企業は日々業界での熾烈な競争の中で生きています。そのような過酷な状況で生き残り、他社を圧倒する戦略が大事なことは言うまでもありません。 しかし、競合他社と差別化を図るためには具体的にどのように戦略を立てればいいのか悩んでいる方もいるでしょう。
そこで有効な武器が「コアコンピタンス」と呼ばれるものです。本記事ではコアコンピタンスの成功事例と経営戦略に活用する方法をご紹介いたします。
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コアコンピタンスとは?
コアコンピタンスとは、G・ハメルとC・Kプラハラードの著書『コア・コンピタンス経営』(日本経済新聞出版社、1995年)によって広められた概念で、他社に真似できない核となる能力のことを指します。
コアコンピタンスは、成功を生み出す能力であり、競争優位の源泉となるものです。
では、具体的にコアコンピタンスの例にはどのようなものがあるのでしょうか?
企業のコアコンピタンスには、技術開発力、物流ネットワーク、ブランド力、生産方式、共通する価値観などがあります。
ブランド力がコアコンピタンスである例としては、スポーツウェア・シューズメーカーのナイキが挙げられます。競合他社の製品と比較して技術や品質で大きな差がなくても消費者に選ばれる理由はそのブランド力によるものです。
その他にも、ホンダのエンジン技術、ソニーの小型化技術、シャープの薄型ディスプレイ技術がよく知られた例です。
コアコンピタンスを見極めるポイントと成功事例
コアコンピタンスとケイパビリティとの違い
コアコンピタンスと類似した言葉に「ケイパビリティ」があり、こちらも企業活動における「強み」を意味する言葉ですが、両者はどう違うのでしょうか。
BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)の、ジョージ・ストーク、フィリップ・エバンス、ローレンス・E・シュルマンの3人によって1992年に発表された論文、”Competing on Capabilities : The New Rules of Corporate Strategy”の中では、
「コアコンピタンスがバリューチェーン上における特定の技術力や製造能力を指すのに対し、ケイパビリティはバリューチェーン全体に及ぶ組織能力である」
と定義されています。
したがって、両者の違いは、
コアコンピタンス:顧客に対して、他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力のこと
具体的にはホンダのエンジン技術のように競合他社を圧倒し他が真似できない能力などのこと。企業の中核となる強みです。
ケイパビリティ:組織全体にまたがる優れた能力、企業活動における戦略論の一つ
わかりやすく言うと、製品や市場など単体を指すものではなく、スピード・効率性・高品質などの企業が得意とする組織的な能力のこと。
コアコンピタンスとの違いは、特定の技術ではなく、ビジネスプロセスを重要視している点です。
となります。
コアコンピタンスを見極めるポイント
自社におけるコアコンピタンスはどのようにして見極めれば良いのでしょうか?
コアコンピタンスの評価のポイントは以下の5つになります。
1. 移動可能性(Transferability)
特定の商品やサービスだけに通用する能力や強みではなく、他の分野の製品などにも応用できることを指します。
2.模倣可能性(Imitability)
他社が真似できる可能性のことを指しています。
3.希少性(Scarcity)
市場に出回っていないような希少性が高い製品であるか、という考え方のことです。
4.代替可能性(Substitutability)
他の商品に置き換えることができるか、という観点で評価するのが代替可能性です。
5.耐久性(Durability)
長期にわたって優位に立てる能力のことです。
コアコンピタンスの成功事例
実際にコアコンピタンスを確立した企業の例について3つご紹介します。
・トヨタ自動車
日本国内でも人気が高く、優れた業績を出し続けています。
製品の原材料の調達から製造など、一連の流れをスムーズにするサプライチェーンと呼ばれるシステムを意識したことで、多くの製品が指示されるようになりました。
トヨタのサプライチェーンこそがコアコンピタンスであり、開発設計の時間が世界でもトップクラスで短いため、販売のトヨタと呼ばれています。
・ソニー
数多くのサービスを提供しているソニーグループでもコアコンピタンスを掲げており、HPからチェックすることができます。
電気製品や回路の設計などの技術領域、ソニーグループの特徴と社員のスキル、商品情報など細やかにコアコンピタンスが書かれています。
社員の90%がエンジニアであるなど、一人一人が高いスキルを誇っているため、ソニーのコアコンピタンスは高く評価されるようになりました。
・富士フィルム
富士フィルムといえばカメラのメーカーとして有名ですが、カメラのフィルムを製造するにあたって求められるマイクロレベルでの精密な技術やフィルムに用いる高純度かつ高品質なコラーゲンを独自に生み出す技術といった自社の強みを伸ばしたことで現在では多数の事業を展開しています。
自社の強みを幅広い商品や業界に応用できることを考えた上で、新しい製品が登場しても強みを活かすことができた上でコアコンピタンスと定義しました。
富士フィルムはカメラの他にも、化粧品や医療のサポートも行っているため、コアコンピタンスが確実に成功しています。
コアコンピタンスと経営戦略
コアコンピタンス経営とは
コアコンピタンス経営とは、「他社にはないコアな技術力を武器に経営する戦略」のことです。
コアコンピタンス経営のメリットとしては、
・市場の変化に対応しやすい
・他社と連携して新たなサービスや製品を創出しやすい
・モノではなく技術を核としているので突然消える可能性が少ない
などがあります。
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コアコンピタンスの実践と注意点
コアコンピタンス経営の概念に従い、外部環境に左右されない企業力をつける努力を続けるのは、大企業のみならず中小企業にとっても重要な経営課題であると言えます。
ここではコアコンピタンス経営の実践を、大きく3つのステップに分けて考えます。
ステップ1: 企業が追及すべき顧客の便益(benefit)を明らかにする
顧客ニーズが多様化・高度化する中で、それらに対応するためのマーケティング戦略を実践しない企業は、市場からの撤退を余儀なくされます。したがって、コアコンピタンス経営の最初の段階では、まず顧客のプロフィールを精査していかなければなりません。
ステップ2:顧客便益を提供するのに必要な自社の技術・能力を徹底的に高める
自社の保有する経営資源には限りがあり、豊かな経営資源を確保する企業であっても、広範囲にわたる技術や能力を高めるために経営資源を分散して投入するのは得策であるとはいえません。
つまり、「選択と集中」の観点から経営資源の活用を進め、事業領域を焦点化していく必要があります。
ステップ3:企業と顧客との接点を重視する
多様な企業との激しい競争環境から生まれる製品に触れる顧客は、より高い便益を手にすることを望むようになります。
そこで、企業は常に市場との接点を大切にしなければなりません。
具体的にはグループウェアを導入し、社員がいつでも必要とする顧客情報を入手できるようになるなどの取り組みが要求されます。
また、コアコンピタンスは企業が生き残る上でとても大事なものですが、注意点があります。
事業戦略を策定する際に、把握している自社のコアコンピタンスを適用していくことになりますが、うまく適合させることのできる事業ドメインでこそ効果を発揮します。
例えばソニーのコアコンピタンスである小型化技術は、黒物家電(AV機器、情報機器など)の領域では力を発揮しますが、冷蔵庫やエアコンなどの白物家電領域では小型化することの価値はあまりありません。
そのため、コアコンピタンスをどの事業ドメインに適用するかを熟考することが肝要です。
終わりに
コアコンピタンスの定義や具体例、経営戦略への活かし方とその注意点をご紹介しました。自社の強みを把握し、上記で示したステップに沿って顧客の獲得・維持に繋げていきましょう。
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