられます。
複数の指標をKPIにすると、KGIに対する達成度合いを多角的に分析でき、経営判断がしやすくなるでしょう。
しかし現場は、業務量が多くなり負担が増えたり、何をすべきか混乱してしまったりするため、おすすめできません。
KPIの指標は最低限に絞り、従業員がやるべきことに注力できる環境を作ることが重要です。
自社や業種のスタイルに合わせたKPI設計をする
KPIは自社のビジネス規模や業務内容、事業スタイルなどに合わせた指標を設定しましょう。
たとえば、新規事業と成熟した事業では、目指すべきゴールが異なります。
新規事業の場合は認知度アップや新規開拓に注力するフェーズなので、「DM送信数○件」「架電数○件」などがKPIとして設定できます。一方、成熟した事業の場合は新規開拓よりも既存フォローのほうが重要となるため、「アップセル率○%」「クロスセル売上○円」「リピート率○%」などの指標がKPIとなるでしょう。
ほかにも、サブスクリプション型サービスと買い切り型商品では見るべき指標が異なりますし、インサイドセールスとフィールドセールスでも達成すべき目標は異なります。
このように、自社や組織に合った指標をKPIとすることで、効率的に成果を高められるでしょう。
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KGIとの関連性を持たせる
KPIはKGIを達成するための中間目標とも言えるため、KGIと関連する指標でなければなりません。
やみくもにさまざまな指標をKPIとして設定してしまうと、KGIと関連のない指標まで加わってしまい、「現場の負担が増えたのに、KGIを達成できなかった」というリスクも起こりえます。
前章で解説したように、KGIから逆算してKSFを設定し、さらにKPIに落とし込んでいくことで、KGIと関連性のあるKPIを設計できます。
KPIツリーを作成する
KPIを設計する際、どの指標を取り入れるべきか、具体的にどのような現場のアクションに落とし込むべきか、頭が混乱してしまう場合もあります。
適切なKPIを設計するために頭の中を整理できるよう、KPIツリーの作成がおすすめです。
KPIツリーとは「KGI→KSF→KPI→具体的なアクション」というように、KGIからどんどん逆算して細分化していく、ツリー状の図です。KGIや他のKPIとの関連性を整理したり、必要なKPIを抜け・漏れなく設定したりできます。
また、KPIツリーがあれば、KGI達成までの道筋が一目で把握できます。現場にも共有することで、従業員の目標が明確になりモチベーションアップにもつながるでしょう。
BtoBマーケティングの施策別のKPI設計例
ビジネス形態や業務内容などによって追っていくべきKPIが異なることを理解できても、具体的にどのようなKPI指標が適切なのか判断できかねるという方も多いでしょう。そこで、BtoBビジネスにおける施策別のKPIの例を紹介します。
インサイドセールスのKPI
インサイドセールスは、マーケティング部門が獲得したリードにアプローチを行い、見込み度を向上させた状態でフィールドセールスにトスアップする役割です。インサイドセールスがリードの見込み度を引き上げることで、フィールドセールスが訪問して確実に受注を獲得できます。
主に電話やメールなどの手段を使ってアプローチするため、以下の指標がKPIに適しています。
- 架電数
- 担当者に電話がつながった件数
- メール送信数
- メール開封率
- メール返信率
- アポイント獲得数/獲得率
- 実際に商談が発生した件数
- リードからのヒアリング件数
- フィールドセールス訪問までのリードタイム
また、上記のように活動量ばかりに重点を置いていると、リードの質がないがしろにされることがあります。たとえば、インサイドセールスが「とにかくアポイントを取れば良い」となってしまい、実際にフィールドセールスが訪問してみるとリードの関心度が低く、受注につながらないアポイントばかりだったということも珍しくありません。
そのため、以下のKPI指標も加えると良いでしょう。
- 受注金額
- 受注数/受注率
インサイドセールスの働きが成果につながっているか判断するためにも、重要な指標です。
関連記事:インサイドセールス(SDR)のKPI|目標設定と管理のポイント
インサイドセールスのKPI設計については、こちらの資料でも詳しく紹介しています。
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カスタマーサクセスのKPI
カスタマーサクセスは、サービスを継続的に利用してもらう必要があるサブスクリプション型ビジネスにおいて重要な役割です。主に、サービスの活用方法や運用定着についてのアドバイスやフォローを行い、顧客が成功するまで伴走します。こうして顧客がサービスを「自社のビジネスになくてはならないもの」と認識すると、その後の継続利用につながり、売上が最大化するのです。
カスタマーサクセスの場合、以下の指標がKPIとして用いられることが多いでしょう。
- 解約率
- オンボーディング完了率
- リピート率
- 売上継続率
- LTV(顧客生涯価値)
- アップセル・クロスセルの受注金額/受注率
また、このほかに「顧客満足度」「NPS」などをKPIとすることもあります。
関連記事:カスタマーサクセス(CS)のKPI・KGIとは?目標設定のポイントを紹介
オウンドメディア運営のKPI
オウンドメディアを適切に運用できると、検索エンジンで上位にランキングでき、多くの流入につながる集客効果の高い施策です。
その一方、一朝一夕でそこまでオウンドメディアを成熟させることはできず、コンテンツを増やして徐々に拡大していなければなりません。そのため、オウンドメディアの規模やフェーズに応じて、KPI指標の数値を変えていきましょう。
オウンドメディアを運営している場合のKPIの例は、以下になります。
- 記事コンテンツ作成数/公開数
- リライト数
- PV数(ページビュー数)
- UU数(ユニークユーザー数)
- CV数/CVR(コンバージョン率)
- 直帰率/離脱率
- 検索順位/検索エンジンからの流入数
- SNSからの流入数
- SNSへのシェア数
近年ではスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスからのアクセスも増えているため、パソコンとモバイルで成果が異なる場合はあります。したがって、できればパソコンとモバイル、それぞれの数値を集計すると良いでしょう。
関連記事:オウンドメディアとは?成功事例からオウンドメディアマーケティングを学ぶ
Web広告運営のKPI
Web広告にはさまざまな種類があります。検索エンジンの検索結果ページに表示されるリスティング広告(検索連動型広告)や、Webサイトなどの広告枠に表示されるディスプレイ広告、TwitterやInstagramなどのSNS広告など、多岐にわたります。
それぞれ特徴が異なるため、見るべき指標も少しずつ違いますが、主に以下の指標をKPIとする場合が多いでしょう。
- インプレッション数(広告や表示された回数)
- クリック数/クリック率
- クリック単価
- CV数/CVR
- コンバージョンにつながった利益の金額
- ROI(広告費に対する利益)
Web広告で認知を拡大したいのか、問い合わせを増やしたいのか、商品購入につなげたいのか、といった目的によってもKPI指標は異なります。自社のWeb広告の目的に応じて、適切なKPIを設計することが重要でしょう。
サブスクリプションサービスのKPI
サブスクリプションサービスは、新規顧客の契約を獲得するだけでなく、既存顧客の解約率を抑えていくことで、安定的な収益につながるビジネスです。よって見るべき指標は多岐にわりますが、ここでは主なものを紹介します。
- MRR(月間経常収益):月額(年額)利用料金×顧客数
- Quick Ratio(当座比率):期間内に増加したMRRと、解約やダウングレードなどで損失したMRRの比率
- ARPA:1アカウントがもたらす収益
- LTV
- CVR
- 解約率
- CRR(顧客維持率)
こうしたKPI指標から、自社のビジネスが継続的かつ効率的、そして安定的に収益を生み出しているか判断します。
まとめ|適切なKPI設計で毎期目標達成できる組織に!
目標達成のためには、やみくもに進むのではなく、適切なKPI設計が必要です。KPI設計を行うことで、目標を達成しやすくなるだけでなく、従業員のモチベーションアップや公平な人事評価などにも効果があるでしょう。
思いついたものをとにかくKPI指標とするのではなく、自社のビジネス形態や施策内容などに応じて最適な指標を選択します。
かと言って、設計したKPIを適切に管理し、目標達成につなげることは容易ではありません。まずは自社の組織を客観的に見直し、目標達成のために必要な土台ができているか判断することも重要です。
下記のシートにて、自社の組織がどのくらいのレベルまで到達しているのか、簡単にチェックできます。営業組織向けのチェックシートになっていますが、他の職種や業種にも対応できるので、ぜひ一度ご確認ください。