「戦略なくして戦術なし」と言われるように、戦術(施策)を実行する前に、具体的な戦略を立案して方向性を定めておく必要があります。
マーケティング活動においても戦略は重要です。どのようなターゲット顧客に、どのような情報を、どう届けるのかなどの方向性を決めるために必要なものとなります。
そこで本記事ではマーケティング戦略の立案手順や、戦略策定に活用できるフレームワークを紹介します。ぜひ本記事の内容を参考に、マーケティング戦略の立案と実行に踏み切ってみましょう。
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この記事の内容
マーケティング戦略とは?
マーケティング戦略とは、自社においてどのようなマーケティング活動を展開していくのかの方向性を定めることです。
そもそも「マーケティング」とは、市場のニーズに合った価値を提供することです。「近代マーケティングの父」とも言われるフィリップ・コトラー氏は、著書においてマーケティングを以下のように表現しています。
どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、
その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること
つまりマーケティング戦略とは、市場のニーズを満たす価値を生み出し、どのように提供していくかの戦略を意味します。
営業戦略の立て方については以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:営業戦略の立て方とは?5つのステップとフレームワークを解説
マーケティング戦略立案が重要な理由
マーケティング戦略を立てずに施策を実行している企業も少なくありません。しかし事前戦略を立ててから施策を練ることで、さまざまなメリットがあります。具体的には以下の内容になります。
効率的な売上向上につながる
マーケティング戦略の立案により、効率的に売上を向上させることができます。
マーケティング戦略の実行にあたって、市場のニーズや動向などの分析が必須になります。また自社の顧客がどのような層なのか、そしてどのような商品がよく購入されているか、などの分析も必要です。
今まではデータ分析をせずに「経験」や「勘」、「センス」などに頼っていた企業も多いことでしょう。しかし経験や勘に頼っていては本当に効果のある戦略を立案できず、コストや手間が無駄になる場合も少なくありません。
しかしマーケティング戦略を実践し、得られたデータ分析を行うことで、市場や顧客のニーズを理解でき、ニーズにマッチした価値を提供できます。そのため効率的に売上を作り出せるのです。
ターゲット顧客のニーズに対応できる
マーケティング戦略を立案することで、顧客のニーズの変化にも対応できるようになるメリットもあります。
顧客のニーズは一定ではありません。時代や環境の変化により、顧客ニーズも変化しています。特に近年では、インターネットやスマホの普及、価値観の多様化により、ニーズは複雑になっています。
そして企業は、複雑に変化する顧客ニーズにも対応していかなければ生き残れません。そのためには、データを基にした緻密なマーケティング戦略が求められます。
また昨今は、従来の不特定多数に向けたマスマーケティングよりも、一人ひとりのターゲット顧客に最適化したOne to Oneマーケティング(パーソナライズドマーケティング)の有効性が高まっています。One to Oneマーケティングを実行するには細かなデータ分析が必須なので、マーケティング戦略の立案が効果的と言えるでしょう。
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事業の軌道修正を迅速・柔軟に行うことができる
事業を進めている中で、思うような成果が出ないことや予期せぬ事態が起きることも珍しくありません。
たとえば新型コロナの影響で、事業の縮小や廃止を余儀なくされた企業も少なくないでしょう。また市場の変化により、需要がなくなったり、反対に需要が拡大したりすることもあります。
企業を存続していくためには、このような変化に対して事業を迅速かつ柔軟に対応していかなければなりません。
そのためには、常に市場や環境の変化をつかみ取り、次の一手を見極めることができるマーケティング戦略が必要と言えます。
マーケティング戦略の立案手順
マーケティング戦略の立案をした経験がない人は、どのように進めたら良いのかわからない場合もあるでしょう。勧めからが分からない場合には、以下の手順に沿うとスムーズに進みます。
1:外部環境や社内環境を分析する
まずは自社を取り巻く環境や、社内の状況について理解する必要があります。社内の状況について充分に把握していなければ、効果的な戦略を立案できないからです。
外部環境については、以下の視点から分析すると良いでしょう。
- どのような属性の顧客がいるのか
- 顧客の課題やニーズは何か
- 競合他社の商材はどのようなものか
- それぞれの競合他社のシェアはどのくらいの割合か
- 市場のトレンドはどうなっているか
- 経済・政治・世界情勢はどのような状況か、それは市場に影響するか
さらに社内環境は、以下の視点から分析しましょう。
- 自社の強み・弱みは何か
- 商材の強み・弱みは何か
- 顧客数や取引数はどのくらいか
- 今までの自社のマーケティング活動ではどのような実績があるか
- 社内リソース(コスト、人手など)はどのような状況か
これらの視点から外部環境と内部環境(社内)を分析し、状況を把握しましょう。
2:ターゲットを明確にする
次はマーケティングの対象となるターゲットを明確にします。ターゲットが不明確だと、顧客の課題や求めていることを把握できないままマーケティング活動を行ってしまい、成果につながりません。
ターゲットを設定することを「ターゲティング」と言います。ターゲティングとは、市場にいる顧客層のうち、どの層を対象にするかを決めることです。ターゲティングには、様々なフレームワークを活用できます。
ターゲティングができていないと市場全体がマーケティング対象となるため、マーケティング戦略の軸が定まりません。しかし精度の高いターゲティングができれば、マーケティング対象となる顧客層の心に響く戦略を打ち出しやすくなるのです。
また、より明確なターゲットを設定するためには、ペルソナの設計が有効です。
ペルソナとは、自社の典型的な顧客像を指します。ターゲットとなる顧客の性別・居住地・年代などの大まかな属性だけでなく、職業や年収、家族構成や趣味などの細かい情報まで定めます。より顧客像のイメージを定めるために、仮の氏名や顔写真なども設定する場合もあります。
関連記事:ターゲティングとは?代表的なフレームワーク(STP分析・6R)を紹介
3:ポジショニングで差別化を図る
次はポジショニングを行い、自社の立ち位置を定めます。
ポジショニングとは、その名のとおり自社のポジションを築くための方針を指します。競合他社と類似していては、自社独自のポジションは築けません。そのためターゲットとなる市場において明確なポジションを築くため、競合他社にはない自社ならではの魅力や価値を見出す必要があります。
自社や競合他社の現状のポジションを把握したうえで、どのような差別化を図れば優位なポジションを築けるのかを見極めましょう。
関連記事:ポジショニングとは|ポジショニング戦略の進め方と成功事例
4:顧客のベネフィット(価値)を検討する
顧客は商材が気になって手に取ったとしても、その商材を利用することで何らかの価値を得られなければ購入にはつながりません。そこで、顧客に対してベネフィットを提供することが重要です。
ベネフィットとは、その商材を利用したことにより得られる利益や価値を指します。
ベネフィットについての具体例としてよく用いられるのが、ホームセンターなどで売っている工具の「ドリル」です。顧客はドリル自体に魅力を感じて手に入れたいと思っているのではなく、ドリルで開けられる穴を手に入れたいためにドリルを購入します。
このように、何らかのベネフィットが得られなければその商材を購入する意味がないため、自社商材はどのようなベネフィットを提供できるのか検討しましょう。
5:戦略の決定・実行
今までのステップをふまえて、いよいよマーケティング戦略を決定し実行していく段階に入ります。
誰に(ターゲティング)、どのようにして(ポジショニング)、どのような価値を提供するのか(ベネフィット)といった視点から、マーケティング戦略を練ります。ステップ1で分析した自社の外部環境や社内環境もふまえ、市場のトレンドや自社リソースなども考慮しましょう。
マーケティング戦略の実行にあたっては、やりっぱなしではなく定期的な振り返りも必要です。どのくらいの成果につながっているのか測定し、改善点を見つけ出して、戦略をブラッシュアップさせましょう。
関連記事:マーケティング・営業の連携の秘訣とは?メリット・トラブル解決策を解説!
マーケティング戦略立案に欠かせないフレームワーク10選
マーケティング戦略を立案する際には、客観的な視点で現状を分析する必要があります。しかし分析方法がわからない人も多いことでしょう。
そこでマーケティング戦略の立案に役立つ、9つのフレームワークを紹介します。
関連記事:営業戦略・戦術フレームワークおすすめ16選と活用のポイントとは
4P分析
4P分析とは、以下の4つの視点から自社商材のマーケティング方法を考える際に活用します。
- Product:商品
- Price:価格
- Place:流通経路・チャネル
- Promotion:プロモーション方法
どの商品を、どのような価格で、どのチャネルを活用し、どうやってプロモーションして販売していくかを考えます。
STP分析
STP分析とは「立案手順」の章で解説した内容のように、自社の立ち位置や差別化ポイントを以下の視点から分析するフレームワークです。
- S:セグメンテーション
- T:ターゲティング
- P:ポジショニング
「市場の細分化→ターゲット像の設計→自社の立ち位置の明確化」の方向性で分析を進めると、ターゲット顧客のニーズを明らかにしたり競合他社との差別化ポイントを見極めたりすることができます。
PEST分析
PEST分析は、以下の4つの視点からマクロ環境を分析できます。
- P(Politics):政治
- E(Economy):経済
- S(Society):社会
- T(Technology):技術
自社を取り巻く環境は刻々と変化しています。そのため定期的なPEST分析により、自社はどのような状況に置かれているのかを把握しましょう。
3C分析
3C分析は、以下の3つの視点から自社や外部環境を分析するフレームワークです。
- Customer:市場(顧客)
- Company:自社
- Competitor:競合他社
マーケティングでは、市場の理解、自社の状況把握、競合他社の動向などの情報が重要になります。したがって3C分析により細かく現状を把握することで、より効果的な戦略を立案できるでしょう。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析(5フォース分析)とは、自社にとって脅威(フォース)になりえる要因の関係性を紐解くためのフレームワークです。
- 市場内での競合他社の脅威
- 新規参入者の脅威
- 売り手(サプライヤー)の交渉力
- 買い手(顧客)の交渉力
- 代替品(異業種の他社製品)の脅威
「競合他社の脅威」を中心に、ほか4つの項目が中心へと向かっている図式で表されます。
それぞれがどのように関わり合っているのか、そして関係性による脅威はどれほど自社にダメージを与えるのか、といった視点から分析します。
SWOT分析
SWOT分析は、以下の4つの視点から自社にとってポジティブな要因とネガティブな要因を明らかにできます。
- S(Strength):強み
- W(Weakness):弱み
- O(Opportunity):機会
- T(Threat):脅威
自社の置かれている現状を把握するだけでなく、以下のように具体的に考えることもできます。
- 自社の強みを活かす戦略なのか
- 自社の弱みを解決・改善する戦略なのか
- 自社にとっての機会を活かす戦略なのか
- 自社にとっての脅威を回避する戦略なのか
関連記事:SWOT分析とは?事例や分析手法をわかりやすく解説
バリューチェーン分析
商材が顧客の手に届くまでの一連の流れのうち、価値がどのように連鎖していくのかを考えることをバリューチェーン分析と言います。
ビジネスでは一連のモノの流れである「サプライチェーン」がよく使われますが、バリューチェーンは価値に重点を置いています。
ここで言う「価値」とは「顧客にとっての付加価値」を意味し、自社の強みや競合他社との差別化ポイントの洗い出しに活用できます。
ただし商材の原材料調達から販売までの一連の流れでは、関連企業や協業企業など自社以外の企業が関わっていることも珍しくありません。そのため、自社以外の要素も含めることがポイントです。
VRIO
VRIOは自社商材について以下の4つの視点から分析するフレームワークです。
- V(Value):社会的価値
- R(Rarity):希少性
- I(Inmitability):模倣困難性
- O(Organization):組織
自社商材はどのような価値を提供できているか、希少性があり模倣が困難か、魅力を伝えるための組織体制が構築できているか、内容です。それぞれの視点から分析すると、自社商材の強みや課題を洗い出すことができるでしょう。
PPM分析
PPM分析とは「Product Portfolio Management」の略で、自社商材や事業を以下の4つの視点で分析する方法です。
- 花形
- 金のなる木
- 問題児
- 負け犬
上記4要素は「市場成長率」と「市場占有率」の視点で分けられており、自社の商材や事業がどの事象に当てはまるかを分析します。分析結果から、自社の課題は何か、そして適切にリソースが配分できているか確認します。
AIDMA
AIDMA(アイドマ)とは、消費者の購買決定プロセスを説明するためのフレームワークのひとつ。
1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱されました。
AIDMAという単語は消費者の購買プロセスの頭文字から成り立っており、それぞれ下記のような意味があります。
A(Attention):商品やサービスの存在を認知する
I(Interest):興味を持つ
D(Desire):欲しいと思う
M(Memory):記憶する
A(Action):購買行動を起こす
具体的な購買プロセスに当てはめてみると、テレビやインターネットなどで知った商品やサービスに興味を持ち、自分に必要かどうか検討してだんだんと欲しくなっていき、その商品やサービスのことを覚えていて、最終的に購入に至るというプロセスになります。
参考記事:AIDMA(アイドマ)の法則とは?活用方法やSIPS(シップス)との違い解説
フレームワークを使ったマーケティング戦略の具体事例
つづいて、本記事で紹介したフレームワークを活用して、マーケティング戦略に成功した2社の事例を紹介します。
STP分析で見る「ライフネット生命」のマーケティング戦略
ライフネット生命は、2008年に創業を開始したインターネット専業の生命保険会社です。
ライフネット生命のマーケティング戦略は、STP分析を活用して成功した事例として最適です。 ライフネット生命のSTP戦略は以下のようになっていると考えられます。
- S(セグメンテーション):30~40代の子育て世代
- T(ターゲティング):低価格で安心の保険を求める層
- P(ポジショニング):分かりやすさ、低価格な保険を提供
- マーケティング戦略:
オンラインでの購買活動に抵抗がない顧客層に対してネット経由の事業に専念し、コスト削減を図ることで低価格な保険料を実現する。そして、初めて保険に入る若い人でも分かりやすいようなWebサイト設計や、シンプルなプランを提供する。
4P分析で見る「Laxus」のマーケティング戦略
Laxusは、サブスクリプションモデルで高級ブランドバッグのレンタル事業を展開する、ブランドレンタル会社です。
「気軽には購入できないブランドバッグを使用してみたい。」「色々なブランドバッグを季節や日によって使い分けたい」などの顧客ニーズを実現させるため、Laxus社は以下のようなマーケティング戦略をとっています。
- Product(商品):専門鑑定士が鑑定した本物のラグジュアリーブランドバッグを提供。
- Price(価格):数十万円以上のブランドバッグを月額6800円でレンタルできるサブスクリプションモデル。
- Place(流通経路・チャネル): ウェブサイト/アプリの二つのチャネルを使用。
- Promotion(プロモーション方法) : 友人紹介制度やポイント付与制度で口コミ誘発。
- マーケティング戦略:
- 必ずクリーニングされたものを届け、品質管理を徹底する。
- ラグジュアリー感を掻き立てる豪華な化粧箱で包装する。
- アプリダウンロードや友達紹介でポイント付与し、トライアルの心理的負担を軽減する。
- 継続利用してもらうため・より使いやすさを実感してもらうためにポイント付与などでアプリ使用に誘導する。
- 商品は自宅まで配送し、返送用のシール等も同封して、受け取りから返却まで極力ストレスを感じさせない仕組み。
- ターゲットである成人女性は男性やほかの世代よりも環境への意識が高いため、エシカルな要素を強調して宣伝する。
マーケティング戦略を成功させるポイント
マーケティング戦略は立案することが目的ではありません。実行に移したあとに成果につながっているかを検証し、さらにブラッシュアップして精度を高める必要があります。
そこで活用できるのがCRM(顧客関係管理システム)です。
CRMは顧客情報や購買履歴情報などを蓄積できるため、立案したマーケティング戦略によりどのくらいの成果が出ているのかを数値で把握できます。
またCRMによってはメルマガ配信や問い合わせフォーム作成などの機能が搭載されているものもあり、マーケティング施策の成果が可視化されます。
顧客に関するデータは、マーケティング戦略の策定だけでなく、様々な場面で活用できる情報です。CRMを導入し、データ蓄積を習慣化することで、より効果的なマーケティング戦略の立案と実行に貢献しましょう。
関連記事:CRMとは?導入メリット・機能や選び方とツールも紹介
弊社が提供している「Mazrica Sales」は、現場で使いやすいUI,UXを徹底的に追求したSFA/CRMです。
営業支援や顧客情報や購買履歴情報などの蓄積はもちろん、MAツール「Mazrica Marketing」との連携を行うことで、メール配信などのマーケティング活動を一段と効率化できます。
マーケティング戦略策定の際にも、営業データや顧客データを元に、顧客に刺さる施策考案を行うえるようになり、集客・売上の拡大を見込めます。
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終わりに|マーケティング戦略の立案は必須
マーケティング戦略は、マーケティング活動で成果を出すためには欠かせないものです。
自社のマーケティングの軸となるため、マーケティング活動を始める前には戦略策定から始めましょう。
本記事の内容を参考に、フレームワークを活用しながら戦略を立案してくださいね。
戦略の策定と実行だけでなく、データの収集と分析が成功への近道です。ビジネスを成功に導くために、CRMなどのデータ管理ツールを積極的に導入しましょう。
Mazrica製品は、SFA/CRMの機能から、営業・顧客情報を活用したマーケティングオートメーション(MA)までワンプラットフォームで行うことが可能です。
成功に向けて、戦略とデータの活用を組み合わせて効果的なマーケティングを実現しましょう。