本記事は、これからインサイドセールス部門を立ち上げる、または既存の組織を強化したいと考えているビジネスパーソン向けの完全ガイドです。
インサイドセールスの本質的な役割から、失敗しないための緻密な「設計のコツ」、具体的な「立ち上げ4ステップ」、そして成果を最大化するための「必須ツール」までを網羅的に解説します。
この記事の内容
インサイドセールスとは
まず、インサイドセールスの本質を正しく理解することから始めましょう。
インサイドセールスの定義
インサイドセールスとは、電話、メール、Web会議システムなどを活用し、オフィス内(インサイド)から顧客にアプローチする営業手法です。
その主な役割は、マーケティング部門が獲得した見込み客(リード)に対して非対面でコミュニケーションを取り、関係性を構築しながら購買意欲を高め(リードナーチャリング)、質の高い商談機会を創出してフィールドセールス(訪問営業)に引き渡すことです。
顧客の元へ訪問することを主軸とするフィールドセールスが「点」でのアプローチだとすれば、インサイドセールスは継続的なコミュニケーションを通じて顧客と「線」の関係を築く役割を担います。
関連記事:インサイドセールスとは?概要やメリット、おすすめツールをわかりやすく解説!
なぜ今、インサイドセールスが重要なのか
インサイドセールスが急速に普及している背景には、顧客と市場の大きな変化があります。
顧客の購買プロセスの変化
現代の顧客は、営業担当者に会う前に、インターネットで自ら情報を収集し、比較検討を終えているケースがほとんどです。
そのため、早い段階から顧客と接点を持ち、有益な情報を提供して信頼関係を築くインサイドセールスの役割が重要になっています。
サブスクリプションモデルの普及
「売り切り」ではなく、継続的な利用を前提とするビジネスモデルでは、顧客との長期的な関係構築が不可欠です。
インサイドセールスは、その最初の接点として、顧客体験の向上に大きく貢献します。
営業活動の効率化
訪問に伴う移動時間がなく、一日により多くの顧客と接触できるインサイドセールスは、生産性の高い営業手法です。
データに基づいたアプローチにより、営業活動全体の効率を飛躍的に向上させます。
インサイドセールス設計の5つのコツ
インサイドセールスを成功させる鍵は、活動開始前の「設計」にあります。思いつきで始めても、決してうまくいきません。
ここでは、組織の土台となる5つの設計のコツを解説します。
目的とKGI/KPIを明確にする
まずは「何のためにインサイドセールスを導入するのか」という目的を明確に定義しましょう。
「新規商談の数を増やす」「休眠顧客を掘り起こす」「既存顧客のアップセルを狙う」など、目的によってその後の戦略は大きく変わります。
目的が決まったら、その達成度を測るための指標を設定します。
- KGI(重要目標達成指標): 最終的なゴールとなる指標。(例:月間の有効商談化数、受注金額)
- KPI(重要業績評価指標): KGIを達成するための中間指標。(例:架電数、メール開封率、アポイント獲得数、担当者接続率)
これらの指標を具体的に設定することで、活動の進捗を客観的に評価し、改善のアクションに繋げることができます。
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ターゲット顧客とペルソナを定義する
「誰にアプローチするのか」を明確にすることも重要です。
まず、自社にとって最も価値のある理想の顧客企業像であるICP(Ideal Customer Profile)を定義します。業種、企業規模、地域などの属性を明確にしましょう。
次に、アプローチ対象となる具体的な担当者像であるペルソナを設定します。
部署、役職、抱えているであろう課題、情報収集の方法などをリアルに描き出すことで、より響くコミュニケーションが可能になります。
関連記事:ペルソナマーケティングとは?ペルソナの設定方法から注意点まで
リードの質と量を定義する
インサイドセールスは、マーケティング部門とフィールドセールス部門の間に立つ「橋渡し役」です。
この連携をスムーズにするため、リードの定義を明確にしましょう。
- MQL(Marketing Qualified Lead): マーケティング活動によって創出された、インサイドセールスがフォローすべき質のリード。(例:資料ダウンロード、セミナー参加者など)
- SQL(Sales Qualified Lead): インサイドセールスが育成し、フィールドセールスに引き渡すべき質のリード。(例:具体的な課題を認識し、予算化の目処が立っており、決裁者への提案機会が約束されている状態)
この基準を部門間ですり合わせることで、「こんな質の低いリードを渡されても困る」「なぜ商談化してくれないんだ」といった部門間の対立を防ぎます。
関連記事:MQLとは?SQLとの違いやマーケティングと営業の連携の重要性を解説
シナリオとコンテンツを準備する
インサイドセールスは、行き当たりばったりのコミュニケーションでは成果は出ません。
顧客の検討度合いや課題に応じて、どのような順番で、どのような内容を、どのような手段(電話、メールなど)で伝えるかというシナリオを設計します。
画一的なトークスクリプトではなく、相手の反応に応じて分岐する対話の地図のようなものをイメージしてください。
また、シナリオの各段階で顧客に提供する、課題解決に役立つブログ記事、導入事例、ホワイトペーパーといったコンテンツも事前に準備しておきましょう。
関連記事: 営業トークスクリプト例文8選!業界・状況別の作成ポイントを解説
フィールドセールスとの連携体制を構築する
設計における最重要項目が、フィールドセールスとの連携です。
インサイドセールスが創出した商談が、その後どうなったのか(受注、失注、ペンディングなど)を必ずフィードバックしてもらう仕組みを構築してください。
失注理由が分かれば、インサイドセールスはアプローチする顧客層やヒアリング項目を見直すことができます。
定期的なミーティングの場を設け、成功事例や課題を共有し、お互いの活動を尊重し合う文化を醸成することが、組織全体の成果を最大化します。
インサイドセールス立ち上げの4ステップ
設計図が完成したら、いよいよ部門立ち上げの実践です。以下の4つのステップで進めていきましょう。
計画策定
まず、設計のコツで解説した目的とKGI/KPIを正式に決定し、経営層や関連部署からの合意を取り付けます。
これは、インサイドセールス部門の存在意義を社内に示す上で非常に重要なプロセスです。
体制構築
計画に基づき、必要な人員の採用または育成計画を立てます。
インサイドセールスには、単なる電話応対スキルだけでなく、顧客の課題を深く聞き出すヒアリング力、得られた情報から本質的なニーズを推測する仮説構築力、そして継続的にアプローチする粘り強さが求められます。
環境整備
活動の基盤となるIT環境を整備します。後述するCRM/SFAなどのツールを導入し、設計したシナリオやコンテンツをシステムに登録します。
誰が、いつ、誰に、何をしたか、という活動記録がきちんと残せる仕組みを構築することが不可欠です。
実行と改善
準備が整ったら、いよいよ活動を開始します。最初から完璧を目指す必要はありません。
まずはスモールスタートで実行(Do)し、KPIの進捗や活動データを分析(Check)します。
そして、見つかった課題をもとにシナリオやアプローチ方法を改善(Action)する。このPDCAサイクルを高速で回し続けることが、成功への最短距離です。
インサイドセールスの効果を最大化するツール
現代のインサイドセールスは、テクノロジーの活用なくしては成り立ちません。ここでは、成果を最大化するために不可欠なツールを4種類紹介します。
SFA/CRM
SFA/CRMは顧客情報、接触履歴、商談状況などを一元管理するシステムです。全ての情報の土台となり、部門間のスムーズな情報連携を実現します。
関連記事:SFAとは?CRM・MAとの違いや選び方と営業の成功事例まで解説
MA
MAは見込み客のWebサイト上での行動を追跡したり、検討度合いに応じてメール配信を自動化したりするツールです。
リードの質を可視化し、効率的なアプローチを可能にします。
関連記事:MA(マーケティングオートメーション)とは?意味や導入メリット・おすすめのツールを紹介
CTI
CTIは、PCと電話機を連携させるシステムです。
PC画面上のボタンクリックで発信できたり、通話内容を自動で録音・文字起こししてCRMに記録したりと、電話業務を劇的に効率化します。
オンライン商談ツール
遠隔地の顧客とも顔を合わせて商談ができるツール。
画面共有でサービスデモを見せたり、資料を提示したりすることで、対面と遜色のないコミュニケーションが可能です。
まとめ
インサイドセールスの導入と成功は、単に新しい部門を作ることではありません。
それは、データとテクノロジーを基盤とした、科学的で効率的な営業プロセスへと、企業全体を変革させる一大プロジェクトです。
その成功は、活動開始前の緻密な「設計」と、活動開始後の継続的な「改善」にかかっています。
この記事で紹介した設計図を元に、まずは自社の課題と目的を明確にすることから始めてみてください。

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