業種や業態、売っている商材によって、効果的な営業スタイルは異なります。
これまでの営業スタイルとして「御用聞き営業」「プロダクト営業」「ソリューション営業」がありますが、全ての営業スタイルを取り入れた企業もそろそろ限界を感じているかもしれません。
そこで注目されているのが、4つ目の営業スタイル「インサイト営業」です。
営業現場でもAIが取り入れられ、日常的にAIを使う日も遠くない今、このインサイト営業がAI時代の営業活動を切り開くと言っても過言ではありません。
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従来の3つの営業スタイルとは
まずは、従来の3つの営業スタイルである「御用聞き営業」「プロダクト営業」「ソリューション営業」について説明します。
時代の変遷とともに営業スタイルも変化しており、業界によりますが、現在はプロダクト営業とソリューション営業を取り入れている企業が多いようです。
御用聞き営業
「御用聞き営業」とは、その名の通り顧客へ御用聞きをして回る営業スタイルのこと。ルートセールスとも言われます。
定期的に「何か御用(ご注文)はありませんか?」と訪問してきてくれるため顧客にとっては便利ですし、営業担当者も定期的に受注が取れるという点では安定的です。
しかし、この営業スタイルの場合は、受注の全てを顧客が握っているとも言えます。
顧客が「Aを注文したい」と言えば、営業担当者は「はい、わかりました」と言ってその通りに受注するだけなのです。
例えば「今回はAとBとCを発注します」という時もあれば、「今回は何もいらない」と言われる可能性もあるため、現状以上の発展はあまり期待できないでしょう。
また、競合企業が参入してきて価格競争や納期競争になってしまったら奪回することは難しいかもしれません。
一部の市場を独占しているような企業以外は、リスクのある営業スタイルであるとも考えられます。
プロダクト営業
「プロダクト営業」は、商品提案営業とも呼ばれ、新商材や顧客のニーズに合った商材を提案する営業スタイルのこと。
御用聞き営業は受け身に近い営業スタイルでしたが、プロダクト営業はそれよりもより広い知識・スキルを持っている必要があるので、御用聞き営業よりも積極性が増した営業スタイルとも言えます。
例えば、顧客から「AとBを注文します」と言われた時でも、「Cも組み合わせることで、もっと便利になりますよ」と言われれば顧客も「じゃあCも注文しようかな」となるでしょうし、「最近、こんな新製品が出ましたよ」と言われれば顧客も興味を持ちますよね。
競合企業から契約を奪いたいという場面でも、競合企業の製品よりも優れている点を提案してあげることで、売上拡大のチャンスもあります。
ただし、機能や性能に差がないという状態であれば価格面が決め手となってしまうため、価格競争に陥ってしまう可能性も高いでしょう。
ソリューション営業
「ソリューション営業」とは、顧客の抱えている課題に対する解決策を提案する営業スタイル。
自社の商材のみを売り込むのではなく、その商材を使ってどんな仕組みを構築すれば顧客の課題が解決できるのかを、セットで提案します。
ソリューション営業では、顧客とのコミュニケーションやヒアリングが大事になります。
顧客が今抱えている課題は何か、どんなことに挑戦しようとしているのかを把握することが大切なのです。
そして、自社商材の機能・性能はもちろんのこと、その商材の利益・メリット・効果もしっかりと学ばなくてはなりません。
ヒアリングで顧客の課題や問題が明らかになったところで「当社のAという製品を導入することで、あなたの課題がこんなふうに解決できるんですよ」と仮説を説明でき、顧客はその商材の価値に気づくでしょう。
そして導入したあとにその仮説が実証されることで、顧客との信頼関係も更に強くなるはずです。
顧客の成長・発展に役立つためのソリューション(解決策)を提案してあげることこそがソリューション営業であると言えます。
関連記事:コンサルティングセールスとは?他の営業手法の違いと成果を出すための秘訣
近年話題のインサイト営業とは
御用聞き営業・プロダクト営業・ソリューション営業に代わる新たな営業スタイルとして注目されているのが「インサイト営業」。
時代の変化の中で顧客の状況も変わってきています。その変化に対応できるよう、新しい営業スタイルが必要となってくるのです。
インサイト営業とは?
インサイト(insight)とは、日本語に訳すと「洞察」「見識」。
つまり、インサイト営業とは、顧客ですら気づいていない課題をしっかりと洞察し、それを解決できるインサイトソリューションを提案する営業スタイルのことです。
従来の顧客は、課題を把握していてもその解決方法が分からないという状況でした。
そのため、その解決方法に自社の商材を当てはめて営業をするソリューション営業が効果的だったのです。
しかし、情報が溢れている現代。顧客は、自社で把握している課題に対する解決策を、WEBなどで簡単に収集することができるようになっています。
また、さまざまなツールを使って、自社の課題をデータ化し分析することで、自社内で解決することができています。
2012年12月号のハーバード・ビジネス・レビュー誌では「ソリューション営業は終わった」というタイトルの論文が掲載されたほど。
そこで、顧客ですらまだ把握していない課題を洗い出し、そのソリューションを提案するインサイト営業が必要となってきているのです。
ソリューション営業では顧客のニーズ・課題が顕在化している場合が多いですが、インサイト営業の場合は潜在的なニーズ・課題を掘り起こさなければなりません。
課題を巧みに聞き出すことよりも、顧客を指導することが、近年の営業には求められています。
インサイト営業が必要な理由とは?
WEBの検索が消費者の購買行動に大きな影響を与えているのは、現場の営業担当者も実感していることでしょう。
質も量も増えたWEB検索結果により、顧客は商品を手に取る前に既に購買の意思決定をしていることが60%もあるとされています。このIT時代において、インサイト営業が求められているのです。
インサイト営業とは顧客の潜在的なニーズにアプローチする手法を指します。購買の意思決定前に潜在ニーズを把握し、的確に働きかけることが重要です。
そのためにAIが鍵となります。AI搭載ツールを活用することで、膨大なデータベースから様々な分析が可能になります。
AIは過去の営業履歴や購買履歴から次のアクションをレコメンドし、顧客の次のアクションを予測するなど、営業担当者に潜在的なニーズに対するアプローチ手法のヒントを提供します。
AIの営業活動への活用事例については、こちらの記事内で詳しく解説しています。
関連記事:営業活動でのAI活用事例|AIによる7つの営業課題の解決策
インサイト営業は顧客すらまだ気づいていない課題に働きかける営業スタイルなので、先手を打って提案していく必要があります。
ヒアリングや市場調査だけでは情報が不十分で提案しにくくても、AIを活用することによって、インサイト営業がグッと現実的になるのです。
現代の購買プロセスに最もマッチした営業スタイルがインサイト営業であると言えるでしょう。
関連記事:顧客理解の2つのポイントと高める方法|インサイト営業への第一歩
インサイト営業の4つのメリット
インサイト営業は難易度は高いですが、その分メリットも大きいです。ここでは、主なメリット4つについて説明します。
1. 成約率の向上
インサイト営業を行うことで、成約率の向上につなげることができます。
なぜなら、インサイト営業によって、顧客も気づいていなかった本質的な悩みや課題をも解決できるため、顧客体験価値を上げることができるためです。
また、顧客体験価値を上げることによって、顧客は継続して自社商品やサービスを利用したり、他の様々な課題を解決する手助けになってもらいたいと思ってくれたりするでしょう。
一つ一つの商談の成約率を上げ、全体の売上向上にも貢献することができます。
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2. 顧客との関係強化
インサイト営業では、顧客は営業によってこれまでに自覚していなかった課題に気づくことができ、その解決策を得ることができます。
逆にインサイト営業と対局にある営業方法では、よくある課題に無理やりすり合わせ、一方的に自社商品を売りつけるような営業になってしまいます。
インサイト営業によって、顧客からしっかりとヒアリングをし、それによって導かれた解決策として自社商品を提案することで、顧客は警戒心を抱くことなく受け入れてくれるでしょう。
顧客と良好な関係が築けることによって、リピート化が望めることはもちろん、その顧客自身が宣伝塔になって新規顧客を呼び込んでくれることもあり得ます。
そのため、インサイト営業を通じた顧客との関係強化は企業にとって大きなメリットになるのです。
関連記事:顧客理解の2つのポイントと高める方法|インサイト営業への第一歩
3. 競合との差別化
インサイト営業では、顧客の潜在的な課題を洗い出して解決しようとするため、顕在的なニーズに取り組む一般的な競合との差別化を図りやすくなります。
顧客の課題が顕在化している場合は、顧客は対策法をインターネットで容易に調べられ、その量が多いほど価格競争にもつれ込んでしまいます。
しかし、インサイト営業なら、課題の提示から提案までをセットで行うため、顧客が他の解決策を知る前に商談をかけることが可能です。
そのため、競合との差別化、および価格競争の回避ができるのです。
もちろん、顧客の潜在的な課題を発見することは簡単ではありません。
けれども、だからこそ、顧客にとっても知らない課題を見つけてくれた価値の高い営業だと感じることができるのです。
4. 新しい市場の開拓
既存の市場は、既に顕在的な課題に対して数多くの競合が施策を繰り返す「レッドオーシャン」になっていることでしょう。
インサイト営業では、世間に広く認知されていなかったために顧客自身も自覚していなかった課題に取り組む事になります。
そのため、インサイト営業によって発掘することができた潜在的な課題をもとに自社の新商品やサービスを開発すれば、新しい市場を開拓することができるのです。
関連記事:インサイト営業の促進はツールだけでは不十分?成果に結びつけるために必要なコト
インサイト営業に必要な4つのスキル
成功するインサイト営業には、顧客のビジネスモデルや課題を深く理解するスキルが求められます。相手の立場や状況を理解し、その企業が直面する具体的な課題や機会を把握することが重要です。
1. 顧客理解
成功するインサイト営業には、顧客のビジネスモデルや課題を深く理解するスキルが求められます。相手の立場や状況を理解し、その企業が直面する具体的な課題や機会を把握することが重要です。
2. 業界知識
業界全体の動向やトレンドに通じていることが不可欠です。顧客が位置する業界に関する深い知識を持ち、競合他社の動向も把握しておくことで、より的確な提案が可能となります。
3. コミュニケーション
効果的なコミュニケーション能力が求められます。初対面の相手と円滑な対話を行い、相手の立場やニーズを理解するためのスキルが重要です。また、複雑な情報を分かりやすく伝える能力も必要です。
4. 分析力
データを分析し、有益な洞察を得るスキルが要求されます。データ駆動のアプローチを通じて、顧客の過去の行動や業績に基づいた洞察を発見することが重要です。
インサイト営業営業を身につける方法
営業マインドの醸成
競争が激しい市場では「御用聞き営業」からソリューション営業への転換、そしてインサイト営業を身につけることが必要になってきます。営業責任者、営業担当の意識改革をして営業スタイルを変革していきましょう。
営業コーチングの実施
いきなりインサイト営業を実施しようとしてもかなり難しいでしょう。まずは日々の営業活動や案件レビューにおいて、営業マネージャーがメンバーの商談の進め方や考え方をアドバイスしていきましょう。一方的に教えるというよりは担当の気付きや成長を促して目標を達成させるような動きが大切です。
関連記事:営業(セールス)コーチングの意味と活用方法とは?|営業組織強化の第一歩
営業の型化
インサイト営業を体現できる営業が増えたらやり方を型化してメンバーに浸透させていきましょう。「営業の型化(標準化)」とは、顧客への初回アプローチからクロージングまでの各営業過程で、どのようなアクションをするべきなのかなどを具体的に構築し、組織全体に広めて浸透させることです。
標準化された営業プロセスを全員が遵守することで、インサイト営業が組織全体に浸透します。
関連記事:営業プロセスとは?見える化の効果と営業力強化のポイント
インサイト営業の事例
コンビニ
普段私たちが買い物をしているコンビニエンスストアでも、インサイト営業を取り入れて成功した事例があります。
POSデータを分析したところ、ほとんどの顧客が1点もしくは2点のみの購入で、購入点数が増えるに従って顧客の割合も減少していることが判明。
そこで、その原因を調査・分析すると「購入点数が増えると両手がふさがってしまう」という理由がわかりました。
そこで、コンビニ店内に買い物かごを数か所設置してみると、購入点数が増えて売上も伸びたそうです。
IKEA
日本にも店舗がある、スウェーデン発祥の家具量販店IKEA(イケア)。
そのオーストラリア店で、男性客の来店を増やす施策が2011年に実施されました。
それまでIKEAは女性をターゲットとしていたため、女性と一緒に訪れた彼氏や夫などは場違いな感じがしてしまって、一緒に買い物することなく、店内で時間を潰していることが多かったそうです。
その男性をターゲットに、男性専用プレイランド「MAN LAND」を開設。
テレビゲームやピンボールゲーム、無料ホットドッグ、スポーツ観戦できるテレビなどが置かれたその場所は、女性の買い物中に待っている男性たちに大ハマり。
ショッピング嫌いな男性の深層的な本音を汲み取って、その隠れた本音に寄り添うサービスを実施することで男性客の心を掴んだのです。
ちなみに、父の日がある週末に試験的に実施されたそうですが、訪問客は前年同時期よりも8%増加したということでしっかりと数字にも繋がっていますね。
got milk?
1980年から1992年まで一人当たりの牛乳消費量が減少したカリフォルニア州。
そこでミルク協会は、牛乳好きの人を集めて一週間牛乳を断つことにしてもらいました。
「どのような場面で牛乳がほしくなったか」を調査すると、「シリアルやクッキーが目の前にあると、たまらなく牛乳がほしくなる」という回答が多いことが判明。
さっそくCMでその訴求をしてみることにしました。
そのCMとは、クッキーにかぶりつく映像と「got milk?」(牛乳ある?)というコピーをかぶせたもの。
思わず牛乳がほしくなってしまうようなインサイトを発掘したことで、牛乳の売れ行きも回復したそうです。
終わりに
顧客の先手を行くインサイト営業。もちろん、業種や商材、相手によって営業スタイルを変える必要があります。
そんな中でも、IT技術が発展している現代では、インサイト営業を強化していく必要があるのかもしれませんね。
営業支援ツールであるSFAにはAIが搭載されてリコメンドや顧客アクション予測が備わっている製品も多いので、導入することで自社のインサイト営業強化にも役立つと思いますよ。
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