アカウントベースドマーケティング(ABM)という言葉をご存知ですか?
マーケティング担当者なら、一度ならず聞いたことがあると思います。

今回は、アカウントベースドマーケティング(ABM)がどのようなマーケティング手法なのか、また、ABMのメリットと実践方法についても合わせて紹介していきます。

マーケティングというと、営業のみなさんは「自分には関係ない・・・」と思ってしまうかもしれませんが、ABMは営業にとっても役立つものですので、学んでみて損はないと思います。
ぜひご一読ください。

アカウントベースドマーケティング(ABM)とは?

アカウントベースドマーケティング(ABM)とは?メリットと事例 | Senses Lab. | 1

アカウントベースドマーケティング(ABM)は、優良な企業(=アカウント)を絞り込み、その企業に最適化されたマーケティング施策をする手法のことです。

例えば、売上の80%を占める上位20%の顧客だけをターゲットにするなど、対象企業を絞ることで、効率のいいマーケティング活動ができます。

もう少しわかりやすくするために、マーケティングオートメーション(MA)と比較してみましょう。

■マーケティングオートメーション(MA)
リード(見込み顧客)を集め、育成して、受注確度の高そうな案件を営業に渡す。
マーケティング対象:人

■アカウントベースドマーケティング(ABM)
最初から顧客を絞り込み、個別企業に最適なアプローチをする。
マーケティング対象:アカウント(企業)

2つの手法の違いとしてよく例えられるのが、魚の捕獲方法です。
魚=顧客がいそうなところに広く網を投げて(投網)たくさんの魚を獲ろうとするのが「マーケティングオートメーション」、魚を見極め狙いを定めてモリで獲るのが「アカウントベースドマーケティング」というわけです。

アカウントベースドマーケティング(ABM)が注目されるようになった背景

アカウントベースドマーケティング(ABM)とは?メリットと事例 | Senses Lab. | 2

マーケティングオートメーションに近しい考え方なので、同時期に出てきてもよさそうなものですが、なぜ、今になって注目を集めるようになったのでしょうか?その背景には、3つの要因があります。

①意思決定方法がトップダウンからボトムアップへと変化

経営者や役員が意思決定を行うトップダウン方式の場合は、経営者・役員=企業だったため、リード自体を管理していれば成約に結びつきました。

しかし、ボトムアップ方式では意思決定に関わるメンバーが複数名になります。
こうなると個人をターゲットにしていては成約に結びつきません。
そこで企業の業種や規模なども含めた情報を集め、組織全体をマーケティングの対象として考えることが求められるようになってきました。

②マーケティングと営業の連携が悪い

リードのみに対するマーケティングでは、対象となる企業の予算や自社の商材との相性までは考慮できません。
そのため、せっかく営業に引き継いでも、案件化したり、受注に繋がる確度が低いという理由で、受け取ってもらえなかったり、フォローされないままになってしまっていました。

これに対してアカウントベースドマーケティングでは、営業部門とマーケティング部門が営業戦略を共有した上で、対象企業を絞り込みます。
こうして獲得したリードはすでに合意済みのものなので、営業のフォロー率が格段に上がります。

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③テクノロジーの進歩

パソコンやインターネットの普及により、顧客とのやり取りをメールやチャットなどデジタル領域で行うようになったことで、情報をデータとして収集できるようになりました。

さらに、データを集約、分析、一元管理できる営業支援ツール(SFA)やマーケティングオートメーション(MA)ツールが開発されたことで、ようやくアカウントベースドマーケティングを実践できる下地が整ったというわけです。

MAの詳細はこちらを参考に。↓
マーケティングオートメーション(MA)とは何か

アカウントベースドマーケティング(ABM)の3つのメリット

アカウントベースドマーケティング(ABM)とは?メリットと事例 | Senses Lab. | 4

次に、アカウントベースドマーケティングを行うメリットについて見ていきましょう。

①リソースを集中できる

対象企業を絞り込み、最適なマーケティングを行うことで、人材やお金といったリソースを集中させることができます。また、幅広いリードに対してアプローチするマーケティングオートメーションと比べて、無駄な施策を減らすことができます。

②企業ごとに最適化・パーソナライズできる

リード(見込み顧客)は、自分や自社に向けて特別に作られたコンテンツに関心を持ちます。
そこで、特定の企業に合わせてパーソナライズされたメッセージやコミュニケーションを送ることで、より強い関心を持ってもらうことができます。

③リードの追跡や効果測定がしやすい

絞り込んだ顧客をターゲットにしているため、キャンペーンをを分析する際に、効果測定しやすく、導き出される結論も明確です。

ここからさらに仮説を立て、施策を実施して・・・と、PDCAを回すことで、より精度の高いマーケティング施策を実施できるようになります。

④営業とマーケティングの連携がスムーズになる

マーケティング部門が、営業部門と同じ顧客志向に基づいたマーケティング施策を展開することで、営業部門の目的とも一致する対象企業へ、効果的なアプローチすることができるようになります。

アカウントベースドマーケティング(ABM)の導入手順

アカウントベースドマーケティング(ABM)の導入手順

ここからは、アカウントベースドマーケティング(ABM)の導入手順について6つのステップに分けて説明していきます。

①アカウント(対象企業)の選定

まずは顧客と顧客となりえる企業や、既存の顧客リストを整理・分析することで、顧客の優先順位をつけます。この時、今後期待できる取引額、リピート率を考慮し、なるべく高いLTV(顧客生涯価値)が見込める企業を優先することが重要です。

リストアップの方法は、以下の手順で進めてみてください。
▼自社の取引企業のうち売上の8割以上を占める上位2割の企業の企業規模・業種・地域などの属性を分析
▼同じ属性で、かつ自社の既顧客ではないアカウントを抽出
▼さらに見込まれる取引の大きさ、市場での影響度、リピーターになる可能性、平均的な利益幅より大きくなる可能性などを考慮

関連記事:LTV(ライフタイムバリュー)とは?意味と計算方法・LTV向上に有効な営業戦略

②キーパーソンの調査

対象企業を選定したらその企業の意思決定における重要人物がいるか確認しましょう。

①の段階で受注確度が高い企業に絞っているので無闇に企業にアプローチする必要はありません。

③アポイントメント取得

キーパーソンを見つけたら、その人にメールや直接のテレアポでコンタクトを取り、アポイントメントを取得しましょう。

④アプローチ方法の作成

アポイントメントを取得したら、アプローチ方法を考えましょう。

対象企業がどのような立場にあるかを想定し、そこから生まれる課題解決への道筋、その先のベネフィットを提示することで、対象企業の興味・関心を引いていきます。

ここで重要なのは、対象企業のニーズを具体的に想定するために行う、ペルソナの設定とカスタマージャーニーマップの作成です。

関連記事:カスタマージャーニーとは?ジャーニーマップの作り方の3ステップとツールを紹介

対象企業に合わせたキャンペーンを実施

対象企業の意思決定者やインフルエンサーに見てもらうために、Webのパーソナライゼーションソリューション機能や、GoogleやFacebookなどのバナー広告のパーソナライズ機能を使った施策を実行します。

この時に、キャンペーンがチャネル間で連動するようにして、一貫したメッセージが伝わるようにしておきましょう。

⑥効果測定をし、PDCAを回す

一通りのアプローチが完了したら、効果測定を行い、PDCAを回します。

ABMは優良顧客になりうる企業に対象をしぼったマーケティング手法です。そのため、ある程度の時間と労力をかけてアプローチを行い、しっかりと結果を分析して、次のアプローチにつなげることが重要です。

アカウントベースドマーケティング(ABM)の活用事例

それでは、ABMの活用事例を紹介していきます。

ここでは、PayPay株式会社、株式会社LIGの2社のABMの活用事例をそれぞれ見ていきましょう。

PayPay株式会社

【ABM導入前】

PayPay株式会社ではターゲット企業を手作業で検索し、情報収集して営業活動を行なっていたため、負担が大きいという課題や、いざ収集した情報も業種や売上高などの企業属性が少ないため、営業・マーケティンに活用しずらいという課題がありました。

【ABM導入後】

・欠損していた属性情報を更新し企業単位での傾向分析が可能に

・取引実績を企業データベースと統合することで市場開拓状況を可視化できるようになった

・優先的にアプローチすべき新規ターゲットリストの作成を実現

株式会社LIG

【ABM導入前】

営業担当者によってアポ率が大きくばらつきがあったり、10件の質の高いリストを作成するのに1時間かかる事もあった。

【ABM導入後】

・自社Webサイトの特定ページを複数回訪れたリードをリスト化してテレアポする流れで、平均10%のアポ率に安定

・ABMテンプレートを活用することでリスト作成にかかる時間が半分に短縮され、営業効率が向上

参照URL:https://ainow.ai/2021/01/25/250161/

まとめ

マーケティングオートメーション(MA)が新規のリードを大量に集めて育てていくのに対し、アカウントベースドマーケティング(ABM)では、最初から有力な見込み顧客だけに絞ることでリソースを集中させ、効率的なマーケティング活動を行うことができます。

また、営業と連携して対象企業を決めていくというステップがあることで、営業のフォロー率が向上し、マーケティング施策を成果に結びつけやすいというメリットもあります。

少ないリソースで高い効果のあるマーケティングをしたい、マーケティングオートメーション(MA)は上手くいかなかった、という方はぜひ一度、アカウントベースドマーケティング(ABM)を試してみてください。

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